皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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虫暮部さん |
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| 平均点: 6.20点 | 書評数: 2075件 |
| No.535 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~- 三上延 | 2019/03/04 12:28 |
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| 必然性があって完結させたシリーズだけど結局捨てられなかったか、世知辛いなぁ、と思って読み始めたが、番外編としては上出来。 | |||
| No.534 | 7点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2019/03/04 12:26 |
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| 初めて読んだ時は10代前半。本書のおかげで patience という英単語を覚えた。
ドルリー・レーン達は、証人の立会いなしに監房で被告に実験を仕掛けて証拠をひとつ駄目にしているが、最終幕直前に某の証言を得る際も同じ失敗をしていないか。作中では誰も問題視していないけど。 第二の殺人、強請る相手を殺しちゃったら元も子もないだろうに。 サム元警視は何度も身分詐称している。 気になるので書いてしまいます。クリスティ再読さんの評の「医者ならば聴診器を使うはずだ」のくだりですが、現場の状況から“聴診器を使わなかった”と判断するのは困難。かといって“医者ならば脈で死亡確認はしないはず”という理屈はちょっと微妙。〝医者ならば聴診器を使わねばならない”と言う必然はなく、裏をかいて“医者があえて聴診器を使わない”という可能性もある。やはり最後の証言は必要だと思います。 |
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| No.533 | 7点 | 人外サーカス- 小林泰三 | 2019/02/01 12:02 |
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| 版元は“サバイバル・ミステリ”と謳っており、確かに伏線があり種明かしもあるが、そこまで謎解き要素が強いわけではない。殺し合いに関する工夫を楽しむ作品であり、能力が高い&なかなか死なないキャラクターだから色々と無茶な殺し方が出来て小林泰三の本領が遺憾なく発揮されている。しろがねもびっくり、徳さんの仕掛けた罠に拍手! | |||
| No.532 | 8点 | 幽霊刑事- 有栖川有栖 | 2019/01/29 12:02 |
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| ミステリの面白さとはちょっと違う気もするが、変化球ゆえに作者のミステリ以外の部分の良さが上手く出ているのでは。
早川が目隠しして口寄せすれば幽霊的な何者かの存在はほぼ証明出来る? ただ、証明したからそれで良しと言うものでもないしね。 |
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| No.531 | 8点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2019/01/24 11:23 |
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| 1932年、EQは『ギリシア棺の秘密』『エジプト十字架の秘密』『Xの悲劇』という、パズラーのスタイルを規定するような端正な傑作群を発表し、同時にそのスタイルがまさに“スタイル”であることを逆手に取ったような或る意味セルフパロディの如き本書も上梓。あたかも右手で穴を掘りながら左手で埋めるような自由自在な自己対象化スタンスは驚嘆に値する。実はエラリー・クイーンって二人いたんじゃないの?
第一幕第二場、“次は百合の花が凶器になるでしょうよ”って何。英語の慣用表現、それとも単なる意味無しジョーク? |
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| No.530 | 6点 | 東京零年- 赤川次郎 | 2019/01/22 12:41 |
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| 錯綜した状況が小出しに語られ、それらを慎重につなぎ合わせるも、最後までピースが全てぴったり嵌ったというあの感覚は訪れることが無く、しかしそのスッキリしない読後感こそがこの作品自体を象徴するものではないか。第50回吉川英治文学賞受賞作。 | |||
| No.529 | 7点 | 文字渦- 円城塔 | 2019/01/16 10:31 |
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| 鏡花水月 言語道断 驚天動地 仰天放置
品磊蟲聶 焱垚鑫淼 禍媧堝騧 呵呵大笑 融通無碍 字由字在 気字壮大 字宙遊泳 倚馬七紙 五里霧中 舌先三寸 炎上々等 |
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| No.528 | 6点 | 人間狩り- 犬塚理人 | 2019/01/11 13:16 |
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| 第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞。
古典的な命題と現代的な素材。突っ込みどころは色々あるが、1+1=3ぐらいにはなっている。しかし逆に言えば5とか10とかになるほど物凄い広がりは示していない。 Yは命を賭す必要が有ったのか? Mは事後工作を自白したが、実は自分でHを殺したという可能性も否定出来ないのでは? スナッフ・フィルムの撮影・流通は刑法上、何罪に該当するのか? 全体的に事態がスムーズに進み過ぎなのは、リアリティの退屈な部分を省いたってことでまぁいいか。 ところで、似た設定の先行作品が存在することを後日知った。“誉”の付く作家の“主”の付く作品。類似は一部分だけで、主題も方向性も違う。意図的な剽窃だとは思わないが、編集者が事前に知っていたら本書はボツだったんじゃないか。 |
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| No.527 | 6点 | 百億の昼と千億の夜- 光瀬龍 | 2019/01/04 10:38 |
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| “「神」を追い求めた日本SFの金字塔” との謳い文句、偽りではないが、そのポジションは(SFが発展途上だった)時代が多少有利に働いた結果だろう。第四章までは複数のプロローグが羅列されている感じでなかなか物語が走り出さない。後半のスケール感には目を瞠るが、既に判っている究極の答えを勿体振っている観もある。読みにくい文章、と言うほどではないが、グイグイ引っ張るには何かひとつ足りない。
但しそれらは作品がもともと孕む問題であり、“古い” とは感じなかった。 |
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| No.526 | 8点 | 無事に返してほしければ- 白河三兎 | 2018/12/25 10:29 |
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| 一章読み進むごとに“うわー凄いなー”と呟いている私がいた。いつまでも青春じゃいられない。白河三兎は順当に表現のフィールドを広げている。少々いびつな構成に見えるのは内容からして必然なのだろう。
ただ、最後の最後、もっときっちり書き切って欲しかった。説明し過ぎは粋じゃない、かもしれないが、ヘヴィな場面から逃げた、とも思えてしまう。 |
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| No.525 | 6点 | 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース- 島田荘司 | 2018/12/25 10:26 |
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| 単純なキャラクターばかり、なのはいつものことか。大傑作とは言えないまでも概ね面白かったが、プロローグの亡者の真相がアレというのはあんまりだ。
しりとりや“オセンベ焼けたかな”について地の文で解説しているのは、海外の読者を意識してのこと? さすがぁ! |
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| No.524 | 3点 | 臓器賭博- 両角長彦 | 2018/12/25 10:24 |
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| ギャンブルは運否天賦と言う側面が大きなキモであるが、フィクションの場合は結局作者の都合で勝負が進むんだよな~、なんて思ってしまう時点で私にギャンブル小説は向いていない、と今更気付いた。勿論それだけでは終わらない仕込みが為されてはいるが、さほど面白いトリックでもない。 | |||
| No.523 | 7点 | 探偵AIのリアル・ディープラーニング- 早坂吝 | 2018/12/20 12:13 |
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| ライトな怪作。安いと言えば安いのだろうが、展開が速くて退屈はしない。探偵がAIで試行錯誤を一瞬で済ませるからね。味わいに欠ける、通常のミステリの冗長な部分を回避している、どちらとも取れるその手の作品だと踏まえた上で、私は面白かった。EQネタもあり。 | |||
| No.522 | 8点 | 凜の弦音- 我孫子武丸 | 2018/12/19 11:22 |
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| グッジョブ!
名前の通り凜とした生真面目な少女の成長譚から、そもそも堅苦しい様式を孕む弓道を軸とすることで説教臭さを払拭。個のキャラクター性ではなく、各々の関係性で話の流れが紡がれるところも心憎い。ミステリ要素の無い話もあるが、それは青春小説としての筆がノッた結果ミステリは無くても成立しちゃったということではないか。盛り過ぎを控えてこれで充分、と肯定的に捉えたい。頑張れ中田君。 強いて言えば第三話はちょっとイヤだな。“こういう謎があるから解いてみろ”と言えば良いのであって、本気で騙しに行くことは無い。これさえ無ければ“皆中”なのに。 |
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| No.521 | 8点 | 外天楼- 石黒正数 | 2018/12/18 11:27 |
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| 桜場刑事が館&ダイイング・メッセージに挑む捜査録は何度読んでも爆笑してしまう。ラストシーンはあまりに切ない。自在に行き来する振幅こそ漫画の利点。判り易さって大事だねっ。
ところで“外天楼”って何だろう。造語? だったらなかなかセンスのあるゾクじゃないか。前例が無い文字列なのでネット検索すれば結果を本書が独占。かといって珍しい漢字を用いて目を引くでもなく、大きな辞書なら載っていそうな佇まい。とてもいいタイトルだと私は思う。 |
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| No.520 | 4点 | ドッペルゲンガーの銃- 倉知淳 | 2018/12/17 10:54 |
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| 猫丸先輩ものではほんわかとした雰囲気を醸し出す軽めの文体が、ここではあまり上手く機能していない。登場人物に深みが無いせいもあり、小説を読んだというより“説明を聞かされただけ”と言った読後感。トリックは悪くないので勿体無いが、ミステリとしての良し悪しだけでは評価しきれない気分である | |||
| No.519 | 6点 | Pの密室- 島田荘司 | 2018/12/17 10:53 |
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| 「鈴蘭事件」。とある知識を持っているから誰がどうだと言うのは論理的だとは思えない。かく言う私もこのネタは小学校の時に漫画で読んで知っていた。
「Pの密室」。この偽装工作、本人は冷静なつもりでも実際は混乱していてだんだん何の為に何をやっているのか判らなくなっちゃったんじゃないの? と言う気がした(それはそれで面白い)。 どちらもさほど高評価出来る謎ではないのだが、一方で紛れも無く島田ブシであって、ミステリとしての良し悪しだけでは評価しきれない気分である。 |
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| No.518 | 8点 | インド倶楽部の謎- 有栖川有栖 | 2018/12/10 11:24 |
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| 諸々の要素がバランス良く配された佳品。花蓮のまっすぐなキャラクターが良い。
気になったのは、探偵事務所のパソコンに壊されたものとそうでないものがある点。情報が共有されていないと犯人が信じる理由は無い。 そして動機。そうきたかと驚きつつ何か既視感がある。これって'90年代の長編『G***』の鏡像では? |
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| No.517 | 7点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2018/12/03 14:30 |
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| もう殺人は起こりません、とレーン氏が言ったけど、ウルグアイ領事館訪問より前だし、根拠は何も無いよね。また、死体が上手く潰れるかどうかは確実性に欠けるのでは。全体的にレーン氏のスタンスが中途半端でいたずらに事件を引き伸ばした印象を受ける。まぁ有名作が粗探しの対象になるのは宿命ってことで。 | |||
| No.516 | 7点 | 零號琴- 飛浩隆 | 2018/11/28 10:29 |
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| 際限なく広げた風呂敷で惑星規模の市街劇に美少女アニメを絡めどこまで飛んでいくかと思いきや、いつの間にか急降下していて剥いても剥いてもまだある裏設定、なにぶん600頁の大冊であるうえ読み易いとは言えない文体なので質量共に大な言霊をバリバリと齧り飲み下すのは快楽と消耗の併せ技、恐れ入谷の鬼子母神。ざっくり評すなら酉島伝法『皆勤の徒』を裏返してエンタテインメント度を高めたような印象、と言えなくもない。ふぇ~。
作者は小松左京~山田正紀~神林長平といったラインに連なる重要作家ながら寡作。雑誌掲載後改稿に7年費やしようやく書籍化。 |
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