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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1194件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1174 6点 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 2024/07/21 16:32
 作者曰く「トラベル・ミステリーというと、100パーセント鉄道を使う推理小説をさすのはなぜだろうといつも考える」、「車好きの僕は、以前からこのことが不満だった」…。なるほど。そこで車(ドライブ)を用いた作品が誕生したわけですね。確かに、疾走感はありました。
 一方、途中で事件の大枠に気付く方が多いような気がしますね。主人公の女性の行動にも大いに疑問を感じます。勿論、楽しく読ませてもらったのですがね。

No.1173 5点 浅草殺人案内- 中町信 2024/07/19 21:21
 細かな複数の謎の配置によりグイグイと読まされはしたのですが、作者の作品としては凡庸な部類。
 ちなみに、寿司屋を営む探偵役の母、タツのキャラは結構好きです(「浅草のミス・マーブル」と称されていることはどうかとも思うけど)。警部が二人を頼りすぎ(捜査の過程を話し過ぎ)ではとか、鴨川の件は警察がもっと丁寧に捜査してほしかったよねとか、こういった部分も含めて、ある意味楽しませていただきました。

No.1172 6点 蜂に魅かれた容疑者- 大倉崇裕 2024/07/13 08:00
 警視庁いきもの係シリーズ第2弾。今回は長編。
 薄圭子巡査と須藤友三警部補の絶妙な掛け合いが楽しい。薄の天然ボケもいいが、須藤の突っ込みもなかなかのもの。コンビの信頼関係?は確実に増していますね。
 前作に引き続きこういった雰囲気を楽しむのかな、と思っていたところ(もちろん楽しめるのだが)、終盤の急展開&急加速には結構驚かされました。気軽に楽しめる、読み得な作品。

No.1171 7点 向日葵を手折る- 彩坂美月 2024/07/06 16:42
 父親の急死に伴い母の実家に引っ越してきた少女・高橋みのりの、中学3年までの4年間を描く青春ミステリ。
 母の実家は山形の山間にある集落・桜沢。通う小学校は分校で、全校児童数わずか37人。そこで出会う同級生、西野隼人と藤崎怜との心のやり取りがなんとも言えない感傷を誘います。濃厚な自然や集落の描写と主人公たちの心の動きの組み合わせも見事です。季節の移り変わりも含めて美しい。
 ミステリとして特殊的な部分はないかもしれませんが、久方ぶりに良質な青春ミステリを読ませていただきました。

No.1170 6点 殺意の設計- 西村京太郎 2024/06/27 22:22
 前半は夫の浮気に疑念を持つ妻の視点。心理サスペンスの側面もあって、西村作品としては新鮮な印象も受けます。一転、後半は刑事の視点で、これはいかにも西村先生らしい展開。
 こういった構成も含め、面白く読ませてはいただいたのですが、犯人としては、あまりにも都合の良い手法というか、結構なリスクを負う手法を採っているのではないかという違和感は残りました。特に、井の頭公園、かな。

No.1169 5点 盗作・高校殺人事件- 辻真先 2024/06/23 19:14
 「スーパー&ポテト」シリーズ第2弾。密室等のトリックは肩透かし気味だけれど、メタ的要素は作者らしいと言えましょう。
 ちなみに、「作者は 被害者です/作者は 犯人です/作者は 探偵です」という謳い文句は、ちょっと盛りすぎかも。

No.1168 4点 なぜ、そのウイスキーが謎を招いたのか- 三沢陽一 2024/06/15 21:00
 仙台のバーを舞台とする短編集の第二弾。バーテンダーの安藤が馴染みの客の話を聞き、真相を解き明かすスタイル。ウイスキーが何らかの形で謎に絡んできます。謎自体やウイスキーの蘊蓄などは悪くないのですが…。気になる点を何点か。
 まず1点目。探偵役・安藤の推理の根拠が曖昧。単なる推測?
 2点目。真相がいくらなんでも無理筋ではないか。後半の短編になればなるほど顕著。最終話は犯人?の心理が全く理解できない。
 3点目。これが最もマイナスなのだけど、表現が大げさすぎる。何でも例えればいいというものではないだろう。しつこすぎるし、読んでいるこちら側が恥ずかしくなるレベル。ちょっと私とは合わないな。

No.1167 7点 ぼくらは回収しない- 真門浩平 2024/06/10 21:35
 5作品が収録された短編集。どの短編も無駄に長尺にせず極めて読みやすい流れの中、プロットに趣向を凝らしていて好印象。
 ベストは、お笑い芸人を扱った「カエル殺し」で、フーとホワイの二重奏。テーマも興味深い。第19回ミステリーズ!新人賞受賞作「ルナティック・レトリーバー」も良作。「ぼくらは回収しない」という短編集のタイトルがじんわりと響きます。

No.1166 5点 最後のディナー- 島田荘司 2024/06/07 21:13
 石岡ファン(と犬坊里美ファン)のための短編集と言ってよいのではないかな。スウェーデンにいる御手洗は、②と③に電話出演するのみです。
①里美上京:里美が横浜の女子大に転入してきた…という近況報告。ミステリ度はゼロ。
②大根奇聞:この短編集の中ではベスト。あくまでもこの短編集の中では。
③最後のディナー:読み物として悪くはないが…。でも、石岡の情けなさぶりは素敵すぎてグッとくる。

No.1165 7点 きこえる- 道尾秀介 2024/06/03 20:34
 各短編の結末に(時に冒頭や作中にも)ある二次元コードでYouTubeにアクセス。その音声…によって真相が…という趣向。臨場感も出て、この手法自体は面白いと思いましたね。もっと効果的な使い方もありそうだし、続編を期待したいところ。採点は短編ごとにマチマチだけれど、新鮮さと今後への期待を込めて加点。
①聞こえる:冒頭の短編なのに、分かりにくかったなぁ。
②にんげん玉:ふむふむ。いかにも作者らしい仕掛け。
③セミ:本作品中のベスト。ある意味で作者らしい内容と締め方。
④ハリガネムシ:むしろ「その後」が気になった。
⑤死者の耳:おっと。そういう使い方もアリだったか。

No.1164 7点 掲載禁止 撮影現場- 長江俊和 2024/05/29 23:09
 8編を収録した短編集。各編(文庫で)40ページ程度の文量で、序盤から終盤までグイグイ引っ張ってくれる引力があります。
 マイベストは「ルレの風に吹かれて」。なかなか言葉では表しにくい雰囲気を纏っていて、記憶に刻まれそうな一品。次点は悩ましいけれど「カガヤワタルの恋人」か。こういった基本的な手法の組み合わせ方(見せ方)は、個人的には好きです。
 切り上げてこの採点ということで。

No.1163 5点 木曜組曲- 恩田陸 2024/05/26 16:56
 小説家・重松時子が自宅の「うぐいす館」で薬物死してから、毎年その場に集い、宴を催す5名の関係者。全員女性で、物書きに関係する仕事に就いている。薬物死の際もこの5人は顔を揃えており、今回は死後4回目の集い。告発と告白を繰り返しながら、時子の死の謎に迫るが…
 心理ミステリとして典型的とも言える流れで、悪くはないのだけれども、ハラハラ感はあまりなく、何より物語に入り込みにくい面があったかな…というのが正直な感想。私の感性が鈍いだけかもしれないのですが。

No.1162 7点 でぃすぺる- 今村昌弘 2024/05/25 14:36
 剣崎比留子シリーズ以外の初長編。「ジュブナイル×オカルト×本格ミステリ」という謳い文句。
 壁新聞作成を担う「掲示係」に属する3人の小学6年生(ユースケ、サツキ、ミナ)が「奥郷町の七不思議」の謎を追う…。ちょっと眉唾で読み始めたのですが、これがなかなか面白い。グングン読まされました。
 結末としては、驚き半分、煮え切らなさ半分といったところ。3人それぞれの成長が清々しい一方で…という気がしないでもないかな。

No.1161 4点 木野塚探偵事務所だ- 樋口有介 2024/05/19 18:46
 ハードボイルド小説をこよなく愛する木野塚佐平氏が、警視庁(ただし経理一筋)を定年退職後に念願の探偵事務所を開業!
 木野塚氏の語り口も含め、本人の理想と現実のギャップが楽しい。秘書の梅谷桃世クンともいいコンビだとは思うのですが、事件の真相自体はアレレな感じなので、この採点でご勘弁ください。

No.1160 6点 逆転正義- 下村敦史 2024/05/14 21:44
 6編が収録された短編集。個々の短編はメッセージ性も含めて好きなタイプなのですが、一貫する系統が見えてしまう分、続けて読むとどうかなぁ、という面もあります。①、⑤、⑥あたりに、作者の意思(主張?)が強く表れているのだと思います。
①見て見ぬふり:時代を反映した作品。
②保護:おっと、見事にやられました。2作目に配置したのは正解。
③完黙:本作品の中では最も凡庸か。
④ストーカー:少なくともポイントの一つは容易に気づくかも。
⑤罪の相続:恨みの連鎖という、古から現代に繋がる課題。
⑥死は朝、羽ばたく:ふむ。突っ込みたい点や、①や⑤と重複する部分もあるけれど、短編集の締めとして好印象。

No.1159 6点 ブラック・ショーマンと覚醒する女たち- 東野圭吾 2024/05/12 22:24
 シリーズ第2弾。今回は短編集ですね。
 元マジシャンの神尾武史は、隠れ家的なバー「トラップハンド」のマスターに。姪の真世や客が持ち込む案件を…という流れです。全体に小粒との印象もありますが、「相続人を宿す女」には考えさせられましたし、「リノベの女」の続編も含めた流れだとか、「査定する女」への繋がりは。流石のストーリーテラーぶり。
 ちなみに武史は、前作よりも何やら格好よくなっている気がします。もしかしてドラマ化あります?

No.1158 5点 嘘でもいいから誘拐事件- 島田荘司 2024/05/09 23:04
 島荘には珍しい、コメディ・タッチの中編2本。会話部分が多いこともあって、あっという間に読了できます。
 作者があとがきで「もしかするとこのシリーズは、僕にとって、最も一人よがりでない、最も肩の力の抜けた、最も読者本位の、正しいミステリーなのかもしれない」と語っているとおり、決して肩肘張らず、楽しんで書いている様が伺えます。この点ではなかなか興味深かったですね。
 内容はというと…、ゴンドラからの人間消失であるとか、謎自体は作者らしいと言えるのかもしれませんが、まぁ、大きな期待はしない方がいいかも。島荘のユーモアを気楽に楽しもうということで。

No.1157 6点 帝国妖人伝- 伊吹亜門 2024/05/06 21:41
 明治~太平洋戦争終了直後までの時代背景を活かした連作短編。
 売れない作家那珂川二坊が出会う5つの事件、その探偵役を務める五人の「妖人」の姿が読みどころ。各偉人(妖人)は誰なのかと想像するのも楽しいし、ストーリーへの偉人の絡め方も流石です。一方で、各事件の本格度は控えめ。歴史好きの方によりフィットするかも。

No.1156 8点 木挽町のあだ討ち- 永井紗耶子 2024/05/03 07:58
 舞台は江戸。木挽町にある芝居小屋のそばで、若衆による仇討ちが成された。その2年後、別の若侍が木挽町を訪れ、芝居に関わる複数の者たちから事件に関する話を聞いて回る…。
 それぞれの語り手によって次第に事件の背景が見えてくる構成自体は、特段目新しいものではありませんが、それぞれの半生をも語らせているところがポイントで、グイグイ読まされます。結末は想定しやすいかもしれませんが、既にそういった視点のみで読ませていない上手さがあります。
 純粋に良い小説を読ませていただきました。直木賞と山本周五郎賞のW受賞も納得です。

No.1155 7点 ミステリー・オーバードーズ- 白井智之 2024/04/27 23:14
 バラエティに富んだ短編集で、本格度も高いです。白井度は作品によって格差アリ。耐性が無くても意外にイケるかも(責任はとれないけど)。
①グルメ探偵が消えた
 舞台は英国。失踪したグルメ探偵の行方を追うお話。翻訳調の語り口が珍しいなぁ…と感じつつも、ラストはやはり白井智之。
②げろがげり、げりがげろ
 タイトルからして白井智之。でも読み進めるほど、内容に即した、秀逸なタイトルであると気付く。ちょっと笑える、作者らしい特殊設定ミステリ。
③隣の部屋の女
 心理サスペンス風。多くは書かないけれど、作者としては珍しい展開。
④ちびまんとジャンボ
 本格度の高さとハチャメチャな内容のコラボが雑妙な味を醸し出している。作者らしさ全開。
⑤ディティクティブ・オーバードーズ
 これは斬新。複数の「信頼できない語り手」から犯人を絞り込むロジックが見事。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1194件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
道尾秀介(27)
島田荘司(26)
伊坂幸太郎(26)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)
西村京太郎(20)