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アブナー伯父の事件簿
アブナー伯父
M・D・ポースト 出版月: 1978年01月 平均: 7.75点 書評数: 4件

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東京創元社
1978年01月


1978年01月

日本点字図書館
1981年10月

No.4 7点 蟷螂の斧 2021/05/18 17:26
①天の使い 5点 聖書の言葉が主題?
②悪魔の道具 7点 エメラルドの紛失。いい話系
③私刑 6点 牛泥棒を縛り首にしようとする牛飼いたちにアブナー伯父は賛成するが・・・
④地の掟 5点 内側から施錠の部屋から金貨が紛失。魔女の仕業?
⑤不可抗力 7点 ナイフ投げでの事故?または故意か?アブナー伯父の推理
⑥ナボテの葡萄園 8点 射殺された人物は、実はその前に毒殺されていた・・・これぞ古典というような作品
⑦海賊の宝物 8点 20年ぶりに兄が帰ってきた。相続済みの弟は面白くない・・・トリック、オチともGood
⑧養女 7点 弟は兄の養女が欲しい。この時代だから思いつくトリックで前代未聞(笑)
⑨藁人形 9点 相続がらみの殺人。容疑者は目の不自由な老人と弁護士。これは盲点でした
⑩偶然の恩恵 5点 偶然は神の摂理であり正しき者に味方する。なるほど
⑪悪魔の足跡 5点 森の中で発見した悪魔の足跡とは?
⑫アベルの血 7点 アリバイ工作を見抜く
⑬闇夜の光 4点 パターンが⑪と類似
⑭〈ヒルハウス〉の謎 8点 強盗殺人事件。4人の容疑者。思わぬ結末へ

No.3 10点 斎藤警部 2016/02/12 16:13
我が新約聖書。 ミステリと文学との、更にはキリスト教との清らなる三位一体。
(実はもう一つ、法の精神も分かちがたく結束している。更には民主主義精神も少しく。)

天の使い/悪魔の道具/私刑/地の掟/不可抗力/ナボテの葡萄園/海賊の宝物/養女/藁人形/偶然の恩恵/悪魔の足跡/アベルの血/闇夜の光/〈ヒルハウス〉の謎
(創元推理文庫)

‘戻り川心中’(連城三紀彦)に脈流する恋愛要素を神の愛に置き換えたような、敬虔さと、大胆にトリッキーな趣向(ドキリとする様な反転も多い)と、土台のしっかりした質実な文学性とを兼ね備えた、しかも読みやすい、奇蹟の様な短篇作品集です。ただ、恋愛にも当然ダークサイドがある様に、本作にも全能の神が支配していながらも起きてしまう人間界(開拓時代の米国東部)ダークサイドでの罪深い出来事が、どこまでも真摯で敬虔な口調で語られる。ブラウン神父の様に挑戦的ユーモアを前面に出さず、飽くまで穏やかに静かな空気を保ち続ける分、知的な愉しさを上回って心が揺さぶられる場面も多い。

なんて書いときながら評者はキリスト教徒でもユダヤ教徒でも全共闘でもキョードー東京でもまして京都の恋(渚ゆう子)でもないんですけどね。 それでも、私にとっては何物にも代え難い、命の水のような一冊です。(一冊と言えば、ハヤカワの方まだ読んでなかった!)

No.2 7点 kanamori 2011/06/14 18:50
東京創元社で編まれた”法と正義の人”アンクル・アブナーが活躍する短編集。
この2年前に出たハヤカワミステリ文庫の「アンクル・アブナーの叡智」のほうを読んでいましたが本書は初読み。といっても収録14編中10編が早川版とダブっているのですが・・・・。
”思考機械”などと比べるとトリック一本やりなところはなく、全編”神の摂理”というテーマで統一され物語性が豊かです。アブナーの人物像も魅力的で、代表作「ナボテの葡萄園」はじめ感動的なエピソードが多かった。
ただ、出版社の都合で、有名作の「ドゥームドルフ事件」が収録されていないのは残念。

No.1 7点 mini 2009/03/07 10:07
ホームズのライヴァルの一つで創元文庫版
実は早川文庫版の方が原著の配列もそのままに収録作を過不足なく収めた完全版なのだ
対する創元版は重要作だけを選び、原著の短編集に未収録の後に発見された4編を加えた編集版である
ちなみにその4編を加えてもアブナー伯父譚は総計22編しかなく、これは他のライヴァルたちに比べると少ない
いつもなら創元の編集過剰を非難するのだが、今回だけは創元版に軍配を上げたい
そもそも原著の配列自体がメチャクチャで、語り手マーティン少年の年齢が前後するなど順序が作中時系列に沿っていない
例えば原著の配列順ではシリーズ中最も感動を呼ぶ代表作「ナボテの葡萄園」を最後に置いているが、この作は時系列順では最後の話ではなく明らかに短篇集全体の演出効果を狙っての配置だ
この事は懇切丁寧な創元版の解説に書いてあるが、創元版では時系列を調査して配列を組み直しているのだ
今回だけは創元の編集能力が功を奏したようだ

アブナー伯父はいかにも開拓時代のアメリカンな物語という印象を受けるが、実はポーストがアメリカ風味専門作家だったわけじゃない
ポースト自身が欧州を旅していた事もあって、アブナー伯父以外で最も有名な悪徳弁護士メイスンものは英国の雑誌に連載されたものだし、パリ警視庁長官ヨンケルものの舞台は当然フランスである
つまりアメリカ人作家にしてはアメリカ的なのは案外とアブナー伯父くらいなのである
トリックばかりに目を向けがちだが、アブナー伯父の特徴は警句や引用を交えた神の摂理というテーマだろう
例えば○○を利用した面白いトリックの「地の掟」や、死因不明の死体に関して盲点を突いたトリックが鮮やかな「養女」など、その根底には”大地から全てを搾り取ることなかれの掟”みたいな訓示がある
創元版未収録「ズームドルフ事件」なども密室トリックという観点だけで語られがちだが、作者には密室という概念よりも”神の手”というテーマを語りたかったのではとも言えるが、この辺も創元版の解説にはしっかりと書いてある
一方で「不可抗力」「藁人形」などに見る、身体障害者に対する甘くない態度も独特で、全てを公平に見る思想の表れか?
「藁人形」はシリーズの特色が発揮されてないので代表作とは言えないが、トリックよりロジック重視な読者だと「藁人形」を最高傑作に推す人も居るかも知れないな


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