皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 警察小説 ] ギデオンの一日 ギデオン警視シリーズ |
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J・J・マリック | 出版月: 1958年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1958年07月 |
早川書房 1977年08月 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2017/09/20 14:52 |
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(ネタバレなし)
邦訳された作品はそれなりに集めておきながら、本編そのものはこれまで殆ど~全く読んでいなかった作家やシリーズ探偵は少なくない(汗)が、マリックのジョージ・ギデオン警視ものもその一つだった。 そこで本書(1955年のイギリス作品)は、今回たまたま本棚からHM文庫版が出てきたので読み出したが、うん、これはけっこう楽しめた。 冒頭、何事か激昂しているギデオン警視の前に、見栄えのよい美青年の部長刑事が登場。ああ、これはモース(コリン・デクスターの)にとってのルイス的なポジションの部下だろうなと思っていると、いきなりこちらの予見は裏切られる。読者への掴みとしてはなかなかよろしい。 モジュラー式警察小説の先駆として有名な作品(シリーズ)だが、内容はその世評に違わない。本書の場合は題名の通り、ギデオンがある年のある月に迎えたその一日のなかで大小の事件が語られ、これが総計7~8件(絡み合うものもある)。 さらに作中の現実ではもっともっと多くの犯罪がギデオンの周辺や視野の向こうで起きていることも描かれ(まあロンドン規模で考えればそうだろうけど)、スコットランドヤードも所轄の警察も楽じゃないという、せわしないまでの群像劇が語られる。続出する事件に振り回されながら、以前から目をつけていた麻薬犯罪のボスのところに、ついに尻尾を出した連続強盗犯の逃走現場に、自ら乗り込んでいくギデオンの活躍も主人公然としてよい。 なお物語のメインとなる二つの事件は早めにそれらしい筆致で語られ出すので、ああ、クライマックスはその二件の決着を迎えて終わるなということは大方予想がつくものの、一方でそれとは別個に起きる大小の事件の頻発(それぞれどこまで発展するか、短期間で解決されるのか、当初はわからない)が、ストーリーの流れにいい感じでメリハリを与えている。 また職務を離れた家庭人としての警官像(悪妻ではないのもの、どことなくしっくりこない妻ケイトとギデオンの関係など)も多少の類型感はあるものの、きちんと押さえられており、クロージングの余韻も小説として好ましい。 土屋隆夫作品が国産本格の教科書と言われたことがあったが、こちらは(モジュラー型)警察小説の先駆的な教科書という印象。ギデオンの相棒格のルメートル主任警部以外に、今後のシリーズキャラクターになりそうな警官がいないのがちょっと気になったけど、シリーズ続編では部下の刑事たちも増えていくのだろうか。 |
No.1 | 4点 | kanamori | 2010/04/22 18:59 |
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モジュラー型警察小説ギデオン警視シリーズの第1作。
この作品の翌年に87分署シリーズの第1作が発表されているので、本書がこの形式の警察小説の先駆と言えます。 しかし、内容的にはいまいちです。主人公の役職が高いこともあると思いますが、事件そのものに直接タッチせず、複数の発生事件のうち解決しないものもあるなど、ミステリよりリアルな警察活動を描くことに重点が置かれているように思います。 著者は24のペンネームを持ち、本名のジョン・クリーシーでは「トフ氏」シリーズが有名です。 |