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[ 本格 ]
思考機械の事件簿Ⅰ
思考機械
ジャック・フットレル 出版月: 1977年07月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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東京創元社
1977年07月

No.4 8点 ロマン 2015/10/22 21:20
とっても仰々しい肩書きをお持ちの、《思考機械》ことオーガスタス~中略~ドゥーゼン教授が探偵役の、推理小説短篇集その1。短編では『情報漏れ』がベスト。ここまで工夫されたトリックはなかなかお目にかかれない。次いで斬新すぎる凶器が見所の『謎の凶器』、盲点からさらに一歩奥に進んだ盲点を突いた『茶色の上着』が良作だった。ドゥーゼン教授のキャラクターは何となく《探偵ガリレオ》こと湯川准教授に似ている。どこかレトロでメカニカルなトリックが多く使われている部分がそう感じさせるのかもしれない。

No.3 7点 E-BANKER 2014/11/22 17:15
「思考機械」という異名を持つ奇人にして名探偵オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン博士(長い・・・)。
彼の活躍譚を収めた作品集第一弾。
創元推理文庫の『ホームズのライヴァル・シリーズ」にて読了。

①「『思考機械』調査に乗り出す」=唯一、語り手役となる「わたし」が冒頭に登場する一編・・・というのが貴重な作品。作品集の「頭」としては適当かも。
②「謎の凶器」=タイトルどおり、凶器の謎にスポットライトを当てた作品。これって理系ミステリーの走りのようなものか・・・
③「焔をあげる幽霊」=幽霊屋敷にまつわる数々の怪奇現象。“焔”の正体などは正直なところ拍子抜けなのだが、作品全体の雰囲気が良い。
④「情報漏れ」=これもトリックは最初から明々白々なのだが、趣向そのものは好き。
⑤「余分の指」=なぜか人差し指の切断を要求する妙齢の女性・・・という魅力的な謎でスタートする一編。これもトリックは分かりやすいのだが・・・
⑥「ルーベンス盗難事件」=厳重に保管してあった部屋から盗まれたルーベンスの名画。最初から「誰が」は明白だったのだが、「どうやって」にひと工夫が成されている。
⑦「水晶占い師」=インド人の占い師が使う水晶玉に自身の殺害現場が写っていた・・・というカラクリを解き明かす一編。トリックはこの年代の作品によく出てくる道具。
⑧「茶色の上着」=一風変わったプロットの作品で、警察に捕まった稀代の金庫破りが、妻あてに残した暗号メッセージを解き明かすというもの。思考機械でも苦戦した暗号を果たして妻が解けるのかどうか?
⑨「消えた首かざり」=イギリス警察が追いながら決して逮捕することができない貴族かつ犯罪者。盗んだ首かざりをアメリカに持ち込もうとするのだが、どこにも発見されなかった・・・。このトリックは面白いといえば面白いけど、他に方法があるのではと思ってしまう。
⑩「完全なアリバイ」=アリバイ崩しを扱った一編。死亡推定時刻に複数の証言者がある容疑者の完璧なアリバイを思考機械がどのように崩すのか、というのが当然焦点に。でも、この“やり方”は相当リスク高いだろうと訝ってしまう。
⑪「赤い糸」=①~⑩よりもプロットが進化したような印象。巻末解説では密室ものという説明がされているが、そこはあまり響かなかった。それよりも犯人設定にひと工夫あり。

以上11編。
『二プラス二は常に四なのだよ!』という思考機械の決めゼリフが頻繁に登場するなど、とにかくロジックに拘った作品が並んでいる。
とはいっても、やや飛躍気味かなという作品がないわけではなく、この時代の作品らしさは窺える。
名作の誉れ高い「十三号独房の問題」が未収録なのは痛いが、この収録作品も水準以上の出来栄えはあると感じた。
まずは評判どおりの作品という評価に落ち着く。
(個人的ベストは⑪かな。③や⑨なども面白い)

No.2 6点 kanamori 2011/06/12 17:43
東京創元社で編まれた”思考機械”ことヴァン・ドゥーゼン教授が活躍する第1短編集。
同じ年にハヤカワミステリ文庫で出た短編集のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録11編中8編が早川版とダブっているのですが・・・・。
一世紀前の作品集だけに陳腐になったトリックもあるけれど、特殊な凶器、意外な隠し場所、密室もの、偽アリバイなど、本格パズラーの色々なガシェットを取り揃えていて楽しめた。なかでは、「焔をあげる幽霊」が怪奇趣向と不可能性で編中のベスト。ディクスン・カーがイチオシというのも分かる出来です。
ただ、出版社の都合で、代表作の「13号独房の問題」が収録されていないのは物足りない。

No.1 6点 mini 2009/02/21 08:54
ホームズのライヴァルの一つで創元文庫版
この創元のシリーズは概ね1作家1冊であるが、ソーンダイク博士はⅡ巻まであり、思考機械は何とⅢ巻まであって非常に恵まれている
なぜ思考機械だけがこんなに優遇されるのかと言うと、オカルティズムに彩られたトリックものという、現在の日本の本格マニアにいかにも受けそうな感じなのが理由だろう
しかし、トリックだけを抜き出して吟味すると、案外と思考機械シリーズで使われるトリックはしょぼいものが多く、トリックだけに限定して評価するならソーンダイク博士ものの方が断然質が高い
例えば収録作中の「水晶占い師」は、ソーンダイク博士ものに似たアイデアの作が有るんだけど、トリックの緻密さではソーンダイク博士作品の方が優れている

ソーンダイク博士の作者オースティン・フリーマンは医師作家で科学者然とした人だが、思考機械の作者フットレルは元々がジャーナリスト出身という経歴だ
実際作中でも思考機械の代わりに情報を収集してくる役目のハッチという新聞記者の方が探偵役よりも活き活きと描かれていて、さながら作者の分身のようだ
ウルフとアーチーのルーツは案外これなんじゃねえの
トリックはチャチなものが多いが、思考機械シリーズの魅力はずばりトリック自体ではなくて、トリックの幹に枝葉を付けた物語の膨らませ方や演出だと思う
こうした不可思議現象の見せ方プレゼンテーションが実に上手く、日本での人気の秘密もこの辺だろう
それとハウダニットだけでなくホワイダニットにも気を配っていて、動機面なども決しておろそかにしていない
動機にも気を配る点などはやはり根がジャーナリスト出身だなって感じで、いかにもな理系作家オースティン・フリーマンに対して、トリックは多用してもフットレルという作家は基本的には文系気質な人だったのだろうと推測する


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