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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1966件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.21 4点 化石少女と七つの冒険- 麻耶雄嵩 2023/04/27 13:25
 何と言うか、やる気が感じられないんだよね。常時100%で書き続けられないのはまぁ判るが、力を抜いた軽めのものを意図して失敗している。無機的に書こうとして拗らせたような文体も、メルカトル鮎とか木更津悠也とかでは生きて来るんだけど、化石オタクの御嬢様女子高生を描くには不適格。照れてる場合じゃない。相沢沙呼を見習え!

 そんな中、鹿沼亜希子の存在感だけは、あっちの世界線から引っ張って来たような冷ややかな微熱で際立っていた。次巻は『化石少女 vs カメラ少女』にすれば?

No.20 7点 まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 2022/08/25 13:29
 悪ふざけもここに極まれり。でも無難なミステリよりは良し。好き。

No.19 6点 貴族探偵対女探偵- 麻耶雄嵩 2022/06/04 13:47
 ネタバレするけれども、「白きを見れば」 の殺人のきっかけになった行動は何故その状況で行われたのか? 容疑者は限定されるし、動機は周囲に知られている。
 それに “伝承に倣って死体を井戸に投げ込もうとした” のは何故? ロジカルに位置付け出来ていない。単にノリでやろうとしたとしか思えず、ちょっと説明不足だ。

揚げ足取り:「幣もとりあへず」の女将。“足音には敏感で、誰かが枕許まで来れば直ぐに気づく”。しかしコレは、気付かなかった場合、気付かなかったことを自覚出来ないから、証言を真に受けてはいけない。

 玉村依子。真面目にポリアモリーに邁進する御嬢様。いいなぁこのキャラクター。

No.18 7点 貴族探偵- 麻耶雄嵩 2022/05/15 11:54
 再読だが、内容をすっかり忘れていた。おかげで(特に「こうもり」を)丸々楽しめて嬉しかった。忘れっぽいのはステキなことです、そうじゃないですか。
 「加速度円舞曲」で、或る手掛かりに関する情報が犯人の口からもたらされている。嘘を吐いてバレたらアウトだから仕方ない。真相を踏まえて読み返すと、自ら首を絞めざるを得ない皮肉さがポイントの一つなのに、作者はサラッと書いちゃってるな~。

No.17 7点 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 2022/04/13 12:41
 本書の主人公達がこだわるような、“探偵” ではなく “名探偵” と言う概念は、日本語独特のものだろうか。単なる good とか famous とは違う感じだよね。中国語ならアリ? ガラパゴス的に拗らせて進化した “名探偵” と付き合えるのは日本語人の特権かも。
 「禁区」の手掛かりが秀逸だと思う。

No.16 5点 木製の王子- 麻耶雄嵩 2022/03/29 13:50
 素材を鑑みれば、もっともっと楽しめた筈なのに……アリバイ問題で消耗し過ぎたか。精緻な状況が存在する必要はあるけどその内容自体はどうでもいい、って困るよね。そこで読み疲れたら読者にとっても本末転倒だし。

 やっと気付いた。“舞奈桐璃” と言う名前は “MY納豆売り” って洒落なんだな。

No.15 8点 - 麻耶雄嵩 2022/02/03 13:45
 謎の為に世界を作っては壊す傲慢さが清々しい。

No.14 8点 夏と冬の奏鳴曲- 麻耶雄嵩 2022/01/05 14:33
 再読だが面白い。この長さをちゃんと読ませる力量には感服。殺伐気味なラヴコメとしてもOK。この手の密室トリック実は大好き。でも真相探しとか解釈とかは諦めた。

 新装改訂版で読んだが、気になる表記が20箇所くらいあったので版元にメール。何を改訂したのやら。最近すっかり校閲者気取りで新刊を読む私である。

No.13 7点 メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 2021/11/03 15:25
 突出した傑作は見当たらないものの、シリーズに期待されているものをきちんと引き受けた作品集。それはつまり、奇想を“いい塩梅”でまとめずに、行くところまで行くぜ、と言うことだ。
 
 伝聞の“~らしい”が頻出するのは気に障った。しかし、カギカッコの台詞なら嘘もあり得るが、地の文の“~らしい”は事実、ってことで情報の正確さを担保している?
「水曜日と金曜日が嫌い」は、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』で“四重奏団”があまり生かされていない、との私の不満に応えてくれたかのよう。で、アンソロジー本『7人の名探偵』での初出から“大鏡→大栗”と名前が変更されてるんだよね。元ネタがあまりにも通じなかったか。
 “イケメン”と“ハンサム”はどう違う? “ドリカム編成”なんて今も言うのだろうか(伏線かと疑ってしまった→男1人は不祥事で脱退してるじゃないですか)。題名を使った駄洒落はいらないと思う。

No.12 8点 - 麻耶雄嵩 2021/10/26 13:10
 魅力的な世界設定(変な宗教大好き)。“珂允”を始めとする突飛な命名が効いている。結末のぶん投げ方もまさに麻耶雄嵩。
 ただ、その“世界”の有様の描写にフーダニットが埋もれてしまった感はある。犯人の意外性とかロジックでも驚ければ最強だったのに。

No.11 7点 あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 2021/04/16 12:39
 初読時は刊行順だったので4冊目に読んだ麻耶雄嵩作品。麻耶らしくないな~と思った。
 最新作まで一通り読んでまた読み返すと、いやいやこれは非常に麻耶らしいじゃないかと正反対の印象になった。らしいと言うか、ダミーの真相を丸ごとああいう位置に配するのは某作も某作もそうじゃないか。大技を繰り返し使い過ぎじゃないですか?
 学園群像劇の体裁を取りつつ、中心の3人以外はノンプレイヤーキャラみたいで、しかしそんな割り切りが寧ろ作品の雰囲気を高めているあたりも麻耶らしい。

No.10 7点 メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 2020/08/27 13:54
 ミステリのスタイルやルールを“どのように”扱うか、と言うメタ的興味が麻耶雄嵩作品のキモであるが、核になる事件自体は割と正統的な(≒今読むとややしょぼい)フーダニットに思える。そのせいで“地味な短編に奇妙な味のエンディングが付いている”だけのように見えてしまうところがあって損だな~。やっていることを考えるともうちょっと感じるものがあってもいいところ。
 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」は非常にエクセレント。
 「ノスタルジア」の “A≠A´ (を呼び方と絡めるトリック)”は他の短編で再利用していて、使い方としてはそちらの方が思い切りが良い。その点がちょっと微妙。

No.9 3点 友達以上探偵未満- 麻耶雄嵩 2018/04/24 11:46
 この作者が“問題作”を期待されるのはもはや宿命なのである。“登場人物がごちゃごちゃしてミステリ的な軸になるアイデアがあまり生きていない”とか言う以前に、“何かフツーだな~”と感じる時点で麻耶雄嵩作品としては物足りないのである。今まで出来不出来の波はあれどその志がブレたことはなかった筈。どうしちゃったのか。“相生初唯”というネーミングが本書一番のヒット、だなんて言いたくないよ!

No.8 8点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 2017/05/24 14:45
 自爆覚悟のデビュー作って感じだ。とはいえ読み返してみると、記憶に残っている印象よりは随分スッキリしたミステリ。初読時よりロシア云々の知識が多少増えていたので結末は納得し易かった、か?
 『隻眼の少女』はいわば本作のオルタナティヴ版なんですね。

No.7 6点 - 麻耶雄嵩 2017/03/30 10:16
 イチャモンをつけるなら、これはあまり"螢”って感じじゃないな~。人物、館や楽団の名として繰り返し登場する語だが、作品世界を貫いて象徴するにはイメージがなんか違う。もっとぴったりはまったキーワードがあれば作品に凄みが出たのでは。

No.6 6点 あぶない叔父さん- 麻耶雄嵩 2015/10/07 10:50
 『化石少女』で味を占めたか……。

No.5 6点 化石少女- 麻耶雄嵩 2015/05/20 10:42
 私もこんな、生徒会役員がこぞって殺人を企てるような高校で青春を謳歌してみたかった。自分が被害者にならない限り。
 エピローグでの語り手のショックは上手く伝わってきたので、作者の意図は成功していると思う。
 難を言うなら、第六章で、隠滅されずに“痕が残っていた”のは恣意的なミスではないか。

No.4 7点 さよなら神様- 麻耶雄嵩 2014/12/02 19:03
 神様という設定があまり生きていないな~と思いながら読んでいたら、後半、“事件の因果関係が覆る”“神様を利用する犯人”というネタに驚かされた。これも計算のうち?
 ところで本書に限らないが、シリーズものの短編集でキャラクターの説明が1編ごとに繰り返されるのは邪魔。雑誌掲載時に必要だったのは判るけど。

No.3 5点 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 2014/10/14 12:22
 もし小学校4年生の私がこれを読んだら、ブラックな部分も含めて充分理解したうえで楽しめたはず。作者は、子供の為の本なんて子供は喜ばない、ということを良く判っていると思う。

 ところで、わざわざ英樹に服を着せ直す必要は無かったのでは。そのまま山奥に埋めて“行方不明”で良かったんじゃないの。

No.2 6点 メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 2011/08/10 18:34
 この作者はきっと “ミステリはなにゆえにミステリなのか” を熟考しながら執筆しているのだろう。それゆえ奇想の続出になるのは当然の成り行きなのだ。ただ、この短編集では作品そのものの面白さよりも作者のスタンスが勝っているきらいがある。というより “実験的本格シリーズ” と謳い文句にあるように、特にそういう傾向の短編を集めたのだろう。つまりこの本自体がまるごと、ミステリというジャンルに対する批評、である。それを受け入れる度量があるか、読者は問われているわけで、アンフェアだとか脱力系オチだとか言ってはいけないのである。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1966件
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