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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1495 6点 人喰いの時代- 山田正紀 2011/04/11 20:44
日中戦争の翳が見え隠れする昭和初期を時代背景にした連作ミステリ。設定された時代やメタフィクションを取り入れた最後の真相など、後の大作「ミステリ・オペラ」に通じるものを感じます。
作者のミステリ小説の第1作らしいのですが、本格ミステリを意識しすぎたきらいがあって、不可能トリックがチープで無理もあるように思います。この時代の世相を反映したホワイ・ダニットものの歴史ミステリとして充分面白いので、トリックに拘る必要はなかった。
各編のタイトルに付いた「人喰い」とは、この時代の国家そのものを表わしているのだろうか。

No.1494 5点 シカゴ・ブルース- フレドリック・ブラウン 2011/04/10 17:31
私立探偵エド・ハンター、シリーズの1作目。
本書のエドは18歳の見習印刷工という設定で、伯父のアンブローズの手を借り、シカゴの街を舞台に、父親の殺害犯を追うというストーリー。
当時はある程度評価されていた作品なのか、早川書房からも「わが街、シカゴ」のタイトルで邦訳が出ているようです。
謎解きミステリとしては平凡な内容という印象ですが、後にエドと共に探偵事務所を開くアム伯父と街の人々との交情や、エドの成長物語として読むのが正解かな。シリーズを通して読まないとよさが分からないのかもしれない。

No.1493 3点 不確定性原理殺人事件- 相村英輔 2011/04/09 18:13
昭和40年代を時代背景にしたミステリとはいえ、文章までもいやに古臭く昭和テイストが充満しておりました。
密室トリックを扱うなら人里離れたお屋敷とか、もう少し華のある設定にすればいいのに、場末のアパートでは読む気が失せてしまう。おまけに、何かの教科書から持ってきてとってつけたような哲学問答の蘊蓄は勘弁してほしい。
解法にロジカルなところもあるけれど、それ以前に小説として読ませる魅力に欠けるように思う。

No.1492 5点 スネーク・ダンサー- ジェイムズ・マクルーア 2011/04/08 17:56
強盗殺人事件が連続して発生する中、ニシキヘビを使うステージ・ダンサーの変死体が発見され、クレイマー警部補は両方の事件を掛け持ちすることになるが、というのがあらすじです。

南アを舞台にした警察小説・クレイマー警部補シリーズを読むのも本書で3冊目ですが、これはちょっと出来が落ちる印象。
ひとつには、各場面の状況描写が分かりずらいこと。翻訳の問題というより、原文がそのように書かれているのだと思う。
さらに、これまでの作品では、南ア独特の社会体制を事件の背景やミスディレクションにするなど、なんらかの形で活かされていたが、本書はそういう趣向がみられなかった。
連続強盗の動機にヒネリがあるものの、これもある程度予想できるでしょう。

No.1491 6点 みんなのふこう- 若竹七海 2011/04/07 18:50
コージー・ミステリでお馴染みの湘南・葉崎を舞台にしたスラップスティック小説で、これは面白かった。小説を読みながら声に出して笑ったのは久しぶりの様な気がする。

不幸を絵にかいたような天然少女「ココロちゃん」が引き起こす数々の騒動。悲惨なエピソードの連続は笑っちゃいけないのだろうけど、これが笑える。笑いの中にホロリとさせる場面もあって匙加減もいいと思う。
ミステリ要素が薄く、持ち味の毒気も抜けた若竹七海ながら、こういうのも息抜きにいいのでは。

No.1490 5点 3、1、2とノックせよ- フレドリック・ブラウン 2011/04/06 18:38
SFもミステリも手掛けたフレドリック・ブラウンですが、どちらかというと短編を得意としていたようで、長編ミステリはあまり楽しめた覚えがない。
本書は、主人公のダメ男が金策に奔走し徐々に追いこまられていく過程の描写が延々と続き、読んでいて萎えて来る。クライマックスの連続強姦魔との絡みは、あらすじ紹介であらかた分かっているだけに、前半部が少々退屈だった。
軽妙なオチは悪くないが、短編でも充分書ける内容だと思う。

No.1489 5点 深泥丘奇談・続- 綾辻行人 2011/04/05 18:29
京都の架空の街を舞台背景に、ミステリ作家の「私」が体現する幻想怪奇譚、シリーズ連作短編集の2作目。
深泥丘病院の医師や看護師が絡む前作同様のまったりした不思議な物語もありますが、今回は、本格ミステリ的なガシェット(ダイイング・メッセージ、見立て殺人、ミッシング・リンクなど)を使ったナンセンス小説の趣が強い作品が目立った。
なかでも、バカミスとホラーのハイブリッドのような「ソウ」が、脱力系怪奇小説としてイチオシです。

No.1488 8点 ウォッチャーズ- ディーン・クーンツ 2011/04/04 18:08
これは一般受けする方のクーンツ。
正体不明の邪悪なものに追われる主人公たち、という作者の作品でよく見受けられる構図ですが、知性を持つ犬ゴールデン・レトリバー・”アインシュタイン”が実に魅力的で、犬好きならずとも物語に引き込まれる。
対照的な存在である”アウトサイダー”の悲哀も印象的でした。

謎解きサスペンスにロマンス、そして犬と人間との交情など、エンタメ性抜群のクーンツの代表作といっていい作品。

No.1487 6点 放課後探偵団- アンソロジー(出版社編) 2011/04/03 18:34
東京創元社のお抱え新進作家5人による学園ミステリ・アンソロジー。
評判の梓崎優を目当てに読んでみましたが、他の作家さんも予想以上に頑張っていて、これは拾いものの作品集でした。

似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」は、葉山君と伊神先輩シリーズ。発送した宅配箱の中身が入れ替った謎の不可能性が強烈で真相も鮮やか。この作家は出す毎にクオリティが上がっている気がする。

相沢沙呼もシリーズ探偵の女子高生マジシャンもの。バレンタイン・チョコ大量盗難事件のホワイがユニークです。
初めて接する鵜林信也、市井豊両氏の作品を含め、4作品に共通するのは、事件自体は日常の謎系の軽めなのに対して、解法が緻密で非常にロジカルなところでしょうか。

最後の、梓崎優「スプリング・ハズ・カム」は、いかにも作者らしい大仕掛けが炸裂していて編中の個人的ベスト作品ですが、昨年読んだ乾くるみの某作とネタが被り気味なのがちょっと気になった。

No.1486 7点 冷戦交換ゲーム- ロス・トーマス 2011/04/02 18:20
まだ「マックの店」が西ドイツのボンにあった60年代の東西冷戦時代を背景にしたスパイ冒険小説。パディロ&マコークル・シリーズの第1作で、作者のデビュー作です。
本筋は、米国の亡命数学者たちを東ベルリンから脱出させるというエスピオナージュではあるものの、謀略冒険ものの面白さと同時に、主役コンビの友情、ハードボイルド的な軽口のやり取りが印象に残る作品。いまどき流行らないジャンルかもしれませんが、嗜好のど真ん中で当時はけっこう嵌りました。

(補足追記)
「マックの店」というのは、マコークルが経営するカフェ・バーの名前です。決してハンバーガー店のことではありません(笑)。

No.1485 6点 恐ろしき四月馬鹿- 横溝正史 2011/04/01 19:04
最初期のミステリ短編集(角川文庫版)。
単行本で出た「恐ろしき四月馬鹿」を文庫化に際して2巻に分かち、1巻目の本書には大正期に発表された14編が収録されています。(もう一冊の「山名耕作の不思議な生活」には昭和初期の作品を収録)。
表題作は、大正10年(1921年)に「新青年」の懸賞に応募・入選した作者のデビュー作品で、短編というより掌編小説に近い枚数ながら、洒落たドンデン返しの好編です。エイプリル・フールは戦後のお遊びかと思っていたら、大正時代から一般化していたとは知らなかった。
ほかに、本邦初と言われる色盲トリック(赤緑色盲に関し事実誤認がある)を使った「深紅の秘密」など、総じてユーモアとペーソスを基調とした軽妙な作品が多い。

No.1484 6点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2011/03/31 18:28
戯曲版は初読。傑作ミステリ劇としてあまりにも有名なため、このプロット&トリックに新鮮なサプライズを味わえなかったのは残念ですが、よく出来た法廷ミステリには違いありません。
ただ、古典ミステリで頻繁に使われる変装トリックが好きでないのと、アレが簡単に証拠採用される点に若干違和感を感じたのでこの採点です。

No.1483 4点 小樽・カムイの鎮魂歌- 鯨統一郎 2011/03/30 18:54
作家・六波羅一輝の推理シリーズ第4弾。
日本各地の伝説に絡めた(この作者にしては)まともな本格ミステリシリーズですが、アイヌの秘宝や義経北行伝説については、まったくの付けたし。看板に偽りありで、ごく平凡なトラベル・ミステリでした。探偵役が北海道まで飛んで事件に関わる経緯を考えると、この真相は納得いきません。

No.1482 6点 日本で別れた女- リチャード・ニーリィ 2011/03/29 18:41
叙述の技巧を駆使し、サプライズ・エンディングを用意したミステリにとことん拘った作者の作品のなかでは、「心ひき裂かれて」と並ぶトリッキィな作品だと思います。折原一の諸作を髣髴させるものがあります。
序盤に挿入された、終戦直後の日本を舞台にした”私小説”が巧妙なミスディレクションになっており、ダミーの真相に続くどんでん返しと、余韻を残すラストの処理も絶妙。
別題を付けるとしたら、「ジャパネスク症候群」がピッタリでしょう。

No.1481 6点 メビウスの殺人- 我孫子武丸 2011/03/28 18:03
速水三兄弟妹シリーズの3作目を再読。
ミッシングリンクの真相はゲームに関するものと察せられるが、「し●と●」と「●●並べ」というのには脱力。
シリアルキラーの名前・椎名俊夫を最初から明示しているところは、バカミス版「殺戮にいたる病」という感じでしょうか。

No.1480 6点 土曜を逃げろ- チャールズ・ウィリアムズ(米国) 2011/03/27 10:17
鴨撃ち場での殺人事件で保安官から事情聴取され、帰宅すると今度は妻の死体を発見し容疑者になってしまう「私」。
小品の作品ではありますが、60年代に書かれたものとしては登場人物の造形がしっかりしており、展開もスピーディで楽しめた。
「私」の秘書バーバラの機転の利いた行動が読みどころかなと思いますが、そのぶん、主人公一人の逃亡サスペンスという味わいを減じている感じもする。

No.1479 5点 夏油温泉殺人事件- 中町信 2011/03/27 09:49
推理小説作家・氏家周一郎シリーズ(旧題「不倫の代償」)。
温泉旅行中のマイクロバス転落事故の最中の殺人事件を、妻の早苗とともに真相究明に乗り出すが・・・・。温泉旅行に目撃者の記憶喪失、連続殺人にダイイングメッセージという例によって大いなるワンパターンです。
プロローグにある、関係者の独白が頭に残っていると逆に騙されます。

No.1478 5点 俺はレッド・ダイアモンド- マーク・ショア 2011/03/25 17:38
パルプマガジンの蒐集が趣味で唯一の生甲斐であるタクシー運転手サイモン。女房にその蔵書をすべて処分されたことで、人格に異変が起こり、ブラック・マスク誌の架空のハードボイルド探偵になりきってしまうというストーリー。
リュウ・アーチャーやサム・スペードが活躍する同じ世界で、B級ハードボイルドを展開していますが、ハチャメチャなドタバタ・ハードボイルドだと思っていたのに、内容自体は意外とまともなタフガイもので、やや拍子抜けの感があった。

No.1477 5点 0の殺人- 我孫子武丸 2011/03/25 17:38
速水三兄弟妹シリーズの2作目を再読。
結構凝ったアイデアの仕掛けがある作品なのに、まったく内容を憶えていなかった。こういう真相は半分肩透かしと感じてしまうからかもしれない。
タイトルを素直に読めば真相そのものズバリですが、前作「8の殺人」の存在がミスディレクションになっているように思う。

No.1476 6点 巨匠を笑え- ジョン・L・ブリーン 2011/03/24 18:23
パロディ・ミステリ短編集。原書から日本で馴染みのない作家の2編を除いて、20編収録されています。

個人的ベストは、アシモフ風「白い出戻り男の会」。”黒後家蜘蛛の会”をパロるとともに、ロボット工学三原則の裏をつくトリックまで設定していて一応本格ミステリになっている。

他には、独特の美文調と街を擬人化した文章のエド・マクベイン風「混みあった街」と、数行ごとに出て来るしゃれた比喩表現と複雑な家族関係を描いたロス・マク風「魔の角氷」の2編は、その文体模写ぶりを笑え。
ディック・フランシス風の「重傷」はタイトルを笑え。
ディクスン・カー風「甲高い囁きの館」は、密室トリックのバカミスぶりを笑え。

その他の、クイーン、クリスティ、ハメット、エドワード・ホック等はいまいち笑えなかった。翻訳は三人の訳者で分担していますが、翻訳ミステリのパロディの良否は、どうしても翻訳者の技量に左右されるようだ。

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