皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
|
---|---|
平均点: 5.87点 | 書評数: 1197件 |
No.27 | 7点 | きこえる- 道尾秀介 | 2024/06/03 20:34 |
---|---|---|---|
各短編の結末に(時に冒頭や作中にも)ある二次元コードでYouTubeにアクセス。その音声…によって真相が…という趣向。臨場感も出て、この手法自体は面白いと思いましたね。もっと効果的な使い方もありそうだし、続編を期待したいところ。採点は短編ごとにマチマチだけれど、新鮮さと今後への期待を込めて加点。
①聞こえる:冒頭の短編なのに、分かりにくかったなぁ。 ②にんげん玉:ふむふむ。いかにも作者らしい仕掛け。 ③セミ:本作品中のベスト。ある意味で作者らしい内容と締め方。 ④ハリガネムシ:むしろ「その後」が気になった。 ⑤死者の耳:おっと。そういう使い方もアリだったか。 |
No.26 | 5点 | フォトミステリー ―PHOTO・MYSTERY―- 道尾秀介 | 2023/09/16 20:22 |
---|---|---|---|
写真と(超)ショートショートを組み合わせた作品を50編収録。「いけない」シリーズの発想を突き詰めるとこうなるのか?何となく某テレビ番組の「写真で一言」的なものかと思っていたのですが、ちょっと(かなり?)違っていて、瞬間的な面白みというよりも、一瞬考える“間”を楽しめるかどうか。
作者のチャレンジ精神は買うのですが、「こういった解釈(楽しみ方)でいいんだよね?」と不安?になったり、ちょっと意図が掴み切れなかった作品も正直ございました。 |
No.25 | 5点 | いけないII- 道尾秀介 | 2023/02/04 19:13 |
---|---|---|---|
連作短編。「その写真を見たとき、物語は一変する」という謳い文句で、各短編終了後に写真が示される構成。直ぐには気付かなくても、その後の短編を読み進めていくうちに、真相に気付けるような配慮はなされています。
作品の趣旨はよくわかるし、嫌いではないのだけれども、正直、写真を見せられた時の驚きが希薄というか、個人的にはカタルシスが得られなかったです…。私の読み方が悪いのかもしれませんが…。 好き嫌いの評価は分かれるような気がします。あまりにも理不尽な哀しみを背負う方が多いのも、個人的には辛かった。 |
No.24 | 6点 | スケルトン・キー- 道尾秀介 | 2022/11/26 22:00 |
---|---|---|---|
サイコパスのお話。作者らしい仕掛けはあるのだけれど、サイコパス多すぎだし、死にすぎだし、ちょっと自分には合わない面も。ラストに少しだけ救われたかな。 |
No.23 | 6点 | いけない- 道尾秀介 | 2020/08/11 11:22 |
---|---|---|---|
「『ここ分かった!? 』と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説」、らしい。
確かにそうかもしれない。どこで、どうやって気付くか…ってのはあるけど。あまり1編ごとに深追いしないで、最後まで読みきった方が楽しめるのかも。いや、人によるか。 とてつもない大技がある訳ではないのだけれども、趣向自体はいかにもこの作者らしく、印象に残りそうです。語弊があるかもしれないけど、作者の「遊び心」をどう受け取るか…ということなのかな。 |
No.22 | 6点 | ノエル: -a story of stories-- 道尾秀介 | 2016/08/03 23:01 |
---|---|---|---|
3編から成る連作短編集…と言うべきでしょうねぇ。
最初の「光の箱」は、結構イイ。作者の企みに見事にハマった訳ですが、読後笑顔で「ちくしょう、やられたよ」って呟いてしまうタイプの作品。(逆にこのタイプが好きではない方もいらっしゃると思いますが。)これ単体であれば、もっと高得点。 で、他の2作品ですが、最初の作品から概ねパターンが想像できてしまうこともあり、インパクトは相当に落ちます。勿論、各話とも、また各話を繋ぐ全体構成としても、綺麗に収束させているのですが、優等生的すぎて、イマイチ引っかからない印象もありました。 「光の箱」は好きなんだけどなぁ…。 |
No.21 | 6点 | 透明カメレオン- 道尾秀介 | 2016/02/06 18:53 |
---|---|---|---|
ラジオパーソナリティ「恭太郎」は、声は抜群、容姿はイマイチ。ある日、行きつけのバーで不可思議な女性「恵」に出会う。バー常連の仲間たちも彼女に巻き込まれ…という展開。
流石と言いますか、飽きさせることなく適度な転換がなされ、心地よいドキドキ感を持って読み進めることができました。各々の部分では、ちょっと先が読めてしまう面もあるのですが、全体像からすれば、それもまぁ小さな問題なのかな。読後感も良く、(ミステリ的観点に拘らない)小説としては、好きなタイプですね。 |
No.20 | 6点 | 貘の檻- 道尾秀介 | 2014/08/16 19:10 |
---|---|---|---|
近年は非ミステリ作品も多い作者ですが,この作品は,作者の初期作風を思い起こさせ,ファンとしては懐かしさとともに(?)引き込まれました。過去と現在,夢と現実が入り混じった構成,舞台が地方の寒村,向日葵とか蜘蛛も登場して…って,初期の複数の作品が思い浮かびますよねぇ。
というわけで,ちょっと過度に期待を膨らまして読んでしまったのかも。いや,確かに作者らしい展開だし,少なくとも現実の風景&人物描写はイイのだけれども…この点数くらいにしておきます。 ちなみに,悪夢の描写は結構くどくて読み飛ばしたくなりました。無論,この部分が特徴といえば特徴なのですが…。この点については,好き嫌いがハッキリと分かれると思いますね。 |
No.19 | 6点 | 鏡の花- 道尾秀介 | 2014/04/13 23:34 |
---|---|---|---|
不思議な世界観の連作短編集です。
第2章に入って驚きました。なぜなら,第1章で亡くなっていた設定の人間が生きていて,生きている設定の人間が亡くなっているから。 つまりは,限られた登場人物の中で「この人が亡くなっている」という様々な設定で各短編が描かれているわけでして,何とも不思議な余韻を残します。 ミステリ的な側面は極めて弱いのですが,着目点や作者の表現手法(コレは好き嫌いがあると思いますが…)には一目置きます。 |
No.18 | 6点 | 光- 道尾秀介 | 2013/03/26 23:13 |
---|---|---|---|
少年達の冒険物語として見れば,なかなかの良作と思います。一方,ミステリ的な味付けは決して濃くなく,その部分を期待している方にとっては肩透かし感を抱くかもしれません。
章建てになっていますが,前半は各章ごとに一応の謎と解決が用意されており,連作短編の体裁。後半はサスペンス的要素も加わって勢いを増していきます。 主人公は,これまでの作者の作品に登場してきた少年の中で最も「少年らしい少年」で,その仲間たちを含めて,感情移入しやすかったですね。リーダビリティも高く,何とも言えない懐かしい心情・雰囲気を満喫しました。装丁も良いです。 |
No.17 | 5点 | 笑うハーレキン- 道尾秀介 | 2013/03/19 00:05 |
---|---|---|---|
読売新聞に連載されていた新聞小説です。
経営していた会社も家族も失い,今は「ホームレス家具職人」とでも言うべき生活を送る主人公。そこに謎の女・奈々恵が弟子入り志願してきて,さてさて…という展開です。 人と人との絆だとか,人間への温かいまなざしだとか,その想いは伝わってきます。また,作者らしい伏線や反転も(期待ほどではなかったにせよ)忍ばせてあります。 一方で,冗長に感じてしまった面も。また,後半の「棚修理」の流れは,唐突過ぎるし,個人的には「とって付けた感」が否めませんでした。 道尾作品としては,正直「中の下」といった印象です。サービスしてこの点数でしょうか。 |
No.16 | 6点 | 水の柩- 道尾秀介 | 2012/01/08 16:00 |
---|---|---|---|
自分が「普通」で退屈なことを嘆く少年は,イジメを受け「普通」を欲する少女や長年の秘密を抱える家族のために何ができるのか?
道尾ファンとしては,どうしても作者の「騙しの技巧」に期待してしまいます。本作品は,騙しの要素が皆無とは言えませんが,決してそれがメインではなく,限りなく文学作品寄り。よって,ミステリ的側面のみを期待している方にとっては肩透しでしょう。 私も「道尾ミステリ」に期待して本作品を手に取ったわけです(事前調査なしで読みましたので…)。で,その結果文学寄りだったと。しかし,なかなか沁みる読後感でして,がっかりはしませんでしたね。情景描写なども美しいですし,作者の奥深さは感じました。道尾ミステリの楽しみは,次回作以降に取って置きましょう。 |
No.15 | 6点 | 光媒の花- 道尾秀介 | 2011/06/20 21:15 |
---|---|---|---|
道尾作品の中でどのような順でこの作品を読んだのか,それで評価は分かれるような気がします。
まず,ラットマン周辺を既読の方にとっては,この作品に物足りなさを感じると思いますね。作品にとって良いか悪いかは別として,彼のこれまでの特長が見受けられません。 しかし,直木賞受賞作品「月と蟹」の流れで(触発されて),この作品を手にした方にとっては,評価は結構高いのかもしれません。読み進めさせる技量でいえば間違いなくトップクラスの作家が,決して生ぬるくはなく,かつ,絶望的でもない複数の人生の心の分岐点を描くのですから,ミステリ要素を除けば,まぁ,一定の評価は当然と言えましょう。その点はやっぱり上手いし,個人的には「月と蟹」よりは相当に良かったです。 で,道尾反転ミステリをほぼ読破しつつ,(図書館予約の関係で)「月と蟹」を先読している私にとっては,上記の両方の印象が混在して,どう評価してよいものか・・・。道尾ミステリに期待する人は無理に読む必要なし。「月と蟹」を素直に読めた方は,一読する価値があるかも。 |
No.14 | 6点 | カササギたちの四季- 道尾秀介 | 2011/05/22 22:43 |
---|---|---|---|
最近はノンミステリ作品が続いていた著者ですが,直木賞受賞第一作は連作短編ミステリで魅せてくれました。まぁ,「魅せてくれた」ってのは,ちょっと言い過ぎなのかもしれませんが,久々のミステリでしたので,ファンとしてはテンションが上がりましたね。
メインの登場人物は、「リサイクルショップ・カササギ」の店長と副店長(他に店員はいないけど…),さらにこの店に入り浸っている女子中学生。探偵気取りの店長が,毎回「日常の謎」に首を突っ込むというスタイル。 連作短編のプロットとして非常にしっかりしてます。大仕掛けはないのですが,軽快に読み進められますし,一般的な人間ドラマとしても楽しめました。笑える小ネタも結構詰まってます。この辺りは流石ですねぇ。 幅広い年齢層にオススメできる作品かな? |
No.13 | 5点 | ソロモンの犬- 道尾秀介 | 2011/04/22 21:22 |
---|---|---|---|
氏にしては珍しく(?),ちょっと笑えるシーンも挟み込んでいて,サラサラと読むことができました。ページをめくらせる手腕は相変わらず素晴らしいです。登場人物も魅力的だったし,読後感も悪くないですね。
でもなぁ・・・ちょっとズルすぎたかなぁ。結局は○○オチの派生版ですしねぇ。「欺瞞のための欺瞞」って感じで,ミステリの側面で見れば,ちょっと落ちるかも。 ちなみに,多分確信犯でしょうが,某売れっ子作家を意識したタッチにしてますよねぇ。まぁそういう遊び心は嫌いじゃないですけど。 総合的にこの点数で。 |
No.12 | 7点 | 球体の蛇- 道尾秀介 | 2011/03/06 11:25 |
---|---|---|---|
作者にとっては,初のノンミステリ作品という位置づけらしいですね。しかし,青春小説としてのラストの心象を保ちながら,その実なかなか趣深いリドルストーリーに仕上げてます。この辺りに作者らしさを強く感じました。
登場人物では,何と言っても「ナオ」がいい。印象に残ります。 その後の直木賞受賞作品「月と蟹」(これまたノンミステリ)よりは,私は断然,この作品の方が好み。この作者の作品は,5期連続で直木賞候補に挙げられてますが(うち5期目の「月と蟹」で受賞),明らかに受賞作よりも「カラスの親指」やこの作品の方が良作。(候補作のうち「光媒の花」のみ未読だが) 何はともあれ直木賞も手にしたことだし,再度,基軸をミステリにおいて欲しい…って(ある種わがままな)希望を込めて7点を。 |
No.11 | 4点 | 月と蟹- 道尾秀介 | 2011/02/20 15:22 |
---|---|---|---|
まずは,直木賞受賞おめでとうございます。
で,率直な感想ですが,「表現したいことはよく分かったけれども,その良さはよく分からなかった」ですねぇ。 いや、少年少女の心の葛藤やその推移の表現は巧いと思います。それは認めつつ,「だから、それで?」って首を傾げている自分がいました。 単に私の読解力又は感受性が不足しているのか、それとも直木賞とはそういうものなのか。 採点としては,ミステリでない上に,特に心動かされることもなかったので…直木賞ご祝儀を含めてもこの点数。 何はともあれ,直木賞受賞おめでとうございました。満を持しての受賞なのでしょうが、今後どちらに向われるおつもりなのでしょう。注目しております。 |
No.10 | 6点 | 片眼の猿- 道尾秀介 | 2011/01/08 16:39 |
---|---|---|---|
終盤にいくつかの真相が明らかになる訳ですが,いずれも氏の他作品に比べれば小粒ですね。真犯人については,完全に想定内ですし。
でも,優しさには溢れている。決して「やーい騙された」とはならない深さもある。 ハードボイルド調もうまいことハマってると思いますが。 これ以降の氏の作品の指向性を見ると,この作品がひとつの分岐点になったような気がします。 |
No.9 | 7点 | カラスの親指- 道尾秀介 | 2010/08/05 22:48 |
---|---|---|---|
この作品がミステリなのかどうかといった疑問はとりあえず右に置いて,楽しい読書の時間をありがとうと言いたい。
読中感・読後感とも,相当に良い。作者の「主張」も嫌味が一切なく,良い。ご都合主義的側面も,まあ,このストーリーであれば,目くじらを立てる気にはならなかった。純粋な「読書」としての評価は,個人的には「ラットマン」より上。 <以下,未読の方は注意!> でも,道尾作品を多少なりとも知る者にとっては,どうしても「このまま終わるわけがない」という(ある意味非常に悲しい)視点で読み進めてしまう。結果として,詳細は分からないまでも,キーパーソンが誰であるのか,そしてキーパーソンと他の登場人物との真の関係が何となく予想できてしまう。無論,「何となくの予想」以上の仕掛けがあったので,それはそれで楽しめたが… |
No.8 | 8点 | 龍神の雨- 道尾秀介 | 2010/07/19 19:04 |
---|---|---|---|
作者としては,原点に還りつつ,これまでの作品に関して読者から寄せられた数々の「意見」に対して,ひとつの「回答」を示したのではないか,そんな印象を,まずは受けました。
で,この作品。いいですね。 私の嗜好のひとつ「回答編手前でしばし考え込む」という楽しみはほとんど与えてくれませんが,これは慣れっこ。「読ませられ」た感は文句なし。「騙され」た感では,ヒトコト言いたい事もあるが,まあ,如才なさを見せ付けられた。読後感も嫌いではない。 個人的には「ラットマン」よりも好印象。 採点が甘いという批判も覚悟の上で,8点献上! |