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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1272件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1252 7点 殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス- 五条紀夫 2025/07/24 22:37
 「走れメロス」。日本で最も有名な小説の一つに挙げる方も多いでしょう。そして読んだことのある(又は内容を知っている)方も多いはず。ならば、この作品も読んでみるがよし。結果「激怒した」と言われても責任はとれないけど。
 ミステリとして特筆すべきものがあるや否や、そんな判断は別として、まずは登場人物のネーミングが素敵である。メロスの妹は「イモートア」、その婿は「ムコス」、事件の目撃者は「ミタンデス」。当時の作家の名は「オサムス」。いいねぇ。隠しきれない(隠してないけど)バカミス要素も、これまたいいよねぇ。個人的には嫌いになれないタイプの作品。

No.1251 5点 科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア - 喜多喜久 2025/07/21 19:12
 かつて「科警研のホームズ」と称された室長の土屋と、各県警から科学警察研究所(科警研)に派遣された3人の研修生による短編集第2弾。
①毒殺のシンフォニア:パーティー会場で毒殺された研究者。犯人は彼に近づかずに毒を飲ませたのか?
②溶解したエビデンス:水酸化ナトリウム溶液に浸された白骨死体の謎。
③致死のマテリアル:一酸化炭素中毒事故と思われたが、死因は呼吸不全。なぜ?
④輪廻のストラテジー:衆人の監視下で急死した新興宗教の教祖。輪廻のため自ら心臓を止めた?
 設定上そうせざるを得ないだろし、決して悪くはないのだけれど、「こういう物質又はこうした特性があるのです」を連発されるのはちょっとツラいか。②は工夫を感じたけれど…。

No.1250 6点 闇に消えた男 フリーライター・新城誠の事件簿- 深木章子 2025/07/19 21:23
 「消人屋敷の殺人」に登場した、フリーライター・新城誠と編集者・中島好美のコンビが再登場。ちなみに、前作を読んでいなくても特段問題ないです。
 中盤以降の複数の転回には楽しませてもらったのですが、真相にはちょっと無理があるような気がします。うーむ、あり得なくはないのか…。
 なお、虫暮部さんのご意見はごもっともで、私自身、とある事実が判明した時点で疑問に感じた次第。敢えて二人のコンビを使わなくてもよかったし、設定上の工夫の余地は十分にあったと思いますね。

No.1249 7点 ひとつ屋根の下の殺人- 酒本歩 2025/07/09 23:50
 伏線をゴシック体で明示するという趣向については賛否が分かれそう。個人的には、読者へのチャレンジというよりも作者の作戦の一つと捉えていて、まぁアリなのではないかなと感じたところです。
 私自身は残念ながら真相に辿り着けなかったのですが、読み慣れた方であれば、十分に予測可能と思われます。でも、考える前に先が気になって読み進めてしまった…という読書もいいじゃないですか(自分への言い訳)。
 斬新なトリック!という訳では決してなく、むしろ典型的なパターンではあるのですが、サクサク&ワクワクと読めたので1点加点しちゃおう。

No.1248 7点 嘘と隣人- 芦沢央 2025/07/06 12:57
 定年退職した元刑事・平良正太郎が主人公を務める連作短編集。様々な「嘘」が共通テーマで、社会派の一面もあります。元刑事らしい淡々とした語り口と転換の組み合わせが良。
①かくれんぼ:ⅮⅤ夫からの被害の発端となったのは…。
②アイランドキッチン:事件の真相よりも記憶に残る激ヤバ女。こんな人間にロックオンされたら…怖すぎる。
③祭り:外国人労働者を巡る課題。ミステリ度は収録作で一番か。
④最善:痴漢冤罪。本当に最善の策だったのか。巧みなプロット。
⑤噓と隣人:人は何故嘘をつくのか。承認欲求や保身…。少しだけ救いのある話。続編がありそうな締め方。

No.1247 5点 逆転ミワ子- 藤崎翔 2025/07/02 22:05
 ピンの女性芸人・ミワ子が雑誌に連載したエッセイ&ショートショート集、という体裁。30を超えるエッセイとショートショート自体は、悪くはないのだけれども、多少飽きも感じたかな…という辺りで登場する「後日談」がポイント。そういった展開であろうことは、自明なのだけれど。
 正直な感想としては、前作「逆転美人」の二匹目のどじょう狙い感が強めだなぁ…と。いや、狙うことは営業上当然としても、ネタ全被りに関しては工夫の余地があったような気がしましたね。

No.1246 5点 スタフ staph- 道尾秀介 2025/06/29 22:23
 ドキドキ読ませていただいたし、転換も含めて楽しませてもらったのだけれども、そういう着地ね…という、何とも言い難い読後感が残ったなぁ…。いや、楽しく読ませてもらったし、不満を述べる気はないのだけれど。
 ちなみに、久しぶりにランチワゴンを利用しようかな…って思いましたね。

No.1245 6点 だるまさんが転んだら- 堀内公太郎 2025/06/22 21:59
 ミステリー新人賞における盗作を巡るお話。
 前半の緩やかな進行(決して悪い意味ではない)から一転する、終盤の展開は好みが分かれそう。まぁ、ストーリー的にはやむを得ないのだろうけど。
 ネタとしては可もなく不可もなく…って書いたら怒られそうだけれど、サクサク読み進めてほぼ一気読みだったし、読書としては楽しかったですね。ちなみに、とある登場人物が(死亡フラグをイイ感じで立てちゃったこともあって)結構可哀そうだったな。

No.1244 7点 月蝕島の信者たち- 渡辺優 2025/06/21 22:56
 伝統的かつ正当な孤島ミステリ。展開のパターンは想定できるのだけれど、ソコも含めてとても楽しい読書だったなぁ、と素直に思います。この手の作品、やっぱり好きな方は多いと思うな。コテコテ感がいい。
 なお、設定した動機を否定するつもりはないけれども、犯人は犯行後どうしようとしていたのかな…という点は、確かに読後気になりましたね。

No.1243 5点 神津恭介、犯罪の蔭に女あり: 神津恭介傑作セレクション2- 高木彬光 2025/06/15 14:04
 神津恭介が登場する短編を集めた傑作セレクション第2弾。前作は密室縛りでしたが、本作は女性絡みの6つの事件を収録。
 古典的な構成と筆致を存分に味わえる一方、令和となった時点ではちょっと古臭く感じてしまう面も。警察もその辺りは調査というか裏取りしておこうよ…なんて感じちゃったりして。
 収録作の中では、意外性や探偵らしさの演出という点でも「青髯の妻」がベストかな。

No.1242 6点 ひとんち 澤村伊智短編集- 澤村伊智 2025/06/09 21:01
 色々な「怖さ」を感じることができる8編を収録した短編集。同じパターンが揃うと怖さよりも飽きが先立ちそうなものですが、バラエティに富んだ怖さを滲みだしている点が特長。グイグイ読ませる引力もあります。
 ストレートな恐怖という観点では「死神」がベストか。それとは全く異なる角度で切り込まれたのが最終話の「じぶんち」。「シュマシラ」は作者のシリーズに通じるジャパニーズな怪奇モノ。「宮本くんの手」の原因には早い段階で気づくのだけれども、一気読みせずにはいられない流れでした。読み得な短編集と言えるのでは。

No.1241 7点 世界でいちばん透きとおった物語2- 杉井光 2025/06/06 22:53
 「仕掛け」が印象的だった前作に比して絢爛さはないけれど、ミステリの側面で見れば本作の方が上位かもしれません。作中作の使いぶりが面白いし、そのような使い方をした必然性の演出も上手いと思います。編集者・霧子さんの存在も含めて読み心地も良。スマートに纏まった好編。

No.1240 6点 砂男- 有栖川有栖 2025/06/01 22:25
 作者の単行本未収録作品を集めた作品集。江神シリーズ2本、火村シリーズ2本、ノンシリーズ2本の計6作品を収録。出来栄えはマチマチといったところですが、個人的には青い目・緑色の目の既存パズルを活用した「推理研VSパズル研」がベストか。既存パズルの回答後の展開が江神シリーズらしい。
 何より、2つのシリーズを同一の文庫で読めたことが、ファンとしては楽しかったですね。

No.1239 7点 神様の次くらいに- 久住四季 2025/05/24 15:47
 日常の謎5編から成る短編集。派手さはないけれど、バラエティに富んでいるし、心憎い反転もあって水準以上に楽しめました。
①さくらが丘小学校四年三組の来週の目標
 若き小学校の教師が主人公。コミカルな好編。
②ライオンの噓
 高校が舞台。肝となる部室での出来事は、いくら何でも気付かれると思うな。
③神様の次くらいに
 大学生の男女が主人公。謎というよりも、爽やかなラストが印象的。
④小さいものから消えよ
 探偵と推理作家のコンビが、公園から毎日何かが(しかも小さいものから順に)消えていくという謎を追う。王道ではあるが、もうワンパンチ欲しかったかも。
⑤デイヴィッド・グロウ、サプライズパーティーを開く
 「星読島に星は流れた」に脇役として登場したデイヴィッド・グロウが再登場…らしいのだけど、全く記憶になかった。粋な反転に好感。

No.1238 6点 倒産続きの彼女- 新川帆立 2025/05/16 22:05
 シリーズ第2弾。剣持麗子と同じ事務所の後輩弁護士・美馬玉子が主人公を務めますが、剣持麗子もしっかりと脇を固めています。しかも結構カッコいい。主人公の祖母「シマばあちゃん」もいい味を出しています。
 転職するたびにその会社が倒産するという謎も魅力的ですし、それなりに意外な結末も用意されています。展開もスピーディで、玉子の成長も面も含め、結構楽しませていただきました。
 ちなみに、デビュー作にしてシリーズ第1弾「元彼の遺言状」から、本作を飛ばしてシリーズ第3弾の短編集を読んでしまったワタクシですが、本作を経たうえで読んでいれば、もっと楽しめたのかもしれないな、と反省?いたしました。

No.1237 5点 嘘でもいいから殺人事件- 島田荘司 2025/05/10 23:26
 島荘としては珍しいコメディ・タッチの作品。一方、死体消失など謎の演出はいかにも島荘らしい。真相は色々と無理があるような気がするのですが、全体的な「軽み」も含めて楽しませていただきました。

No.1236 7点 サクラオト- 彩坂美月 2025/05/06 18:50
 五感(聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚)をテーマにした5編に加え、最終話で「第六感」を扱う連作短編集。
 結構イイですよ。ミステリとして突き抜けた何かがあるとは言えないまでも、青春ミステリとして鮮やかで沁みる短編も。1作前の「向日葵を手折る」に通じる巧さを感じました。こうした年代・雰囲気が得意なのかもしれませんね。締めとなる最終話についても、個人的にはプラスに評価したい。良い連作短編を読ませていただきました。

No.1235 3点 Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス- 石持浅海 2025/05/04 23:11
 シリーズ第2弾の連作短編集。とはいえ、前作からはおよそ12年。
 前作は、大学時代からの3人の飲み仲間の誰かがゲストを連れてきて,一緒においしい酒と肴を囲みつつ、謎を…という流れでした。その後、海外に転居したメンバーもいて、集いにくくなった時期はあるものの、また日本に戻ってきたため、同様の酒と肴の会合が定期的に開催されることに…という設定であります。
 で、個人的には前作はそれなりに楽しく読んだ記憶があるのだけれど、本作はちょっと…。まず、4人の大人の会話が癇に障って仕方がなかったです。料理と謎の結び付け方も無理やりすぎる。そして何より、これって推理ではなくて想像もしくは妄想ってことはない?真実だとする根拠が弱すぎるし、そんなに人の心情を覗き見しない方がいいのでは?というのが率直な感想。最終話の仕掛けも、想像できましたし、どうにも安易な感じが…。
 積極的にはおススメできない作品、と言わざるを得ないかな。

No.1234 7点 七人の証人- 西村京太郎 2025/05/04 22:02
 帰宅途中の十津川警部は突然何者かに鈍器で殴られ気を失う。気付いたら孤島に人工的に作られたセットのような街にいた。同様に孤島に運ばれたのは七人。七人は、1年前の殺人事件を目撃した証人であり、セットのような街もその現場を再現したものだった…。
 冒頭から突っ込みたくなるものの、これらの荒唐無稽さに身を委ねて読み進めてみますと、その後の展開はなかなかに面白い。十津川警部モノとしては珍しいプロットです。新たな殺人の意義とか突然の物語の幕引きとか、突っ込みたくなる点も次々に出てはくるのですが、結果として楽しめたからよしとしましょう。

No.1233 6点 架空犯- 東野圭吾 2025/04/29 21:29
 「白鳥とコウモリ」に続く、シリーズ第2弾。
 火災現場から見つかった都議会議員と元女優夫婦の他殺体。捜査の中で浮かび上がってきた容疑者とは…。五代刑事を中心とした警察小説としても良。さすがは東野さん、今回も読ませてくれました。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1272件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)