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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2474件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1754 6点 クイーン・メリー号襲撃- ジャック・フィニイ 2012/06/08 18:16
元アメリカ海軍中尉で現在の平凡な生き方に飽き足らない主人公ヒュー・ブリテンは、豪華客船クイーン・メリー号を乗っ取り、乗客から金品を強奪しようと計画する男女5人組の仲間入りをすることに・・・・・。
第一次大戦時にニューヨーク近海に沈んだドイツの潜水艦(Uボート)を引揚げ、魚雷をブラフに客船を襲撃するという、大胆な犯行手段のアイデアで読ませます。基本プロットは「五人対賭博場」と同じですが、今回はコンゲーム風の趣向はなく、ラストの米軍駆逐艦とのバトルなど、冒険小説の味わいを加味した襲撃小説といえます。
ただ、計画準備段階の潜水艦の引き揚げと修復作業の描写が緻密で多く筆を費やしているのに対して、肝心の襲撃シーンがあっさりしているのが物足りなく感じた。

No.1753 6点 消えたタンカー- 西村京太郎 2012/06/07 19:06
大型原油タンカー沈没事故の生存者6名を次々と殺戮していく謎の殺人者に、十津川警部が対峙するという初期のサスペンス。
発端のインド洋から、国内では長野のスキー場、沖縄、海外ではブラジル、最後は南アフリカと、作品舞台のスケールが大きく、犯人と捜査陣の攻防戦もスリリングです。(非常線を張られたスキー場からの脱出劇は、暗殺者”ジャッカル”とルベル警視の攻防を連想させる)。
単なるサスペンス・ミステリに終始することなく、終盤に事件の構図が反転し、謎解きの趣向が凝らされているのも良。
ただ、初読時には気にならなかったが、犯人の採ったアレはやはり現実には実行不可能じゃないだろうか。

No.1752 6点 フランクを始末するには- アントニー・マン 2012/06/05 22:05
シュールで奇妙な味わいの12作品収録の短編集。なかには、シュール過ぎてオチがよく理解できないものもありました。
印象に残ったのは3編。
赤ん坊が刑事の相棒となって殺人捜査の現場に赴くユーモラスな「マイロとおれ」。標的の大物スターに対峙した殺し屋の立ち場が二転三転する暗殺劇「フランクを始末するには」。ともに、”なんとなく可笑しい”シュールな作品。
そして一番の異色作「買いもの」。登場人物や場面説明の描写が一切なく、ただ20日余りの毎日の買いもの品リストを羅列するだけで、主人公の心情の変化と状況の変化を読者に悟らせるという、これはアイデア賞もの。

No.1751 6点 幽女の如き怨むもの- 三津田信三 2012/06/04 21:57
怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズの最新作。
刀城(作者)が冒頭に断っているように、これまでのシリーズのトレードマークである不可能趣向や多重解決・どんでん返しの連続技がみられない”異色作”です。
戦前から戦中戦後にかけて地方の遊郭で連続して発生した身投げ事件と、廓内を徘徊する幽女の謎を、花魁の日記、当時の女将からの聞き取り、新進怪奇作家の手記をもとに安楽椅子探偵風に謎解くというスタイルですが、謎そのものがスッキリせず解法もいまいちキレがない様に思います。”らしい”ところはある人物に関するサプライズだけのような.....。
でも、これまでの作品と比べて文章が読みやすく、特に前半の緋桜の日記などの昭和遊郭史のような部分が面白く読めたのでこの点数に。

No.1750 5点 のっぽのドロレス- マイクル・アヴァロン 2012/06/03 20:13
”忘れられた軽ハードボイルドを読もう”シリーズ。
いまどき、このタイトルに反応するのはコアな宮部みゆきファンぐらいかもしれません(笑)。

私立探偵小説は少なからず主人公の個性で読ませる所があると思うのですが、本書の私立探偵エド・ヌーンは、同じ50年代に活躍した探偵たちと比べるとやや魅力が乏しく、どちらかと言うとプロットで読ませるタイプのようです。
ミステリとしての肝は、ダイヤの原石の隠し場所を示唆する”なぞなぞ風の詩”の謎解きですが、これは判ってしまった。”ニューヨークで、身長191センチのドロレスより高い女性”といえばアレでしょう。
トビラの登場人物表を身長の高い順に並べるなど、作者の遊び心が楽しい作品。

No.1749 5点 午後からはワニ日和- 似鳥鶏 2012/06/03 18:37
いままで東京創元社お抱えで学園ミステリを専門に書いていた作者の新境地、動物園ミステリ。
ワニの盗難を発端に連続する動物盗難事件に、飼育員の”僕”や強烈キャラの女性獣医をはじめ個性的な動物園スタッフが犯人探しに乗り出す。

なんとなく連作ミステリかと思い込んでいましたが、この小粒な事件で長編一本を読ませるのはさすがに少々きつい。盗難の動機も通俗的常識的なものでホワイダニットとして面白味を感じなかった。
ライトな筆致で語られる、動物園管理の裏事情や個性的なスタッフの生態などは読ませはしますが、ミステリとしては薄味です。

No.1748 6点 迷走パズル- パトリック・クェンティン 2012/06/03 17:27
ピーター&アイリスのダルース夫婦が登場する”パズル・シリーズ”の第1作。
昔から、「愚者パズル」(=植草甚一の『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』)とか、「癲狂院殺人事件」(=『別冊宝石』訳載)のタイトルで知られた、ファンには待望久しい作品の初の書籍化です。

アルコール依存症のピーターや鬱病のアイリスなど、精神を患った患者たちが入院する治療施設内で、怪異な現象がつづき遂に殺人事件が発生する・・・というあらすじです。タイトルからイメージするようなロジックを駆使したパズラーではありませんし、犯人の特殊技能などに陳腐さを感じますが、終盤の関係者を一堂に集めた謎解きなど、古き良き探偵小説の味わいがあります。

No.1747 6点 パラダイス・ロスト- 柳広司 2012/06/02 12:26
「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第3弾。
ドイツ占領下のパリを舞台に記憶を失ったD機関員の工作を描く「誤算」。英領シンガポールのラッフルズ・ホテルを舞台に米海軍士官が巻き込まれる諜報戦の「失楽園」。サンフランシスコから横浜に向かう豪華客船上のスパイ同士の駆け引きと、殺人事件のフーダニットを前後編で描いた「暗号名はケルベロス」など。
3作目となると新鮮な驚きはないけれど、海外の様々な場所で太平洋戦争前夜におけるD機関の活躍を描いていて安定したクオリティを維持している。
駐日英国人記者が魔王・結城中佐とD機関の正体に迫る「追跡」が個人的ベストかな。因みに、西村京太郎の初期スパイ小説「D機関情報」の”ミスターD”はアレン・W・ダレス(のちのCIA長官)がモデルらしいが.....(これは関係ないか 笑)。

No.1746 6点 紳士と月夜の晒し台- ジョージェット・ヘイヤー 2012/06/01 18:20
ハナサイト警視シリーズ(と、言いきっていいのか?)の第1作。これは掘り出し物の本格ミステリでした。
印象的な発端の死体発見シーンが後のストーリー展開に活かされてないのが少々もったいないように思いますが、容疑者最右翼の立場にありながら、能天気でユーモラスな言動を繰り返す被害者の腹違いの弟妹のキャラクターで楽しめます。タイプは若干違うけれどクレイグ・ライスの登場人物を思わせるところがあった。
警視の中途半端?な役割はシリーズ共通のものなのか、次作が楽しみなシリーズです。

No.1745 6点 もろこし桃花幻- 秋梨惟喬 2012/05/31 18:22
中国を舞台に武侠小説と本格ミステリを融合させた”銀牌侠”伝説シリーズの第3弾で、初の長編。
元朝末期、王朝の権威が衰え、流賊が横行する易姓革命の時代を背景に、桃源郷を思わせる閉された村に行きついた主人公らいわくありげな旅人8名が連続殺人に巻き込まれる。

真犯人の正体は意外性を狙いすぎの感があるが、死体の首を切断する理由から浮かび上がる”村の正体”が、このような戦乱の時代ならではのもので、これは感心した。
中国の人名が取っ付きにくいが、旅人一行8名いずれも個性的なキャラクターで書き分けされており、読みずらいということはなかった。

No.1744 6点 完全脱獄- ジャック・フィニイ 2012/05/30 18:15
厳重な警備で知られるサン・クエンティン刑務所に収監され処刑がまじかに迫ったアーニイは、弟ベンと元婚約者のルースの手助けを得て脱獄計画を企てる。

脱獄方法自体は、タイトルからイメージするようなスマートなものではありませんが、ベンの隣家に住み顔見知りである看守が脱獄計画に絡んで、ベンが刑務所に侵入してからの展開が緊張感があって読ませます。
ただ、”事後”のドンデン返しは、「五人対賭博場」と比べると後味がいいとは言えず、フィニイらしくないように思う。

No.1743 5点 綺譚の島- 小島正樹 2012/05/28 21:21
戦国時代の落武者伝説が伝わる島という、「獄門島」と「八つ墓村」を合体させたような設定で、例によって島荘直伝の奇想がこれでもかと言うぐらいに連打される”やりすぎ本格”です。

まあ、好きな人は楽しめると思いますが、ひとつひとつの怪異現象の真相に関しては推理の余地なく、自称・名探偵の謎解きをひたすら拝聴するだけでした。なかでも、海に浮かぶ鎧武者と波間に突き出た木槌の正体には笑わせていただきました。
”奇想=バカミス”ということが再確認できる作品です。

No.1742 7点 アイ・コレクター- セバスチャン・フィツェック 2012/05/27 11:33
ドイツ・ミステリ界の鬼才と言われるだけあって、たしかに型破りのアイデアが施された異形のサイコサスペンスでした。

エピローグに始まりプロローグに終わる構成、ノンブル(ページ番号)も405ページから順に減っていくという構成は、単にタイムリミットもののサスペンスを高める効果のためだけではない、というところが巧妙です。
犯行を幻視する特殊能力をもつ盲目の女性の登場や、主人公である新聞記者の曖昧な心情描写がリーダビリティを損ねているように思いましたが、最後まで読むと納得させられる。
読者を選ぶタイプのミステリだと思いますが、最近の英米ミステリにない自由な発想を評価したい。

No.1741 6点 殺意のまつり- 山村美紗 2012/05/05 23:09
昭和49年から51年にかけて雑誌掲載された初期の短編集。トリックより、捻ったプロットで読ませる作品が多かったように思う。
個人的ベストは表題作の「殺意のまつり」で、20年前の殺人事件の冤罪を追う弁護士の知らない所で、次々と真相が変転していく様は圧巻のひと言。旅客機墜落事故の唯一の生存女性の証言を巡って関係者の思惑が入り乱れる「孤独な証言」もブラックな結末が印象に残る一編。
トリックを主軸にしたものでは、年賀郵便の特殊性を利用したアリバイ工作もの「恐怖の賀状」が細部まで練られた好編。ラストの陥穽も皮肉が効いている。

No.1740 6点 血の味- ブレット・ハリデイ 2012/05/03 18:04
マイアミの赤毛の私立探偵マイケル・シェーン、シリーズ中期の作品。
炭鉱業者と悪徳警察が支配するケンタッキィ州の炭鉱町センターヴィルが舞台。シェーンに援助を求めた改革派の若い炭鉱主が殺され、労働争議の指導者が逮捕されたことから、シェーンは秘書のルーシイとともに町の粛清と真相解明に乗り出す。
本書は、B級ハードボイルドぽいシェーンの強引な調査手法に目を奪われていると、終盤のどんでん返しに足元を掬われるミステリ趣向が光る佳作と言えるでしょう。物語の背景自体が大掛かりなミスディレクションになっています。
しかし、二代目女性秘書のルーシイ・ハミルトン(妻で秘書だったフィリスは亡くなっている)は、いったい何のために同行したのでしょうか?ほとんど意味のない配役です(笑)。

No.1739 5点 この謎が解けるか?鮎川哲也からの挑戦状2- 鮎川哲也 2012/05/02 20:19
昭和30年代にNHKで放映されたドラマ形式の推理クイズ番組「私だけが知っている」のシナリオ集第2弾。
その後に自身の作品でアイデアが再利用されたものが含まれているため既読感もあるが、鮎哲ファンなら楽しめる。

「おかめ・ひょっとこ・般若の面」は、星影ものの長編ほか何度か使われた得意の誤認トリックでまずまずかな。「制服の乙女」は”失言”によって犯人を特定するパターン、「観山荘事件」は人物の特性をきっかけに犯人のミスを暴くパターンで、これはともに簡単すぎるか。
「青嵐荘事件」が良く出来た犯人当て。動機と犯行機会の2つのファクターで容疑者を一覧表分析したうえで盲点を突いた形。犯人の失言も”たしかに言われてみれば....”というもの。

No.1738 5点 ハニー貸します- G・G・フィックリング 2012/05/01 18:34
女私立探偵ハニー・ウェストが活躍する通俗B級ハードボイルド、シリーズの第1作。豪華ヨット船上でテレビドラマ・ロケのスタッフ関係者が次々殺されていくというストーリー。
カーター・ブラウンが創造した女探偵メイヴィス・セドリッツを読んだ流れで、同時代のライヴァルといえるハニー・ウェストの本書も読んでみました。読者サービス満点なお色気シーン(これはテレビ映像化できないでしょう)や、アクション場面での女探偵の特技(空手と柔道の違いがあるが)など、キャラも設定もよく似ています。さらには本書を読む限り、本格ミステリ並みのトリックで意外な犯人の設定に拘っているのも同じです。トリックにかなり無理がありますが。

余談ながら、YouTubeで’60年代のテレビ映像「ハニーにおまかせ」も併せて見ました。主演のアン・フランシスの唇の横にあるホクロが色っぽいです(笑)。

No.1737 5点 高原のフーダニット- 有栖川有栖 2012/04/29 21:12
火村&作家アリス・シリーズの中編集。ただし、「ミステリ夢十夜」は、箸休め的な連作掌編集で、個人的には作者に求めるような内容のものではなかった。
淡路島の観光案内とアリバイ崩しの「オノコロ島ラプソディ」が面白かった。最後に明かされるアリバイ・トリックはバカバカしい限りですが、自虐ネタを交えた軽妙なユーモアが物語を包んでいるため許容できてしまう。
閉された高原の村を舞台にした表題作はオーソドックスな犯人当てですが、これは凡作かな。現場は日が当らず暗いはずで、あの方法では無理なように思う。

No.1736 6点 血ぬられた報酬- ニコラス・ブレイク 2012/04/28 18:48
”交換殺人”を扱ったノン・シリーズのクライム・サスペンス。
本書の数年前に出版されたパトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」について、作者は、その存在を知った時”わが目を疑った”と巻末の「追記」に記していますが、確かにプロットの相似性だけでなく、被害者となる妻の名前がミリアムというところまで同じ(バーバラというもうひとりの女性名も共通)なので、焦ったのは間違いないでしょうね。
物語は、犯罪がどのように明らかになっていくのかというサスペンスの方向には向かわず、ミリアムの夫ネッドの犯行後の葛藤・心情描写を中心に展開しているのがやや冗長に感じましたが、終盤のヨット船上の決着シーンは緊迫感がありよかった。

No.1735 5点 殺人魔術- 梶龍雄 2012/04/26 22:44
昭和53年から58年にかけて雑誌掲載されたミステリ8編収録の短編集。
偽アリバイトリック、毒殺トリック、ダイイング・メッセージ、人物の入れ替り、可能性の殺人など、あまり新味はないものの、各作品とも何らかの本格ミステリらしい仕掛けを入れている。また、作品の語り手に工夫があり、それがトリックに寄与しているのはさすがと思わせます。

なかでは、ある人物のアリバイの誤誘導によって犯行方法に迷彩を施した「色慾の迷彩」、強盗殺人事件に巻き込まれたタクシー運転手の話がラストで反転する「好色の背景」などが面白かった。
トリックとしては大したことがないが、「ピンクが好きな女」の哀切なテイストが初期の青春ミステリを思い起こさせる。

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