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[ サスペンス ]
倒産続きの彼女
剣持麗子シリーズ
新川帆立 出版月: 2021年10月 平均: 5.40点 書評数: 5件

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宝島社
2021年10月

宝島社
2022年10月

No.5 6点 E-BANKER 2025/12/02 15:40
処女長編「元彼の遺言状」に続いて発表された作者の長編第二弾。
前作で主役だった剣持麗子をワキに置いて、今回はその後輩弁護士である美馬玉子が主人公。
発表は2021年。

~山田川村・津々井法律事務所に勤める美馬玉子。事務所の一年先輩である剣持麗子に苦手意識をもちながらも、ボス弁護士・津々井の差配で麗子とコンビを組むことになってしまう。二人は、「会社を倒産に導く女」と内部通報されたゴーラム商会経理部・近藤まりあの身辺調査を行なうことになった。ブランド品に身を包み、身の丈にあわない生活をSNSに投稿している近藤は、会社の金を横領しているのではないか? しかしその手口とは?ところが調査を進める中、ゴーラム商会のリストラ勧告で使われてきた「首切り部屋」で、本当に死体を発見することになった彼女たちは、予想外の事件に巻き込まれて……~

実にうまくまとめている。そんな印象だ。
昨年には、かの「山本周五郎賞」も受賞した作者。物語を創作し、まとめる能力はすでにこの頃から如何なく発揮されている。

実際に弁護士でもある作者。
本作の主人公である美馬玉子は、作者自身がフィーチャーされた存在なのだろうか?
弁護士というと、門外漢の私でもすごく「多忙」な姿が想像できる。
美馬玉子もやはり、日々激烈に多忙な環境のなか仕事をしている。でもそんな中でも合コン、婚活に励み、美人で金持ちという剣持麗子にジェラシーを抱いている。
そんな女性弁護士の心のうちなんかは、やはり作者自身の姿が反映されてるんだろうなと考えてしまう。

本筋である、倒産に係る謎については、私も仕事柄興味深く読ませてもらった。かなりデフォルメされてはいるけど、そこは弁護士らしく筋のとおった中身にまとめていると感じた。
作中では大きな会社を倒産させるのは相当難しい、と書かれているけど、個人的には割と簡単なのではないかと思う。
本作のある登場人物は、かなり遠回りなやり方でやってるけど、他にも簡単な方法はあるだろう。
殺人事件の方は添え物で、ちょっと扱いが雑かな。
ただ、作中で美馬玉子が弁護士として成長していく「お仕事小説」としての良さが際立っている。

本筋とは全然関係ないけれど、玉子と親友の美法がけんかをして仲直りする場面。なんだか、昨今の日本と中国の関係を思い出してしまった。どっちも要はボタンの掛け違えのようなものであったらいいのにな、と感じた次第。
もちろん、そんな簡単なもんじゃないけどね。

No.4 6点 まさむね 2025/05/16 22:05
 シリーズ第2弾。剣持麗子と同じ事務所の後輩弁護士・美馬玉子が主人公を務めますが、剣持麗子もしっかりと脇を固めています。しかも結構カッコいい。主人公の祖母「シマばあちゃん」もいい味を出しています。
 転職するたびにその会社が倒産するという謎も魅力的ですし、それなりに意外な結末も用意されています。展開もスピーディで、玉子の成長も面も含め、結構楽しませていただきました。
 ちなみに、デビュー作にしてシリーズ第1弾「元彼の遺言状」から、本作を飛ばしてシリーズ第3弾の短編集を読んでしまったワタクシですが、本作を経たうえで読んでいれば、もっと楽しめたのかもしれないな、と反省?いたしました。

No.3 5点 zuso 2023/09/01 22:31
前作ヒロインが脇役に回り、美馬玉子という「ぶりっ子弁護士」を新たなヒロインに据えたミステリ。
玉子が挑むのは、連続殺人ならぬ連続「法人」事件だ。ある女性が認識する会社が次々と倒産していく。彼女は経理担当の「小者」で会社を潰す権力などない。一体何が起きているのか。
謎の設定と人物造形が魅力的であり、心地良くページをめくり続けられる。現代日本が抱える問題提起が極めて自然体で楽しめる。

No.2 5点 makomako 2022/12/06 20:24
 お話として読んでいく分にはもちょっと高い評価でもよいと思いますが、主人公が全く好みでない。
 作者は東大出の弁護士さんだったようだが、そういったエリートにありがちな嫌味な感じが漂っている。女主人公は苦労して、親は自殺してでも頑張って弁護士になり(すごいよね)おばあちゃんとくらしている。
 外見的にはとても素敵なで、全然エリート意識がないようにふるまっているが、心の中はこの人嫌い、こんなやつの弱点はないかと考えてしまう。めちゃくちゃにいやらしい。
 作者がこんなメンタリティーなんでしょうかね。
 

No.1 5点 文生 2021/10/29 12:01
ベストセラーを記録した『元彼の遺言状』の続編ですが、主人公は剣持麗子の後輩弁護士である美馬玉子にチェンジし、麗子自身は脇に回っています。とはいえ、玉子は麗子と比べると地味ではあるものの、ぶりっ子気質など十分個性的でキャラ立ちという点では申し分ありません。また、ある女が転職するたびに転職先の会社が倒産するという謎も魅力的ですし、作者が弁護士だけあって真相を究明していくプロセスにも説得力があります。
ただ、終盤に謎の組織の存在が明らかになり、しかも、その組織が今後宿敵となっていくような雰囲気になっていったのが個人的には残念でした。途中までは面白かったのですが、ジャンルが本格からスリラーへとシフトした点が好みではないので評価は低めです。


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