皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.34点 | 書評数: 1231件 |
| No.1231 | 8点 | 沈黙と爆弾- 吉良信吾 | 2026/06/08 00:07 |
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| 熊本県警警務部監察課の阿玉清治は、家族の不祥事がもとで出世の道を断たれ、首席監察官からの指示を無難にこなす"お掃除ロボット”と揶揄されて過ごす日々だった。ある日、所轄の刑事が民間人に暴行を働いたという事案の調査を命じられる。警察の威信に傷がつかないよう落としどころを探るという、いつもの"汚れ仕事”だったが、時を同じくして、熊本地震をきっかけに失声症を患っている小学生の息子に、動物殺しの容疑がかけられる。息子の無実を信じながら、与えられた事案の調査を進める阿玉だったが――。
物語は、警察内部の非違事案の調査と、阿玉の息子にかけられた動物殺しの嫌疑との2本のストーリーが軸になっているが、どちらも熱く面白い。 「動物殺し」の真相のほうがミステリらしい魅力があり、なかなかの意外な犯人だった。さらにそちらには阿玉の「家族の物語」もあり、心を打つものがあった。 非違事案調査のストーリーは、組織を守ろうとする警察VS主人公の矜持という、警察小説では非常によくある構造ではあるが、主人公・阿玉の人物的な魅力もあり、力のある物語だった。 |
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| No.1230 | 6点 | シスター・レイ- 長浦京 | 2026/06/07 22:00 |
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| 予備校の英語講師・能條玲は、東京墨田区の外国人たちの相談役的存在で、「シスター」と慕われている。地域柄、暴力団や外国人半グレ集団も関わって来るトラブルの解決に乗り出す彼女には、元フランス特殊部隊のエースという経歴があった。ある時、フィリピン出身の友人女性からの頼みで彼女の息子を探すことになった玲は、そこから相次ぐトラブルに次々に巻き込まれていく。やがてそれは、中国やベトナムの犯罪組織が絡んだ、国際的な陰謀の渦中につながっていく―
卓越した武闘能力をもつ元傭兵の女性が、警察や国際的犯罪組織を相手に体を張って闘うというバイオレンス。屈強な男たちをなぎ倒す主人公の活劇シーンも多く、エンタメとして楽しめる作品。 外国人界隈で起きている不穏な動きを、裏で操っている”Um Mundo”の正体が物語のキーになっているが、作品の中盤くらいで容易に想像がついたし、その通りだった。 さまざまな組織が入り組んで関わってくるので、その図式を理解するのにやや苦心するが、映画のような分かりやすい(ベタかもしれないが)ヒロイン像を素直に楽しむことができた。 |
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| No.1229 | 4点 | 夜と霧の誘拐- 笠井潔 | 2026/05/25 23:32 |
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| 矢吹駆とナディアがダッソー家での晩餐会に招待されたその夜、運転手の娘・サラがダッソー家の一人娘・ソフィーと間違えて誘拐される。犯人からの連絡で、身代金の運搬役に指名されたのはナディアだった。ナディアが身代金の受け渡しに奔走する同じ夜、カトリック系私立校の聖ジュヌヴィエーヴ学院で女性学院長の射殺体が発見される。その殺害された女性学院長の夫は、なんと誘拐犯だったことが分かり、二つの事件の関連が疑われることになる―
特に”二重誘拐” の手口には感心させられたし、学院長殺害の不可思議状況も興趣が高まるものだったが、いかんせん(不必要に)長い。特に駆と女性教授の、ナチスや第二次世界大戦後のフランスに関する議論は本筋には全く絡んでこないのにも関わらず結構紙幅を割いていて、読むのが面倒だったので飛ばした。 おそらく本シリーズの愛読者とそうでないのとで評価が分かれるのではないか(自分は後者)。 <ネタバレ> 正直、誘拐事件の結末を見たときにうっすらと「真犯人では…」と思っていた。さらに、真相が1分を争う綱渡りのような道筋で、不可思議状況を作るために無理筋を通しているような感じもする。 ここまでが高評価で恐縮だが、自分の正直な感想。 |
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| No.1228 | 7点 | 普通の底- 月村了衛 | 2026/05/25 22:59 |
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| ある青年から届いた手紙。そこには幼少期から「普通」を願って生きてきた半生が綴られていた。教育熱心な母親、少し距離のある父親、一般的な友達付き合い。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けているはずだったのに―。高校時代の同級生からの、ひょんな誘いをきっかけにその歯車が狂っていき、行きついた先は―僕が悪いのでしょうか?ただ「普通に」生きたかっただけなのに…
主人公の「手記」ともいえる手紙で、少しずつ歯車が狂い始めていく半生を描く物語は、取り立てて特異なものではないかもしれないが、昨今の世情も反映した内容で読ませるものがある。特に主人公の転機となった高校3年時のエピソードは、「波風立たせずにうまく乗り切ろう」とした悪意のない処世術が、のちのち自分の首を絞めていく結果になり、同情を覚えてしまうところもある。 要所要所で確固たる自分の意思を示せなかった主人公にも罪はあるかもしれないが、積極的に悪に加担しようとしていないはずなのに引き返せないところまで行ってしまう、その構図を巧みに描いていて、非常に興味を惹かれる一作だった。 |
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| No.1227 | 6点 | 白魔の檻- 山口未桜 | 2026/05/25 22:09 |
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| 研修医の春田は実習のため北海道へ行くことになり、過疎地医療協力で派遣される城崎と、温泉湖の近くにある山奥の病院へと向かう。ところが二人が辿り着いた直後、病院一帯は濃霧に覆われて誰も出入りができない状況になってしまう。そんな中、院内で病院スタッフが変死体となって発見される。さらに翌朝に発生した大地震の影響で、病院の周囲には硫化水素ガスが流れ込んでしまう。そして、霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──(Amazon紹介文より)
硫黄ガスが徐々に溜まっていき、生存のタイムリミットが迫って来る極限状況で起きる不可解な殺人、という設定・雰囲気は好み。病院の隠された黒歴史、そこにすべての因果があるだろうと推察されるものの、誰が?何のために?はなかなか見えてこないという展開もまずまずだったが、建物の構造や、人物の行動の時系列といった物理的なロジックが入り組んでくると、だんだん追うのが億劫になってしまうというのも正直あった。 だから結局、城崎医師が真犯人にたどり着いたロジックは正確には理解できていない。”まぁ、その辺はいいから真相を早く教えて”みたいなカンジになってしまった。 |
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| No.1226 | 6点 | 殺める女神の島- 秋吉理香子 | 2026/04/30 22:19 |
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| リゾートアイランドに集められた、外見と内面の美を競い合うコンテストの最終候補者。メンバーは女子高生モデル、経営者、小説家、医師、シェフ、インフルエンサー、大学院生の七人。これから二週間、互いを知りながら、高め合いながら、助け合いながら、最終選考の準備を行う。その日々を見守ってグランプリを決めるはずだった主催者が、二日目の朝、瀕死で見つかった。次々と殺人が起きるなか、巧妙に隠された参加者たちの「嘘」も明らかになっていく――。この中で、一番嘘つきの殺人鬼は誰?(JPROより)
いわゆる「絶海の孤島モノ」だが設定がなかなか面白い。連続する事件の途中までは「これも審査の一つなのだろう」などと勘違いしていたある候補者の姿など、展開の中にも面白さがある。 ただ真相はちょっと飛躍しすぎて、もう少し現実的な路線で意外性を期待していたところがあった。 女性同士の本性がぶつかる作風は、十分に作者らしかった。 |
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| No.1225 | 5点 | あいつらの末路- 真梨幸子 | 2026/04/30 22:07 |
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| 熟年結婚をした朝美のところに、友人のフリーライターの景子から「助けて」というメールが送られてきた。婚活サイトで出会った夫と、郊外のニュータウン「ハワースの丘」で幸せに暮らしているはずだった彼女の身に一体何が? 朝美は、馴染みの雑誌編集者・睦代と共に、景子を訪れることにする。ところが景子には会えず、そこで出会った「ハワースの丘」に住む女子高生とともに、おかしな事態に巻き込まれていく―
熟年世代御用達の婚活サイト、捨てきれないセレブ生活へのあこがれ、女性同士の見栄の張り合い、ロマンス詐欺…いかにも作者らしい題材の、作者らしい展開の物語。 思慮深さと安っぽさを併せもった女性の心理描写は、浅薄で俗っぽいけど逆にそれがリアルかも。しかし展開がぴょんぴょん飛んで薄っぺらく、心理描写も安っぽい感じなのは否めない。 その分あっという間に読めて、エンタメとして面白く読むのには差し支えない。 |
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| No.1224 | 5点 | 死亡フラグが立ちました! - 七尾与史 | 2026/04/27 11:23 |
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| ここまで辛口の評価が続いているが、まぁそれも分かる。
自分は途中からそういうコンセプト(バカミス?)の作品だと割り切って読んだから、それなりに楽しめた。 とはいえ、プロバビリティの犯罪と言い切ることも難しいくらい、偶然の積み重ねによってつながる細~い線に頼った犯罪は、やはり現実的にはあり得ないカンジ。 ヤクザ・松重さんの結末も、調味料の件が前半からことさらに描かれていたことでほとんど予想がついていたし。 コメディ的なスタンスで軽く読む分にはアリだとは思う。 |
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| No.1223 | 5点 | 霧笛の余韻- 森村誠一 | 2026/04/27 11:10 |
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| 新進作家の白沢幸樹は、北海道の旅先で出会った女性・絵里村多鶴子に魅力を感じながら、同時に死を思わせるような儚さも感じていた。旅先で別れた二人だったが、やがて帰京後白沢が連絡を取ろうとすると、多鶴子は帰ってきていないという。そこから多鶴子の双子の妹・志鶴子と共に、多鶴子の行方を捜すことに…
事件の真相・真犯人が、ラスト直前になって脈絡なく突然明かされるので驚いた。真相自体はおおむね予想していた範疇ではあったが、白沢と志鶴子の関係の行方という点でも興味が惹かれるところはあったので、全体としては楽しめた。 |
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| No.1222 | 8点 | アンジェリック- ギヨーム・ミュッソ | 2026/04/27 10:58 |
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| パリ・オペラ座バレエ団の元トップダンサー、ステラ・ぺトレンコが6階の自宅アパルトマンから転落した。警察は事故と判断したものの、ステラの17歳の娘・ルイーズは、殺人ではないかとの疑いをもち、元刑事タイユフェールに調査協力を依頼する。はじめは調査に乗り気でなかったタイユフェールだが、ステラの上階に住む画家も同時期に病死していたことが判明する。その青年画家は、実はイタリアの格式ある家系の跡継ぎでだった。事件性はないと思われた二つの死に疑念が生まれ始める―。
第Ⅱ部“アンジェリック・シャルベ”の章から事件の意外な枠組みが見え、物語が一気に面白くなっていく。さらに、タイユフェールの過去、離れることになった想い人など、さまざまな伏線が物語のラストに見事なまでに結びつき、多少の出来過ぎ感はあるものの、読み手を充分に満足させてくれる面白さ。 期待に違わぬ驚きを与えてくれる作家だと思った。 |
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| No.1221 | 8点 | イーストレップス連続殺人- フランシス・ビーディング | 2026/04/27 10:39 |
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| イギリス、ノーフォーク海岸沿いの風光明媚な地、イーストレップスで、老婦人が友人宅を訪れた帰りにこめかみを刺されて殺害される。戦慄する住民たちを尻目に、続けて第二、第三の殺人が同様の手口で繰り返され、街は謎の殺人鬼「イーストレップスの悪魔」の影におびえることになる。
同じ時期、実業家のロバート・エルドリッジは、人妻マーガレットとの道ならぬ恋のため、毎週イーストレップスの彼女のもとへ忍んできていた。が、ある時、殺人が起きる時と、エルドリッジがマーガレットのところに忍んで来る時とがいつも重なっていることに気付く。殺人事件の起きるタイミングで、いつも人目を避けて行動していたことになり、エルドリッジに疑いの目が向けられていくが― <ネタバレあり> 風光明媚な会が員沿いの街で起きる謎の連続殺人。本格黄金期らしい舞台、作風である。次々と起こる殺人の直接的な動機が全く見えないが、おそらく物語の背景にある過去の詐欺事件が関与しているのでは…と推察しながら読み進める。 ところが、最後に示された真相、犯人の動機はまったく違うところから飛んできた。自分としてはいい騙され方だった。 前半はエルドリッジ視点で書かれる章が多く、道ならぬ恋にひたむきに進む彼に感情移入しそうなのだが、設定としては彼は過去に非道な罪を犯しているわけで…なんだか気持ちのもっていきどころが難しかった。 |
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| No.1220 | 7点 | スピーチ- まさきとしか | 2026/03/24 22:15 |
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| 札幌、豊平川の川岸で見つかった女性の遺体。遺体は目に”黒テープ”が貼られており、それは8年前に近隣市で起きた女性殺害事件と同じ状況だった。札幌・澄川警察署の刑事、天道環奈は、 その上司であり〝人の不幸が見たい〞緑川ミキと組んで捜査にあたる。その捜査中、署で苦情を言い立ててる中年女性を目にする。女性が言うには、隣家に住む母子の挙動が怪しいという。それは、40代の引きこもり息子と70代の母親が住む家だった。
<ネタバレ> 要所要所で挟まれる”母親の手記”。我が子が人を殺し、その隠匿に加担したという悔恨を語る内容で、当然”引きこもり息子の母”のように見えるのだが、ミステリに読み慣れ、しかも作者の作風を知っている以上は、その想像を裏切る展開になることはある意味目に見えている。 で……案の定。 だが、「では、その先は…?」の行方はなかなか奇想天外で、予想だにできない(できるわけもない?)モノで、いずれにしろ読み進めるのは楽しかった。 さらに、一旦着地したかに見えたあと、もう一段積み重ねられていて、そここそが最も衝撃的でもあり、最後まで楽しませてもらえる、作者らしい作品だった。 主人公の上司(相棒)である緑川のキャラもいい。 いろんな色や要素が盛り込まれているが、複雑ではなく全体的に楽しめた。 |
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| No.1219 | 6点 | ルーカスのいうとおり- 阿津川辰海 | 2026/03/22 21:00 |
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| 2年前に母親を亡くした小学5年生のタケシは、残された父と2人暮らし。そのことから立ち直れず、新しいパートナーを得ようとする父に反発を感じていたタケシはある日、編集者だった母親が担当した児童書『どろぼうルーカス』のぬいぐるみを川原で拾う。母との大事な思い出、ルーカス、だがそれを持ち帰ってから、タケシの周りでおかしな出来事が連続する。タケシが「いなくなってほしい」と思い、そのことを口にした途端、その人が事故や殺人に遭うのだ――ルーカスには呪力があるのか?恐れおののくタケシにその真相が明かされたとき――
<ネタバレ> "人形”ネタの典型的なホラーでありながら、当然それそのままではない”ミステリ”ではある。とはいえ、人形に呪念がこめられているというホラー設定は生き。 主題は、”ルーカス”には誰の呪念がこめられているか?ということ。そういう意味ではフーダニット(?)。まぁ、物理的手がかりをもとに犯人を絞り込んでいく、というものではないが。だから読者は、物語の舞台設定や背景から、それを推理(?)していくカンジになる。 人形が意志をもって現実の人たちを殺す―と、まぁホラーではあるあるの設定ではあるが、やはり雰囲気はあり、上記の謎解き要素が入っていることでなかなかに面白い。 ただ、王道の本格を書く作者の他作品に比すると、好みもあってそちらに軍配が上がるカンジにはなってしまう。 とはいえ普通に十分面白いとは思うので、お薦めできる作品ではある。 |
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| No.1218 | 6点 | 断罪- 石川智健 | 2026/03/22 20:35 |
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| 警視庁捜査一課の青山陽介は、ある事件で捜査本部の誤りを正して真犯人を突き止め、その働きを認められ、不審な行方不明事件が続く武蔵野東警察署への出向を命じられる。そこで出会った検案医、夏目塔子は若くして所轄から絶大な信頼を得る存在だったが、その検視結果青山は違和感を抱く。青山は、抜群の推理力を発揮する親友・小鳥冬馬に逐次事件捜査の相談をする。その助けを得て青山が辿り着いた戦慄の真実とは―
組織的に秘匿された真実の真相を、順に紐解いていく展開はなかなか読み応えがあり楽しかった。昨今話題の”陰謀論”さながらに、歪んだ(?)正義感のもと集まった秘密組織のからくりはかなり現実味がないものの、その分読者の衝撃をもたらす体にはなっていると思う。 まぁ、「現実味がない」と感じるこちらの感覚がまっとうなのか、実際そういう”闇”は現代社会に本当にあるのか―わかりはしないけれど。 |
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| No.1217 | 7点 | マザー- 乃南アサ | 2026/03/08 22:39 |
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| 認知症になった義父・義母を明るく世話し続ける母、うつ病で社会を挫折した60代の息子を抱える母、勘当同然に家を飛び出し男のもとへ行った娘の出戻りを迎える母、妻子持ちの男性と、不倫を経て結婚した母、子どもたちの巣立ちを機に、突然お洒落に生まれ変わった母―「母」の名のもとに隠された、女性の”本当”を描き出す短編5編。
ジェンダー、女性の社会的自立、その支援…昨今はかなり社会的な認知も進んできた女性の立場や権利だが、家庭で「母親」という座に縛らされる風土はなかなか根深いものが。さまざまな立場の母親を題材に、その深層を上手く描いた良作5編。 |
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| No.1216 | 7点 | 全員犯人、だけど被害者、しかも探偵- 下村敦史 | 2026/03/08 22:12 |
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| 電動自転車メーカーの社長が、製品の不良を隠蔽して被害者を出したと社会から責められ、自殺した。その後のある日、社長夫人、会社役員、週刊誌記者など事件関係者ら7名が何者かの呼び出しで山奥にある廃墟に集められ、閉じ込められる。スピーカーから「社長は自殺ではない、殺人だ。この中に真犯人がいる」という主催者の声が……と、ここまでは王道パターンなのだが、続く主催者の「真犯人以外の人間を毒殺する」という言葉に、状況は一気に異様に。こともあろうか集められた者たちは皆、「私こそが犯人だ」と主張し合うようになり―
デスゲーム仕掛けで事件関係者が集められ、スピーカーから主催者の指示が流れる。まぁベタベタの設定で、それはそれで個人的に大好物なのだが、そこから「我こそは」と関係者たちが真犯人になりたがる、という機軸が確かに面白かった。 お互い腹のうちを探りながら、だんだん「後出しじゃんけんで上書きしたもん勝ち」になっていく展開も、苦笑してしまいそうだが飽きずに読めた。 個人的には、終盤に明かされる額縁構造の仕掛けは無くてもよかったかな・・・とも思うけど、そこで重ねられたさらなる作者のトリックはまずますだった。 |
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| No.1215 | 6点 | 誰かがこの町で- 佐野広実 | 2026/03/07 22:20 |
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| 児童養護施設で育った娘が、自分を置いて失踪したとなっている母親のことを知りに行こうとするが、一家が住んでいた住宅団地は「この町は安全・安心なコミュニティ」「失踪など起こってない」と過去を隠そうとする。
その体を守ることが第一、その輪を乱す家庭はそこから追いやられる―異常なまでの同調圧力を描いた作品。 現代ではこんなことまかり通るはずはないと思っているが…ただ集団心理が人を狂気に走らせる例は、程度の差こそあれ現代でも(むしろ現代こそ?)多く見られるので…ありえないことではないのかも? ある種の社会病理を題材に描くことを得意としている作者らしい一作。 楽しめた。 |
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| No.1214 | 6点 | 探偵小石は恋しない- 森バジル | 2026/03/07 21:57 |
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| 代表の小石と相談員の蓮杖2人が運営する「小石探偵事務所」。ミステリ好きで、作品に登場する名探偵のような活躍を渇望する小石は、そんな事件捜査の依頼を日々心待ちにしているが、舞い込んでくる依頼は浮気調査ばかり。しかも厄介なことに、実際小石は浮気調査を非常に得意としてしまっている。それには小石の、「人の恋情が矢印で目に見える」という特殊な能力が関係していた―
<ネタバレ> 昨年後半から各所で評判を耳にするようになった作品、表紙や読み始めの感触から「ああ、最近流行りのラノベ風特殊ミステリね…」と思わせておいて、ラストに近づくにつれて緻密に織り込まれた仕掛けに舌を巻く、といった感じか。 小石らが受ける各依頼を連作短編仕立てで描く前半も一編一編(?)が面白く、しかしながらそれら一つ一つが大筋への下敷きになっている構成力もよい。よく考えられ、編み込まれた作品である。 一方で、網の目のように施された仕掛けや関係性がやや多岐にわたりすぎ、理解するのに力を要した印象もある。アレの表記の仕方によって読者の誤認を誘う叙述トリックこれまでも多くなされてきたモノで、もちろんそこに上乗せした仕掛けが新味をもたらしてはいるが、「誰が誰なのか」は中盤以降でだいたいわかってくるところがあり、ラストに傍点(、)を打たれて強調されている真相も、「あっと驚く」という感覚までは至らず「あぁ、やっぱりね」と感じたことが多かったのが正直なところ。 個人的にエピローグにあった、伊坂幸太郎の「死神の精度」が、「精度」は文庫で「浮力」は単行本、というくだりが、その理由も含めて自分と全く同じ状態だったのでスゴく共感してしまった。 穿ちすぎかもしれないが、「蓮杖」という名は「恋情」とかけているのか?とふと思った。 |
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| No.1213 | 7点 | 成瀬は都を駆け抜ける- 宮島未奈 | 2026/02/23 23:04 |
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| シリーズ完結編ということらしい。
2作目からからに成瀬の交流範囲が広がりながら、成瀬自身はマイペースで貫くところ、周りもその成瀬に惹かれていくところ…やっぱなんかいい。 滑稽でばかばかしい展開の中に、あたたかさや感動を含ませる術がうまいなぁ…と素直に感心。 まぁ、ミステリではないんだけど…やっぱり面白かった! |
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| No.1212 | 7点 | ネズミとキリンの金字塔- 門前典之 | 2026/02/23 22:54 |
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| 医療機関だけでなく、団地や商業施設も経営し、地域の領主といっても過言ではない権勢を誇る「大木病院」の一族。その本体である大木総合病院は、ピラミッドパワーを信仰する院長・大木陽太の嗜好による、ピラミッド型の特異な精神科病院だった。建築士兼探偵の蜘蛛手は今回、周辺施設の改築の設計を請け負うことになったのだが、その会議に赴いた折に、ピラミッド棟の最上階が崩落する事故が起きる。がれきの中には、凶器で刺された院長の息子・大木帝太の遺体があった―
寡作作家と言ってよいのではないかと思う作者だが、経歴に即して「建築」を絡めたトリックを軸に描く本格ミステリは唯一無二で、一作一作非常に質が高いと感じる。 建築物の図面が示されたり、真相解明の際も細かな数字が出てきたりと、複雑で込み入っているような印象に見えがちだが、本質は大胆でシンプル、かつ予想を超える仕掛け。今回は、犯罪の「動機」についてもかなり突飛で、読み手の推理の範囲を超えているが、それがまた新鮮な基軸で非常に面白かった。 作品数が多くないのであまりメジャーではないように思うが、もっと認知されていいミステリ作家だと思う。 |
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