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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2474件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1674 5点 仮面劇場の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2012/01/18 23:07
フェル博士の探偵譚では最後から2番目の作品。
序盤で英国からアメリカに向かう客船上での狙撃事件はあるものの、メインの殺人が起こるまでが長い。その間の人間関係の説明がモタモタしていて、意味深な会話が佳境に入りそうなタイミングで横やりが入って話題をそらすという(晩年の作品に共通する)テクニックに”イラッ!”とさせられます。
劇場2階のボックス席という準密室状況の殺人トリック(というより、アリバイ・トリック?)はこの時期の作品ですからこんなものでしょう。劇場ミステリが好みなので、まあ楽しめました。

No.1673 5点 幻の指定席- 山村美紗 2012/01/17 18:34
トリックメーカーといわれていた初期(’70年代半ば)の作品集。この短編集は傑作ぞろいという思いがあったのだけど、再読してみるとそれほどでもなかった。

表題作は倒叙形式で、新幹線の予約システムの特殊処理という意外な陥穽によってアリバイトリックが崩れていく話。こういった専門的知識をネタにした作品が他にも2編あるが、いずれも時代を経て陳腐化してしまったように思える。
一方では、グリーン車2両の乗客全員を人質にした身代金強奪サスペンス「新幹線ジャック」が今でも面白く読めた。西村京太郎ならこのアイデアで長編一本書くのではと思うほど中身が濃いコンゲーム風サスペンスで、犯人グループ視点の描写が全くないのがミソだろう。
驚いたのは「危険な忘れ物」。メインのネタが、最近読んだ乾くるみ氏の某短編と見事に被っている。

No.1672 6点 燃える導火線- ベン・ベンスン 2012/01/16 22:17
マサチューセッツ州警察のウエイド・パリス警視シリーズ。
刺激的なタイトルとダイナマイト爆弾による脅迫という粗筋紹介から、派手なタイムリミット・サスペンスを想像してしまいますが、そこはベン・ベンスンのこと、パリス警視を中心とした地道な捜査活動を忠実に描く地味めの警察小説です。
並行して女優の別荘の敷地で死体が発見され、爆弾予告そっちのけで、こっちの事件がストーリーの中核になってしまうのかと思わせるプロットはなかなか巧いです。
高圧的な女優オリーヴと娘の軋轢や、捜査側の面々のやり取りなど、登場人物の造形は’50年代の作品にしては深みがあり意外と現代的で、その辺がこの作者の持ち味だと感じた。

No.1671 5点 謎解きはディナーのあとで 2- 東川篤哉 2012/01/15 13:05
令嬢刑事&毒舌・暴言執事シリーズの第2弾。
本書も本格ミステリとしての骨格はきっちりとキープしていると思いますが、ギャグが大人しくなっている気がしないでもない。”分かる人だけ分かれればいい”風の読者限定ギャグが抑えぎみなのはメジャーになったから?

ミステリの趣向的には、第1話の”●●のアリバイ工作”がオチを含めて面白い。第2話の、消えた帽子という一つの事象から推理を次々と展開していく強引なロジックも好みです。

No.1670 7点 解錠師- スティーヴ・ハミルトン 2012/01/13 18:59
「ぼく」こと若い天才金庫破り・マイクルの独白で構成されたクライム・サスペンス。原題は”The Lock Artist"。

なぜ言葉を発せない少年が金庫破りになったのかという経緯の’90年代のパートと、プロの解錠師としての仕事内容を綴った2000年のパートが交互に語られるため、最初のうちは少々混乱し物語に乗れなかったのだけど、終盤の客船を標的にするあたりから緊張感が増し惹きつけられた。
犯罪小説としての面白さはもちろんあるが、運命の少女アメリアとの恋愛・青春小説でもあり、封印された不幸な過去をも解錠する少年の再生の物語としても秀逸だと思う。

No.1669 4点 嫉妬事件- 乾くるみ 2012/01/09 22:49
アンチじゃなくウンチミステリだとか、脱力系というより脱糞系ミステリだという評判?の話題作。
率直な感想をいうと「読むんじゃなかった」。

大学のミステリ研の部室に突如出現した”ブツ”の謎を巡って、部員らがアレコレと推理を述べ合う展開は、「麦酒の家~」などの西澤保彦作品を連想させる”日常の謎”系ミステリ(ウ●コが部室の本棚に置かれてあるのが”日常”といえるのか見解が分かれる所かもしれませんが、笑)ですが、この真相は酷すぎでしょう。
それでも4点なのは、併録の犯人当て短編「三つの質疑」が面白かったから。こっちもバカミスではありますが。

No.1668 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅲ〉- エドワード・D・ホック 2012/01/08 18:13
オカルト探偵サイモン・アークものの第3短編集。
50年代に書かれたものから2編、80年代から6編の作品が選ばれていますが、作風や設定にまったく変化なし。出版社の編集者である「わたし」を伴って、世界各国の悪魔や怪異現象をを調査しているうちに、不可解な殺人事件に遭遇するというパターン。
「焼け死んだ魔女」のまさに今日的すぎる真相もいいけれど、厳重に警備されたドイツの古城からのナチス戦犯の消失や、ガラス張りのエレベーターからのロック歌手の消失など、やはり不可能トリックを扱ったものが印象に残りますね。後者のトリックの真相はダメ出し相当ですけども。

No.1667 7点 開かせていただき光栄です- 皆川博子 2012/01/05 23:04
読む前は、いつもの耽美的でドロドロした物語かと思ってましたが、ユーモア混じりの軽妙な語り口なので、馴染みの薄い18世紀後期のロンドンを舞台とした日本人も出てこない物語で、なおかつ当時のロンドンの雰囲気が細部にわたって書き込まれているにもかかわらず、とっつきにくいことはなくスラスラ読めた。日本人作家、しかも80歳を超えた女性が書いたとは思えない筆力と若々しい感性に脱帽です。
ダニエル医師と5人の弟子の個性的な面々が主役といえますが、実在の人物である盲目の治安判事・ジョン・フィールディング卿とボウ・ストリート・ランナーズも魅力的な探偵役です。ブルース・アレグザンダーが描いたジョン卿(「グッドホープ邸の殺人」等)と読み比べてみるのも一興かも。

No.1666 6点 三本の緑の小壜- D・M・ディヴァイン 2012/01/03 18:52
”一列に並んだ三本の緑のガラス壜。あの有名なかぞえ歌のように、一本ずつ落ちて割れていく。”

タイトルはマザーグースからのようで、同じ学校の13歳の少女ばかりを狙った連続絞殺事件を象徴しているわけですが、童謡殺人といったケレン味はなく、後半部でさらりと触れられているだけというのがいかにもディヴァインらしい。
本書の特徴は、3人の登場人物によって割り振りされた一人称多視点の採用でしょう。特に情緒不安定の少女シーリアによる語りの第三部はミステリの趣向にも寄与しているところが巧妙だと思った。
ただ、今回は犯人当てとしてはやや分かり易いかな(動機の線から”この人物しかありえない”と思いその通りだった)。

No.1665 6点 キングを探せ- 法月綸太郎 2011/12/31 16:35
法月綸太郎シリーズ久々の長編。
ライトな筆致で力作感はないけれど、4×2枚のトランプ・カードの組み合わせを巡る”頭の体操”的ロジック展開や、終盤の犯人側と綸太郎の頭脳戦の攻防などが流石と思わせます。
「交換殺人」テーマだと、今更ストレートにそれをトリックとして使用できないでしょうし、どうしてもこういったプロットになりますね。そういえば、綸太郎シリーズの短編にも同じように交換殺人をヒネッたのがあったような。
ところで、本書における、法月警視と綸太郎の事件を巡るディスカッションの雰囲気は、クイーン親子というより都筑道夫の「退職刑事」シリーズを髣髴とさせるものがありますね(親子の立場は逆ですけど)。

No.1664 6点 ミステリが読みたい! 2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/12/30 11:42
数年前の創刊号の身びいきランキングに唖然として以来、ずっとスルーしてきた「早ミス」を久々に購入。「このミス」を読んだ直後だけに、企画、編集内容を自然と比較してしまいます。

ランキング本といっても結局は新刊本の読書ガイドなわけで、21位以下の作品の扱いに冷たい「このミス」と違って、100位までの作品の内容紹介と寸評がある「早ミス」のほうに軍配を上げる。
さらに、ジャンル別ベスト5、部門別ベスト5と、多角的にランク付けしているのがポイント高し。総合ランキング上位といっても自分の嗜好に合うか分からないから、これなら参考になると思う。(個人的には、海外のキャラクター部門で「天使の護衛」が1位タイというのがうれしかった。笑)

早川書房の作品が多くランクインしているのも、新装ポケミスが頑張った今年に限っては身びいきとは言えまい。

No.1663 6点 名探偵群像- シオドー・マシスン 2011/12/28 23:24
歴史上の有名人物を探偵役に据えた連作ミステリ。おなじみの”親愛なる読者諸氏---”で始まるエラリー・クイーンの序文がかなり熱いです。

収録10編の中で印象に残ったのは、まず最初の「名探偵アレキサンダー大王」。毒殺トリック自体は分かり易いけれど、この意外な犯人像の設定には初っ端から「おおっ」と思った。
看護婦たちを引率してクリミアに向かう行程中の殺人を扱った「名探偵フローレンス・ナイチンゲール」もミスディレクションが巧妙な傑作。ナイチンゲールの性格付けが魅力的でこれは長編で読んでみたい気がした。
その他、”エンデヴァー号”船上の殺人に挑むクック艦長、”見えない人”ネタのレオナルド・ダ・ヴィンチ、アフリカのジャングルでのコンビ探偵・スタンレーとリヴィングストン博士なども面白い。
ミステリとしては手掛かりの”気付き”に重点が置かれたものが多い。なかには不出来なものもありますが、各話それぞれの時代背景や雰囲気はしっかり書けているので、歴史モノ好きには満足いく内容だと思います。

No.1662 7点 影の車- 松本清張 2011/12/27 18:53
昭和36年に月刊誌に連載された連作短編集。連作といっても各話に特につながりはなく、明確な共通するテーマも見いだせないのですが、清張お得意の”日常性のなかに忍び込む闇”が引き起こす7つの殺人事件が収録されています。いくつかの作品は”バラ売り”されていて他社の短編集で既読でした。

第1話の「潜在光景」が個人的にベスト。不倫相手である女性の懐かない子供の異常な行為に焦点を当てながら、ラストにくる構図の反転。名作「天城越え」の姉妹編の様な感じ。
他の収録作はトリッキィな作品が多く、この時代ならではの電報を使ったアリバイトリックの「典雅な姉弟」や、意外な死体の処理方法「鉢植えを買う女」なども印象に残った。
古代史ミステリ+現代の殺人の「万葉翡翠」だけ他の作品と毛色が違っているように思えた。

No.1661 6点 非常線- ホイット・マスタスン 2011/12/25 15:23
マスタスン名義の2作目で、今作もオーソドックスな警察小説でした。
細かく分けられた各章の頭に現在時刻を表示して、警察側の捜査活動と犯人の行動を、刻々とドキュメンタリー風に描く方式がサスペンスを醸し出していて良。拉致された娘・エリザベスの愛称が関係者の立ち位置によって、”ベティ”であったり”リズ”と呼んでいたりで情報がすれ違い、身元がなかなか判明しない経緯など芸もなかなか細かい。その点、あらすじ紹介で娘の意外な身元を明かしているのはもったいない。
ブラサム警部を中心とした捜査側の面々の人物造形の書き込みがやや浅く定型どうりというきらいはあるものの、87分署シリーズが書かれる前年の作品であり、時代を考えたらそのへんは止むを得ないかなと思います。

No.1660 4点 このミステリーがすごい!2012年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2011/12/24 18:51
今年は立ち読みで済まそうかな、と思って行った近所の書店では、なんとビニールに密封されて店頭に置かれていた。「このミス」まさかのビニ本化状態。で、やむなく購入。

ランキング入り作品は年々独自色が薄れているけれど、今年は特に顕著で、ほぼ文春と変わらなくなってしまった(ベスト3は国内、海外ともまったく同じ)。来年は一般投票を取り入れるらしいが、そうすると今度は昔の文春のようなランキングになったりして。

企画のほうは、”我が社の隠し玉”ぐらいしか興味が湧かない。論創社の「ウィザーズ&マローン裁判」に期待したいが、それより論創社さん、去年の隠し玉で予告した、クェンティンやクリスピンはどうしたのでしょう?

”このミス大賞作家極上ミステリー特別書き下ろし!”と称して、今年も宝島社お抱え作家の短編が4編収録されているのだけれど、今回初めて読まさせていただいた。
いずれも思っていた以上に筆が立っており(ハードルを低く設定したこともあり)、小粒だけど「クリスマス・テロ」や「YESか脳か」なんか結構面白い。ミステリというよりエンタメ小説といった感じでしたが。

No.1659 5点 大統領のミステリ- リレー長編 2011/12/23 13:45
現職大統領フランクリン・ルーズヴェルトが考えたプロットを、当時(1935年)のアメリカを代表する7人の作家が分担して書いたリレー形式の長編ミステリ。
この数年前に英国で発表された「漂う提督」と比べると、まとまりが良すぎて、リレー・ミステリ特有のギクシャク感がないのが、かえって物足りない。また、謎解きの要素が少ない通俗クライム・ミステリといった内容で、展開がやや冗長に感じた。
ヴァン・ダインが担当した章では、マーカム地方検事やヒース部長刑事を登場させ、アンソニー・アボットはサッチャー・コルト市警本部長を出しているのですが、最後は、E・S・ガードナーのペリイ・メイスン弁護士に美味しい所を持っていかれてます(笑)。

No.1658 6点 謎解き名作ミステリ講座- 事典・ガイド 2011/12/21 18:28
月刊誌に連載時のタイトルは「80年代生まれとミステリを読む」で、読書の中心が新本格以降の国産ミステリというイマドキの大学生を相手にして、名作ミステリをその書かれた時代背景を踏まえて紐解くという講義録のダイジェスト。

毎回、前振りや余談の部分が多いのだけど、名作ミステリの残された謎や瑕疵と思える矛盾点を、著者なりに謎解くという趣向があり、これが面白かった。
たとえば「キドリントンから消えた娘」では、瀬戸川猛資氏の『夜明けの睡魔』のなかで、”見逃せない大きな瑕疵”とされたバレリーの手紙の矛盾とか、「点と線」の東京駅の4分間に関する矛盾を解消させる試みなど、佳多山氏なりのマニアックで強引なロジックながらも興味深く読めた。
本書の性質上、古今東西の名作のネタバラシが前提になっているので取り扱い注意ではありますが。

No.1657 6点 メグレと消えた死体- ジョルジュ・シムノン 2011/12/20 22:17
又聞きの不確かな目撃証言と決定的とはいえない状況証拠で男を警察に引っぱり、心臓病の気があるその男に対して夜を徹する長時間の尋問を行う。警察の待合室には容疑者の年老いた母親が心配して徹夜で付き添う状況・・・・・。
人権擁護団体や弁護士会から訴えられそうなメグレの強引な捜査が気になるのですが、後半部ほとんどを占める尋問場面、容疑者と母親に対峙するメグレの心理戦がなかなか迫力がありました。
登場人物では、過去にメグレと関わったエピソードをもつ通称”のっぽ”の元売春婦がいい味出してます。

No.1656 5点 スパイダーZ- 霞流一 2011/12/18 21:23
本格パズラーと警察小説のハイブリッドというだけでなく、B級アクション、バカミス密室トリック、操りの構図(なにせ、スパイダーですから)など、多彩なミステリ趣向を盛り込んだなかなかの力作だと思います。
問題は、自分が信じる”正義”のためには手段を選ばない主人公の刑事・唐雲の人物造形にあって、この人物に感情移入することは難しいでしょう。
むしろ、ノワールまたはサイコミステリが好みの読者のほうが合うかも。

No.1655 6点 気どった死体- サイモン・ブレット 2011/12/16 18:46
裕福な高齢者限定の長期滞在型ホテルで起きた不審死と宝石盗難事件に遭遇したホテルの新しい住人パージェター未亡人は、亡き夫から伝授された”特殊技術”を使って探偵活動に乗り出すことに......。

サイモン・ブレットのもう一人のシリーズ・キャラクター、パージェター夫人が登場する第1作。俳優パリス・シリーズ同様に、シニカルな英国式ユーモアがちりばめられていますが、コージー系のミステリとはちょっと違います。
殺人者の独白をところどころで挿入したり、終盤に真犯人と思しき人物が次々と変転(二転三転どころか、五転六転)する非常にスリリングな展開で読者を翻弄させてくれます。ただ、推理して真相に至るには伏線不足の気がしますが。
日記や宝石などの小道具をミスリードに使う手法が巧妙で、心地いいヤラレタ感を味わえますよ。

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