皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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まさむねさん |
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平均点: 5.87点 | 書評数: 1226件 |
No.886 | 7点 | むかしむかしあるところに、死体がありました。- 青柳碧人 | 2020/02/27 23:10 |
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一寸法師、花咲か爺さん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎と、皆様ご存じの昔話をモチーフにした短編集。結構売れているようですね。昔話の舞台設定と本格要素とが、ほどよく融合していて、楽しく読ませていただきました。
昔話の設定を最も忠実に再現(?)しているのが、浦島太郎をモチーフにした「密室龍宮城」か。「つるの倒叙がえし」の仕掛けも嫌いじゃない(蟷螂の斧さんの書評のとおり、私もタイトルには疑問を感じるけど)。 昔話の舞台設定と本格要素との融合という観点では、「そして誰も~」を彷彿とさせる最終話「絶海の鬼ケ島」がベストか。それまでの短編における「アイテム」を登場させたりする辺りも心憎い。楽しかったな。 |
No.885 | 6点 | 平成ストライク- アンソロジー(国内編集者) | 2020/02/23 12:18 |
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福知山線脱線事故、児童虐待、新宗教、消費税、東日本大震災…平成時代の事件・事象を、9人の作家が各々のテーマで紡ぐ短編集。青崎有吾・井上夢人・千澤のり子・遊井かなめ・小森健太朗・白井智之・乾くるみ・貫井徳郎・天祢涼が名を連ねています。
個人的には千澤のり子「半分オトナ」の仕掛け、白井智之「ラビットボールの切断」における“作者らしさ”が印象的だったかな。他の作品も含め、こういった形で平成を振り返るのも悪くないですね。「平成って、実は俺の人生の多くを占めたんだよなぁ…」と感じ入った次第です。 |
No.884 | 6点 | パーフェクト・ブルー- 宮部みゆき | 2020/02/17 23:09 |
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「そういえば、宮部作品って、短編集しか読んでないような気がするなぁ。長編も読んでみるか」と、今更ながら思い至り、ならばデビュー長編から…と手にした次第です。(家族が宮部作品の文庫版を多々所有していたことも少なからず影響しています。)
場面変更のぎこちなさ等、特に中盤までは「若書き」の印象も抱いたのですが、ストーリーとしてはグイグイ引き込まれました。全体の緩急も程よく、今後ベストセラー作家に駆け上がる素養は十分に感じることができましたね。 |
No.883 | 5点 | 道具箱はささやく- 長岡弘樹 | 2020/02/11 18:49 |
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10数ページの短編18本から成る短編集。1編がすぐに読み切れる長さだし、結末としても一定の幅(ほっこり系からブラック系まで)があるので、スキマ読書としてはいいのかも。
一方で、気になった点も。まずは、18短編もあるのだからやむを得ない面もあろうとは思うのですが、この短編集内でのネタ被りが散見されたこと。さらに、そのうちの一つは、他の短編集からのネタの使い回しと言って差し支えなさそうなこと。最初に読んだ時は「ほほう」と感心したのですが、こう何回もコピーされまくられると…。それと、これはあまり言いたくないけれども、登場人物の行動に「いやはや、無理があるでしょ」とか「いやいや、そんな迂遠なことはやんないでしょ」と感じすにはいられないこと。 何かトリビア的な知識を得たら、それを無理やり使って(こじつけて)物語に仕立て上げよう…そんな姿勢が浮かび上がってきます。なので、中身としては決して深くはなりません。個人的には、ブラック系の短編の方が「読めた」印象。 |
No.882 | 5点 | 珈琲店タレーランの事件簿5- 岡崎琢磨 | 2020/02/09 21:49 |
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シリーズ第5弾。元々「ビブリア古書店」シリーズとの類似性を感じてはいたけれども、今回扱っているのが「源氏物語」だけに、もはや登場人物を入れ換えても読めちゃうような気がします(笑)。
全体として悪くはないのだけれども、「何やら面倒なことになってるなぁ(面倒なことをしてるなぁ)」と、色んな意味で感じちゃったかも。技巧面や登場人物の行動面も含め、広い意味でね。 |
No.881 | 4点 | 朝比奈うさぎの謎解き錬愛術- 柾木政宗 | 2020/02/07 22:30 |
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美少女女子大生「朝比奈うさぎ」のキャラ、「迅人さんはうさぎのこと、好きなのですね」辺りの決め台詞に、最初は結構戸惑いましたね。いや、最後まで結構戸惑ったかな。「新感覚ラブコメ本格ミステリ」との謳い文句ですが、ラブコメ要素もミステリ要素も、特筆する部分は少ないかも。最終話での捻りや伏線回収は、この作者の得意パターンではあるのですが、本作では絶大な効果とまでは言い難いですね。4点と5点の間といった印象かな。 |
No.880 | 6点 | 化学探偵Mrキュリー3- 喜多喜久 | 2020/02/02 19:01 |
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理学部化学科の准教授(沖野春彦)と大学庶務課に所属する新人事務員(七瀬舞衣)のコンビによるシリーズ第三弾。ガンガン続編が出ていますし、一定の人気を獲得しているのでしょう。非常に使い勝手が良さそうなコンビで、舞台は多様な人々が集まる大学、理系知識も活かしやすい…ということで、作者にとっては抜群のポジションを獲得したように思います。
軽く読む分には悪くない短編集、という意味での安定感はあります。キュリーと化学少年の交流が微笑ましかったな。 |
No.879 | 6点 | 駅路- 松本清張 | 2020/01/27 22:14 |
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やっぱり、清張短編は響くなぁ…という印象。一方で、別短編集「張込み」の収録作と比べると、本作の方が清張の研究気質が強く出ている影響もあるのか、スパッと切り取る鋭利さという面では、多少劣る気もします。あくまでも「張込み」収録作との相対比較であって、水準以上であることは間違いないのですが。
いくつかの短編の短評を(丸数字は新潮文庫の掲載順番)。 ①白い闇:読むのは多分3度目かな。何度読んでもラストシーンが印象深い。 ④巻頭句の女:短尺でありながら、読中あれこれ想像させられる展開は流石。 ⑤駅路:あの時代だからこそという面がある一方で、サラリーマンの本質は変わっていないかもという面が何気に興味深い。 ⑧薄化粧の男:ミステリーとしても面白いのだけれども、個人的には2つ目の「死」に至る心情に想いを馳せざるを得ない。 ⑩陸行水行:「邪馬台国」問題。若い時分に読んで、途中で挫折したような気がする。今読んでみると、奇妙な味わいのある作品とは言えるかな。 |
No.878 | 7点 | 新鮮 THE どんでん返し- アンソロジー(出版社編) | 2020/01/19 23:47 |
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新進気鋭の作家による短編集。総じて楽しめましたね。
1 密室竜宮城(青柳碧人) 全体のトリックは措くとしても、お伽噺の世界の変転のさせ方が楽しく、昨年話題となった作者の単行本「むかしむかしあるところに、死体がありました。」も読んでみようかな、という気にさせられました。(本短編も収録されているようですし。) 2 居場所(天祢涼) 社会派短編と言ってよいかも。ラストの余韻がなかなか沁みます。 3 事件をめぐる三つの対話(大山誠一郎) 会話のみで構成された作品。そういった構成例は多々ありますが、最終的にはその構成自体にニヤリとさせられます。 4 夜半のちぎり(岡崎琢磨) ちょっと予想しやすいかな。このアンソロジーの中では目立たない。 5 筋肉事件/四人目の(似鳥鶏) 類似例があるとはいえ、丹念に作り込まれていることは間違いなく、二度読み率も高いだろなぁと思います。 6 使い勝手のいい女(水生大海 ) サスペンス風。簡単に揺さぶられ、単純に引っかかりました。 |
No.877 | 7点 | 潮首岬に郭公の鳴く- 平石貴樹 | 2020/01/14 22:22 |
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精緻に組み上げられた正統派の本格作品といった印象。確かに、登場人物が多く、しかも何やら裏(の関係)がありそうな人物ばかりなので、度々「振り返り」をしながら読み進めざるを得ない面もあったのですが、最終的には「だからこその面白味」があったのも事実。終盤の絵解きは読みごたえがあり、正直、真相にも驚かされました。「松谷警部シリーズ」に比して本格度数も高く、作者の「北海道愛」が示されている辺りにも好感。終盤に浮かび上がってくるタイトルも印象的です。 |
No.876 | 6点 | 長崎・ばてれん列車殺人号 - 辻真先 | 2020/01/09 22:45 |
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個人的な話で恐縮ですが、昨年の秋に松浦鉄道を辿って平戸を訪れる機会がございました。急ぎ足の観光となりましたが、平戸島の方々も大変親切で、今度はもっとゆっくりと訪れてみたいとものだと感じました。年を越し、古本屋の新春セールで見かけたのが本書。平戸の印象が鮮明であったこともあり、詳しい内容も確認せずに、思わず手にしたものです。
テツに造詣の深い辻御大だけに、鉄道系アリバイを使ってくるのかと勝手に想像していたのですが、内容としては密室×2でしたね。1つ目の密室については、まぁ積極的なコメントはしにくいですが、メインの密室や人間関係を含めた全体構成は流石に堅実ででした。会話など、ちょっとむず痒い書きぶりもございましたが、個人的な旅愁も手伝って、なかなか楽しめましたよ。 |
No.875 | 7点 | 張込み- 松本清張 | 2020/01/04 22:27 |
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久方ぶりの清張短編。「令和」初の年末年始だからこそ読んでみようと、新潮文庫版を手にした次第です。
淡々とした筆致での反転、やっぱりイイですねぇ。次々とページをめくらされました。そして、個人的にはラストの締め方が大好きなのです。スパッと閉じられた後に漂う余韻の深さ、これは最近の若手作家では難しいところでしょう。どの短編も楽しめましたね。今年は清張作品を積極的に読み返してみようかな。 |
No.874 | 5点 | ハッピーアワーは終わらない- 東川篤哉 | 2019/12/31 16:54 |
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西荻窪のシェアハウスで生活する、定職なしアラサー女子3人組によるシリーズ第2弾。
肩肘張らずに楽しめるのはいいのだけれど、ネタ自体の小粒さ、緩さは否定できないかな。それと、3人の個性(役割?)がより明確になった結果、逆に3人組にした意義が見出しにくくなったような気もします。 |
No.873 | 7点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 | 2019/12/26 23:51 |
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総合的に見て、精緻に組み立てられた良作であると思います。「解明の解明」とでも言うべきシーンは新鮮で圧巻でした。現時点における作者の最高傑作と言えましょう。本年の本ミス&このミスにおいて第1位を獲得したことも肯けるし、巷での「翡翠萌え」的な評も分からないではありません。
この作家さんの作品は、鮎川哲也賞受賞作「午前零時のサンドリオン」からポチポチ読み続けていて、なかなか達者な作家さんだなぁ…と感じつつも、その後の作品を追っていくうちに「日常の謎系青春ミステリしか書かないのは何故?思春期の微妙な心の動きを繰り返し読まされるのは辛いのだけれど…」といった印象に変化し、しかしながら最近の「マツリカ・マトリョシカ」はミステリとしてもなかなかの好作品であったので、まぁ、何を言いたいのかといえば、紆余曲折がありつつも「今後一皮むけそう」という期待が高かったのです。本作については、内容は勿論のこと、作者にとっては(おそらく)初めて「殺人」を扱っており、作者の確実な進化を感じられたことが、まずは嬉しかったです。進化しつつも「フトモモ愛」は不変。このこだわり(?)も嫌いじゃない。 【以下、未読の方はご注意を】 とはいえ、ワガママと知りつつも、率直な感想を申し上げれば「帯に書かれているコメントだとか(余計な)周辺情報がない状態で読みたかったなぁ…」。作家さんは何も悪くないのだけれど、個人的には絶妙に損をした気持ち。 三話目までのユルさ(これも作品として重要ではあるのだが)と、巷の評価の高さとのギャップ、そして何よりも帯の余計な文言等々から、作品のポイントの一つは容易に想像がつきます。想像しやすいだけに「これだけで終わるはずはない。もう一段は何か?」と考えてしまうダメな自分がいたりします。で、表紙が…ねぇ。薄々感じるモノがありますよね。したがって、「驚き」という面では、個人的にはそうでもなかった。すみません。ただ、真っ白な状態で読めば、もっと楽しめただろうなぁ…という我が儘を言いたかっただけなのです。繰り返しになりますが、すみません。 |
No.872 | 6点 | 赤ちゃんをさがせ- 青井夏海 | 2019/12/22 15:41 |
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日常の謎系の安楽椅子探偵モノ。タイトルから、赤ちゃんメインかと思いきや、メインは助産婦さんたちでしたね(今は「助産師」ですね)。20代の見習い助産婦・陽奈さん&30代の自宅出産専門の出張助産婦・聡子さん&師匠である伝説のカリスマ助産婦・明楽先生のトリオが、いい塩梅に盛り上げてくれています。
一方で、ご都合主義的な面が…とか、いくら何でも明楽先生の推理が詳細まで当たり過ぎじゃね?…とか思わないでもなかったかな。勿論、読み心地もいいし、楽しく読ませていただいたのですが。 |
No.871 | 6点 | 狐火の家- 貴志祐介 | 2019/12/15 21:58 |
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防犯コンサルタント探偵・榎本経と弁護士・青砥純子のコンビによるシリーズ第2弾。短編ごとに簡単な感想を。
①「狐火の家」:魅力的な謎に比して真実は…という面も無くはないですが、謎はなかなかに魅力的。この分量で(一応の)ダブル密室を持ち込みつつ、反転を噛ませる心憎さ。 ②「黒い牙」:トリックにはちょっと無理があるような気もしますが、ラストが印象的。 ③「盤端の迷宮」:ハウと見せかけたホワイ。一方で偶然性の強さは気になる。 ④「犬のみぞ知る」:箸休め的なユーモアミステリー? 個人的には①が好みだけれども。独創性と印象深さでは②に軍配かな。 |
No.870 | 6点 | 恋するおしい刑事- 藤崎翔 | 2019/12/09 19:09 |
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冴えた推理を披露しながら、いつも「惜しい」ところで手柄をモノにできない「押井刑事」を主人公に据えた短編集の第二弾。
今回は、美人の後輩女性刑事が配属され、押井刑事が新人教育係に任命される、そしてタイトルどおりに…という設定。正直、そこはかとない安っぽさを感じつつ読み始めたのですが、設定はともかくとして、各短編の内容自体は本格指向。捨て推理を噛ませたりもして、一定の水準は保たれており、最終的な印象は悪くなかったですね(とはいえ、驚きのトリックがあるものではないですが…)。タイトルや表紙で損をしているような気もします。 |
No.869 | 6点 | 9の扉 リレー短編集- アンソロジー(出版社編) | 2019/12/08 23:14 |
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9人の作家によるリレー短編集。次の作家を指名して「お題」を手渡すという形式です。「お題」といっても、「猫」とか「一千万円」とか、ワード単位での指定ですので、手渡された作家さんの裁量の幅は広いと言えましょう。設定を引き継ぐ必要もないのですが、敢えて従前の設定を活用したり、発展させたりする作者さんもいて、その辺りはニヤリとさせられました。
北村薫・法月綸太郎・殊能将之・鳥飼否宇・麻耶雄嵩・竹本健治・貫井徳郎・歌野晶午・辻村深月と、そうそうたる作家さんが繋げています。ミステリーの味付け度合いは人それぞれで、全体としては相当に薄口なのですが、まぁ、各作家さんの特長を楽しもうということで、それはそれで楽しかったですよ。ちなみに、マイベストは、捻りが「らしかった」歌野センセイの作品かな。 |
No.868 | 6点 | ゆるキャラの恐怖- 奥泉光 | 2019/12/05 23:19 |
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クワコーシリーズ第三弾。
「文壇のマエストロの脱力系ミステリー」と紹介されていますが、確かにそのとおり。千葉の奥の「たらちね国際大学」における、クワコーこと桑潟幸一准教授の生活、そして彼の内心の表現などは、流石は芥川賞作家であり、もはや純文学と呼ばざるを得ません(嘘)。彼を囲む、文芸部のメンバーも素晴らしい。特に大学唯一の男子学生であるモンジ。彼の教育勅語論などは、笑わせてもらいつつ、ちょっと考えさせられます。「みうらじゅん」とか「ベネッセ」とかも実名で利用しちゃったりして、奥泉センセのノビノビ書かれていている感じも何かイイな。 ちなみに、ミステリー色は相当に弱めです。その点は期待せずに、肩の力を抜いて楽しみましょう。 |
No.867 | 6点 | 神とさざなみの密室- 市川憂人 | 2019/11/30 23:59 |
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「マリア・ソールズベリー&九条漣」シリーズ以外では、初の作品となりますね。同シリーズとは雰囲気がガラッと変わって、政治色が強い内容。このチョイスは結構意外でした。
政治的な話題に興味がない方にとっては、内容的にちょっと辛いかも。前半で投げ出す可能性もありそう。中盤から終盤に盛り返してはくれますが、犯人の動機を含めた最終的な違和感は否定できないかな。 |