皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.88点 | 書評数: 2474件 |
| No.2174 | 7点 | 女王- 連城三紀彦 | 2014/11/16 18:08 |
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| 十二歳以前の記憶を喪失しながら、生まれる前の戦時中の東京大空襲や関東大震災を経験したという記憶に憑りつかれた「私」荻葉史郎は、ある精神科医のもとを訪ねる。そして17年後に再会した老医師は、戦時中に史郎に会ったことがあると驚くべき発言をする。「私」はいったい何者なのか---------。
作者の一周忌に合わせて刊行された遺作の第2弾。 500ページを超える大作で、序章の不可解な謎だけで惹きつけられますが、この辺はまだ文字どおりのプロローグです。このあと、若狭湾で変死した古代史研究家の祖父の行動の謎や、”亡父”春生が遺した中世南北朝時代と邪馬台国を舞台にした日記など、トンデモ系の謎が次から次へと呈示され、もう中盤まででお腹一杯w 現代の「私」とその家系の謎がメインのはずが、いつの間にか邪馬台国テーマの古代史ミステリにトリップし、読者を幻惑させるという構成は連城ミステリの真骨頂と言えるでしょう。魏志倭人伝の”水行十日、陸行一月”の珍解釈はちょっとアレですけど。 いくつかの強引すぎる奇想はアクが強すぎ、読者によっては評価が分かれる気がしますが、連城ミステリの集大成的なところがあり、マニアにはマストリードな作品かと思います。 雑誌掲載終了後未刊行の連城の長編は、まだ3作品も残っているらしいので、来年以降の早期刊行を期待したい。 |
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| No.2173 | 6点 | マスカレード・イブ- 東野圭吾 | 2014/11/14 20:35 |
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| 「マスカレード・ホテル」のダブル主人公、ホテルウーマン山岸尚美と、警視庁捜査一課の刑事・新田浩介が登場する連作中短編集。タイトルの”イブ”は”前夜”ということで、二人が「マスカレード・ホテル」で出合う前のエピソードが4編収録されている。
「それぞれの仮面」と「仮面と覆面」は、山岸を主役にホテルを舞台にしたトラブルを描く。 プロのフロントクラークならではの山岸の機転や推理が鮮やか。登場する元プロ野球選手や覆面作家・玉村薫のモデルが誰なのか、容易に想像できるのが可笑しい。 新田刑事編では、彼の人物像が浮き彫りになっている点はいいが、警察小説としてそれほど新味がある内容とはいえない。 最終話の中編「マスカレード・イブ」がプロットにヒネリがあり、まずまずの出来。ただ、サプライズの演出のために、もう片方側の情報が後出しになっていて、メイントリックも手垢のついたものですが。 ストーリーテラーぶりは相変わらずで非常に読みやすく、東野のファンであれば十分に楽しめるという評価。 |
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| No.2172 | 5点 | 密室の神話- 柄刀一 | 2014/11/12 21:01 |
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| 北海道の裏幌市にある美術専門学校の別棟アトリエで、T型定規に架けられ異様な装飾された学生の変死体が発見される。現場は三重に施錠された密室で、しかも建物の周りが雪で覆われた難攻不落の”四重密室”になっていた----------。
これぞ柄刀ミステリという設定で、フリーカメラマン・南美希風に打って付けの不可能犯罪モノですが、(登場人物の口から名前は出てくるものの)そのシリーズ探偵は登場しません。それでは探偵役は誰かというと、刑事やサークル仲間をはじめ、多くの登場人物が探偵役になっており、しかも集団探偵ものではなく、それぞれの立場で別々の角度から事件に対峙する構成になっているのがユニークなところです。 最終的に謎を解くのは誰か?というのも作者のやりたかった趣向の一つではないかと思いますが、そのため多くの人物の視点で語られるので、物語がなかなか進展しないという難点があります。 また、メインの密室トリックの仕掛けの部分が(北海道という土地柄を活かしたところだけは良ですが)、個人的にはあまり面白く感じるタイプの密室トリックではありませんでした。”犯人”の動機の面でも色々と納得がいかないところがあります。 |
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| No.2171 | 5点 | クローバー・リーフをもう一杯- 円居挽 | 2014/11/10 20:45 |
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| 京都大学キャンパス内のどこかで、密かに営業する神出鬼没のカクテル・バー「三番館」。日常の謎をお代がわりに、俺はそのバーの女性マスター蒼馬美希のもとに足を運ぶ--------。
大学1回生の”俺”が、”賀茂川乱歩”と称する京都観光地巡りのサークル活動中に遭遇した謎を、不思議なバー「三番館」に持ち込み、マスターの作るカクテルを飲むと答えがヒラメく......といった内容の連作ミステリ。 このパターンが繰り返される最初の3編は、手堅くまとめているもののまあ普通の日常の謎モノで、あまり独自性を感じないが、4話目のバーを舞台にしたコンゲーム風のものと、「三番館」とマスターの秘密が絡む最終話が作者らしい作品。最終話は、大掛かりなトリックはともかく、放火犯とマスターという2つの謎に関する伏線のバラマキ具合が絶妙だと思う。 ただ、連作の内容が途中から軌道修正されたためか、主人公の恋の行方という青春ミステリの要素が中途半端で終わってしまったのは残念。 |
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| No.2170 | 6点 | 窓辺の老人- マージェリー・アリンガム | 2014/11/08 10:40 |
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| アマチュア探偵アルバート・キャンピオンが登場する日本で編まれたオリジナル短編集。英国四大女流ミステリ作家の一人といわれたアリンガムだが、創元推理文庫から出るのは「反逆者の財布」以来、なんと半世紀ぶりらしいw
「本格」にジャンル投票している人もいらっしゃるが、唯一20年代に発表された有名な不可能犯罪もの「ボーダーライン事件」と、表題作「窓辺の老人」が黄金期らしいトリッキイな本格編で、他はコンゲーム風味の冒険スリラーが中心になっている。 「ボーダーライン事件」は、アリンガム短編のマスターピースということに異存はないけれど、今回再読して、記号化された端役をひとりの人間として見ることで謎が解けるのだから、オーツ警部のラストの台詞はどうなんだろう?とは思った。 「怪盗”疑問符”」「懐かしの我が家」「行動の意味」といった怪盗や詐欺師、スパイなどの悪漢が登場する冒険スリラーもなかなか面白い。キャンピオンの女友達(とくにクロエ嬢が最高w)など、登場する脇役までが生き生きしていて読んでいて楽しい。 巻末の作者によるエッセイでシリーズの輪郭が掴めるのも良い。ただ、従僕ラッグやキャンピオンの妻となるアマンダなどのレギュラー陣はこの短編集には登場しない。そのうち論創社の未読の冒険スリラーも読んでみようと思う。 |
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| No.2169 | 6点 | 人影花- 今邑彩 | 2014/11/06 18:35 |
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| 昨年亡くなった作者の、個人短編集に未収録だった作品を集めた文庫オリジナル短編集。
ホラーっぽい謎解きミステリから、サイコサスペンス風のもの、サプライズ系のホラー、しゃれたオチのあるショートショートまで、充実した良質な作品が揃っており、落穂ひろい的なものではない。 収録作のなかでは、間違い電話の相手との通話が予想外の展開を見せる「私に似た人」と、婚約者が変死した札幌のホテルを訪れた女性が知る意外な真相の「疵」、山中湖の保養所で女性が遭遇する悪夢「鳥の巣」の3編が特に印象に残る。 また「神の目」は、謎のストーカーの意外性と不可能興味で読ませるが、長編『大蛇伝説殺人事件』の男女私立探偵コンビが再登場、このコンビのやり取りも楽しい。 謎解きミステリがどんでん返しで着地するのは当然ですが、ホラーやサスペンスものでも最後にサプライズを仕掛けてくる今邑作品の面白さを再認識できるハイレベルな短編集になっていると思う。 |
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| No.2168 | 6点 | 処刑までの十章- 連城三紀彦 | 2014/11/04 18:23 |
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| いつもどおり会社へ出勤したはずの兄の靖彦が失踪した。弟の直行は、残された義姉の純子とともに兄の行方を追ううちに、土佐清水市で起きた放火殺人が関連するのではと睨み高知へ向かう。やがて、送られてきた絵はがきに呼応するように、四国の寺で次々とバラバラ死体が見つかる--------。
作者の一周忌に合わせて刊行された遺作大作の一冊。 多摩湖畔や、高知、奈良などと舞台を移しながら、真相を探る度に、義姉・純子の意味ありげな言動や嘘に翻弄される直行。彼といっしょに、読者も多くの謎に彩られた迷宮に引き込まれてしまう。まさに終盤近くの第八章までは、細かな反転を織り込んだいつもの連城ミステリという感じだったのですが........。 本書は一昨年の春まで「小説宝石」に連載されたものの書籍化で、恐らく闘病中の執筆ということが影響しているのでしょう。終章はかなり駆け足気味に語られ、唐突に明かされる真相もすっきりしない。直行と純子を中心に展開されてきた物語だけに、このような結末だと、登場人物や全体構成のバランスの悪さが目立ってしまう。 もはや、作者による加筆・改稿が叶わないのが残念だ。 |
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| No.2167 | 5点 | なぜなら雨が降ったから- 森川智喜 | 2014/11/02 18:36 |
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| 大学に入学した野崎圭人は、引っ越し先のアパートに住む女性・揺木茶々子と知り合う。彼女はアパートの一室で探偵事務所を開いていて、なぜか雨の日になると事件に遭遇する”雨女探偵”だった----------。
作者のミステリは初めて読みます。他の作品の内容紹介や書評を見るかぎり、特殊設定をベースに特異な探偵が登場する一風変わった本格ミステリの書き手という印象だったのですが、そういう意味では、本書はこの作者にしては割と”普通の”連作ミステリになっているように思います。 内容は、謎解きのロジック展開を主軸とするもので、警察が関与する事件もあれば、日常の謎もあり、よく言えばバラエティ豊かです。ただ、提示される謎がいずれも小粒なため、謎解きにそれほど魅力を感じなかったというのが率直な感想。 5話ともに、”雨降り”が事件の性質や謎解きに関係するという作者による共通の”縛り”を設けている点は評価できるかな。 |
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| No.2166 | 6点 | 偽りの殺意- 中町信 | 2014/10/31 23:27 |
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| 光文社文庫オリジナルの本格ミステリ作品集、第2弾。前作とは趣が若干違って、アリバイ崩しがメイン、それも時刻表トリックを主軸にした最初期の中短編が3編収録されている。
どの作品も教科書出版会社がからむという設定が似ており、内容も地味ですが、しっかりと構築されたプロットが評価できる。 刑事たちが靴底をすり減らして聞き込み捜査を繰返す展開は、現在ではあまり人気がないのではと思いますが、作者が強く影響を受けたという鮎川哲也の鬼貫警部シリーズを髣髴とさせる作風が個人的には非常に好ましい。 収録作のなかでは、今回初めて書籍化となった中編の「愛と死の映像」が読み応えのある力作で、これが読めただけで満足。仮説とトライアル&エラーを何度も繰り返し、読者をとことん翻弄するアリバイ崩しの過程にはゾクゾクさせられた。 再読の「偽りの群像」と「急行しろやま」は、トリックが今では新味がないかもしれませんが、後者は鮎哲の某作を思い起こさせる誤導の趣向がうれしい。 |
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| No.2165 | 6点 | 純喫茶「一服堂」の四季- 東川篤哉 | 2014/10/30 18:53 |
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| 古都・鎌倉の路地裏でひっそりと営む古民家風の喫茶店「一服堂」。その女性店主は、極度の人見知りながら、常連客が持ち込む4つの事件の謎を抜群の推理力で解いていく---------もし作者が近くにいたら、迷わず跳び膝げりを食らわしてしまいそうな、開き直りのまんまビブリア風設定の連作ミステリ。
とは言っても、中身の方は日常の謎ではなく、十字架に磔にされた死体や、首なし死体、密室のバラバラ死体などが出てくる、猟奇的な殺人ばかりで、”文字どおり”安楽椅子探偵モノのガチ本格で揃えています。 ただしパロディ要素の強いギャグは若干スベリぎみですが。 個別に見ていくと、真相の絵柄がシュールでバカミス風トリックの第2話も面白いですが、やはり最終話「バラバラ死体と密室の冬」が本書の白眉でしょう。連作を通して仕掛けられたある趣向が、密室トリック解明のカギとなるという構成の妙を評価したいと思います。伏線が不足ぎみも、表紙絵やタイトルの「四季」が上手い(あざとい?)ミスディレクションになっています。 |
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| No.2164 | 7点 | もう年はとれない- ダニエル・フリードマン | 2014/10/28 22:35 |
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| 戦時中の捕虜収容所でお前さんを虐待した元ナチス将校が、金塊を持ち逃げして今でも生きているかもしれない.........戦友の臨終の床での告白を契機に、87歳の元殺人課刑事「わたし」の周りが騒がしくなり、やがて連続殺人が--------。
元メンフィス警察の”伝説の刑事”で、齢87歳という超・後期高齢者探偵バック・シャッツの初登場作品。 これは主人公のユニークなキャラクターの魅力だけで楽しめる。シャッツの武器は357マグナム拳銃と強烈な皮肉。たびたび飛び出す”喫煙”をネタにしたシニカルなジョークがツボにはまって笑ってしまう。弱点は肉体の衰えとアルツハイマー性認知症に対する恐れw なにせ老齢探偵の先輩LAモースの「オールド・ディック」より10歳も年上ですから。 元ナチス将校と金塊の所在追及に力点が置かれず、別の方向にずれていくプロットは好みが分かれそうですが、アイゼンハワー将軍の戦時エピソードなどの伏線を活かした終盤の逆転展開はお見事です。 老妻のローズや孫の大学生テキーラなど、脇を固めるサブキャラクターもいい味を出しているので、シリーズ2作目も期待したい。 |
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| No.2163 | 8点 | ずっとあなたが好きでした- 歌野晶午 | 2014/10/26 18:31 |
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| 「葉桜~」に比肩し得る、歌野晶午の新たな代表作!--------というような、ミステリ系のブログやその筋の方々のTwitterの感想をよく見かけたので、目いっぱいハードルを上げて読みましたw
流行りの言い回しだと、”恋愛小説集に擬態した〇〇ミステリ”で、600ページに近い分量に13編の様々な形の恋愛話が収められています。すっきりした文章なので、長尺のわりには読みやすく、また一気に読んだほうが良いように思います。 内容は、美少女転校生に初恋する小学5年生、年齢を偽りバイトに励む中学生、ラジオの告白番組を利用しようとする高校生、演劇サークルの先輩女性に惑わされる大学生、パリでヌードダンサーと同棲する新米会社員、ネット掲示版で知り合った女性に恋する中堅会社員、集団自殺寸前にメンバーの女性に惚れる中年男、ビラ配りの仕事中に美魔女に魅せられる落ちぶれた初老の男などなど、主人公の年齢はバラバラですが、やはり何歳になっても男は男、どいつもこいつも皆いっしょですねw 純粋な恋愛小説もありますが、ミステリ趣向やオチが施された作品のなかでは、第1話の表題作と、「舞姫」、そして最終話の「散る花、咲く花」の3編がとくに印象に残りました。 |
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| No.2162 | 6点 | 深き森は悪魔のにおい- キリル・ボンフィリオリ | 2014/10/24 22:05 |
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| ジャージー島で妻ジョアンナと暮らす「ぼく」チャーリー・モルデカイの家の近隣で、連続して女性がレイプされる事件が起きる。夫人がともに被害に遭った二人の友人、ジョージとサムとともに、モルデカイは謎の強姦魔探しに乗り出すが--------。
男爵家の次男で怪しげな美術商を営む、”閣下”ことチャーリー・モルデカイを主人公とするシリーズの一冊。 あらすじ紹介だとサイコサスペンス風ですが、モルデカイの語りが猥雑・下品かつブラックなジョークまみれで、終盤まではサスペンス性は全くといっていいほどありません。ジャンルでいうと、パロディ&ユーモア小説であり、グルメと酒の薀蓄が溢れる教養小説でもあり、また悪魔狩りテーマのホラー小説風なところもあり、なんと最後は謎解きミステリになっています。サンリオSF文庫なのにSF要素だけはありませんがw ぶっちゃけ、横道に逸れるパートが多いのが非常に鬱陶しく、どちらかというとトンデモ本なんですが、最終章の急転直下な意外な展開を評価してこの点数にしておきます。 なお、このシリーズはジョニー・デップ主演で映画化され、来春には日本でも公開される予定とのことです。 |
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| No.2161 | 6点 | 岡田鯱彦探偵小説選 Ⅰ- 岡田鯱彦 | 2014/10/22 20:48 |
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| 国文学者で、平安朝を背景にした時代ミステリ「薫大将と匂宮」(源氏物語殺人事件)で知られる岡田鯱彦の、昭和20年代に発表された作品集。この1巻目には、長編の「紅い頸巻(マフラー)」、怪盗”鯱先生”ものの連作短編集と、ほかに最初期の短編3編が収録されています。
「紅い頸巻」は、探偵小説作家の「私」が、かつて家庭教師をした元公爵家令嬢・紅子からの不穏な内容の手紙を受け取るところから物語が始まる。本格もの長編としてはトリック中心ではなく、終盤の惨劇が起きるまでの緊迫感や人間ドラマ的な要素を重視した内容となっていて、代表短編の「噴火口上の殺人」と雰囲気が似ている。 「鯱先生物盗り帳」は、怪盗”鯱先生”を主人公にしたユーモア連作で10編から成る、捕物帳ではなく物盗り帳なのですw 収録作のなかでは、第1話の「クレオパトラの眼」が衆人環視状況下の宝石奪取トリックもので、初登場ゆえのトリックが効いている佳作。第2話、第3話と密室殺人などの不可能犯罪ものが続きますが、総じてトリックやアイデアの原理が海外古典からの借用が多い。「光頭連盟」なぞタイトルだけでネタが半分割れているw なかには鯱先生が普通に名探偵で、怪盗というキャラクターがどこかへ行ってしまっているのもありますが、いずれにしても昭和20年代の古い作品ということを念頭に置いて読めば、それなりに面白いです。 第2巻は、より本格パズラー色が強い作品が多く入っているらしい。またそのうち読んでみよう。 |
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| No.2160 | 6点 | ミンコット荘に死す- レオ・ブルース | 2014/10/20 20:25 |
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| キャロラス・ディーンは深夜に、女傑で知られる旧知のレディ・マーガレットから、娘婿のダリルが銃で自殺したという電話を受ける。早速ミンコット荘に駆けつけたキャロラスだったが、いくつかの不可解な点に疑問を抱く。そして二人目の死体が--------。
パブリック・スクールの歴史教師で素人探偵のキャロラス・ディーンが登場するシリーズ3作目。 事件当時のミンコット荘には、女主人マーガレットとダリルの2人住いだが、別に暮らす息子と娘、使用人たち、村の近隣住民など、かなり多くの関係者が登場する。でも、女中のホッピーをはじめ端役の一人ひとりが個性豊かで、本来間延びしそうな聴き取り調査のパートも退屈はしません。悪ガキのルーパートらレギュラー陣との絡みもシリーズを読み進めるにつれ楽しくなってきます。とはいっても、さすがにレッドヘリングのための人物が多すぎる気がしますが。 先例がある大胆な仕掛けに関しては、(キャロラス同様に直感で)わりと早い段階で真相に気付いてしまった。そのために、よけいに演出過剰なレッドヘリングが気になったのかもしれません。 (なお、本サイト常連のかたは解説にも要注目です) |
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| No.2159 | 6点 | 祟り- トニイ・ヒラーマン | 2014/10/18 15:04 |
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| 人類学者バーゲン・マキーは、旧知のリープホーン警部補から、魔法使い”ナバホ狼”の目撃情報を知らされ、同僚の教授とインディアン保留地に赴く。渓谷地帯でキャンプを張るマキー教授だったが、そこで怪しげな男たちの襲撃をうける--------。
インディアン保留地のナヴァホ族警察リープホーン警部補が登場するシリーズの1作目で、ヒラーマンのデビュー作。ですが、本作ではリープホーンは狂言回し的な脇役で、人類学者マキーを主人公とする冒険スリラー的な内容になっている。 マキーと、彼と同行することになった若い女性エレンが、閉ざされた渓谷や洞窟で男たちと対峙するサバイバル戦のような山岳冒険行がスリリングで、アンドリュウ・ガーヴやディック・フランシスの作品を思わせるところがありました。 (ネタバレぎみですが)当然リープホーンが最後に彼らと合流するわけですが、「危機一髪の瞬間に駆けつけてくるのは昔から騎兵隊なんだ。インディアンじゃないぜ」というマキーの台詞がちょっと粋ですねw ところで、本書をジュニア向けにリライトした本のタイトルが「名探偵はインディアン」なんですが、これだと読む子供が、西部劇に出てくる姿のインディアンを想像しそうで可笑しい。 |
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| No.2158 | 6点 | 悪意の糸- マーガレット・ミラー | 2014/10/16 20:22 |
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| 医師シャーロットの診療所に不義の子を妊娠したという若い女ヴァイオレットがやってきた。堕胎の依頼を断ったシャーロットだったが、混乱した様子が気になって、その夜アパートを訪ねるも彼女は行方不明で、後に水死体で発見される--------。
マーガレット・ミラー久々の本邦初訳作品。 主人公の女医シャーロットは自立心が強い聡明な女性ながら、弁護士のルイスと不倫の関係にあり、その妻グウェンは心気症ぎみでシャーロットの患者という人間関係が徐々に明らかになる。 登場人物が少なめなので、なんとなく先の展開が予想がつき、事件の隠された構図も9割方読めてしまう。彼女の探偵行に絡んでくるのが陽性の刑事ということもあって、途中まではライトな心理サスペンスという感じで、「鉄の門」や「狙った獣」などの傑作群と比べると軽量級という感は否めない。 しかし、その思いは終章で一変、ミラー節が炸裂する。犯人の日常的な会話が徐々に歪んでいき、怪物領域に入った人物の隠された貌が剥き出しになる終局のシーンは圧巻のひとこと。 この真相を読むと、やはり60年代のロス・マクはミラーの影響を受けていたに違いないという思いを強くした。 |
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| No.2157 | 5点 | 謎の野獣事件- 西東登 | 2014/10/14 20:13 |
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| 動物業者の松崎のもとにアメリカ人船員が密輸入した灰色クマの子供のような動物が持ち込まれる。ところが、山梨の動物園に移送途中に事故に巻き込まれ、「彼」は奥多摩の山中に逃げ込んでしまう-------。
”動物推理シリーズ”と銘打たれた長編ミステリ。だいぶ前に読んでそこそこ面白かった覚えがあったのだけど、中盤過ぎまで読んでもストーリーに覚えがない、ラストに明らかになる”野獣の正体”も思っていたものと違う。おかしいなと思い調べてみると、なんと似たタイトルの「幻の獣事件」と混同しておりましたw 山中に逃げた夜行性の肉食獣「彼」の壮絶な生きざまを描いたパートはドラマチックで、非常に読み応えがあります。しかし、その部分は本書のサブストーリーで、本筋は、恋人のエリート会社員に裏切られたタイピスト・夏子の復讐の物語ですが、この倒叙形式で語られる人間ドラマ部分がかなり陳腐な内容なのが残念。 野獣のパートと夏子がどう繋がっていくのかも予測できてしまうので、ミステリとしてはあまり高い評価はできませんでした。 |
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| No.2156 | 6点 | 黒いアリス- トム・デミジョン | 2014/10/12 22:39 |
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| 聡明で天真爛漫な11才の少女アリスは、祖父から遺贈された信託財産に目を付けたグループに誘拐され、南部ヴァージニア州の売春宿に軟禁される。おまけに、メラニン色素を増やす薬によって黒人に変えられてしまう--------。
作者トム・デミジョンは、SF作家のトマス・M・ディッシュと、(「見えないグリーン」などのミステリを書く前の)ジョン・スラデックの合作ペンネーム。 「わたしはユーカイされるところなんだ!とってもスリル!」という、発端のアリスの呑気なつぶやきからは、ルイス・キャロル風の軽い風刺小説か、クライム・コメディを思わせるのですが、実際は想像を超えるタブーまみれの過激な展開の連続で、この内容でよく公民権運動で揺れる60年代に出版できたな、というのが率直な感想です。 人種差別的表現や過激な暴力描写に加えて、アリスの信託財産を奪うために実の父親が精神的虐待を加えるエピソードなど、かなりエグイ。長らく絶版で「復刊はまずありえない」というコメントをよく目にしたけれども、確かに肯ける。 |
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| No.2155 | 6点 | ザ・バット 神話の殺人- ジョー・ネスボ | 2014/10/10 21:00 |
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| オスロ警察のハリー・ホーレ刑事は、シドニーでノルウェー人女性が絞殺された事件の捜査協力のため、遠路オーストラリアにやってきた。現地捜査班の刑事で先住民の血を継ぐアンドリューとコンビを組むことになったハリー刑事は、やがて過去のブロンド女性連続絞殺事件との関連に気付く-------。
本書は「スノーマン」のハリー・ホーレ警部の若い頃の事件を扱ったシリーズの第1作で、ネスボのデビュー作でもある。 南半球の異郷の地が舞台ということもあり、北欧ミステリの雰囲気はない。 途中まではシドニー警察の刑事との相棒小説という様相で、異文化・現地風俗のガイダンス風。相棒アンドリュー刑事による先住民の伝承・神話の説明も挿入されつつ、淡々と捜査状況が描かれているのだけど、中盤過ぎに一気にストーリーが転調し、それまでのエピソードが全て伏線だったことに気付かされる。この構成はなかなか巧みです。 ただ、ハリー刑事がアルコール依存症になった原因である”過去”が語られることで、物語や人物造形に深みを与えていて、デビュー作としては完成度も高いとは思うものの、謎解きサスペンス物としては後半の展開が(衝撃的ではあるけれど)あまり新味を感じなかった。 |
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