海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1575 4点 シンフォニック・ロスト- 千澤のり子 2011/08/23 17:43
中学校の吹奏楽部内の”連続殺人”を扱った青春恋愛ミステリ。
第1章、第2章と読み進めていくうちに、何か違和感のようなものがあるので、そっち系のミステリということは気付いたが、仕掛けの全容は最後まで読んでも分からず(笑)、ネタバレ書評を見てやっと理解できました。
2種類のアレを組み合わせたところにユニークさがあるのかもしれませんが、ネタ的に二番煎じ感は否めず、再読して作者の技巧を確認する気にはなりませんでした。

No.1574 6点 夜明けのパトロール- ドン・ウィンズロウ 2011/08/20 23:11
私立探偵ブーンと5人のサーファー仲間”ドーン・パトロール”シリーズの第1作。
舞台であるカリフォルニア最南端の街サンディエゴの情景描写とサーファー仲間のプロフィール紹介を織り交ぜながら、いつもながらの軽妙でテンポのいい語り口で途中までは楽しめたのですが、中盤以降のストーリーが重苦しい内容になって戸惑ってしまった。かってに「ボビーZ」風のポップなものを想定していたせいかもしれませんが。
まあ、”ドーン・パトロール”はいずれも個性豊かな面々がそろっているので、群像劇としても次作以降期待できそうかな。

No.1573 8点 ジェノサイド- 高野和明 2011/08/17 13:42
地球規模で展開される骨太の冒険サスペンス。
アフリカの密林での戦闘アクション、創薬化学とタイムリミット・サスペンス、ホワイトハウスが関わる陰謀もの、”無限に発達した道徳意識を持つ”未知の生物など、詰め込み過ぎとも思える様々な要素が徐々に収斂していく構成力が秀でていて、評判どおりの圧倒的な面白さで堪能しました。
織り込まれているメッセージはやや陳腐かもしれないが、学生時代に嵌った「神狩り」シリーズや小松左京「復活の日」などの初期作に通じる懐かしさも感じさせてくれた。

No.1572 6点 不肖の息子- ロバート・バーナード 2011/08/13 18:10
作家の死を契機にして、残された家族・関係者の人間心理の綾をシニカルに描きだす作品をいくつか書いているバーナード。
本書も、ベストセラー推理作家の毒殺死による残された三人の子供たちの葛藤を描き、なぜ嫌っていた放蕩息子の長男にだけ遺産の大半を譲る遺言状を残したのかという謎から、オリヴァー卿の本当の人となりが浮き彫りになってくるところが面白い。
個性的な事件関係者とは対照的に、探偵役のメレディス警部があまり目立たないので全体的に地味な印象ですが、オーソドックスな現代本格派ミステリとして水準はクリアしているのでは。

No.1571 5点 翼のある依頼人- 柄刀一 2011/08/11 18:01
シャーロッキアン(ホームズ愛好家)仲間の集団探偵もの、「マスグレイヴ館の島」に続くシリーズ第2弾。
あとがきによると”ティータイム・ミステリ”を目指したとのことですが、文章が硬質なうえにユーモア感覚に欠けるので、作者の狙いは成功しているとは言い難い。各編に破天荒な不可能トリックを入れているのも(作者の真骨頂とはいえ)このタイプの雰囲気に合わない気がする。
表題作「翼のある依頼人」が唯一不可能トリックではなく、人真似をするインコの言葉から隠れた犯罪を暴いていくという「九マイルは遠すぎる」を思わせる構成でまあ楽しめた。

No.1570 6点 すべては死にゆく- ローレンス・ブロック 2011/08/10 18:10
もとアル中の私立探偵、マット・スカダーシリーズの16作目。
”もとアル中探偵”という呼称の「もと」はアル中に係るのだけれど、スカダーとエレインの穏やかな会話と醸し出す雰囲気は隠居した私立探偵を思わせる。
本書のメインプロットは、前作「死への祈り」の続編で、殺人鬼がスカダーに復讐を企てる物語。しかし、これまでのシリーズで重要な役割を果たした懐かしい人物たちへの言及が何度も挿入されている構成のほうが気になった。今年になって次作の出版が予定されていると知って安心したが、これは最終作ともとれる内容だった。
30年近く読み継いできた思い入れのあるシリーズなので、出来るだけ長く続けてもらいたいものだ。

No.1569 5点 謀殺のチェス・ゲーム- 山田正紀 2011/08/09 11:45
初期の冒険アクション小説。自衛隊の新型対潜哨戒機の強奪計画を巡って、北海道・奥尻島から最後は沖縄・宮古群島に至るまでの日本列島を縦断しながらの頭脳戦、肉弾戦、銃撃戦が楽しめる。
ただ、新戦略専門家というわりに両陣営の指令役が口ほどのものでなく、結局は偶然を多用したご都合主義的な展開になってしまいしらけるところがあった。

No.1568 6点 夜の熱気の中で- チェスター・ハイムズ 2011/08/07 12:38
ハーレムの黒人刑事コンビ、棺桶エド&墓掘りジョーンズ・シリーズの第7弾。
今回も、あるブツを巡って個性的で怪しげな人物たちが争奪戦を繰り広げるというパターン化したプロットながら、騒動で続出する死者が総勢12名というのはシリーズ一番の過激さです。
”墓掘り死す”のラジオのニュースを聴いてからの棺桶の暴走ぶりも迫力満点でしょう。ツッコミどころも多々ありますが、最後は珍しくミステリ的な仕掛けもあり楽しめました。

No.1567 7点 生霊の如き重るもの- 三津田信三 2011/08/04 18:57
刀城言耶シリーズ、大学生時代の事件簿を収めた中短編集。作中に”「新青年」で連載が始まった「八つ墓村」”という記載があるので、時代設定は昭和24年前後と思われます。

表題作「生霊の如き~」は、生霊=ドッペルゲンガー・ネタで、ヘレン・マクロイの作品にも言及しているが、本物の後継ぎはどっちかというプロットや人物配置など、モロに「犬神家の一族」へのオマージュ作。恒例の一人多重解決がよく練られている。
その他の作品もどれも面白かった。足跡のない殺人、密室状況からの人間消失などの謎解き部分と、最後に立ち現われるホラー部分が絶妙の融合を見せており、総体的に第1短編集より出来がいい様に思う。

No.1566 6点 犯行現場へ急げ- アンソロジー(海外編集者) 2011/08/03 17:51
アメリカ探偵作家クラブ会員によるテーマ別年刊アンソロジーの第4弾。
警察小説というより警官を主人公にした様々なタイプのミステリを集めた作品集という感じ。編者は、「夜の熱気の中で」など黒人刑事ヴァージル・ティッブスの生みの親として知られるジョン・ボール。

印象に残った作品を羅列すると、
コーネル・ウールリッチ「夜間航路の殺人」は、新婚旅行中の若手刑事が貨客船上で殺人事件に遭遇する話。夫にほったらかしにされた新妻の最後のセリフが洒落ていて楽しい。
ロバート・L・フィッシュ「クランシーと飛込み自殺者」は、クランシー警部補の初登場作品。主人公のキャラクターが魅力的な正統警察小説の佳品で、シリーズで読みたくなった。
プロンジーニがウォールマンと合作した「見えない男」が個人的ベスト。密室殺人もので、タイトルからチェスタトンを想起させるが、”見えない人”は犯人ではなく、●●役だったというのが秀逸なところ。
エドワード・D・ホックのレオポルド警部もの「深夜の誘拐」は、長編むきの複雑なプロットながら、ラストの構図の反転はなかなかのものだった。

No.1565 5点 サヴァイヴ- 近藤史恵 2011/08/01 23:28
自転車ロードレースを題材にした短編集。
”集団スポーツでありながら脚光を浴びるのはエースの選手のみ”という、自転車ロードレース・チームの特殊性から派生する人間関係の軋轢や葛藤を描くことに力点が置かれており、ミステリ要素は少なめでした。
前2作の主役格である白石や伊庭の物語より、監督補佐の赤城視点の連作がよかったが、連作短編集として見た場合、それらの作品と接点がなくまとまりに欠ける印象。

No.1564 5点 四十面相クリークの事件簿- トマス・W・ハンシュー 2011/08/01 00:00
元怪盗が改心して名探偵になり、ロンドン警視庁が持ち込む事件を次々と解決してゆく連作長編。論創社の”ホームズのライヴァルたち”シリーズの1冊。
不可能犯罪がテンコ盛りという前評判だったが、その真相は現在ではいずれも残念レベルというしかありません。それでも有名な「ライオンの微笑み」事件が読めたので良しとしよう。
エピローグで明かされるクリークの正体をはじめとして、全体的に大時代の冒険+ロマンス小説の色彩が濃く、そういったミステリだと思って読めば楽しめるかも。

No.1563 6点 ロマンス- 柳広司 2011/07/28 21:50
昭和初期の華族社会を背景に、男女三人が織りなす人間模様に殺人が絡むミステリ。
ロシア人の血が混ざる子爵という主人公・清彬の、この時代に対する閉塞感や、史実を織り交ぜた赤化華族、新華族の生態などが興味ぶかく読ませます。そして、200ページ過ぎの衝撃的な一行。海外ミステリではありえても日本ではタブーといえるテーマに踏み込むのかとドキリとさせましたが・・・・。最後は結局はそういう類いのミステリを避けてしまった。
結末はやや平凡で、傑作になりそこなった佳作という感じがする。

No.1562 6点 思考機械の事件簿Ⅲ- ジャック・フットレル 2011/07/26 18:25
本書の目玉作品は、思考機械シリーズの実質的な第1作で唯一の長編(といっても文庫で160ページほどで、長めの中編といったほうが正しい)「金の皿盗難事件」でしょう。ただ、内容のほうは、前時代的なロマンス小説の様相で、発端の不可思議な謎で読者を引き込む後の短編群と比べると本格ミステリとしては見劣りする出来でした。
残る6編の短編のなかでは、「緑の目の怪物」がタイトルからイメージする内容と違って、思考機械が”日常の謎”を解く異色作で印象に残った。動機が驚くほど現代的。

解説によると、シリーズ未訳作品はまだ15作もあるらしい。北大西洋に原稿が沈んだ6編はどうしようもないけれど、残りの作品をどこかで出版しないものだろうか。タイタニック号の海難事故が1912年だから、来年はちょうどフットレル没後100周年にあたるし。

No.1561 6点 貸しボート十三号- 横溝正史 2011/07/24 16:32
金田一耕助シリーズの中編3作収録。
「湖泥」は、岡山県の僻村が舞台で二つの旧家の対立を背景にするなど、氏の中短編ではむしろ珍しい”横溝ワールド”ど真ん中の作品。解説で犯人当てとして書かれたというだけあって、終盤の義眼を巡る論理展開がなかなか秀逸。
東京が舞台となる表題作と「堕ちたる天女」は通俗的な印象が否めないが、前者の、異様な死体工作と爽やかで意外性のある真相とのギャップが面白かった。後者では、磯川警部と等々力警部の初対面というファンサービスもある。

No.1560 5点 敗者ばかりの日- アンソロジー(海外編集者) 2011/07/22 22:30
競馬ミステリのアンソロジー。
装丁といいディック・フランシスを目玉とした作品集で、その表題作「敗者ばかりの日」は、競馬場での銀行強盗捕物劇のすえのオチは面白いけれど、ちょっと期待した作風とは違った。
ラストの捻り具合でいえば、デイモン・ラニアン「賭け屋ボブの誘拐」のほうがいい。何度も同じフレーズを使う独特の文章はテンポがよく、しかもそれがオチの伏線になっているのが巧妙だ。
あと、エラリー・クイーン、アプルビイ、フォーチュン氏、サイモン・テンプラーなど、お馴染みのシリーズキャラクターが登場するが、出来はいずれもイマイチだった。

No.1559 5点 さよならドビュッシー- 中山七里 2011/07/20 20:34
火傷でハンデを負った女子高生が、天才音大講師の特訓を経てピアノコンクールの最終選考に臨むというスポ根的「シンデレラ」ストーリー、をミスディレクションにしたミステリ。
正直なところ、クラシック音楽の素養が全くないので、この部分は退屈に感じてしまった。お話も類型的。
肝心のミステリ部分は、第1章最後の叙述の技巧など面白いのだけど、火傷と莫大な遺産の相続人になる女性という設定が某フランス・ミステリそのまんまなので、序盤で仕掛けが分かってしまった。

No.1558 6点 思考機械の事件簿Ⅱ- ジャック・フットレル 2011/07/15 18:09
”思考機械”ことヴァン・ドゥーゼン教授シリーズの第2短編集。
印象に残った作品を挙げると、まず怪奇趣向と不可能興味の「呪われた鉦」。珍しく?伏線が丁寧に張られているうえに、一応の真相が語られた後のラスト2行での暗転に凄味がある。
夫婦合作というか、夫人が問題編を担当し相談せずにフットレルが解決編を書いたという二部構成の「幻の家」。消える家のトリックは単純だけど盲点をついている。クイーンの名作中編に比肩しうるのでは?幻の家に住む老人の秘密も意表をつかれた。
「百万長者ベイビー・ブレイク誘拐」は雪上の消える足跡トリックによる幼児誘拐もの。もし、ポーがこの作品を読んだらどんな感想をもつだろうか(笑)。
あとは総じて、謎の設定自体は魅力的だけど、真相が拍子抜けなものが多かった。

No.1557 7点 日本探偵小説全集(7)木々高太郎集- 木々高太郎 2011/07/12 22:53
「推理小説」という呼称の生みの親といわれ、松本清張を見出したことで知られる木々高太郎の傑作作品集。

昭和9年の処女短編「網膜脈視症」と「就眠儀式」は、大心地先生が精神分析によって隠された犯罪を暴くという作者十八番のプロット。フロイト心理学を援用して謎解く手法は当時として目新しかったのではないか。
同じ大心地先生もので戦後の長編「わが女学生時代の罪」は毒殺トリックが非常にユニークだけど、核心の部分で医学的にありえない(と思われる)事象がどうもひっかかる。
代表作の一つといわれるノンシリーズ長編「折蘆」は、いわゆる”名探偵の●●●”ものの先駆とも読めるが、最後に重要な役割をするある人物の行動には唐突感があった。
結局、ミステリかどうかは微妙ながら、ある女性の特異な半生を描いた「文学少女」が一番印象に残った。

長編2作、短編10作収録で800ページ近い分量のうえ、登場人物の行動原理、犯行動機が観念的で文芸寄りの作品が大半なので、読み終えるのに予想以上の時間がかかってしまった。

No.1556 3点 月明かりの闇- ジョン・ディクスン・カー 2011/07/09 20:21
百年前の事件と同様の”足跡のない殺人”の再現という、因縁話に絡めた展開はカーらしくていいのだけれど、いかんせん肝心のトリックがパッとしません。事件が起こるまでも冗長で、筆力の衰えが如実に現れていて残念な出来でした。
原書房版の副題には”フェル博士最後の事件”となっていますが、「フェル博士が登場する最後の作品」というぐらいの意味なので、これはちょっとどうなんだろうか。アレコレと変な期待をしてしまう。

キーワードから探す