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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1943件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1863 7点 #真相をお話しします- 結城真一郎 2024/12/13 12:34
 「惨者面談」。読み方を確認しなかったことが、結果的には手掛かりとなった――のだから、最後の一行、如何にも “ウィットの効いた終わり方” みたいな風だけど、実は狙いを外してない?
 「ヤリモク」。厳密を期すなら、あのファースト・ネームだけでは特定するに不充分。工夫の余地アリ。
 「三角奸計」。リモート飲み会を題材にした短編は以前読んだ記憶がある(作者は忘れた)。本作とどちらが先か判らないが、案の定、同じ機能をトリックに利用している。こういうのは早い者勝ちだね。
 うーむ、まぁ、どの短編もアイデアはしっかりしているし、良い意味で判り易いし達者、だけど癖が無くて今時としては普通じゃない?

 と思っていたら最後「#拡散希望」で驚心動魄。凄いな、大胆にも程がある。あ、考えてみたらコレも、いずれ誰かが書く、早い者勝ちの大ネタかも。

No.1862 7点 そして、よみがえる世界。- 西式豊 2024/12/13 12:34
 またか、仮想空間やらアバターやら。医療ネタとの組み合わせでそれなりに興味を引かれる。ミステリである前提で読み進むので、設定に対して “これはこういうトリックの為の伏線かな~” とかいちいち先回りしてしまう。
 しかし真相は、大まかにイメージしていたものより遥かに悪意的で残酷なものだった。それ故のカタルシスは確かにあった。

 読み終えて振り返ると、生命の重さにケースバイケースで差が付いている感じ。エリカが物凄く重視されている反面、院内での新たな死者や怪我人は “話の流れ上のひとコマ” みたい。それはそれでリアル?
 シリアル・キラーがまるで天災のように唐突に絡んで来て、唐突に(理屈は通っているが)フェイドアウト。フィクションとしては安易かなぁとも思う。それはそれでリアル?

No.1861 7点 推しの殺人- 遠藤かたる 2024/12/13 12:33
 題材が地下アイドルってことで気恥ずかしい、と言うのが最大の欠点。華やかに見えて舞台裏ではドロドロボロボロ、な設定はありきたり。でも覚悟を決めて読み始めてしまえば矢継ぎ早なアップダウンに乗せられて好きにならずにいられない。犯人(ホシ)はスターになれるのか!?

 ところで、この年の大賞&文庫グランプリは3冊とも、刊行に当たってタイトルがより判り易いものに改められている。ビジネスなんだなぁと感じた(悪い意味ではない)。
 でも “推し” はファンの立場から見た言い方でしょ。語り手の立場とは合っていない。安直にアイドル用語とミステリ用語を組み合わせただけじゃない?
 それとも実は、ファンが語り手から聞き書きした、と言う設定なのだろうか。確かに、ライターになりそうな人がチラッと登場するんだよね。

No.1860 7点 トッカン 徴収ロワイヤル- 高殿円 2024/12/13 12:33
 短編集であるおかげで案件が一つごとに完結していて読み易い。「人生オークション」のミステリ的反転が見事。
 一方、「対馬ロワイヤル」のブランド物売買にまつわる事柄は、どの件のどの部分がどういう理屈でルール違反になるのか、今一つ判らなかった。
 作品全体としてはミステリの看板を掲げているわけではなく中間小説だから、読者の経済感覚、と言うより常識度? が問われているのかも知れない。私は驚くべきポイントで反応出来ていないかも。

No.1859 6点 スイッチ 悪意の実験- 潮谷験 2024/12/13 12:32
 冒頭で示される興味深いアルバイト。でも要は心理ゲームとかでよくある思考実験だし、これだけで完結しているでしょ。小説になるの?
 と思っていたら意外な方向に接木を重ねて立派に成立させていた。題材から作品を立ち上げる手際が際立っている。

 ただ、パスワード探しのところで首を捻った。或る程度の目星を付けた上で、あとは総当たりチェック、と言うやり方。その場合、アトランダムではなく順番通りに試す方が絶対に効率的である。作者はフーダニットの手掛かりとして活用する為に(と言うか、判り易くし過ぎない為に?)敢えて不自然な行動を取らせているのか。これは戴けない。

No.1858 6点 ミステリ・トランスミッター 謎解きはメッセージの中に- 斜線堂有紀 2024/12/07 11:05
 この作者はミステリ専門と言うわけではなく、寧ろ意識的にアレコレ書き散らしている感がある。本短編集でもそれを反映してアイデア巧者っぷりを見せ付けるかのようだ。
 が、必ずしもそれが常に作品自体の良さに繫がっているわけではない。血汗涙の一代記に目を奪われトリックの仕込みポイントに驚かされた「ある女王の死」、グレイト!
 こんな謎解きで話を成立させちゃうとは(御竈門が猫丸先輩みたい)「ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会」、ナイス!
 あとの3編は、物語の良さがあるので仕掛けは無くても良かったくらい。第一印象に反して、作者のストーリーテラーっぷりを示す短編集かもしれない。

No.1857 7点 長靴をはいた犬 神性探偵・佐伯神一郎- 山田正紀 2024/12/06 12:02
 事件全体の構図は面白くも背筋がゾッとさせられる。
 その中心に位置する、“他者に対する無意識下での影響力” みたいな事柄は、先行作品後続作品色々思い当たるのであって、それだけでは弱い。しかし説得力強化の裏打ちがしっかり為されており、それも含めて “神性探偵” ならではの事件になっている点が強い。

No.1856 7点 マクマスターズ殺人者養成学校- ルパート・ホームズ 2024/12/06 12:01
 作者名を見て、そう言えばルパート・ホルムズ(Holmes)ってシンガー・ソングライターがいたなぁ、と思ったら御本人だった。
 タイトル通りの内容。楽しく危ういキャンパス・ライフ。必然的にわちゃわちゃ出て来るキャラクターも結構書き分けられていると思った。
 後半は実践編。学院の理念に則ると奇を衒った方法は不可なので、良い意味で普通の犯罪小説に発展。複数のケースが平行するのはまぁ良いが、細かく区切り過ぎで混乱するかも。ちょっと爽やかなオチもある、と言うところがブラック。
 時代設定がはっきり判らなかったが、あとがきに1950年代とあるのでそうなんだろう。ユーモラスな小ネタが色々効いていた(私が勘違いして何でもないところで笑っていたわけではない、と願う)。

 棚を漁ったら作者のレコードが1枚出て来たので聴き返した。おぉ、エイティーズAOR。

No.1855 6点 分身- フョードル・ドストエフスキー 2024/12/06 12:00
 タイトルは “ドッペルゲンガー” の謂。なので『二重人格』と訳すのはちょっと違うんじゃないか。
 作品解説に見られる “発狂しつつある主人公の幻覚” との解釈だと、周囲の人達の言動を説明するのに無理があると思う。事の成り行きが主人公の内面で完結は全然していないのだ。

 “主人公に不条理な出来事が降り掛かる。実は周囲の人が多数結託して主人公を騙す大掛かりな芝居を打っていた” と言うミステリ作品があるけれど、これもそのパターンではないだろうか。役所に於けるいじめと言うか追い出しと言うか。外部によって発狂させられている。御婦人からの手紙など、如何にも騙して笑い者にしようと言わんばかりのネタ。それはそれで都市型の人間心理?
 仮に、あくまで内面の問題だと解釈するなら、異様に広い範囲の幻覚であって、どの記述が客観的事実だか区別が付かない。冗長な文体と相俟って、“信頼出来ない作者” って感じだ。幻覚が頭から漏れ出して現実に影響を与えると言うSFなのかも知れない。突っ込みながら読もう。

No.1854 5点 忍鳥摩季の紳士的な推理- 穂波了 2024/12/06 11:59
 成程その手で来たか。色々工夫しているのは判る。「月夜のストップ」のハウ、「私と彼のタイムリープ」のホワイ等。
 犯行に都合が良いように超常現象が設定されている気はするが、それは言い始めたら切りが無いのでまぁいいや。それより、物語として愛せる何かがもう少し欲しかったところ。

No.1853 4点 死体で遊ぶな大人たち- 倉知淳 2024/12/06 11:58
短編×4、どれも物足りない。論理が粗い。
 特に「三人の戸惑う犯人候補者たち」。真相が人海戦術ではつまらない。すると注目すべきはホワイだが、“話を聞かれた” だけのことをフォローする為に死体そのものを見せるのは本末転倒では?
 他にも――×××の性質が想像に基づくものでしかない。回りくどい偽装工作を施す心情的裏付けが強引。棒2本程度を隠すのってそんなに大変か?
 最後の名前の件には笑ったが、それだけではねぇ。

No.1852 7点 デッドソルジャーズ・ライヴ- 山田正紀 2024/11/29 12:54
 山田正紀はこういう感じの連作長編を幾つか物しており、既視感は正直あるのだが、本作は “死” の定義を揺るがすガジェットと、レプタイルの存在によるエロティックなテイストが読みどころ。今時なら強引に特殊設定不条理ミステリ(笑)と呼べなくもない。ボブ・ディランから荻野目洋子まで、サントラ盤でも作りそうな勢いで引用している。え、ファンなの?

No.1851 7点 シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞- 高殿円 2024/11/29 12:53
 風雲急を告げる三巻目。
 “記憶の欠落” に当人が気付く場面って、概してわざとらしいと言うか、パターン通りの描き方をされるケースが多いと私は思うのだけれど、本作はそこが上手い。語り手が自らの混乱を把握するまで、読者も混乱を余儀なくされる感じが。
 しかもテーマは愛だぜ。ピンからキリまで数々のアンサーはどれもそこそこ頷けるから困る。これ、ホームズ・パスティーシュであることを逆手に取ってヘヴィな方へズブズブ踏み込んで行くな。ワトソン役にあんな過去とかアリか。ガールズの御気楽ワールドだと思っていたのがだんだん壊れ物注意! に感じられて来た。不穏な次巻予告付き(なのかな?)。

No.1850 7点 太陽の汗- 神林長平 2024/11/29 12:53
 翻訳機は正しく機能しているのか、通信機の向こうにいるのは本当にその人なのか。機械を介したコミュニケーションの盲点。
 でも、ハンドル・ネームやアヴァターの使用者がいつの間にか入れ替わっていた、みたいなミステリは近年良くあるよね。1985年発表のSFが、40年を経てミステリに熟成されたか。
 流石に結末はSFで、この曖昧さは良いのか悪いのか。肘を切ったり殴られたり、肉体性を思索の合い間に挿む人間的なところが若いな~。

No.1849 7点 キッド・ピストルズの妄想- 山口雅也 2024/11/29 12:52
 “内省的な生活を続けてきた者にとって、人生の最高の歓びは、感情を共有できる同胞を見出すことです。”

 まさにまさに。作者自身が実作に留まらずミステリの伝道みたいな活動をしているのも、そういう思いからだろうか。
 「神なき塔」の〈狂気の論理〉は牽強付会だと感じるが、他の二編の気持は判る。

No.1848 7点 ミノタウロス現象- 潮谷験 2024/11/29 12:52
 ポリティカル・パニックSF但しやや軽量級。市長の奮闘記も怪物を巡る陰謀も、いい塩梅に端正かつエモーショナルで一気読み。しかしこれだけ大きな “話の本筋” があると、殺人の件はほんの付け足しみたい。

No.1847 5点 少女には向かない完全犯罪- 方丈貴恵 2024/11/24 11:12
 多重解決の最後の最後は “意外な真相” と言うよりも “話を逸らした” 感じ。真犯人の属性&動機がアレなら、主人公みたいな立場の者がもう一人存在したってことであって、それは割と誰でも良くない? “あの儀式を受け継げるのは、あの人の○○であるその人だけ” と限定するのは論理的ではないと思う。
 
 そしてそれ以上に、音葉の言動が色々と鼻に付いて読みづらかった。作品全体の評価を下げるレヴェルで。少年時代の御手洗潔や真門浩平『バイバイ、サンタクロース』は普通に読めたから、“分不相応な子供” と言う点ではなく個のキャラクターの問題なのだろう。

 “柄” とか “赫子” とか、ネタの為みたいなネーミングは(わざと目立つようにやってるにしても)如何なものか。
 否、これは “姓名が人生を支配している” と言う或る種の運命論の反映で、作品世界を一つの箱庭として鎖す手段なのかも知れない。

No.1846 7点 少女モモのながい逃亡- 清水杜氏彦 2024/11/24 11:12
 悪い意味では全然なく、ジョージ・オーウェル『一九八四年』のカジュアルなリライトと言う感じ。まぁこの系統の話は多かれ少なかれそう感じてしまうのかな。
 貧しく、汚く、夢も希望も無く、弱い者が更に弱い者を叩く。初出が小説推理ってことでミステリ的反転を期待するも、殺人事件も叙述トリックも無し。バタバタ死ぬから殺人は事件じゃないんだね。日本語かとも疑わせる “モモ” と言うネーミングだが、伏線ではなかった。結局かにばらなかったけど(期待してたのに)、しかし残酷物語はリーダビリティが高いものだなぁ。

No.1845 8点 少女マクベス- 降田天 2024/11/24 11:11
 健闘はしているが “天才” を描写するのは難しい、とまず思った。演出家の仕事って部外者には判りにくいし。了の才能そのものよりも、周囲の人の褒め言葉によって彼女を浮かび上がらせている。苦肉の策。ではあるが最後、わたしたちみんなが間違えた、了を神にしてしまった、と言うところに繫がって来るのかも。ところで彼女は眼鏡っ子の筈だが作中の描写が足りないのでは。
 4章冒頭は演劇論に託けてのフェア・プレイ宣言? その自信に相応しく、伏線はしっかり回収され、少女達の仮面を残酷に裏返す様が過不足無く描かれている。情熱と表裏一体のドロドロに目頭が熱くなった。
 エントリー脚本の提出手順は不正を招きかねない方式でちょっとわざとらしい。

 それにしてもネタ元としてシェイクスピアは不滅。基礎教養としてきちんと読んでおくべきか。

No.1844 5点 少女地獄- 夢野久作 2024/11/24 11:11
 語り口が孕む妙な違和感には惹かれるものがあるけれど、結末がコレでいいの? と困惑すること頻り。ドストエフスキーを頑張って読んだ時の感覚と似ている。ミステリの文脈ではなくグロテスクな純文学だと思った方が、ここに封じられたものを感じ取り易かったかも知れない。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1943件
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