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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1953件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1233 5点 死が最後にやってくる- アガサ・クリスティー 2022/07/02 15:36
 もっと変な話を期待していたんだけどなぁ。

 その意味で “死者への歎願文” は素敵なガジェット。なのにその後の展開には絡まず勿体無い。
 使い慣れた駒に目新しい背景を切り貼りしたところ、ギャップが悪目立ちしてしまった。違和感は最後まで消えず、不器用だなぁと思った(褒めてない)。

No.1232 5点 深い失速- 戸川昌子 2022/07/02 15:31
 一体何が起こっているのか良く判らず。事件の表層が上手く描かれていないので、真相はそれなりに面白いのに説明的に感じた。心の不安定な人物が多々登場するが、モティヴェーションが不明のまま深入りして行く語り手が最右翼だったりして。

No.1231 5点 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱- 高殿円 2022/07/02 15:16
 “ホームズ・パスティーシュ” と言う要素に寄り掛かり過ぎ。いやしかし、パスティーシュはパスティーシュであること自体がコンセプトだから寧ろ正当なサーヴィス精神なのか? 手放しで称賛は出来ないが、愛は感じる。

No.1230 5点 涼宮ハルヒの動揺- 谷川流 2022/06/26 12:01
 推理ゲーム第二弾「猫はどこに行った?」。このトリック、類型がパッと思い浮かばない。何か元ネタ的なものがあるのだろうか? 語尾を伸ばさず “ミステリ” と表記しているあたり作者は実はマニアではとの疑惑が浮上。“ライトノベル的なチープなトリック” 縛りでアイデアを出すのは結構大変では。

 他の短編はどれも今一つ。

No.1229 7点 宇宙25時- 荒巻義雄 2022/06/26 11:59
 作者名を隠して“誰が書いた?”と問われたら私は迷わず山田正紀と答えてしまいそう。真似と言うことではなく、参照元が共通なんだろう。
 先行の文学作品を取り込んでいる部分があって、そういうやり方は好きではない。が、本作ではその効果も否定出来ない。それはたまたま私がそれを既読だったから。カフカ、カミュ、ドストエフスキーって、70年代後半のSF読者にとって、そんなに課題図書みたいに読まれていた存在だったのだろうか。

No.1228 9点 絶望ノート- 歌野晶午 2022/06/26 11:56
 面白過ぎて評しづらいな。ビデオのアップロードについては未消化な感じがある。刑事と探偵の会話が尻切れ蜻蛉なのも気になる。しかし、歌野晶午作品は概ね読んだが、私はこれが一番好き。

No.1227 7点 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵- 歌野晶午 2022/06/26 11:55
 ちゃんと探偵しているひとみが、しかも中学生なりの関わり方だから中途半端で、それ故 “謎の完全な解明を目指さないシリーズ” 。私は良いアイデアだと思う。
 「白+赤=シロ」の “隠し金庫” は、自宅で実践してみた。アレを更に捻ってああいう形で謎に組み込むとはなかなか凝っている。解明部分のカタルシスが凄い。

 小説に於いて、話し方が読者の認識に与える影響の大きさを改めて感じた。それだけに、“話し方と外見のギャップ” と言うキャラクター設定がここでは生きてないんじゃないか。漫画じゃないんだから。どうしても御嬢様&ボーイッシュのイメージから抜け出せなかった。

No.1226 4点 「新説邪馬台国の謎」殺人事件- 荒巻義雄 2022/06/26 11:52
 邪馬台国と殺人事件の謎を直接結び付ける荒業は良いが、他の部分はミステリとしての構造が雑に思える。
 荒巻義雄は、SF作品ではそれなりに雰囲気作りに貢献する文体なのに、ミステリ系は妙に通俗的。流行の伝奇ものでも書こうかな、だったらもうちょっと一般受けする文体に寄せた方がいいな、と言う心算がやり過ぎて戻せなくなった、って印象。

No.1225 8点 メルキオールの惨劇- 平山夢明 2022/06/20 11:53
 目の前には汚泥が積み上げられており、それを掻き分けて底に至ると、そこには輝きのようなものが見出される。明らかに宝石ではないけれど、或る種の美しさではある。何某かの感動を覚えたことは間違いない。但し、泥の量を鑑みると、割りに合うのか判断は難しい。
 平山夢明を読むことは、自らの耐性を測ると同時に、決して麻痺しきってはいないと確認する行為であるが、それ自体によって状態が悪化することもあり得るので注意が必要だ。

No.1224 8点 誰のための綾織- 飛鳥部勝則 2022/06/20 11:53
 ①事件の展開や少女達の投げ遣りな存在感は非常に読ませる。雰囲気を補完する細かな描写も上手い。蛭女の場面は三津田信三ばりの怖さ。
 ②しかし真相はどうもぱっとしない。言い訳がましい。捻って書かないと謎にならないか。メタネタはやめて、いっそ不条理なホラーにしてもいいくらい。

 両者を秤にかけて、本作では前者(ページ数としては八割以上だしね)を重視して高評価。

No.1223 6点 ただし、無音に限り- 織守きょうや 2022/06/20 11:52
 人死にを扱っていても優しいまなざしを感じるところが良い。ただし、霊関係のルールが未整理なので、ミステリだかホラーだかどっちつかず。

No.1222 5点 錬金術師の消失- 紺野天龍 2022/06/20 11:51
 ファンタジーだと、“何が出来て何が出来ないか” の線引きが曖昧なのである。文中で説明した範囲に収めないとアンフェアだろと思う反面、ファンタジーならではの飛躍したアイデアに期待もしてしまう。私は “水銀を操作して木の壁を自在に動かせる” と推測したが……。
 殺人事件の真相より、最終章で明かされる塔の存在意義、更にその後に示唆される設定が驚きでとても良かった。

No.1221 5点 猫派犬派殺人事件- 本岡類 2022/06/20 11:51
 警察の捜査がテキトーな感じ。これがユーモアってことだろうか。“罠の偽装” はなかなか見事なコロンブスの卵。しかし “何故こんな高価な肉を?” は謎のままだ。

 ネタバレするが、別解を思い付いた。元ピッチャーの死は事故または自殺。従って密室は問題ではない。部屋で発見された証拠品は、彼に罪を着せる為に、捜索に入った警察関係者が持ち込んだもの。そいつは逸早く真犯人の正体に気付き、金目当てで協力関係を結んでいた。どう?

No.1220 9点 方舟さくら丸- 安部公房 2022/06/14 12:10
 今一つ盛り上がらなかった『飢餓同盟』の雪辱戦か。おかしな仲間達の珍道中(嘘)は、昆虫屋とサクラのキャラクター/役割がきっちり分かれていない嫌いはあるが、異様に読み易く面白い。新潮社の〈純文学書下ろし特別作品〉として世に出たのに、安部公房作品中エンタテインメント性はトップクラス。キャリア30年を超えて、ついに何かに開眼した? 結末も『砂の女』より遥かに説得力あり。

No.1219 6点 さよならに反する現象- 乙一 2022/06/14 12:08
 愛読者の求めるものではあるが、代表作になる程ではない作品集か。余白の多い書籍の構成がマッチする作風は得だね。一番好きなのは「悠川さんは写りたい」。乙一らしい坦々とした変な話。でも読み返すと、伏線らしきものが不発? 意外におとなしいまま終わっちゃったか。
 元ネタがある2編は、どうなんだろう?“書ける” 人にこんな企画は必要は無いと思う。

No.1218 7点 不可視の網- 林譲治 2022/06/14 12:06
 流石は組織論SFの第一人者。デジタル時代を背景に警察組織や貧困層の群像劇を判り易く読ませてくれる。
 “あたしのために……殺ってくれたの! ありがとう” なんて台詞で情をほだされちゃって、私もちょろいな~。
 ただ、それなりのキャリアに見合わず、文章が雑。あっ、近未来の架空のシステムが物語の基盤にあるってことは、厳密にはSF?

No.1217 6点 掟上今日子の忍法帖- 西尾維新 2022/06/09 14:24
 忘却探偵ニューヨーク編。それ何語で喋ってるの? って突っ込みは野暮だが、会話のメタネタが際立つ。
 手裏剣のトリックは馬鹿みたいだが感心した、と言うかテクノロジー的には充分可能だよね。つまり “バカミスに見えてもOK!” な書き方の勝利?

No.1216 7点 ハッピーエンドにさよならを- 歌野晶午 2022/06/09 14:20
 「玉川上死」が傑作。後半は少々不自然だが、犯行自体がパーフェクトなので、どうやって種明かしをするか作者も困ったのではないか。加害者の捨て身っぷりに私はグッと来た。それを高く評価するのは、法月綸太郎の最高傑作を「身投げ女のブルース」だとする気持と共通のものかも。
 「 In the lap of the mother 」と言う題はクイーン(エラリーじゃないよ)の曲名「 In the lap of the gods 」に由来する。旧作にも幾つか同バンドのネタを使っているし間違いない。
 掌編も含め、粒は揃っていると思う。“殺人の時効成立” は過去の話になっちゃったねぇ。

No.1215 7点 たまさか人形堂物語- 津原泰水 2022/06/04 13:52
 ミステリと呼ぶには謎の輪郭が曖昧だし、きちんと着地もしていない。しかしそういう、ジャンル的に割り切れないところこそ、この作家の持ち味なのだと判って来た。人と人との間の湿り気が上手く文章化されていて、かと言ってべた付かないその程好さが良い。創元推理文庫版は書き下ろし短編を追加収録。

No.1214 6点 かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖- 宮内悠介 2022/06/04 13:51
 登場する明治の文人達については知識が乏しく、また特に最初の2話の謎が妙に観念的なせいもあって、どうも無理に背伸びしながら読んでいるような居心地の悪さを感じた。
 作者もそれを感じたのか3話目からは即物的なミステリに変化し、やはりこっちの方が良い。核がしっかりあれば文芸趣味も美味いスパイスなのである。でも作者の意図は逆(ミステリがスパイス)かな? 北原白秋は清家雪子『月に吠えらんねえ』の白さんのイメージそのままだ。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1953件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(107)
西尾維新(73)
アガサ・クリスティー(72)
有栖川有栖(51)
森博嗣(50)
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