皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 戦艦金剛 |
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蒼社廉三 | 出版月: 1967年01月 | 平均: 6.25点 | 書評数: 4件 |
徳間書店 1967年01月 |
大陸書館 2024年02月 |
No.4 | 5点 | ボナンザ | 2021/03/16 22:42 |
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軍記ものに見せた純粋なフーダニット。 |
No.3 | 7点 | 人並由真 | 2016/10/19 19:01 |
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(ネタバレなし)
戦記や戦争文学への素養は希薄なので、そういう意味でとても新鮮だった(作中の主要人物は創造の産物らしいが)。 太平洋戦争の進展、戦艦金剛内での妨害活動の謎で大筋に起伏を持たせながら、物語前半で発生した異色の密室殺人事件についての推理も展開していく。探偵役の変遷という趣向も、特殊な物語設定に合致していて面白い。 終盤ギリギリに明かされる真相と真犯人の意外性はなかなかのもので、トリックは某海外作家のある短編を想起させたが、作品としてはこちらの方が早いはずだ。戦記ミステリという形質のなかで、作者がやりたいことを描き切ったとするのなら、これはまさに本懐となる一冊だろう。そのうち、原型の方の中編も読んでみたいものである。 ちなみに昭和の文芸作品としては、途中で作者の私見が地の文で入り、1967年の時点からベトナム戦争へのリアルタイムの感慨が語られるのが印象的だった。 |
No.2 | 7点 | nukkam | 2016/01/09 22:46 |
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(ネタバレなしです) 何の予備知識もなければ1967年発表の本書のタイトルからミステリーを期待する読者は少ないでしょう。しかし1942年3月から1944年11月までの第二次世界大戦中の時代を背景に戦艦金剛の砲塔内で起こった殺人事件の謎解きに取り組んだ個性的な本格派推理小説です。軍人精神、反戦活動、そして戦闘場面などの描写にも力が入っており、ミステリーと戦記小説の(非常に珍しい)ジャンルミックスとして成功しています。やはり戦時下の事件を扱った梶龍雄の「透明な季節」(1977年)は戦争の激化描写がややもすると謎解き興味を減退させてしまったのですが本書ではぎりぎりの線でミステリーとして踏みとどまり、終盤の極限状態の中で追い詰められた探偵役(容疑者の1人でもありました)が犯人の正体に気がつく場面の何とスリリングなことでしょう。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2014/08/03 16:38 |
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昭和17年10月、ソロモン諸島沖を南下してガダルカナル島に向かう戦艦金剛の艦内で、何者かによって反戦ビラがまかれる。さらに、ガ島の米軍飛行場を砲撃した直後、密室状況の砲塔内で上曹が射殺される事件が起きる-------。
「本格ミステリ・フラッシュバック」からのセレクト。 戦時中の戦艦(クローズドサークル)内での不可能殺人という設定が非常にユニークです。 嫌われ者だった被害者の須貝上曹を巡って、乗組員の何人もが動機を持ち、その過去の因縁話を絡めた人間ドラマが丁寧に描かれています。てっきり探偵役だろうと思っていた人物が途中意外な形で退場したり、戦闘真っ只中の劇的なラストシーンで真相が提示されるなど、プロットも工夫が凝らされていると思います。犯行方法と犯人につながる伏線もさりげなく張られています。 ただ、作者は戦記作家も目指していたためか、とりたてて本筋に関係しない戦況や軍部の作戦に関する分析が多く挿入されているのが難点で、純粋に本格ミステリとして読んでいくと興をそがれる側面がありました。 |