海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

虫暮部さん
平均点: 6.21点 書評数: 2040件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.380 6点 鏡の殺意- 山田正紀 2017/08/02 10:52
 事態の進展に伴い足許から世界が崩れて行って、しかし再構築はされず、真相らしきものが一応明らかになったあとも摑みどころの無い場所にポツンと残されていることに気付く……というのはミステリ系に限らず山田正紀作品によく見られる構造。ストーリーが直線的で細かな目配りに欠けるし、“真実の確定”が中心ではないし、厳しく見るなら、曖昧な“雰囲気”を核に据えた舌先三寸とも言える。しかし再読したところ以前よりも面白く感じたのは、私がミステリに求めるものが変わってきたからか。

No.379 3点 レタス・フライ- 森博嗣 2017/07/31 10:28
 殆ど内容が無いような話を文章の個性だけでどこまで引っ張れるか実験した、が概ね失敗した、という感じ。辛うじて「砂の街」は面白いが、この本に収録してしまうと、基本的に同類である他の短編に埋もれて、その良さが際立たない気がする。

No.378 6点 τになるまで待って- 森博嗣 2017/07/27 11:56
 ドアの溶接をセメントでカモフラージュした、と言うのは誰に対するカモフラージュなのか?密室状況を作った理由が時間稼ぎならトリックがあとで露見しても問題は無いわけで、そんな作業をしている時間こそが勿体無いのでは。
 トリックは肩透かしだしストーリーもたいしたこと無い。しかしどこがどうと言うわけではないが、この時期の森博嗣作品としては比較的面白く感じるほうの一冊。

No.377 8点 忍物語- 西尾維新 2017/07/24 10:15
 まだ続く〈物語〉シリーズ。女子高生が吸血鬼に襲われて木乃伊になる事件を追うのだが、謎のメッセージやミッシング・リンクといったミステリ風展開。ミステリとしてはごく古典的なネタも基盤がファンタジーの論理なのでそれなりに上手くリサイクル出来ている。本筋とは関係ない会話劇の方が面白いのはまぁいつものことだ。

No.376 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2017/07/20 15:32
 額縁部分の妙にダークな雰囲気があまり有効に機能していないせいで、せっかくの叙述トリックも味わいが損なわれている。この“作者の苦悩”は作品の一部として昇華され切っていないように思う。

No.375 5点 ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 2017/07/18 10:58
 これは有栖川有栖作品である、というどうしようもなく多大な先入観のもとで読むせいだが、シリーズ・キャラクターがいないだけでこうも会話から軽妙さが失われるものか。

No.374 6点 フォークロアの鍵- 川瀬七緒 2017/07/18 10:57
 この作者は、フェアプレイの謎解きと言うよりは、集めた様々なネタを開示して読者を引っ張るタイプであって、その前提で読めば認知症と口頭伝承を組み合わせた本作も相応に楽しめる。事象のつながりは多少強引だが許容範囲内。
 但し、人物造形をストーリーに都合良く合わせ過ぎ。地の文での心理描写過多が興を削ぐ。作者の狙いをわざとらしく感じさせない文章力がもっと欲しい。

No.373 5点 ヴィラ・マグノリアの殺人- 若竹七海 2017/07/03 11:34
 こういうスタイルのミステリもあるということは知っているし巧みな筆致ではあるけれど、行く先の判っている道を辿り直しているような感覚が否めず、物凄く面白かったとは言い難い。登場人物多過ぎ。死体の顔をつぶすという行為は結構ハードルが高いと思うので、心情的なフォローが欲しい。

No.372 4点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2017/06/16 12:35
 中盤、二つ目の死体の死因が実は……とか、被害者の目論見とか、面白味を感じる部分もあったが、全体としてはそれほどでもない。
 ポアロが、冷酷で邪悪な性格は親子で遺伝する、みたいなこと言ってるのは嫌だな~。

No.371 8点 幻想運河- 有栖川有栖 2017/06/16 12:33
 法的にどうあれ、私はドラッグを試したいとは思わないな~。ところで、詩人が自殺するエピソードはなんなの?

No.370 5点 上海殺人人形 - 獅子宮敏彦 2017/06/13 12:08
 馬鹿馬鹿しいトリックを大時代的な冒険活劇仕立てで有効に。という意図が前面に出過ぎちゃって大味な出来。面白いネタも多々あって悪くは無いが、もう少し筆力が欲しい。
 と言いつつ、そのぎこちなさによる嘘っぽい雰囲気がそれなりにプラスに働いている気もする。紙芝居には紙芝居の良さがあるんだ、みたいな。(ところで初版、誤植が多い!)

No.369 6点 悪魔のいる天国- 星新一 2017/06/01 13:51
 ショート・ショート作家は半ば必然的に作品数が多くなるわけで、その全部が名作とはやはり行かない。一編ずつ単独で読めばそれぞれ面白くてもこうしてまとまると玉石混交に見えるのは星新一に限った話ではない。
 私の場合、本書では「ゆきとどいた生活」がベスト。或る種の叙述トリック?
 一方で、誰かの掌の上で完結するタイプの話(おかしな何かがあるが、それは某がとある目的で作ったニセモノであった、とか)は物足りない。ネタは良くても結末が説明的だと気分が殺がれて勿体無い。あと、最後のセンテンスが三点リーダーで曖昧に終わるものもあまり好きでは……。

No.368 7点 掟上今日子の裏表紙- 西尾維新 2017/05/30 08:42
 実は真相の核だけ取り上げれば世界シリーズで使ったネタの焼き直し。勿論諸々の細部はきちんと詰めてあるし、今日子さんのキャラクターを生かした設定で面白く読める。何を書くかではなく如何に書くかが大事。
 ではあるけれど、割と強気な純度の高いミステリとして始まった忘却探偵シリーズが、巻を重ねるに従いネタの見せ方のヴァリエーション重視にシフトしているのは正直不満。そっち系は美少年シリーズに任せて、こっちはもっとミステリ度強く真ん中にドン!と行ってくれないかな~。つまり“ミステリを読んだ!”という満腹感が希薄なのである。

No.367 6点 星読島に星は流れた- 久住四季 2017/05/25 12:07
 設定が工夫されていて、事件が起こるまでの前半部分もそれなりに楽しめた。語り手が無色透明で、彼の過去の出来事が取って付けたようなエピソードに感じられた。アレを運ぶのは女性には体力的に無理、とかソレにそのひとがひとりで気付けたとは思えない、というのは根拠薄弱だと思う。
 孤島モノはそもそもこういうものだ、と割り切って、既視感があるとかパターン通りとかは極力考慮せずに読もうと思った。

No.366 8点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 2017/05/24 14:45
 自爆覚悟のデビュー作って感じだ。とはいえ読み返してみると、記憶に残っている印象よりは随分スッキリしたミステリ。初読時よりロシア云々の知識が多少増えていたので結末は納得し易かった、か?
 『隻眼の少女』はいわば本作のオルタナティヴ版なんですね。

No.365 6点 ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン 2017/05/22 10:07
 謎と逆説に奉仕する桃源郷。過剰に戯画的ながら、こういう変人ばかりの国も悪くは無い。 
 ただまぁ、このへんの古典作品の“ルール未整備”な雰囲気には、若干の距離を感じてしまうのも否めず。不親切な部分に対して意識的にこちらから歩み寄って読んでいる、と言う感覚が最後まで消えることは無かった。
 早川文庫版で、作者名 Keith が“ケース”と表記されていて、“キースでしょう”と版元にメールしたところ、“ケースが一般的”との返信。そうなの?

No.364 9点 禁じられたジュリエット- 古野まほろ 2017/05/08 14:55
 自由と正義についての物語。これが予想外に感動させられてしまった。韜晦で著書を膨らませることも多い作者が言いたいことを直球で問いかけて来た。勿論返事は Oui。
 作者は本作の“源流”として『闇の喇叭』(有栖川有栖)を挙げているがさもありなん。というかストレートに影響受け過ぎでしょ。
 しかしこの手の虐待ネタのリーダビリティの高さと言ったら!相変わらずのくどい文体をものともせず一気読みした自分にびっくり。

No.363 5点 いまさら翼といわれても- 米澤穂信 2017/05/08 14:53
 「わたしたちの伝説の一冊」冒頭のエピソードは不自然。雑誌の発売日が日曜日に重なったら1日ずれることぐらい、毎号発売日に買っているなら把握出来るだろう。
 「走れメロス」の感想文が一番印象に残った。
 全体として、ミステリ的には弱いが、文章力で読まされちゃった感じ。但し古典部の面々のキャラクターが少々鼻に付いた。

No.362 6点 狩人の悪夢- 有栖川有栖 2017/05/01 10:05
 手首切断の論理がゴチャゴチャしていて判りづらい。“カウダカウダ!”の手掛かりは都合良過ぎな気がする。合意の上でのゴーストライターが悪いとは思わない。
 “柱をはさんで首を絞める”というアリスの案を火村先生は“ドタバタ喜劇”と評したが、被害者は抵抗しにくく加害者は力をかけやすく寧ろ有効な殺し方だと思う。

No.361 6点 人間じゃない- 綾辻行人 2017/04/28 12:09
 個々の作品自体は面白いけれど、“未収録作品集”という性質の為か、“○○シリーズの番外編”的なものばかり集まっているせいか、短編集としてはなんだか中途半端。各短編の間に斥力が働いているみたい。
 「崩壊の前日」というタイトルは、カルメン・マキ&OZの曲名からの拝借?

キーワードから探す
虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 2040件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(111)
アガサ・クリスティー(80)
西尾維新(73)
有栖川有栖(52)
森博嗣(50)
エラリイ・クイーン(49)
泡坂妻夫(43)
歌野晶午(29)
小林泰三(29)
島田荘司(26)