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[ クライム/倒叙 ]
解錠師
スティーヴ・ハミルトン 出版月: 2011年12月 平均: 6.00点 書評数: 5件

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早川書房
2011年12月

早川書房
2012年12月

No.5 8点 糸色女少 2022/05/08 23:39
魅力的な犯罪小説であり、卓抜なサスペンスであり、清冽な青春小説であり、胸キュンのラブストーリーであり、そして実によくできた教養小説である。
この作品の語り手であるマイクは、八歳の時に巻き込まれた事件以後、一言も言葉を発さなくなった。だが彼は二つの飛び抜けた才能を持っていた。ひとつは絵をを描くこと。そしてもうひとつは、鍵のかかった錠を開けること。高校生になったマイクは、ゴーストと呼ばれる伝説の金庫破りに弟子入りし、プロの「ロック・アーティスト」として仕事を始める。泥棒に手を貸し、時には凄惨な現場に立ち会いながらも、彼の脳裏にはいつも愛する少女アメリアの姿があった。
冒頭から現在は収監中であることが示唆されるマイクの回想というかたちで物語は進行してゆく。なぜ彼は一切口を利かなくなったのか。なぜ彼は今、獄中にいるのか。二つの謎を随所ににおわせつつ、孤独で繊細な少年が、残酷な運命に翻弄されながらも、あるべき自分を見出してゆく姿を、鮮やかに描き出している。離れていても、互いの出てくる漫画を描き送って気持ちを確かめ合うマイクとアメリアの恋も儚く美しい。

No.4 6点 猫サーカス 2020/05/26 18:55
主人公マイクルは、解錠という特殊な才能を持つ青年。マイクルは8歳の時に悲惨な体験をし、そのショックでしゃべれなくなった。伯父に引き取られ鬱屈した日々を送る彼にとって、絵を描くことだけが慰めだった。しかし、高校時代にある出来事をきっかけに解錠の才能を発見する。物語は少年時代と、その後のプロの金庫破りとしての暮らしぶりを、マイクルが回想する形で進んでいく。金庫を破るには、錠のかすかな手応えを感じ取る繊細な感覚が必要だ。その緊迫感あふれる緻密な描写が秀逸。そしてアメリアとの交流は、主人公がしゃべれないだけに、いっそうピュアで美しい。すべての悩みや苦しみ、愛や喜びを閉じ込めた心の錠前が少しずつ開かれていくがごとく、主人公が再生に向かう姿に胸が熱くなった。

No.3 4点 HORNET 2015/05/02 21:24
 家庭事情や生い立ちの状況から、幼くして金庫破りにならざるを得なかった青年の物語。金庫破りになった経緯と、現代の話が交互に展開される構成だが、両者の時期が近くで読むのに混乱した。最後に明かされる主人公の過去の真実は、そうして引っ張った長さに見合うだけの深みは感じず、「ふうーん」と思う程度だった。

No.2 5点 あびびび 2013/05/27 23:31
言葉の出ない少年が色々な経緯から鍵に興味を持ち、その世界のキングから教えられ、一流の解錠師になる。まだ18歳と言う若さである。

その過程の中でアメリアと言う同年代の女性と知り合い、生きることへの望みを持つが、解錠師とは泥棒の手助けをすることであり、結局は逮捕され、10年以上の刑期を課せられる。

異色的だが、青春のほろ苦さが伝わってくるいい小説だと思う。

No.1 7点 kanamori 2012/01/13 18:59
「ぼく」こと若い天才金庫破り・マイクルの独白で構成されたクライム・サスペンス。原題は”The Lock Artist"。

なぜ言葉を発せない少年が金庫破りになったのかという経緯の’90年代のパートと、プロの解錠師としての仕事内容を綴った2000年のパートが交互に語られるため、最初のうちは少々混乱し物語に乗れなかったのだけど、終盤の客船を標的にするあたりから緊張感が増し惹きつけられた。
犯罪小説としての面白さはもちろんあるが、運命の少女アメリアとの恋愛・青春小説でもあり、封印された不幸な過去をも解錠する少年の再生の物語としても秀逸だと思う。


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スティーヴ・ハミルトン
2013年07月
氷の闇を越えて
平均:5.00 / 書評数:1
2011年12月
解錠師
平均:6.00 / 書評数:5
2002年05月
狩りの風よ吹け
平均:6.00 / 書評数:1