皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.87点 | 書評数: 1228件 |
No.228 | 7点 | 五声のリチェルカーレ- 深水黎一郎 | 2011/11/03 20:49 |
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「五声のリチェルカーレ」には,やられました。ここまで見事にやられたのは久しぶりです。読了後,しばらく首を捻り,その後に訪れた「!」の爽快感。即読み返しましたね。仕掛けは,周到かつ巧妙。題名も秀逸。「ホワイダニット」のみに着目しても,水準以上と思いますね。個人的に記憶に残るであろう作品です。
最大の肝については,豪快に炸裂しているとは言い難いのですが,むしろその位の炸裂感だからこそ良かったとの印象もあります。静かで,しかも高度で,渋い。野球選手で言えば,元ヤクルトの土橋級。(ちなみに,私は土橋選手のファンでした。) 短編の「シンリガクの実験」は,ミステリーなのか?といった印象。嫌いではないですけれども。 |
No.227 | 5点 | 慟哭- 貫井徳郎 | 2011/10/31 21:18 |
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早い段階で「最重要ポイント」に気付く読者は多いでしょうねぇ。2つのストーリーが交互に進行していきますからねぇ。個人的には,驚きはなかったですね。
一方で,「慟哭」に至る終盤は読み応えアリですし,ラスト5行の余韻も記憶に残ります。別の視点で捉えると,作者が書きたかった「最重要ポイント」は,こちらの方だったのかもしれません。 なお,この採点は,新興宗教モノは肌に合わないという,個人的嗜好に基づくものですので,あしからず。 |
No.226 | 6点 | 怪笑小説- 東野圭吾 | 2011/10/29 14:41 |
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憎めないバカバカしさ,そして丁度いい塩梅の毒。知らず知らずのうちに,読み終えていました。面白かったですよ。特に「しかばね台分譲住宅」,「逆転同窓会」あたりですかねぇ。「超たぬき理論」のバカバカしさも嫌いではないです。
しかし,東野氏の作品って裾野が広いよなぁ…と改めて感じ入った次第。 |
No.225 | 6点 | 有栖川有栖の鉄道ミステリー旅- 評論・エッセイ | 2011/10/27 22:18 |
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「乗りテツ」としても有名な有栖川氏による,旅と鉄道とミステリー尽くしのエッセイ集。「この鉄ミスがすごい!」と題する章もありますし,まぁ,このサイトに登録することをお許しください。
著者が「乗りテツ」に至った経緯や,著者の鉄ミス評など,なかなか興味深いです。「鉄道とミステリーは相性が良い」理論にも,異議なしです。確かに,鉄道ファンでもあり,ミステリーファンでもある方って多そうです。テツ気質のある方は一読してはいかがでしょう。 |
No.224 | 5点 | 真夜中の探偵- 有栖川有栖 | 2011/10/27 22:05 |
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北海道が分離独立し,私的探偵行為が厳禁とされている「日本」を舞台としたシリーズの続編。前作「闇の喇叭」を読んでからの方が,世界観に入りやすいと思います。
で,この世界観,私にはそれほど魅力を感じないのです。特に「北海道」の設定はどう関係するのか?・・・と疑問に思っていたら,終末でその意図が判明。情報チョイ出し方式ですか。シリーズ全体の評価については,次回作以降を待つしかなさそうですねぇ。個人的には,現時点でのシリーズ評価は決して高くないので,今後の爆発に期待します。 で,この作品自体の,ミステリとしての評価は,有栖川氏に期待するレベルからすれば,中の下といった印象です。 |
No.223 | 6点 | あわせ鏡に飛び込んで- 井上夢人 | 2011/10/23 21:29 |
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反転モノあり,ホラー系あり,リドルストリー調ありの,バラエティー豊かな短編集。
1990年から5年程度の間に書かれた短編らしいので,作者自身が語るように,「今となっては」的なネタも含まれているのですが,個人的には逆に新鮮味を感じましたね。途中で結末が見えてしまう作品もありましたが,それはそれで楽しめます。特に後半の3作品「あわせ鏡に飛び込んで」・「さよならの転送」・「書かれなかった手紙」あたりが好みです。 |
No.222 | 9点 | 時計館の殺人- 綾辻行人 | 2011/10/23 21:25 |
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伏線が見事です。きっちり張られているんですよねぇ。
私の中では,「驚きの十角館」・「完成度の時計館」…ですね。 |
No.221 | 5点 | 世界が終わる灯- 月原渉 | 2011/10/19 21:40 |
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舞台はニュージーランドの山間部。吹雪で走行中の豪華寝台列車内で,首切り密室殺人が発生。その後,列車はトンネル内で急停止し,列車内から次々と人が消えていく。通信機器はすべて破壊され,孤立状態に・・・。
設定としては本格モノの王道といえますし,個人的にも好みのど真ん中です。 ただし,トリックらしいトリックは1点のみ,かつ,「やっぱりそうでしたか」といったレベル。ミスリードも「いかにも」といった感じ。驚きは少なかったですね。 とはいっても,決して読んで損をしたなと感じた訳ではありませんし,別の見方をすれば,優等生的な作品と言えるかもしれません。(優等生=魅力的とは言い切れないという意味を含めて。) |
No.220 | 4点 | 赤い月、廃駅の上に- 有栖川有栖 | 2011/10/15 16:57 |
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鉄道にまつわる怪談集。
と言っても,あまり怖くはなく,幻想的な話が多かったですね。もう少しインパクトが欲しかったかなぁ…。 多少テツっ気のある身としては,決して嫌いではない短編集なのですが,ミステリーとは言い難かったので,このくらいの採点になっちゃいますかねぇ。 |
No.219 | 5点 | 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 | 2011/10/15 16:39 |
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シリーズ第三弾の全体構成としては,「アリ」だと思いますね。
しかし,個々のトリックは拍子抜け。ちょっと辛い。作者の言いたいことも分かりますけどねぇ。4点と5点の中間ってことで,四捨五入。 |
No.218 | 5点 | はやく名探偵になりたい- 東川篤哉 | 2011/10/12 20:03 |
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烏賊川市シリーズでお馴染みの探偵・鵜飼&助手・戸村コンビが織り成す短編集。どの短編も本格の体裁は保持していますが,出来栄えはまちまちでしたねぇ。作品ごとの感想を。
1 藤枝邸の完全なる密室:もう一捻り欲しい印象。 2 時速四十キロの密室:謎は魅力的。 3 七つのビールケースの問題 :微妙な「やっつけ感」が漂う。 4 雀の森の異常な夜:なかなかの正統派。 5 宝石泥棒と母の悲しみ:短く,単純なトリックながらも個人的には好み。佳作。 全体印象としては,烏賊川市コンビは長編の方が活きるような気がしましたね。 |
No.217 | 6点 | 闇の喇叭- 有栖川有栖 | 2011/10/10 20:11 |
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太平洋戦争末期,アメリカの原子爆弾の完成が遅れたために,ソ連が北海道までを占拠して…という設定。歴史SFかと思えるような始まり方で,ちょっと驚かされました。
しかし,読み進めていくと,氏らしいミステリが展開されていきます。トリックも,個人的には好みの範囲内。青春ミステリとしての色も濃く,総合的にどう分類していいものやら。 シリーズとして今後どのように展開していくのか,続編に期待します。 |
No.216 | 7点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2011/10/07 20:59 |
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(未読の方は注意)
「登場人物の驚きに驚かされる」手法が斬新。考え方によっては叙述とは言えないような気もしますが,「知らなかった」ことを誤認させているのだから,やっぱり叙述モノか。いやはや,完全にしてやられました。 一方,「視点」に関しては,序盤から匂いがプンプン漂っていて身構えざるを得ませんでしたので,十分に想定可能でしたね。こちらに意識を集中させておいて,前述の叙述を炸裂・・・って意図なのだとすれば,もう完全に脱帽。 もう少し高得点でもいいのですが,極めて精密な面がある一方で,ほったらかしにされてる点がいくつかあるなぁ・・・という印象も受けましたので,少しだけ減点を。 |
No.215 | 6点 | 妃は船を沈める- 有栖川有栖 | 2011/10/03 21:15 |
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作者の意図はどうであれ,構成としては「中編2本を幕間でつないだ作品」という評価を超えることは難しいでしょうね。
中編自体は,どちらもロジカルでなかなかの出来栄えです。ミステリアス(?)なヒール役が相当に貢献していますね。(取り巻きの青年達の精神構造は理解不能でしたけど。)1作目における「猿の手」の解釈も面白い。 個人的には,これまでに読んだ国名シリーズ短編集(ロシア紅茶・ブラジル蝶・英国庭園)よりも楽しめましたよ。 |
No.214 | 6点 | 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活- 奥泉光 | 2011/09/30 22:27 |
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三流大学「たらちね国際大学」に赴任したクワコーこと桑潟幸一准教授と,彼が顧問を務める文芸部の部員が織り成す,ユーモア・ミステリー。
「ミステリー」の部分,つまり謎のレベルや解明過程は,正直弱いです。よって,このサイトでの個人的採点はこの辺りが限度。 一方で,「ユーモア」の部分は相当に良でした。クワコー・文芸部員のキャラ演出が素晴らしく,特にクワコーの自虐ネタは抜群。笑かされながら,何気に自分を振り返ったりしちゃいました。 是非ともシリーズ化してほしいですね。その際は,ミステリー部分の強化も期待しましょう。 |
No.213 | 6点 | 夜は千の鈴を鳴らす- 島田荘司 | 2011/09/27 23:42 |
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2つの事件のうち片方のメイントリックについては,高木彬光氏の某作品を読まれた方にとってあまりにも容易…というか,バレバレですね。もう一方のトリック(まぁトリックとすら言えない気もしますが)も,都合が良すぎて,肩透かし感満点でした。
しかし,犯人と被害者のそれぞれの人生について,少なからず感じ入る面があったのも事実。これは一種のノワール・ミステリーなのだ,と割り切って読むってのはどうでしょう? なお,事件解明の過程で何気に挟み込まれている叙述系ミスリードについては,見事にヤラレましたし,個人的に大好物です。 |
No.212 | 5点 | 英国庭園の謎- 有栖川有栖 | 2011/09/24 19:15 |
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暗号モノにそれほど興味を持てないワタクシとしては,正直,盛り上がりに欠けた短編集っていう印象でしたね。(決して暗号モノに特化した短編集ではないのですけどね。)
印象に残ったのは,「完璧な遺書」くらいでしょうか。まぁ,その理由は「珍しく倒叙形式だったから」なのですけどね…。 |
No.211 | 4点 | ひぐらしふる- 彩坂美月 | 2011/09/20 22:27 |
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うーん。作者がやろうとした「狙い」は否定しませんが・・・。一歩間違うと,途中で読み飽きられる(読者視点でいえば,読む気が失せる)危険性がありますね。しかも,中途半端な印象だけを残したうえで・・・。作者の真意からすれば,かなりリスキーな手法ではあります。もったいないような気もします。
内容(雰囲気を含む。)については,正直,好き嫌いが分かれるところでしょうねぇ。私にとっては,ちょっと入り込みにくく,ストーリー運びにも相当の違和感を覚えました。ミステリとしても,やや微妙な評価です。 |
No.210 | 4点 | あの頃の誰か- 東野圭吾 | 2011/09/17 11:50 |
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うーん。作者が語るとおりの「わけあり物件」揃い。東野さんだけに,何とも言えない残念感が残りました…。
純粋に良かったのは「再生魔術の女」のみ。他の作品はちょっとなぁ…何がしたかったのか,よく分からない作品もありますしねぇ…。 ちなみに,収録作品のうち「さよなら『お父さん』」は,「秘密」を読了してから読むべきでしょうね。まぁ「秘密」の読了後ならば無理して読む必要が無いという考えもありますが。 |
No.209 | 6点 | 鋏の記憶- 今邑彩 | 2011/09/14 22:16 |
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連作短編です。
サイコメトリーを持つ女子高生が主人公であり,個人的には敬遠しがちな設定ではあるのですが,内容としては,ミステリとして結構しっかりしていました。謎の提示や反転の手法としてサイコメトリーを活用しているって感じでしょうか。安易という見方もあるでしょうが,短編としてサクッとまとめるには便利な手法であることも確かで,途中からは敬遠心も薄れましたね。読みやすいですし,なかなか楽しめましたよ。 |