皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1953件 |
No.1273 | 5点 | 情無連盟の殺人- 浅ノ宮遼 | 2022/09/01 12:21 |
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行動の動機に関する部分は設定が生かされており、思いがけない結論に膝を打った。
犯人当て部分は今一つ。ロジックとしては成立しているかもしれないが、説明されてもスカッとしなかった。 第五章。“そっくりな別のナイフだった可能性はないの?――非常に特徴的なデザインだから、見間違いようはない”。 コレは全然根拠になっていないよね。寧ろ、同じデザインのナイフが二本あったら混同した可能性はある、と言っているように思う。 |
No.1272 | 4点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2022/09/01 12:20 |
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前半の、一つの出来事が次の出来事に積み重なってゆく感じには、有栖川有栖の美点が生きている。しかしその先、“不可解な出来事が起こり、それが特定の相手に向けた芝居だった” と言う真相は、よほど巧みに組み立てないと説得力が生じないと思うし、私は好きではない。
イチャモン:自分の顔ってそんなに見慣れている? ラストで、そっくりさんに思いがけず会って、即座にそっくりだと自覚出来るかなぁ? |
No.1271 | 7点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2022/08/25 13:29 |
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悪ふざけもここに極まれり。でも無難なミステリよりは良し。好き。 |
No.1270 | 7点 | 宇宙消失- グレッグ・イーガン | 2022/08/25 13:28 |
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結末できちんと着地したようには思えないなぁ。まとめ方に困って卓袱台返し? そもそも物語と〈バブル〉の関わりのバランスが悪い。中盤へ読み進む頃にはそんな設定すっかり忘れていた。後半暴れるかと予想していた《子ら》も、いつの間にか居場所が無くなってたし。
中軸となる、語り手とその周辺の日常(と言うには剣呑な状況)が量子論的にエスカレートして行く様はスリリングなのに。中はしっとり、外は黒焦げ、って感じ。 |
No.1269 | 6点 | 俺ではない炎上- 浅倉秋成 | 2022/08/25 13:28 |
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良く出来てはいるけど、SNSにまつわる狂騒とかデジタル社会の怖さ云々と言った作品は、どれも同類項に思えてしまうんだよなぁ。題名からこの雰囲気の見当は付いたのに、つい手を出しちゃったなぁ。
と思いつつ幾分惰性で読み進めたら最後で驚いた。そっちに気を取られて手許が疎かになる、と言う意味では題材そのものがミスディレクションとして私に作用したようだ。 ところで、あの手紙で彼を山の中へ誘導するのは、確実性が低いよね。彼の手に届くか? 読むか? 数字の意味が通じるか? 信用するか? いずれも危うい描写があった。 |
No.1268 | 6点 | 猫は知っていた- 仁木悦子 | 2022/08/25 13:27 |
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過積載にならずにシンプルにミステリ道を貫けた幸せな時代の賜物?
全編を通じて楽観主義的な雰囲気が好感度高し。若干のぬるさを招いているのは御愛嬌(いや、実際にそういう大雑把さにリアリティがあったのか?)。そのくせ、犯人の告白に同情の余地が無いのには驚いた。 “部屋の位置” は良い伏線だが、それだけで犯人を示してしまうと言う意味では良くない。 “テープ・レコーダー” はカセットテープではなくオープンリールのことだね。 |
No.1267 | 4点 | 猟奇の果- 江戸川乱歩 | 2022/08/25 13:26 |
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“人間改造術” は、今読むと珍しくも恐ろしくもない。作者自ら “夢物語でよいのだ” と語る本作は、“寛政以前に飛行機を製作した岡山の表具師幸吉” そのものであり一種の予言の書?
しかし、前半は停滞気味、後半は辻褄合わせに終始。物語としての楽しめるポイントはちょっと見当たらないなぁ。 イチャモン:自分の顔ってそんなに見慣れている? スクリーンに一瞬間だけ映った顔を、自分そっくりだと自覚出来るかなぁ? |
No.1266 | 7点 | まほろ市の殺人 夏- 我孫子武丸 | 2022/08/18 13:21 |
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檻のような肉体と歪んだ心。今だとポリコレ的にまずいんじゃないの? でも書くべきだと思ったら書くべきだね。
疎いので良く判らないが、ちゃんと恋愛小説になっていると思う。それともディープな読者から見たら、こんなベタな口説き文句はなってない、のだろうか。 |
No.1265 | 6点 | 残星を抱く- 矢樹純 | 2022/08/18 13:20 |
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矢継ぎ早に事件が積み重なり、ページを繰る手が止まらない。どの件が主軸になるのか摑めず振り回される。主人公の行動が半端に思えてイライラしたのも、それだけ作品にのめり込んだからだ。
しかし。その達者な書き方が却って作品を “普通” に留めてしまった感もある。こういう形で読者を騙すことが、ありふれた手法になってしまった現在。贅沢だけど素直な感想。 もともと事件の関係者だった人物を、そうと知らずに主人公が引っ張り込んだ――御都合主義だと思う。でもそういう展開って結構エンタテインメントの “伝統” なのかなぁと最近思えて来た。 |
No.1264 | 6点 | ピカルディの薔薇- 津原泰水 | 2022/08/18 13:19 |
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綾辻行人の『深泥丘奇談』みたいなシリーズ。
淡々としつつも絡み付くような語り口の、怪しい与太話。“食” のエピソードにはそそられる。但し、主食になるような本ではない。エッセイの代わりにコレを、と言ったらどちらに対しても失礼かな? |
No.1263 | 5点 | 孤島の鬼- 江戸川乱歩 | 2022/08/18 13:18 |
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何より面妖かつ胸打たれたのは秀ちゃんの手記! 実は偽造だとか叙述トリックだとか、そんなしゃらくさい仕込み無しで素直に読めるのも良い。
注目すべきはやはりお父つぁんこと復讐鬼こと諸戸丈五郎。直接の出番は意外と少ないが存在感も求心力も抜群。過去の諸々を伝聞で処理するなんて勿体無い。あれだけの設定が背景にあるなら、“不具者製造工場潜入記” も書いて欲しかった。医学的に出鱈目だろうと、作者も読者も気にしないだろう。 と言う特記ポイント以外は今一つノリが良くない。最後までエンジンはかかり切らなかった。 |
No.1262 | 4点 | フェイバリット・シングス- 村崎友 | 2022/08/18 13:17 |
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精神が不安定な人の精神を、その人の一人称で活写(筒井康隆あたりがやる手だ)。三文作家を描く小説自体が三文小説であると言う捨て身のユーモア。それがどうにも萎んで見えてしまうのは、“広義のミステリである” との看板(各話のタイトルとか、表紙のホームズ・スタイルとか)の反作用ではないか。小説ではなく生活系ゆるふわギャグ漫画ならコレでも成立するかも。 |
No.1261 | 6点 | 夕暮れ密室- 村崎友 | 2022/08/09 12:29 |
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バレー部員のキャラクターを読み分け出来ない感じが多少あった。犯人特定のロジックはいいね。変則的な構成は、読者を変に勘繰らせる以上の意味があるのか。
因みに、20%の酸素が16%になるくらいで危険らしい。従って偶然他の気体が数%発生するだけで充分。 もう一つ。トリックと類似の実話、“気密性が高過ぎてああなっちゃった欠陥住宅” の記事を読んだことがある。“設定” と言うことでアリじゃないかと私は思う。 えっ、メタリ……時空を越えた伏線? |
No.1260 | 6点 | 櫻子さんの足下には死体が埋まっている Side Case Summer- 太田紫織 | 2022/08/09 12:28 |
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存在感のある脇役の多いシリーズだし、総じて有意義なサイド・ストーリー集。
でも蛇は苦手だ。知りたくもない知識が増えてしまった。 このシリーズは “ちょっといい話” よりも “悪意のある話” の方がいい。File.2 は、まっとうすぎるかな。あっ、櫻子さんが主役の座を追われたから “第壱骨” じゃなくなったんだ。 |
No.1259 | 6点 | まほろ市の殺人 春- 倉知淳 | 2022/08/09 12:25 |
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不謹慎ながら面白い情景のトリック。忘れかけていた冒頭のエピソードが最後につながるのは気が利いている。
ただ、この曖昧な真相は某長編と同系統だが、一人で何度も使っていい手じゃないと思うんだなぁ。 |
No.1258 | 5点 | パーカー・パイン登場- アガサ・クリスティー | 2022/08/09 12:24 |
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前半、お悩み相談編。ヴァリエーションに乏しい。これから色々搦め手を考えるんでしょ、ってところで投げ出しちゃったか。
後半、トラベル・ミステリ編。使い回しのプロットでも、探偵役を変えれば趣向も変わる。良くも悪くも。 差別化を考えるなら、前半をもっと発展させるべきだったか。後半の探偵譚で、パーカー・パインをどっちつかずのキャラクターにしてまでこのシリーズに組み込む必然性のある話は、辛うじて最終話くらい。 固有名詞の片仮名表記の基準には意見が多々あるだろう。「困りはてた婦人の事件」。ダンサーの名前 Juanita は “ジュアニータ” でなく “ファニータ” が良いのでは。スペイン系。翻訳は不便。 「ナイル河の殺人」。Death on the Nile だから、実はあの長編と同題だ。翻訳は便利。 |
No.1257 | 4点 | 鏡陥穽- 飛鳥部勝則 | 2022/08/09 12:23 |
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土呂ミネオのキャラクターは良い。でもあとはあまり面白くない。
鏡は無制限に魔を生み出す。その増殖を、作者の筆が制御し切れなかったと思う。このプロット、小林泰三なら上手く書けたかもね。 イチャモン:自分の顔ってそんなに見慣れている? 分身に会ったら、“えっ、自分はこんな顔?” って思うんじゃないかな。 |
No.1256 | 8点 | デッド・エンド- 山田正紀 | 2022/08/02 11:56 |
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山田正紀の宇宙SFしかも長編って実は珍しい。そしてJ・P・ホーガン『星を継ぐもの』あたりと同じ意味でのSFミステリである。スケールの大きなホワイダニット?
そこに主人公個人の、言ってしまえば卑小な絶望をぶつけて対比、とするには何か足りない気がする。ただ、この謎とその真相はとても好きで、つまり全面的高評価ではないけれど必要なポイントは確保されている。 |
No.1255 | 7点 | 堕天使拷問刑- 飛鳥部勝則 | 2022/08/02 11:53 |
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ちりばめられた衒学にストーリー展開にキャラクター、皆かなりの濃度で満足。真相には若干心許無い部分もあるが、どうにか物語を支えられたかとは思う。特に玲殺害事件についてはたまげた。
それだけに、メタ構造は本当に邪魔。ただでさえヘヴィなのだから、まとめは少しでも切れ味を良くしないと。 ところで主人公の経済状況って? 曲がりなりにも相続人で(未来の?)お金持ちじゃないの? どこの家が引き取るかで揉めてたのはどういうことか。 |
No.1254 | 7点 | ねなしぐさ 平賀源内の殺人- 乾緑郎 | 2022/08/02 11:52 |
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好きなんです、平賀源内――非常の人。元祖マルチ・タレント。江戸の風の中を飄々と流れた自由人。ミーハーなファンですけどね。
歴史ミステリとしては誠実な作りで、そんなぶっとんだ話ではない(が、源内晩年の汚名を晴らし快哉?)。一炊の夢の如き半生記は、イメージを覆す器用貧乏者の悲哀にしみじみしつつも、まぁありきたりではある。 つまり、良く出来てはいるが凡作。でもやっぱり贔屓しちゃうな~。 |