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[ 日常の謎 ]
飛石を渡れば
一色さゆり 出版月: 2021年01月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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淡交社
2021年01月

No.1 6点 クリスティ再読 2025/04/05 09:38
「嘘をつく器」が茶道ミステリとして優秀だったこともあって、読んでみようか。
だけどね、本作は裏千家のギョーカイ誌「淡交」に1年間連載されたあと、中編「飛石を渡れば」を追加した短編集。茶道小説なのは間違いないが、ミステリかどうか最初から?ではある。

冒頭の中編「飛石を渡れば」は不動産会社勤務の主人公星那が、祖母の中川修子の茶室付きの家を片付けようと考えつつ、新しく祖母が嗜んでいた茶道を習いだす話。いやだからこの中編を読み終えた時点では、「ミステリの祭典」的には扱うのはどうか?と思っていたんだ。

しかしその後に続く12の短めの短編(連載分)を読んで、気が変わった。要するに、この中川修子の周囲を描いた12の短編の後に、「修子没後」の話として中編を構成し、おそらくは12の短編もそれに合わせて調整しなおしたというような経緯なのだと思う。というわけで、単なる「人物再登場」ではなくて、それぞれの人物の関わり合いが「謎解き」といった印象で絡み合って、ミステリ的興味というものがちゃんと、あるという結論になったのだ。

中編でのキーアイテムになるのが、中川家の女性に伝わる金継をした柔和な印象の茶碗。この茶碗が割れた経緯や金継をした陶芸家夫婦の縁が、そして干支を離れた虎の絵が正月に掛けられた暗示から何組かの夫婦の微妙な関係が描かれて、アクセントとして機能している。

だったら「日常の謎」とでもいうべき作品なのかな、と「本サイトでも扱っていい」という結論になった。

やはり「ミステリ作家はミステリ作家」というべきなんだろう。
(そういや去年はみうらじゅんが連載持ってた...「淡交」おそるべし)


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