皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.25 | 8点 | 乱鴉の島- 有栖川有栖 | 2017/09/03 21:09 |
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しばしの息抜きを、と下宿のばあちゃんに押され、知り合いが民宿を経営する島にアリスと行くことになった火村。ところが、目的の島の奥にある、別の島に着いてしまい、しかもしばらくは迎えが来ない。その島には著名な文学者とその取り巻きが滞在していたが、明らかに火村たちを部外者として煙たがっている。過剰なまでのその様子に、何かしらの秘密めいたものを感じる火村・アリス。するとそこにさらなる闖入者、今をときめく若き起業家が。火村たちへのもの以上に、はっきりと拒絶の意を示す滞在者たち。この島の集まりは何の集まりなのか、起業家はそこへ何をしに来たのか、不可解な雰囲気のまま過ごすうちに、第一の殺人が・・・
・・・というように、雰囲気たっぷりの序盤から前半。電話線が切られ、携帯も圏外で、迎えの日までは外部との連絡は不可、というお決まりのパターンもファンとしては「よしよし!」。「?」と感じる登場人物の言動のちりばめ方も上手く、興味が途切れることなくページを繰り続けることができた。 犯人の取った行動の意味付けや、それを解き明かす火村の推理の筋道も私としては十分納得できたし、非常に面白かった。惜しむらくは、動機。完全に、物理的に犯行可能な人間を突き詰めるというロジックだったが、これだけの謎めいた人間関係を描く作品なので、動機もそこに絡んでくるものであってほしかった。完全に取って付けたあと説明だった。 でも、やっぱり、有栖川有栖先生はいい! |
No.24 | 6点 | 狩人の悪夢- 有栖川有栖 | 2017/09/03 20:47 |
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久しぶりの火村シリーズ長編、まずは楽しんだ。今まで通りの、純粋な王道のフーダニットが最近逆に希少な気がして、そんな中での有栖川作品はファンにとっての寄る辺になる。
今回は、緻密に計算し、やり遂げた犯人の手口を読み解くのではなく、火村曰く「散らかっている」(だったか?)犯行の跡を読み解いていくというものだった。落雷をはじめとした不測の事態に右往左往したうえで、半ば場当たり的に弄した策の跡をたどっていく道筋となる(だった)ので、精緻なロジックを好む読者が正面突破しようとすると難しかっただろう。かくいう私も、はっきりいって各事象を全く結び付けられず、ただただ火村の推理を追うだけだった。 不測の事態に応急的に、場当たり的に対応するということは、実際の犯罪では大いにありそうなことで、そう思うと面白く読み応えがある作品だと感じた。(ただ小説のような綿密な「トリック」を犯人が計画するようなことはまずないだろうが) |
No.23 | 7点 | 虹果て村の秘密- 有栖川有栖 | 2017/08/20 19:11 |
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そうなのかなーと思ってて、先行書評をみてやっぱり。ジュヴェナイルなんですね。でもそれだからシンプルで、非常にオーソドックスなフーダニット。安心して読めるし、普通に面白かった。
最近複雑な事件様相・人間関係での物語展開がスタンダードみたいになってるから、こういう分かりやすくて推理しやすい、適度な長さの話を久しぶりに読むとホッとする。 真相に迫る前の間(要は読者に考えさせる時間帯)もこうであってほしいし、それまでの手がかりの示し方も過剰にあざとくなく自然で(でもわかったけど)、いいね。 変に「今の流れについていかないと…」ってなって、「今までにない何かを…!」とやっきになっていくよりも、ファンが求めているとおりのものを揺るがずに示してくれる。やっぱり有栖川有栖はいいなぁ。 |
No.22 | 3点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2016/02/07 14:19 |
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ここまでの評価が低いのも納得。私は有栖川有栖のファンだけに、擁護したかったのだが、書評サイトである以上それはダメかな、と。
まず、この「真幌市」シリーズでは、我孫子氏が「夏」の作品で双子ネタを書いているので、ただでさえ「かぶってる」感があったうえに、そちらの方の質と比較するとさらに評価が下がってしまう。 簡単に言えば、偶然に次ぐ偶然、偶然の超過積載。いくらなんでも・・・・。 基本的に、有栖川氏のこういった企画的短編は、「機会があればどこかでやってみたかったアイデア」レベルのものがよくある気がする。 |
No.21 | 7点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2015/12/31 18:59 |
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大阪・中之島にあるホテルのスイートに5年にわたり長期滞在していた男が首つり自殺の体で発見された。警察はもちろん自殺で処理するが、同じホテルをよく利用し、死んだ男とも懇意にしていた大御所作家が、「自殺のはずがない。真相を調べてほしい」とアリス&火村に依頼する。
いつもワトソン役のアリスが、今回は探偵役としてかなり活躍していた。物語は「犯人は誰か?」以前に「自殺か他殺か?」の検討から始まり、フーダニットの捜査が主ではなく死んだ男・梨田がなぜ銀星ホテルに長期滞在していたのか?どういう過去があったのか?などの梨田の人生の謎を解くことに置かれる。 相変わらず読み易い文調と、アリスが探偵として活躍している面白さがあり、特に氏のファンである私には楽しかった。ただ、梨田氏の真相はかなり予想通り・予想の範疇だった。犯人は確かに予想外だったが、物語の本筋は「梨田氏は何者か?」であるので、結果として主たる謎は予想内で、副次的な謎について予想外だった、というようになる。 やはりガッツリ「連続殺人、犯人探し」というフーダニットを有栖川作品でよみたいなぁ。 |
No.20 | 4点 | 闇の喇叭- 有栖川有栖 | 2014/02/16 18:01 |
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探偵行為が罪になるという仮想設定のために、日本が北海道と分裂するという政治的な設定は必要か……?とも思うが……
主人公=探偵役が女子高生ということで、学生アリスシリーズよりぐっと青春ミステリ的な雰囲気が強いと感じる。「氏らしい」という評価もここでの書評で多く見られるが、私としては新境地の開拓という印象の方が強い。で、結果として…今までの作風の方が好き。 もともとあまりミステリに青臭い青春要素は求めない。それでも謎解きの方が濃ければまぁ気にしないのだが、肝心のそちらがこの作品ではちょっと消化不良。というか、面白いんだけど、このぐらいのトリックは短編向きではないか。 「論理爆弾」を先に読んでいて、そっちの方が面白かった。 |
No.19 | 6点 | 論理爆弾- 有栖川有栖 | 2013/11/11 18:05 |
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ミステリというよりはサスペンスの要素が強いという各方面の書評通り。もともとロジカルなフーダニットに作者の魅力を感じてファンになったので、新境地の開拓よりももともとの路線を望んでしまう。
ただ、基本平易な文体なのでリーダビリティは高く、楽しく読めるのは確か。犯人が明らかになった時には少し背筋がゾクッとした(予想はできていたが)。まぁ、基本ファンなのでなんだかんだいってもいい。 |
No.18 | 6点 | 江神二郎の洞察- 有栖川有栖 | 2013/01/04 19:35 |
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学生アリスシリーズが好きだから、それだけで自分の中で評価はよい。他の方が書いているように、「4分間では・・・」は面白かった。「蕩尽に関する一考察」もよくできた作品だと感じた。あとは、学生アリスシリーズを呼んでいるだけに、「月光ゲーム」からマリアが入部するまでの過程が見られるのはうれしい。やっぱり部長・江神二郎はかっこいい。 |
No.17 | 6点 | 長い廊下がある家- 有栖川有栖 | 2012/03/25 06:35 |
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表題作のトリックは読めた。雰囲気のある作品で,中篇程度の長さもちょうどよい。「ロジカル・デスゲーム」が,偶然にも読む前日にその類のパズルをやっていて,「こんな偶然もあるんだな」と読みながら笑ってしまった。そのことを差し引いても面白い短編だった。
全体的に氏の作品としては水準作。 |
No.16 | 4点 | 妃は船を沈める- 有栖川有栖 | 2011/01/16 09:01 |
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三松妃沙子という女が通して出てくる二つの中編の連作。トリックとしては一作目のほうが好きです。
ただ,個人的には,読むほどにこの三松妃沙子という女への嫌悪感が強くなり,なんというか・・・気持ち悪くなります。読後感はあまりよいものではありませんでした。 |
No.15 | 5点 | 壁抜け男の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/15 15:50 |
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純粋なミステリの短編集ではありませんね。肩に力を入れずに時間を費やすのにはよいと思います。作者自身も,思いに任せて気軽に書いたものではないでしょうか。ミステリとして期待はしないほうがいいでしょう。 |
No.14 | 5点 | 46番目の密室- 有栖川有栖 | 2011/01/11 02:04 |
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皆さんの評価に「無難」という言葉が多い,その通りだと思います。タイトルがそれらしく,長編なので本格的な密室ものとしての期待が高まってしまいますが,このトリックならいつものように短編でもよかったのでは,と思います。解明をしていく手順というか展開は,筋道だった論理が大切にされているとは感じました。 |
No.13 | 7点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/10 19:56 |
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他の方が書いてみえるように,表題作がやはりよいですね。純粋に論理を突き詰めて推理を進めるのが本格感があって。「あるYの悲劇」は,法月綸太郎,二階堂黎人らと競作したアンソロジーからの引用。これはこれでちょっとした読書タイムにはあり。
※ちなみに,「モロッコ水晶の謎」に収められている「ABCキラー」も,「『ABC』殺人事件」という競作アンソロジーに収録されています。 |
No.12 | 6点 | ブラジル蝶の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/10 12:18 |
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表題作もまずますでしたが,それ以外の作品もきちんとトリックが考えられていて面白いと思いました。「妄想日記」「人喰いの滝」などが私としてはよかったです。 |
No.11 | 4点 | ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/10 12:17 |
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表題作は反則だと思いました。結局そんなオチだとは、ミステリとしてありなのか・・・。それ以外も小粒の出来です。読んで損とまでは言いませんが…(私はファンですので特に)。まあいろんな手法を試みたのかな,と思います。 |
No.10 | 6点 | 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 | 2011/01/10 12:14 |
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純粋な謎解き小説で,その謎もそれなりに納得がいく結末でした。氏の作品,とくに短編集は,抜きん出てよいものがそれほどなくても,平均的に楽しめるものばかりなので,安心して読めます。個人的には「月宮殿殺人事件」が好きでした。 |
No.9 | 5点 | モロッコ水晶の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/09 19:52 |
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火村シリーズの短編集。クリスティの「ABC殺人事件」にちなんだ「ABCキラー」,水晶占い師を題材にした表題作など,それなりに楽しめましたが,運や偶然がからんでくるネタが多かったような気がします。 |
No.8 | 6点 | 火村英生に捧げる犯罪- 有栖川有栖 | 2011/01/09 19:46 |
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まあ標準的な出来だと思います。有栖川有栖,火村&有栖コンビが好きで,「長編を読むにはちょっと時間が・・・」「パワーが・・・」というときには構えずに気楽に読める短編集になるでしょう。表題作が設定的にはよかったです。 |
No.7 | 5点 | 英国庭園の謎- 有栖川有栖 | 2011/01/08 20:33 |
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私としては表題以外の作品もハズレはなく,全体的に楽しめました。表題作は暗号解読が主の話。国名シリーズの短編集の中でも気に入ったものとなりました。 |
No.6 | 5点 | ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 | 2011/01/08 20:30 |
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こんな有栖川有栖もいい,と思える作品でした。肩肘張らずに気楽に読めて楽しめます。「登竜門が多すぎる」が好きです。 |