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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2474件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1734 6点 老人たちの生活と推理- コリン・ホルト・ソーヤー 2012/04/25 20:37
高級老人ホーム”海の上のカムデン”を舞台にしたコージー系の本格ミステリ、シリーズの第1作。
老婦人の殺害死体が海につづく階段下で発見され、好奇心旺盛なアンジェラ率いる老人探偵団の4人は、マーティネス警部ら捜査陣への迷惑もかえりみず探偵活動に乗り出す、というあらすじです。

毒舌ぎみで含蓄のあるアンジェラの言動などがユーモラスな一方で、老人ホームゆえの哀愁ただよう人生模様も描かれていて、その配分と構成が巧い。謎解き面でも伏線を活かしたフー&ホワイダニット・ミステリとして水準をクリアしていると思う。

No.1733 5点 男は夢の中で死ね- 小泉喜美子 2012/04/24 18:52
”都会派ミステリ集”と称されていますが、広義のミステリの範疇にも入らない作品が大半でした。でも、印象に残ったのはそういった短編ですね。

たとえば、肩を壊したプロ野球の元エースが公園で離婚した妻と息子に再会する「本塁好返球」や、売れない芸人がプロになりきれない相方とバーで遭遇したある出来事「コメディアン」など、謎やトリックとは無縁な、人生の一断面を切り取ったような作品が多い。
なかでは、かつてヒーローだった高校教師の肖像を描いた「ヒーロー」が、ラストの衝撃的な事実でマイ・ベスト作品。

No.1732 6点 死と陽気な女- エリス・ピーターズ 2012/04/23 18:37
「修道士カドフェル」シリーズで人気を博する前に書かれたフェルス一家シリーズの第2作で翌年のエドガー賞作品。
本書は、16歳の息子・ドミニックの成長物語という側面が強い作品です。
殺人容疑がかかった初恋の年上女性の嫌疑を晴らすために、地元の部長刑事である父親ジョージ・フェルスに黙って、ドミニック少年が必死に手掛かりを探るという、父子が別々に探偵活動をするプロットがユニークです。
主要人物の心情がていねいに描写されているのが特徴(ドミニックとキティの最初の出会いの会話など秀逸)ですが、謎解きに関しても動機(犯行の契機)の隠蔽が巧みです。

No.1731 5点 榛名湖殺人事件- 中町信 2012/04/21 17:46
「~湖」シリーズの3作目。
過去の伊香保温泉でのホテル火災のさなかに発生した2件の不審死を追及することで、新たに連続殺人が起こるという、典型的な中町ミステリです。
言葉の取り違えによるミスリードや、記憶障害に特殊な病気の活用、集合写真に記されたダイイングメッセージなど、繰り出される多くの小ネタも毎度お馴染みですが、犯人の設定を二転三転させるプロットが楽しめる。
実は、記憶障害がある素人探偵の「私」という存在と、プロローグの病室のシーンを併せて深読みしてしまった。

No.1730 7点 五人対賭博場- ジャック・フィニイ 2012/04/20 18:39
鬱屈した大学生活をおくる「ぼく」こと、アルを含む男女5人の若者たちが、ネバダ州の豪勢なカジノから売上金を強奪する計画をたて実行するが・・・という粗筋のジャック・フィニイの第1長編。

大胆でユニークな奪取手法も面白いが、実行までの綿密で用意周到な計画も読みどころです。終盤の皮肉なアクシデントから5人の立場を二転三転させる展開もサスペンシフルで良。
仲間の一人に対する扱いにやや不満がありますが、コンゲーム風の襲撃小説(=”ケイパー小説”と言うらしい)の古典傑作と言われるのも納得できます。(青春小説風の余韻が残るエンディングが、いかにもフィニイらしくて印象的)

No.1729 4点 女性編集者殺人事件- 中町信 2012/04/19 18:10
労働争議に揺れる医療関係の出版社で、会社に対して急先鋒の女性組合員が常務室で殺される。被害者が持つ集合写真には血で書いた「S」のダイイングメッセージが・・・・という粗筋です。

創意のある仕掛けが施された初期作品群の中にあって、本書はイマイチの出来。
アリバイ・トリックは長編を支えるには小粒ですし、ダイイングメッセージは(被害者が出版社の編集員という点でなるほどとは思わせますが)、当初からイニシャルとは考えられないので意外性に欠けるように思います。

No.1728 6点 ローリング邸の殺人- ロジャー・スカーレット 2012/04/18 18:40
”館もの”の本格ミステリのみを5作書いたスカーレットの最終第5作。
”ロジャー・スカーレット”は女性2人の合作ペンネームで、いわば筆名で二人一役と性別誤認トリックをやっている訳ですが(笑)、本書でもそれに匹敵する非常に大胆なトリックが用いられており、途中でそれに気付くかどうかで大きく評価が分かれそうな作品です。
多少無理があるようには思いますが、登場人物が限られている中で、意外な犯人像を設定した手腕は認めたい。また、病気療養のため休職中のケイン警視が身分を隠している状況をはじめとして、最後に明かされる数々の伏線も見事です。

No.1727 6点 十和田湖殺人事件- 中町信 2012/04/17 18:41
「~湖」シリーズの2作目。
定番の意味深なプロローグから始まり、十和田湖畔の不審死、”犯人”が乗る旅客機の墜落事故、推理小説の盗作疑惑などが絡むかなり複雑で錯綜したプロットです。
真相を知る人物が告発寸前に次々殺されていく展開は、もはやお約束の様なものですが、〇〇を誤認させるテクニックが「田沢湖」同様に巧妙で、最後まで犯人を絞り込めなかった。
医療関係の出版社勤務という作者の職歴から仕入れたと思われるメインのアイデアは特殊知識ものですが、伏線が丁寧に張られているのでアンフェアという感じは受けない。

No.1726 5点 乾杯、女探偵!- カーター・ブラウン 2012/04/16 18:58
ハリウッドの女探偵メイヴィス・セドリッツ登場。
軽ハードボイルドというより、序盤の死体の処理方法を巡って連続する騒動はドタバタ・コメディです。
マリリン・モンローか「チャーリーズ・エンジェル」のファラ・フォーセット=メジャースを髣髴とさせる、少々オツムの弱い肉体派の主人公メイヴィスは、ひたすらお色気担当で(必然性のないヌード・シーンが三回!)、探偵らしい行動がほとんど見られないのはシリーズのお約束なのか?
かなりご都合主義な展開のすえに、”意外な真犯人”だけは用意されているのですが。

No.1725 5点 私だけが知っている 第2集- アンソロジー(出版社編) 2012/04/15 17:51
昭和30年代のNHK名番組「私だけが知っている」のシナリオ・アンソロジー。第2弾の本書は、全266作品の中から昭和36年以降の12作品が収録されています。

戸板康二「金印」は正月特番ということで、脚本を担当していた鮎川哲也、土屋隆夫、夏樹静子、藤村正太、笹沢左保の5人が探偵局側で出演し、レギュラー探偵団が推理劇を演じるという、攻守ところを替えた趣向が楽しい(内容自体はたわいない消失トリックものですが)。
夏樹静子「崖の上の家」は、自身の長編でも使ったプロット上のトリックが、枚数の関係もあってやや複雑で難解。藤村正太「雪の証言」は、足跡のない殺人テーマ。実行の可能性に疑問があるがミスリードは巧み。
総じて犯人を特定するロジックが弱く、意外性のある”決め手”を設定した作品が見当たらなかったのは残念。

No.1724 6点 ドーヴァー3 誤算- ジョイス・ポーター 2012/04/14 18:06
ドーヴァー警部シリーズ。ポケミス版「ドーヴァー3」を文庫化に際し改題したものです。

複数の猥褻な中傷の手紙が村を揺るがし、女性の自殺未遂とガス中毒死が連続する奇っ怪な事件に、ロンドン警視庁の厄介者ドーヴァーが出馬する。例によって、面倒くさい捜査は部下のマグレガーに押し付け、自分は飲み食い昼寝を決め込むという、いつもながらの展開です。
”天敵”である村の有力者の女性との攻防も可笑しいが、見当違いの推理をするドーヴァーに対して、最後に真犯人が採った行動がまた爆笑ものでした。

No.1723 6点 海神の晩餐- 若竹七海 2012/04/13 18:31
「確か、ジャック・フュートレルは何編かのシンキング・マシンものの未発表原稿とともに、タイタニック号で海に沈んだのだ」

昭和7年、横浜港からバンクーヴァーに向かうあの客船”氷川丸”を舞台にした船上ミステリ。
その20年前にタイタニック号とともに北大西洋に沈んだはずの謎の原稿を巡って、盗難騒ぎや死体消失、はたまた暗号がらみのスパイ謀略と、次々と怪事件が繰り広げられる。
ジャック・フットレルの”思考機械”が登場する結末のない20ページの作中作「消えた女」の謎解きをするのが、ホノルル出身のあの中国人だったり、主人公の青年・本山が”ミスター・モト”と呼ばれているなど、海外クラシックミステリ読みには、ニヤリとさせるミステリ趣向がテンコ盛りで楽しめる。

No.1722 6点 千年ジュリエット- 初野晴 2012/04/11 18:15
学園ミステリ、”ハルチカ”シリーズの第4弾。
廃部寸前の吹奏楽部を立て直し全国大会出場を目指すという、当初のコンセプトに前作で一応の区切りをつけたこともあって、今回は文化祭を背景にした普通の学園ものの様相になっている。
同様の設定のものを読むのが今年に入って3冊目なためか、どことなく既読感があった。結末が欠けた演劇部のシナリオから真相を推理する「決闘戯曲」などは、市井豊の「聴き屋」シリーズの一編と趣向が被っているように思う。
それでも、最終話の「千年ジュリエット」のような良作があったのでこの点数。ミステリとしては薄味ですが、おもわず涙腺を刺激された。

No.1721 6点 罪悪- フェルディナント・フォン・シーラッハ 2012/04/10 18:44
刑事弁護士の「私」が関わった様々な人々のさまざまな犯罪を綴った連作クライム・ミステリの第2弾。
前作「犯罪」と全く同じ構成で二匹目のドジョウ狙いという感があって、異様な犯罪であっても個々の作品から受ける衝撃度は弱まった。200ページ余りに15編収録されており、ショート・ストーリーが多いのも読み応えという点でやや減退している。
陰惨な話が目立つ中で、麻薬取引を巡るドタバタ・コメディ劇の「鍵」が二転三転する展開と、ラストのミステリ趣向が面白く個人的ベスト作品。車、犬、鍵をお題にした落語の三題噺といった感じ。
ショート・コント風の「秘密」には爆笑。これを最終話に持ってきた所に作者のセンスを感じる。

No.1720 7点 狩久探偵小説選- 狩久 2012/04/09 18:44
奇才・狩久の、本格ミステリを中心に編まれたものとしては初の短編集。
瀬折研吉&風呂出亜久子シリーズは、ユーモアとチェスタトン風の逆説的ロジックに溢れた不可能犯罪ものが多い。
なかでも、中編の「虎よ、虎よ、爛爛と---101番目の密室」の”逆密室”の論理が有名ですが、これは誤って理解してました。被害者が外で、容疑者が密室内だから”逆密室”という訳じゃないんですよね。だから、”読者諸君はその密室の中にいた”となるのか。まあ、屁理屈のようにも思えますが。
どちらかというと、ノン・シリーズの作品の方が個人的には嗜好に合っていた。
女優の凄まじい執念がアリバイトリックに結びつく「落石」、密室状況の浴室からの消失トリックがユニークで、怪談話がオチで反転する「山女魚」、密室トリック解明過程が重層的でロジカルな「共犯者」がベスト3かな(やはり、出来のいい作品はみなアンソロジーに採られてますねぇ)。

No.1719 7点 赤の組曲- 土屋隆夫 2012/04/06 18:04
「ビゼーよ、帰れ シューマンは待つ」

千草検事シリーズの2作目。久々の再読で、憶えていたのは冒頭の謎めいたフレーズだけです。でも、これは謎でも何でもなく、早い段階で、”失踪した妻に呼びかける新聞広告の文言”だと明らかになります。
登場人物が限られているため、事件の隠された構図はなんとなく察することが可能ですが、大胆なメイントリックに関して普通に書けばアンフェアになるところを、少年から聴取した野本刑事の回想と少年の日記で処理するという工夫があり(微妙な記述もありますが)、フェア・プレイを強く意識している点を評価したい。また、検事が仕掛けに気付くきっかけが、方言と”野本刑事の初対面の妻”という意外性が秀逸です。
少年と少女の悲劇的なサブストーリーや、叙情的でやるせないラストシーンなどが強く胸を打つ、物語性豊かな本格ミステリの佳作と言えると思います。

No.1718 5点 死の部屋でギターが鳴った- 大谷羊太郎 2012/04/05 18:29
芸能プロ社員の主人公を探偵役に据えた初期の”地方巡業殺人”シリーズの1冊。第12回江戸川乱歩賞の最終候補作を改稿・改題した作品です。
コンサート会場の楽屋で女性歌手が殺される。現場周辺が密室状況だったため容疑者になった主人公は事件の謎を追い、過去の米軍基地内の密室殺人が関係していることを突きとめる、というのが粗筋です。

学生アルバイト楽団に芸能界ネタと、作者の経歴・経験が色濃く反映した物語背景には魅力を感じず、現在と過去の2つの密室の謎だけが読みどころでした。米軍倉庫の方は平凡ですが、楽屋が密室状況になったトリックはちょっとユニーク。原理は”思考機械”シリーズのある作品を連想させますが、作者のギタリストとしての体験が発想のヒントになったのでしょうか。

No.1717 6点 この謎が解けるか?鮎川哲也からの挑戦状1- 鮎川哲也 2012/04/04 18:14
昭和30年代に放映されたNHKの名番組「私だけが知っている」から、鮎川哲也が脚本を書いた7編をピックアップしたもの。シナリオとはいえ、今の時代に鮎哲の”初出作品”を読めるとは思わなかった。

「白樺荘事件」は、人物の特性(=左利きとか色盲とか...)をネタに、ロジカルな消去法推理で犯人を特定していく作者お得意のパターンの作品。これはなかなかの良作だと思う。
「遺品」は、映像作品ならではの伏線がイラストになっているので真相が分かりやすいか。逆に、「俄か芝居」はイラストが誤誘導になっていて巧い。完全に騙された。
鬼貫警部と丹那刑事が登場する「アリバイ」の”時刻表トリック”は伏線不足の感があるが、作者の通読者ならピンと来るかもしれない。
「茜荘事件」と「弓矢荘事件」は共に犯人特定のロジックが弱いと感じた。徳川夢声探偵長からクレームがつきそう。

No.1716 6点 悪魔のような女- 中町信 2012/04/03 18:31
巨額の遺産相続をめぐるフーダニット・ミステリ。
5件の連続殺人のほとんどが総合病院内で起きるところや、刑事が探偵役である点で、これまで読んできたものとやや趣が違うのですが、随所に”らしさ”も覗えます。
相続が不可能な余命数カ月の人物がなぜ殺されるのかという謎も面白いのですが、別の被害者が残した「タンシンフニン」という言葉の真相と、それによって人物関係の構図を逆転させる仕掛けがなかなか巧妙です。
今回のプロローグは「裏の裏」狙いだと思いますが、あまりミスリードの効果はないのでは。

No.1715 6点 中途半端な密室- 東川篤哉 2012/04/02 23:06
プロデビュー前の作品を含む初期短編集。いくつかの作品は既読でしたが、連作物をまとめて読むと若干味わいが異なり今回の方が楽しめた。

個々に見ていくと、表題作は伏線がやや分かり易いが、真相に至る丁寧なロジック展開がいい。家屋消失トリックの「十年の密室・十分の消失」は、なぜ”このタイミングなのか”という説明が弱いと思った。個人的ベストは「南の島の殺人」で、破天荒な騙りの部分が一番面白かった。
作中に、安楽椅子探偵ものに対する作者の持論(=”少ない情報”からロジックを展開させるのが安楽椅子探偵ものの醍醐味)があって共感できるのですが、収録作は必ずしも実践できてると言えないのはご愛敬か。

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