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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1660 4点 このミステリーがすごい!2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/12/24 18:51
今年は立ち読みで済まそうかな、と思って行った近所の書店では、なんとビニールに密封されて店頭に置かれていた。「このミス」まさかのビニ本化状態。で、やむなく購入。

ランキング入り作品は年々独自色が薄れているけれど、今年は特に顕著で、ほぼ文春と変わらなくなってしまった(ベスト3は国内、海外ともまったく同じ)。来年は一般投票を取り入れるらしいが、そうすると今度は昔の文春のようなランキングになったりして。

企画のほうは、”我が社の隠し玉”ぐらいしか興味が湧かない。論創社の「ウィザーズ&マローン裁判」に期待したいが、それより論創社さん、去年の隠し玉で予告した、クェンティンやクリスピンはどうしたのでしょう?

”このミス大賞作家極上ミステリー特別書き下ろし!”と称して、今年も宝島社お抱え作家の短編が4編収録されているのだけれど、今回初めて読まさせていただいた。
いずれも思っていた以上に筆が立っており(ハードルを低く設定したこともあり)、小粒だけど「クリスマス・テロ」や「YESか脳か」なんか結構面白い。ミステリというよりエンタメ小説といった感じでしたが。

No.1659 5点 大統領のミステリ- リレー長編 2011/12/23 13:45
現職大統領フランクリン・ルーズヴェルトが考えたプロットを、当時(1935年)のアメリカを代表する7人の作家が分担して書いたリレー形式の長編ミステリ。
この数年前に英国で発表された「漂う提督」と比べると、まとまりが良すぎて、リレー・ミステリ特有のギクシャク感がないのが、かえって物足りない。また、謎解きの要素が少ない通俗クライム・ミステリといった内容で、展開がやや冗長に感じた。
ヴァン・ダインが担当した章では、マーカム地方検事やヒース部長刑事を登場させ、アンソニー・アボットはサッチャー・コルト市警本部長を出しているのですが、最後は、E・S・ガードナーのペリイ・メイスン弁護士に美味しい所を持っていかれてます(笑)。

No.1658 6点 謎解き名作ミステリ講座- 事典・ガイド 2011/12/21 18:28
月刊誌に連載時のタイトルは「80年代生まれとミステリを読む」で、読書の中心が新本格以降の国産ミステリというイマドキの大学生を相手にして、名作ミステリをその書かれた時代背景を踏まえて紐解くという講義録のダイジェスト。

毎回、前振りや余談の部分が多いのだけど、名作ミステリの残された謎や瑕疵と思える矛盾点を、著者なりに謎解くという趣向があり、これが面白かった。
たとえば「キドリントンから消えた娘」では、瀬戸川猛資氏の『夜明けの睡魔』のなかで、”見逃せない大きな瑕疵”とされたバレリーの手紙の矛盾とか、「点と線」の東京駅の4分間に関する矛盾を解消させる試みなど、佳多山氏なりのマニアックで強引なロジックながらも興味深く読めた。
本書の性質上、古今東西の名作のネタバラシが前提になっているので取り扱い注意ではありますが。

No.1657 6点 メグレと消えた死体- ジョルジュ・シムノン 2011/12/20 22:17
又聞きの不確かな目撃証言と決定的とはいえない状況証拠で男を警察に引っぱり、心臓病の気があるその男に対して夜を徹する長時間の尋問を行う。警察の待合室には容疑者の年老いた母親が心配して徹夜で付き添う状況・・・・・。
人権擁護団体や弁護士会から訴えられそうなメグレの強引な捜査が気になるのですが、後半部ほとんどを占める尋問場面、容疑者と母親に対峙するメグレの心理戦がなかなか迫力がありました。
登場人物では、過去にメグレと関わったエピソードをもつ通称”のっぽ”の元売春婦がいい味出してます。

No.1656 5点 スパイダーZ- 霞流一 2011/12/18 21:23
本格パズラーと警察小説のハイブリッドというだけでなく、B級アクション、バカミス密室トリック、操りの構図(なにせ、スパイダーですから)など、多彩なミステリ趣向を盛り込んだなかなかの力作だと思います。
問題は、自分が信じる”正義”のためには手段を選ばない主人公の刑事・唐雲の人物造形にあって、この人物に感情移入することは難しいでしょう。
むしろ、ノワールまたはサイコミステリが好みの読者のほうが合うかも。

No.1655 6点 気どった死体- サイモン・ブレット 2011/12/16 18:46
裕福な高齢者限定の長期滞在型ホテルで起きた不審死と宝石盗難事件に遭遇したホテルの新しい住人パージェター未亡人は、亡き夫から伝授された”特殊技術”を使って探偵活動に乗り出すことに......。

サイモン・ブレットのもう一人のシリーズ・キャラクター、パージェター夫人が登場する第1作。俳優パリス・シリーズ同様に、シニカルな英国式ユーモアがちりばめられていますが、コージー系のミステリとはちょっと違います。
殺人者の独白をところどころで挿入したり、終盤に真犯人と思しき人物が次々と変転(二転三転どころか、五転六転)する非常にスリリングな展開で読者を翻弄させてくれます。ただ、推理して真相に至るには伏線不足の気がしますが。
日記や宝石などの小道具をミスリードに使う手法が巧妙で、心地いいヤラレタ感を味わえますよ。

No.1654 5点 帝王、死すべし- 折原一 2011/12/14 19:03
いつもの折原流叙述ミステリ。しかし、これはちょっと微妙な出来かな。
復讐者の手記や父親が行動を起こすというプロット、タイトルから、ニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」を意識させつつ、最後に・・・・という流れは、折原の通読者であれば仕掛けを察することは容易でしょう。もうひとヒネリ欲しかった。
今回の三面記事ネタ、京都伏見の「てるくはのる」事件は、あまり本筋と連動していないように思えるのも難点。

No.1653 6点 棺のない死体- クレイトン・ロースン 2011/12/12 18:54
奇術師探偵グレート・マーリニが登場する4作目で、シリーズ最後の長編。
墓場からよみがえる死者、心霊写真にポルターガイスト現象、密室状況からの人間消失など、ディクスン・カーをも凌駕するような怪奇趣向と不可能興味がテンコ盛りですが、ワトソン役で今回は主人公格のロス・ハートの軽い語り口と相殺されて、サスペンスはあまり感じません。色々な不可解な事象も拍子抜けする常識的な真相であったり、オリジナリティの点で問題があったりします。
それでも、終盤のフーダニットを巡っての二転三転する多重解決の部分は大いに楽しめました。
ワトソン役、担当警部補、探偵役の順に推理を披露する設定において、(細かいロジックは別にして)この結末の処理方法はなかなかユニークだと思う。

No.1652 5点 第四の男- 石崎幸二 2011/12/10 11:40
会社員・石崎とミス研女子高生たちによる、お笑い&本格パズラーの第8弾。
女子高生にはいびられ、女性刑事にはビンタを浴びるという、作者の被虐趣味?が横溢するギャグはマンネリもあって今回はややトーン・ダウンぎみですが、誘拐未遂事件につづく犯行声明文の隠された企みや、密室内の血痕の謎など、ミステリの構成としてはよく出来ているのでは。

No.1651 5点 不自然な死体- P・D・ジェイムズ 2011/12/08 18:24
ダルグリッシュ警視シリーズの3作目。
”自然死に見せかけた殺人”を扱ったセイヤーズ「不自然な死」を意識しながらも、両手首切断という自然死を否定する死体を発端にもってきて、もう一段捻っています。その切断理由もまあ納得いくものです。
精緻な心情描写と重厚な筆致というジェイムスらしさは、半分を占める第1部までは覗えるのですが、休暇中で管轄外のダルグリッシュが本格的に捜査に乗り出した後半はやや駆け足ぎみかな。トリックはなかなか面白いのだけど、木に竹を接いだような感じを受けた。

そういえば、本日ついにメジャー挑戦を表明!・・・って、そっちは、ダルビッシュ(笑)。

No.1650 6点 ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 2011/12/06 18:27
北鎌倉にある古書店の美人店主・栞子さんと古書にまつわる日常の謎。ビブリオミステリの第2弾。

題材となった古書のトリビア・ネタに寄りかかっているもの(第2話など、その知識があればタイトル自体がネタバレ)があるが、青春恋愛ものの要素も加わり、今作も爽やかで読み心地が良かった。
ミステリの趣向では、第1話の「時計じかけのオレンジ」が面白い。前作までの流れがあるから、栞子さんの最後のオチが効いてくる。

No.1649 6点 雪どけの死体- ロバート・バーナード 2011/12/05 18:11
舞台はノルウェー北部の町トロムソ。雪の下から発見された旅行者らしき英国青年の殺害死体を巡る非シリーズもののミステリで、第1章が「真昼の黄昏」、最終章が「真夜中の太陽」と題されていて、この北極圏の町の季節の変遷を章題で表わすところがニクイです。
これまで読んだバーナード作品は家庭内の事件を扱ったものばかりでしたが、本書は、チャールズ・ブラウンと名乗っていた被害者の足跡をたどるファーゲルモ警部の捜査を中心に展開されていて、警察小説の趣きが強い。ノルウェー国内ならず英国まで飛んで証言を得る関係者一人一人のキャラクターがまた例によって変に個性的で、これがバーナードの一番の特徴でしょう。捜査過程も面白いが、終盤の真犯人との対峙、心理戦もなかなかスリリングでした。

No.1648 6点 要介護探偵の事件簿- 中山七里 2011/12/03 18:18
下半身が不自由な車椅子の老社長が探偵役を務める連作短編集。
不動産会社を一代で興し名古屋の政財界で絶対的な影響力を持ちながら、警察や権力に対して反骨精神旺盛なこの主人公・香月玄太郎がなかなか面白い。ミステリとしては独創性に欠けるかなぁと思いつつ、キャラクター小説として楽しめました。
収録作のなかでは、銀行強盗の現場に巻き込まれる第4話「要介護探偵と四つの署名」が個人的にイチオシです。
主人公の玄太郎や介護士のみち子さんなど、登場人物の何人かは「さよならドビュッシー」からのスピン・オフですが、そっちを読んでおくと最終話「最後の挨拶」の趣向がより効いてきます。

No.1647 5点 トム・ブラウンの死体- グラディス・ミッチェル 2011/12/01 18:29
魔女の血を引く心理学者ブラッドリー夫人を探偵役に据えたシリーズの22作目。
魔女らしき老婆の存在というオカルト要素は、ブラッドリー夫人が事件に関わるキッカケでしかなく、宙に浮いている感じがするが、これはまあお約束のようなものか。
パブリック・スクールの学生寮を舞台に、教師たちとその家族の複雑な人間関係を紐解きながら、生徒たちの様々な生態が挿入されているのは、タイトルの元となった19世紀の英国小説「トム・ブラウンの学校生活」が念頭にあるのでしょう。いつもながら、子供を登場させると描写が活き活きしているように感じる。ただ、ミステリとしては徒に解決を先延ばししている感がありキレがないように思う(あの証言が出てこないから解決しないだけでは・・・・)。

このシリーズ1929年から84年にかけて66作も書かれているようで、現在7作の邦訳があるのですが、その版元が本書の早川書房をはじめ国書刊行会、晶文社、河出書房新社、長崎出版、論創社、原書房と、単行本クラシック・ミステリ出版社勢ぞろいというのがすごい。しかも、どの出版社も2冊目を出す気配がない(笑)。

No.1646 7点 アンドロギュノスの裔(ちすじ)- 渡辺温 2011/11/30 18:50
戦前の探偵小説誌『新青年』で横溝正史の右腕として編集に携わりながら短編小説を執筆し、不慮の事故により27歳で夭折した伝説の作家・渡辺温の全集。

作風は幻想的と聞いていましたが、昭和初期の素朴でノスタルジーに満ちた、”影絵のごとき物語世界”という紹介文がピッタリです。その一方で、どんでん返し狙いのミステリ趣向の作品も結構あり楽しめました。
ミステリに限って感心した作品を挙げると、ラストのどんでん返しが意表を突く「象牙の牌」、二転三転するストーリーが楽しめる「遺書に就て」と「勝敗」など。なかでも、巧妙な伏線と唖然とする残酷なラストの「可哀相な姉」は最も印象に残った。
編集・装丁の素晴らしさと、これを文庫で出してくれた東京創元社に敬意を表して、採点にプラス1点献上。

No.1645 6点 ジョン・ブラウンの死体- E・C・R・ロラック 2011/11/29 18:46
いかにも英国’30年代の探偵小説といった地味で渋い作品。
瀕死の浮浪者・ジョン・ブラウンが目撃した謎の人物の怪しい行動と、隠棲するミステリ作家の盗作疑惑という、二つのエピソードが提示されるところまでは(そのつながりは、ある程度予想できるものの)惹きつけるものがありました。
難を言えば、やはりなかなか進まない中盤以降の展開と、マクドナルド警部の個性が全く見えず探偵役として魅力を感じなかったところでしょうか。
マクドナルド主任警部シリーズは全部で40作以上あるらしいのですが、他の作品もこういう感じなんだろうか。

No.1644 5点 邪馬台- 北森鴻 2011/11/27 21:34
蓮丈那智フィールドファイルの4作目。作者の急逝で中断した作品を、氏の公私のパートナーだった女性が書き継いだ長編です。
邪馬台国の謎という手垢のついた題材ながら、民俗学的な観点で、”邪馬台国はどこか?”ではなく、”邪馬台国とは何か?”というアプローチが斬新。結論もなかなか説得力ありそう。ただ、出雲大社や吉備津神社の件など、高田崇史のQEDシリーズとネタがだいぶ被っていますが。
本筋はある古文書を巡るミステリで、冬狐堂や雅蘭堂、池尻大橋のバーの店主など、各シリーズのキャラクター総出演といったところですが、中盤以降は荒唐無稽な伝奇&陰謀ものの様相になっていてシラケました。

No.1643 6点 誰の死体?- ドロシー・L・セイヤーズ 2011/11/26 17:27
セイヤーズの処女長編。
翻訳者の功績によるところもあるかも知れませんが、1923年出版のクラシック・ミステリとは思えない現代性を感じました。とくに、大戦で負ったトラウマにより突如発作を起すピーター卿の一面とか、最後の告白文で鮮明に浮かび上がる犯人の造形など、同時代の探偵小説とは一味違った新しさがあります。
ミステリのトリックに関しては、先代公妃(ピーター卿の母上)の存在がポイントとなる伏線が効いているのですが、わざわざ苦労して他人ちの浴室まで運び込む必然性がいまいち分からなかった。

No.1642 5点 謎解きの醍醐味- 鮎川哲也 2011/11/25 17:56
光文社文庫の”ベストミステリ短編集”の第2弾で、シリーズ探偵が登場しない短編7作品収録。前作はアリバイ崩しをテーマにしたものでしたが、今回は内容的にあまり統一性が感じられない。
「矛盾する足跡」は推理作家・鮎川先生が謎解きをする異色作。ユーモアミステリではなく、雪の山荘での足跡トリックものという正統パズラーで最後のオチまで楽しめる。同じくコード型本格の「霧笛」は船上が舞台のフーダニットで、細かい伏線の張り方はさすがです。
「塗りつぶされたページ」が、”謎解きの醍醐味”という意味では個人的ベスト。日記を塗りつぶす理由が意外だし、真相解明までの過程が緻密で面白い。

No.1641 5点 忙しい死体- ドナルド・E・ウェストレイク 2011/11/24 18:16
死体消失や死体移動に伴う騒動は、スラップスティック・ミステリの定番のネタですし、タイトルから受ける印象からも単純にドタバタ・コメディだと思い込んでいたのですが、これは(ユーモアもありますが)軽めのノワール系クライムミステリといったほうが近いと思います。
また、謎解きミステリの要素もあり、「墓からヘロインだけ持ち出せばいいのに、なぜ死体まるごと掘り出したのか?」という謎の答はちょっと意表を突いてます。
事件に巻き込まれる主人公、ギャングの若手幹部エンジェルの個性はやや平凡なのですが、名前だけ登場する恋人ドリーの伝言メモがエスカレーション・ギャグとなっていてやたらと可笑しい。

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