皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ SF/ファンタジー ] 無限がいっぱい 異色作家短篇集 |
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ロバート・シェクリイ | 出版月: 1976年06月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
![]() 早川書房 1976年06月 |
![]() 早川書房 2006年05月 |
No.3 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/08/13 17:29 |
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シェクリイとフレドリック・ブラウンは「双璧」だったわけだけど、今でもそれなりに読者がいると思われるブラウンに対して、シェクリイは「忘れられた」作家に近い扱いだったりする。両者とも50年代のオールドスクールなSFで、雑誌全盛期らしい「雑誌うけ」しやすい作風というのはよくわかるんだけども...
いややはり、ブラウンという人の一種の「意地の悪さ」「リドルストーリー風」といったあたりが、作者個人の「独自の個性」になってたんだね。 シェクリイももちろん、いろいろと技巧を凝らして読者のゴキゲンをうかがうわけだが、なんというか「安全」なところがある。そこらへんがもう一つ食い足りない部分につながっているのかなあ。ある意味「SFじゃない」というか、SFガジェットが50年代のアメリカ人のありふれた属性を誇張して描く手段にしかなってないのが見えるところもあって、そこらへんに今の評者がシラけているかも。 要するにすごく寓意的なんだよね。そういう寓意性というかメッセージ性にモヤモヤした感情しか湧き起こらないというのは、同時代人ならそれを素直に面白がれたのにな、という残念さなのかもしれない。 異色作家というには、「微妙」感のある人かもしれない。いやマンガ的な楽しさはあるんだよ。でもさ漱石にかこつけて語られる「I Love You」は「月がとっても綺麗ですね」と訳せ!とした話って、「愛の語学」にネタにしてもらいたいな(苦笑) |
No.2 | 6点 | 虫暮部 | 2022/10/26 11:44 |
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早川書房の “異色作家短篇集” なるシリーズの一冊だが、これってそんなに “異色” かなぁ? SFの或るフィールドに於ける王道って感じだけど(初期の筒井康隆は “和製シェクリイ” と呼ばれていたらしい)。私の読書の傾向がそういうものだってことだろうか。
私は「ひる」「監視鳥」「先住民問題」が好き。起承転までは面白いのに結がピンと来ないものが幾つかあった。 |
No.1 | 6点 | ミステリーオタク | 2021/09/04 22:38 |
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フレドリック・ブラウンと並べられることが多いらしい、この作家の短編集を初めて入手してみた。
作品自体は押し並べて60年以上前のものだが、設定は全て今よりも大部未来のSF作品集。 原題は【Notions:Unlimited】だが表と裏の表紙には[tales of menace]とある。 《グレイのフラノを身につけて》 全編読み終わってみればブっとんだ設定のSFが多い中で、これは例外的に割と現実感がある、ロマンスを題材にしたアイロニー。 《ひる》 一転して非現実感がハンパないtale of menace。 《監視鳥》 今で言うところのAIのmenaceをちょっと、いや、かなり極端だが鮮明に描いている。 《風起る》 読んでて疲れる異星の物語。地球上の最強台風を遥かに凌駕するヴァイオレントウインド。 《一夜明けて》 ここは一体どこだ。 最後はパイオニアイズムと現実のギャップが皮肉っぽく書かれている。 《原住民の問題》 異星の開拓者達の話だが、(全編に共通したことではあるが)かなり強引な展開。特に解決編は。また最後の文明論っぽい話は難しいし、翻訳も相当苦労したものと思われる。 《給餌の時間》 6ページのショートショート。オチは大体読めるが、なぜそうなるのかが分からない。分かる方がいたら教えてください。 《パラダイス第2》 タイトルも含めて全編中、最もマニアックな作品だったように思う。 始めの方の「突然変異によって生じた細菌。これはもっぱら全住民に危害をくわえる目的で、実験室でつくりだされたものだ。この細菌の活動を制しきれなくなると、惑星ひとつ全滅するぐらい造作ないことなんだ」という一節も現在のmenaceを感じさせる。 《倍額保険》 タイムトラベル物。いろいろな時代でストーリーが繰り広げられるので映像化したら面白そう。 《乗船拒否》 人類の永遠の宿題の一つである、人種問題の話だが・・・捻りが面白い。 《暁の侵略者》 シンプルな宇宙進出ストーリーが、何か「鬼滅の刃」を思わせる展開になっていくが、最後は前作同様に「種の問題」がテーマに。 《愛の語学》 第1話以来のロマンス関連の話。これも概念性の強いシニカルな内容で、「どちらかと言えば」笑える。 恐らく原文はそこそこ古い英語である上に、翻訳も古い日本語が多いので少々読みづらいが、まぁ古き良きアメリカのSF短編集としてバラエティーに富んだシチュエーションを楽しむことができた。 |