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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1595 6点 マスカレード・ホテル- 東野圭吾 2011/09/25 18:41
当代人気作家・東野圭吾の新シリーズ第1作。
”刑事もの”といえば靴底をすり減らしての聞き込み捜査という定番を外して、超一流ホテルのフロント係に扮する潜入捜査という設定が気が効いている。ホテル内に舞台を限定し、怪しげな人物が次々現れる展開や、刑事の勘と女性フロント係のプロ意識との衝突などが面白く、さすがのストーリー・テラーぶりです。
ただ、本格ミステリとして見た場合、”犯人当て+被害者当て”ということになるのですが、前提となる連続殺人の構図の仕掛けが途中であっけなく開示されたり、最後は犯人によるその複雑な工作があまり意味がない様に思えてしまうのですが。

No.1594 5点 ミセス・ヴァン・ホーテンの秘密の仕事- パトリック・クェンティン 2011/09/23 11:45
ティモシー・トラント刑事シリーズの中篇。どうも、トラントが初登場する長編の短縮版らしい。これもおっさんさんからご教示いただいた翻訳道楽からのセレクトです。

作家の著作をアドヴァイスする会社の女経営者が事務所で殺される。事件当日の訪問者9名はいずれも潜在的殺人者で・・・というストーリー。9人もの訪問者という容疑者が多すぎて整理されていないのが難ですがが、端正な犯人当てミステリでした。トラントが若くて、いやにチャラいので後の作品とは別人に見える。

ところで、被害者であるクララ・ヴァン・ホーテン。「ヴァン」はvanでしょうか大文字のVanでしょうか。電話帳はVの位置?それともHのページ?・・・・われながらシツコイ(笑)

No.1593 6点 アリバイの彼方に- 夏樹静子 2011/09/22 18:06
初期の作品8編収録された短編集。表題作をはじめ「滑走路灯」「止まれメロス」「特急”夕月”」など、いずれもタイトルに憶えはあるのだけど内容はすっかり忘れていました。

「アリバイの彼方に」は、解けそうで解けないアリバイ崩しもの。高校時代の同級生である犯人と刑事を対峙させ、過去のエピソードと現在の事件を交錯させた構成がうまい。
「滑走路灯」もアリバイが主題だが、アンチ・アリバイ崩しともいうべき意外な展開をみせる佳作。伏線が巧妙に敷かれており感心した。これが編中のベスト。
「特急”夕月”」は、時刻表トリックを駆使して犯行直前まできた犯人に予想外のトラブルが起こり・・・という半倒叙もの。状況が変わる毎に犯人の態度が二転三転するのが可笑しい。他の作家ならドタバタ・ミステリになるところを夏樹流に仕上げている。

No.1592 5点 ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻- P・G・ウッドハウス 2011/09/20 18:12
腹黒執事ジーヴズ・シリーズ、ユーモア連作短編集の2巻目。
なんといってもギャンブル・ネタ三連発の「トゥイング騒動記」がケッサクで笑える。牧師を競走馬に見立てて説教の長さを賭けのネタにしたり、村の変な運動会の勝者を当てるのだが、ジーヴスの策略によるどんでん返しがお見事。
このジーヴズ、「ご主人様はアホでいらっしゃいますか?」なんて本当のことは思っていても口に出さない。さすが本場英国の執事はちがう、いつのまにか主人を自分の思うように操るのである。

No.1591 6点 - 横溝正史 2011/09/20 17:42
金田一耕助シリーズの短編集。
好みで言えば編中唯一の岡山もの、表題作の「首」。撮影で滞在する映画スタッフと、300年前の村の一揆のエピソードを髣髴させる不連続首切り事件・・・王道ですね。猟奇的な事件も磯川警部のキャラクターで中和される。
通俗的エログロが突出した感のある「生ける死仮面」も骨格は本格編で、二転三転する展開が楽しめた。

No.1590 6点 白尾ウサギは死んだ- ジョン・ボール 2011/09/18 23:55
カリフォルニア州・パサディナ警察の”黒いホームズ”こと、黒人刑事ヴァージル・ティッブスを探偵役に据えたシリーズの2作目。
映画(タイトル「夜の大捜査線」)と原作ともにヒットしたデビュー作「夜の熱気の中で」のみ取り上げられることの多いジョン・ボールですが、本書も警察小説とフーダニット・ミステリの魅力を兼ね備えた佳作だと思います。ただ、終盤の関係者を集めたティッブス刑事の謎ときには、伏線の妙味はあるものの後出しデータもあり、フェアプレイに対する厳密さは感じられませんでした。
やはりこのシリーズの作者の意図する読みどころは、偏見と蔑視に耐えながら聡明さと人間的魅力で事件に挑む主人公の造形にあるのでしょう。

No.1589 6点 応家の人々- 日影丈吉 2011/09/16 22:59
日本統治下の台湾を舞台背景にした異国情緒あふれるミステリ。
主人公で探偵役の元中尉の回想の形で、台湾の名家の出で美貌の未亡人・珊希を軸にした複数の不審死事件が語られていくが、物語が何重もの入れ子構造になっているので中盤読んでいてちょっと混乱しそうになった。
真相はこの時代この国ならではという感じはするが、伏線が不足気味で唐突感もある。

手掛かりを求めて中尉が亜熱帯の台湾南部の町を巡る場面など情景描写が印象的だが、ミステリとしての完成度では同じ台湾ものの傑作「内部の真実」にはやや及ばないかな。

No.1588 6点 モンキーズ・レインコート- ロバート・クレイス 2011/09/14 17:34
「初しぐれ、猿も小蓑を欲しげなり」

ハードボイルド小説のタイトルを芭蕉の句から借用するなど、この作者タダモノではないなと思わせるのですが、ロスアンジェルスの探偵エルヴィス・コールが初登場する本作、内容のほうは案外と典型的な私立探偵小説でした。

エルヴィス・コールは屈折型の探偵が多いネオ・ハードボイルド派とは一味違って、優しさを兼ね備えた体育会系といったところ。スペンサーのコピーともいわれ、確かにホークに相当する凄腕の相棒ジョー・パイクの役割など似ていますね。(ちなみに、ジョー・パイクを主人公にしたスピンオフ作品が今年邦訳された)
シリーズを続けて読むことで味がでてくるタイプのハードボイルドのようなので暫く追いかけてみよう。

No.1587 5点 裏切りの第二楽章- 由良三郎 2011/09/13 22:48
初期の”音楽ミステリ三部作”、白河警視&結城鉄平シリーズの第3弾。
第1作と同じ現場・地方都市の市民会館ホールで、アマチュア弦楽四重奏団メンバー内の毒殺事件を扱っていて、密室がらみの毒殺トリックを中心に、ダイイング・メッセージや暗号などを取り混ぜた愚直なまでの本格編でした。
音楽の素養が全くない身にとっては「ドビュッシーの弦楽四重奏第二楽章におけるバイオリンのピチカート」といわれてもピンとこない訳ですが、そうでない人には「おおっ!なるほど」のトリックかもしれません。

No.1586 6点 狩場の悲劇- アントン・チェーホフ 2011/09/12 18:05
チェーホフが初期に書き上げた唯一の長編ミステリ。ちくま文庫版”チェーホフ全集2”で読みました。
村の名士である伯爵の広大な領地を舞台に、複雑な恋愛模様の末の殺人事件の顛末が、事件に関わった元予審判事の持ち込み原稿という作中作の形式で語られます。

19世紀も末のロシア貴族の享楽的生活や、ある女性を巡る前時代的な人間模様など、主人公の予審判事の内面描写を交えた前半部は「さすが、ロシアの文豪」と思わせるのですが、殺人事件発生後(つまり本格的に探偵小説になったとたん)”ある事情”により急に文芸的にレベルダウンしてしまってますね(笑)。本書に仕掛けられた先駆的アイデアについては事前に知っていましたが、知らずに読んでもこれは分かってしまうでしょう。

なお、この作品は東都書房の世界推理小説体系5にも収録されているのですが、併録作品が「スミルノ博士の日記」というのが何ともシュールです。

No.1585 6点 鍵のかかった部屋- 貴志祐介 2011/09/07 22:46
「硝子のハンマー」の防犯探偵&天然女性弁護士コンビ・シリーズの第3弾。例によって密室トリックのハウにのみ拘った4編が収録されています。
真正面から密室トリックに挑んだ前半2作では、多重トリックで複雑強固な密室を構築した表題作がなかなかの力作。犯人像はどこか”ハスミン”を思わせる。
後半2作は、ともにおバカなトリック。「歪んだ箱」は”巨人の星”のあの名シーンがトリック発想のヒントなんだろうか。なお、最後の「密室劇場」は自分のなかでは読まなかったものとしたい(笑)。

No.1584 7点 一日の悪- トマス・スターリング 2011/09/05 22:20
ヴェニスにある古い屋敷を舞台にした遺産相続を巡るミステリ。

これはかなり面白い。よく出来た騙し絵ミステリですが、内容を詳しく書こうとするとどうしても事実と異なるアンフェアな表現になってしまう困った作品。
途中までは心理サスペンス風でちょっと読みずらいところもありますが、終盤の構図の反転度合いがすごいです。遺産相続ものの登場人物達それぞれの役割・立ち位置をここまで逆転させた手際はお見事というしかありません。

No.1583 6点 変調二人羽織- 連城三紀彦 2011/09/04 17:47
探偵小説専門誌「幻影城」でのデビュー作である表題作や、新人としては異例の「幻影城」に一挙掲載された3作品など、最初期の作品5作収録(講談社文庫版)。
デビュー同時代に読んでいた者としては思い入れ度が高いのだけど、今回再読してみて、叙情的な物語とトリッキィな仕掛けが融合した後の作品と比べると、トリック先行で強引なところが目につき、さすがに完成度では「戻り川心中」などには及ばないなという感想。
そのなかでは、明治時代と現代の相似形のような二つの話を交互に描き終幕で結合させた「六花の印」が花葬シリーズに通じる趣きがあった。

No.1582 7点 暁の死線- ウィリアム・アイリッシュ 2011/09/03 20:00
大都会の夜の寂寥感、男女の運命的出会いとロマンチシズム、タイムリミット・サスペンスと、これぞアイリッシュという持ち味が全て織り込まれた名作でしょう。
プロットが都合よすぎて予定調和なところも正にアイリッシュ(笑)。
作者の描く女性はどの作品も魅力的ですが、本作のヒロインのけなげで可愛らしさは、個人的に「黒い天使」のアルバータと並び印象に残ります。

No.1581 4点 殺人回路- 桜田忍 2011/09/02 18:14
アリバイ崩しをメインにした昭和のB級本格ミステリ。
前半は、70年安保闘争や内ゲバなど背景になる社会情勢の記述に力点が置かれていて、ミステリとしてはバランスが悪いのだけど、事件の構図が分かり大阪と東京の捜査陣の視点になってからは楽しめた。
二段構えの電話のアリバイ・トリックについては、当時としては珍しい仕掛けだったと思うけれど、山村美紗か何かで読んだことがあるような気がする。

No.1580 6点 第四の扉- ポール・アルテ 2011/09/01 20:09
比較的短めの分量の中に作者の企てが多数入っていて、デビュー長編らしい意欲的な作品だと思います。
怪奇趣向は”あっさり風のディクソン・カー”というか、本家ほどの濃密さは感じられず、密室トリックもオリジナリティの点でイマイチでしたが、作品全体に仕掛けられた趣向は面白いと思いました。
もう少し登場人物を整理してプロットをシンプルなものにすれば、最後の一撃のインパクトが増していたのではと思います。

No.1579 6点 悪霊島- 横溝正史 2011/08/29 21:53
正史最晩年(亡くなる前年)に書き上げた金田一耕助が登場する最後の長編。
さすがに、最盛期のようなミステリ趣向のキレはなく、特に上巻は冗長な感じを受けますが、岡山県沖の離島、「鵺」のダイイングメッセージ、隠された血縁の秘密、笠と蓑の謎の人物、地下洞窟での対決など、最後の最後まで”横溝ワールド”の探偵小説にこだわった創作姿勢には脱帽するしかありません。磯川警部の過去を密接に事件に絡ませた点もよかった。
重要人物である神主の妻・巴御寮人については、やや書き込み不足なのが惜しい気がする。

No.1578 6点 ティモシー・トラントの殺人捜査- パトリック・クェンティン 2011/08/28 15:37
ニューヨーク警察殺人課のトラント警部補を探偵役に据えたパズラー短編集。'50年代にEQMMに断続的に掲載されたものを「翻訳道楽」の宮澤氏が編集したものです。

「わが子は殺人者」や「女郎ぐも」などの巻き込まれ型サスペンスでは脇役だった、トラント警部の若かりしころの事件が10編収録されていて、いかにもF・ダネイ好みの非常にオーソドックスな犯人当て連作ミステリでした。殺人動機の隠蔽テクニックが光る「氷の女」など、ていねいな伏線と気付きの面白さで好印象を受けました。
ただ、枚数の関係で物語にふくらみがないので、推理クイズ並みの味気なさがあるのが残念です。

No.1577 6点 てとろどときしん- 黒川博行 2011/08/27 17:45
初期短編集。サブ・タイトルは”大阪府警・捜査一課事件報告書”。
お馴染みのクロマメ・コンビが登場する3編のなかでは、過去のフグ中毒死事件を発端に意外な展開をみせる表題作「てとろどときしん」が面白かった。犯人側のアクシデントによって事件の真相が錯綜していくというのが一種パターンとなっている。クロマメ・コンビの大阪弁の漫才風やり取りも健在。
他の3編には、容疑者(犯人)側視点によるクライム小説ぽいものが含まれていて、この頃から必ずしも謎解きミステリに拘っていないように思われる。

No.1576 6点 ジーヴズの事件簿 才気縦横の巻- P・G・ウッドハウス 2011/08/25 18:20
ちょっとオツムのゆるい御主人が持ち込む厄介事を、機智に富む策略でそつなく解決していく嫌味なほど優秀な執事ジーヴズ。

ミステリの範疇には入らないユーモア連作短編集ですが、各編の絶妙な伏線とどんでん返しはミステリに通じるものがあります。
叔母のアガサや友人のビンゴなど、脇役陣も個性豊かで面白く、古典とは思えないユーモア・センスがある。
最後に収録された「バーティ君の変心」のみジーヴズの一人称で語られており、手の内を垣間見れる異色作。

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