皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ その他 ] 絵馬と脅迫状 |
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| 久坂部羊 | 出版月: 2025年03月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
![]() 幻冬舎 2025年03月 |
| No.2 | 5点 | パメル | 2026/01/23 08:40 |
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| 医療の現場を舞台にした、現役医師である作者の真骨頂を味わえる6編からなる短編集。
「爪の伸びた遺体」誠心会総合病院の神経内科医・木瀬礼治は、新卒の研修医・塙亮二を見て驚く。七年前に自殺した幼馴染みとそっくりだったからだ。謎が謎を呼ぶ演出で、ゾッとさせられる部分もあるが、もうひと捻りほしかった。 「闇の論文」研究員の丸山真一が、癌の診断に行われる生研が癌の転移を引き起こす可能性について、マウスで科学的に実証したにもかかわらず、論文提出を認められないという。理想と現実のギャップに苦しむ登場人物の姿に、組織で働く者の悲哀を感じる。 「悪いのはわたしか」精神科医の深見百合のもとに「二度と人前に出られなくしてやる」という脅迫状めいた投書が届く。怪文書の犯人もエスカレートしていくあたりは典型的なサスペンスだが、犯人対被害者の構図は終盤、見事にひっくり返る。大技が鮮やかに決まるサイコロジカル・スリラー。 「絵馬」科学のみを信奉し、信心が全くない内科医の小栗は、病院近くの神社で心臓外科の長谷部秀雄の筆跡らしい絵馬を手に取り、落として割ってしまい、それをゴミ箱に捨ててしまう。極限状態における人間心理の変容が、滑稽かつ残酷に描かれたホラーミステリ。 「貢献の病」落ち目のベストセラー作家が原作のアニメ化の莫大な著作権使用料を巡って裁判に打って出ようとする。善意の裏にあるエゴや、社会的な有用性を求めすぎる現代人の脆さを突きつけている。 「リアル若返りの泉」元小学校の男性教諭がある朝、薄かった頭髪が増えているのに気づいたのをきっかけに若返りを始める。若返ることは本当に幸せなのかという問い掛け、欲望の果てにある虚無感を描いている。 |
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| No.1 | 6点 | HORNET | 2025/05/17 17:52 |
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| ●「爪の伸びた遺体」…学生時代に自殺した親友と瓜二つの男が、新人医師として自分のもとで働き始めた。以後、不可解な事件が頻発する。彼は誰なのか?
●「闇の論文」…大学病院の助教授・山際が指導する研究員が、がんに関する画期的な研究結果を出した。しかし、論文提出は認められないという。なぜなのか? ●「悪いのはわたしか」…メディアにも露出し、著書もベストセラーという女性精神科医のもとに「二度と人前に出られなくしてやる」と届いた脅迫状。いったい誰が? ●「絵馬」…科学のみを信じ、信仰を馬鹿にしていた内科医が、病院の近所にある神社の絵馬を誤って割ってしまった。すると、わが身に次々悲劇が降りかかる。 ●「貢献の病」…野尻は、ベテラン作家・今城榮太郎の秘書。今城の作家としての評価に陰りが見えてきたことを知った野尻を悩ませる新たな問題が… ●「リアル若返りの泉」…ある時から突如として薄くなっていた髪が増え始め、若返った元教員・泉宗一の数奇な体験 主に医療を舞台とした短編集だが、「貢献の病」や「リアル若返りの泉」など、その範疇にないものもある。それぞれに小ぶりな出来ではあるが、まぁ面白い。「闇の論文」は、ミステリというより社会小説的。 人間の欲や迷いを上手く滑稽に描いているという点で、「絵馬」と「リアル若返りの泉」」がよかった。 |
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