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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.240 6点 悪魔の収穫祭- トマス・トライオン 2010/04/30 17:55
ある閉鎖的な村に外部の人間が移り住むことで、隠された共同体の秘密が明らかになっていく恐怖を描いています。
ホラー小説の定番といえば定番のプロットですが、秘密の正体を少しづつ見せていく手法の巧さが光っています。理想郷だと思い移り住んだ画家一家が村の禁忌に気付いた瞬間、恐怖は一気に頂点に達します。
どちらかというと英国の作家が書きそうな作風で、米国人作家のこのようなホラーは珍しい感じがしました。

No.239 6点 匿名原稿- スティーヴン・グリーンリーフ 2010/04/30 17:30
サン・フランシスコの知性派私立探偵・ジョン・タナー、シリーズ第7作。20年間に14作創作されシリーズは終了しています。
ネオ・ハードボイルドの知性派といえば、アルバート・サムソンが思い浮かぶ。タナーはどうしてもアーチャーの亜流の感じがして、サムソン程の個性を出していない気がします。
本書はシリーズ中、最も本格度が高く代表作だと思います。最後に関係者を集めた謎解きまでしてくれてますから。

No.238 5点 エデン- 近藤史恵 2010/04/30 01:17
自転車ロードレース小説第2弾、「サクリファイス」の続編。
全篇にわたってツール・ド・フランスを舞台背景に、チームの消滅危機、ライバルチームとの駆け引き、薬物疑惑などを織り込みながら、主人公である日本人青年のアシスタント・レーサーとしての矜持を謳い上げています。
今回は、ミステリ趣向がほとんどありませんが、まずまず楽しめました。

No.237 5点 影の座標- 海渡英祐 2010/04/30 01:02
乱歩賞受賞後の第1作。
前作とは全く趣を変えて現代もので産業スパイが題材ですが、それは表面上だけで意外な犯人ものの本格ミステリになっています。
ただ、現在ではこの意外な犯人像は典型的な「意外な犯人」になってしまっており、逆説的にもはや意外な犯人とは言えません。
ある工夫をして隠蔽していますが、成功しているとは言い難いと思います。

No.236 6点 水時計- ジム・ケリー 2010/04/29 21:16
新聞記者フィリップ・ドライデンを主人公にした本格ミステリ、シリーズ第1作。
修復中の大聖堂から発見された古い死体から30年前の事件が炙りだされる。米国の新聞記者ものとは少しテイストが異なる、いかにも英国風の伏線を丁寧に張った地味な本格編という感じです。
解説を読むと、作者はセイヤーズを敬愛していて本作は「ナイン・テイラーズ」の本歌取りとのことですが、バンター風の雇われ運転手が出てくるなど、たしかにそう読めないこともないです。

No.235 6点 赤き死の訪れ- ポール・ドハティ 2010/04/29 20:50
14世紀のロンドンを舞台背景にした歴史ミステリ、アセルスタン托鉢修道士シリーズ第2弾。
クランストン検視官とともに、ロンドン塔での連続不可能殺人に携わります。この検視官がなかなか個性的で、豪快かつ繊細なところはH・M卿を彷彿とさせます。上司格なのにワトソン役なのもちょっとユニークです。
終盤、些細な手掛りから次々と謎が解かれていく過程はよく出来ていると思います。ロンドンの風俗描写は前作と比べて抑え気味で、今作の方が純粋に本格ミステリとして楽しめました。
著者は、いくつかの歴史ミステリのシリーズを書いていますが、当シリーズが一番本格度が高いようです。

No.234 4点 読後焼却のこと- ヘレン・マクロイ 2010/04/29 18:17
偶然見つかった殺人計画メモがもたらすサスペンス、1980年作の著者最後の長編ミステリです。
未亡人で作家である主人公の家が舞台で、間借りする5人の文筆家の中に、犯人と殺害対象の覆面評論家がいるという古典的設定自体は面白いですが、そこからの展開が冗長で、登場人物も最盛期のような個性的な書き分けが出来ていないように思いました。ベイジル・ウィリング博士も登場しますが、これも精彩を欠いて見え、結末もあっけないです。

No.233 6点 修道女フィデルマの叡智- ピーター・トレメイン 2010/04/29 17:31
7世紀のアイルランドを舞台背景にした連作ミステリ短編集。
長編が3作邦訳されていますが、一冊も読んでいないので、探偵役の法廷弁護士&裁判官フィデルマの造形がいまひとつ分からない所がありますが、キレのある本格ミステリでもあるので結構楽しめました。
なかでは、王位継承の儀式に必要な刀剣の盗難事件の二転三転する推理が楽しめる「大王の剣」が印象に残りました。
逆の立場で、織田信長推理帳を英国人が読むとどうなんだろうとか、しょうもないことを考えてしまった。

No.232 6点 金庫と老婆- パトリック・クェンティン 2010/04/29 16:55
ミステリ短編集。
作風から推してホイーラー単独になってからの作品集かと思いますが、ブラックな味付けのサスペンスの傑作が含まれています。
老嬢の初恋がもたらす衝撃のエンディング「ルーシーの初恋」、過剰すぎる父親の愛情への対抗策「親殺しの肖像」、ある男に金庫に閉じ込められた夫人を描く傑作サスペンス「金庫と老婆」など。
テーマに重複がみられ、訳文も古いのが難点ですが、唯一の邦訳短編集ということで、読んで損はないでしょう。

No.231 6点 七番目の仮説- ポール・アルテ 2010/04/29 16:27
犯罪学者アラン・ツイスト博士シリーズ第6作。
発端の異様な衣装のペスト菌医師とかペスト患者の消失と死体出現などの怪奇と不可能趣向は、読者を物語に引き込む手法としてまずまず成功していると思います。
第2部の劇作家と俳優の殺人ゲームについても、ハースト警部が6つの仮説を上げるところから盛り上がってきます。しかし、複数犯による第1部の事件がミスリードになって、7番目の仮説が盲点になるという作者の意図はわかるんですが、あまり意外性のあるものとは思えませんでした。

No.230 6点 メグル- 乾ルカ 2010/04/29 15:55
学生部から紹介されたちょっと変わったアルバイト先で大学生たちが遭遇する奇蹟の物語。
冒頭だけ読んで、軽いユーモアミステリかと思っていたら全然違った。収録作の多くは死や病いがテーマなので軽くはないし、ミステリとは言えない話もありました。
5つの物語は枠組みは同じですが、内容はホラー系、日常の謎、奇妙な味、ファンタジーなどテイストがそれぞれ異なるのに感心。奇妙な味風で最後に逆転がある「アタエル」が一番ミステリをしていますが、読み手によって好みが分かれそうです。

No.229 7点 顎十郎捕物帳- 久生十蘭 2010/04/29 15:36
北町奉行所のもてあまし者・通称<顎十郎>こと仙波阿古十郎を主人公とした傑作捕物帳。全24編収録。
この捕物帳の特徴は、発端に提示される謎が奇天烈で魅力的なことでしょう。解決も戦前の作品とは思えないスマートなもので、これらは都筑道夫の「なめくじ長屋」シリーズを彷彿とさせます。
収録作でいうと、マリー・セレスト号の謎を思わせる乗船員消失トリック「遠島船」、見世物小屋の鯨が一瞬にして消える「両国の鯨」、密室からの大金奪取トリック「紙凧」など、不可能トリックものが多く含まれています。なーんだ、というオチもありますが、奇想にあふれた楽しい連作ミステリでした。

No.228 5点 失われた背景- 陳舜臣 2010/04/29 15:08
香港の東方文明研究所から日本支部に派遣された2名の中国人青年が連続殺人に巻き込まれるというお話。
著者の本格ミステリでは珍しい文庫で600ページを超える大長編。序盤で語られる過去のエピソード(骨董贋作事件や中国大陸での将軍暗殺事件)が本筋の事件とどのように関わってくるかの興味で読み進めましたが、いつの間にか焦点が別の方向に向いてしまっています。新聞連載のためか、中盤は殺人容疑を受けた青年の逃亡サスペンスの様相で枚数を稼ぎ、結末のつけ方もあまり工夫が見られません。ファンであればある程度楽しめるかもしれませんが、平凡な出来という感想です。

No.227 5点 狂った信号- 佐野洋 2010/04/29 00:00
自動車教習所教官殺しを始めとする連続殺人を描いた、著者にすれば比較的派手な作品です。
ミッシングリングがテーマですが、動機はある程度予想がつき易くなっていて、本格というより「黒衣の花嫁」タイプのサスペンスという感じです。
短めの長編なので、物語に厚みがなく物足りないです。

No.226 6点 おかしな死体(ホトケ)ども- 海渡英祐 2010/04/28 23:42
吉田茂警部補苦虫捕物帳、ユーモア連作ミステリ第1弾。
かつてのワンマン宰相似の主人公が、部下の佐藤富作部長刑事や田中角兵衛刑事を引き連れて、奇妙な死体状況の事件ばかりを解決します。
随所に出て来るクスグリは時代を感じさせて笑えませんが、不可解な謎とその合理的解答は少しも古びていないと思います。

No.225 7点 傷痕の街- 生島治郎 2010/04/28 23:25
国産ハードボイルドの路傍的作品、著者のデビュー作。
チャンドラーの影響を受けているといわれていますが、あまりそうは思わなかった。主人公が私立探偵でなく舞台が港湾近辺で終始しているという要因もあるかもしれませんが、、主人公の行動原理が、自身に降りかかった火の粉を払うというような、日本的な泥臭さがあります。
抒情性があって研ぎ澄まされた文体は、第1作にして既に完成されています。

No.224 6点 牙をむく都会- 逢坂剛 2010/04/27 20:54
現代調査研究所・岡坂神策シリーズの長編サスペンス。
シリーズの愛読者でないと、この内容にとまどうか場合によっては怒る人もいるかもしれません。
いちおう陰謀めいた話もありますが、スペイン現代史や西部映画のウンチクが延々と語られ、主人公は御茶ノ水界隈をぶらぶらするだけ。でも、こういったまったりした雰囲気がたまらないんです。

No.223 6点 突然の明日- 笹沢左保 2010/04/27 20:36
人間消失がメイントリックの本格ミステリ。
尾行していた主人公の目の前で対象人物が消える、いきなり提示される謎は強烈で魅力的ですが、終盤で明かされる解答には唖然というか脱力。読んですぐ「姑獲鳥」を連想しました。しかし、京極堂のほうは視点人物が精神不安定だとか、説得力を高めるため色々工夫されていたように思いましたが。

No.222 5点 ぼくらの気持- 栗本薫 2010/04/27 20:16
学生ロックバンド<ポーの一族>のメンバー3人も卒業し、それぞれの道に・・・。青春ミステリ「ぼくら」シリーズ第2作は、漫画出版社勤務になったヤスヒコが女性漫画家殺しの容疑者にされ、薫と信が解決に奮闘するという話。
このシリーズに思い入れがないと、定番のミステリの構成に苦笑ものかもしれませんが、30年ぶりに続編を読む身にとっては、なかなか感慨深いものがありました。しかし、ヤスにとって、この苦い結末は重すぎる。

No.221 7点 影の地帯- 松本清張 2010/04/27 18:50
著者が社会派ミステリの大家であることは間違いないでしょうが、本書や「黄色い風土」のような謎の集団が登場する陰謀ミステリのほうが、個人的には好きです。
個人カメラマンが好奇心から追求した謎が、信州山間部の村で終決するまでのサスペンスの盛り上げ方はさすがです。とくに石鹸工場の秘密にはゾッとします。
相変わらずご都合主義な点はありますが、理屈で読むのではなく、ダイナミックな物語性を楽しむタイプの小説です。

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