皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
simo10さん |
|
---|---|
平均点: 5.69点 | 書評数: 193件 |
No.24 | 3点 | 追憶のカシュガル- 島田荘司 | 2012/01/25 21:24 |
---|---|---|---|
御手洗シリーズ最新版、四話の短編集です。京都大学時代の御手洗の語りを友人が聞き手となって解説するのが主な構成で、ミステリではありませんでした。
①「進々堂ブレンド1974」:御手洗の友人が語るほろ苦い恋物語。 ②「シェフィールドの奇跡」:知能に障害を持ちながらも、秘められた才能(重量挙げ)を開花させる子とその親の奮闘記。実話が基になっているとしたら感動秘話ですが、フィクションだとしたらただのご都合主義です。 ③「戻り橋と彼岸花」:戦時中の日本を舞台に、強制労働させられた朝鮮人の姉弟の物語。若干の謎かけがあり、オチもうまくまとまっています。重い話ですが、ラストは感動的です。 ④「追憶のカシュガル」:表題作ですが全然内容を覚えていません。読み返す気もありません。 「溺れる人魚」で懲りていたのですが、文庫化を待てずにまたしてもハードカバー版を購入。結果、やっぱ買うんじゃなかったと思いました。 |
No.23 | 3点 | 光る鶴- 島田荘司 | 2010/04/22 20:49 |
---|---|---|---|
吉敷シリーズの中編&短編モノです。
①「光る鶴」:またもや冤罪ものです。空白の時間の不在証明を行うべく、「光る鶴」の謎を吉敷刑事が追い掛けます。謎が解き明かされたときの描写がどことなくきれいでした。妙にリアルな設定だと思っていたら、「秋吉事件」を元にした作品だったんですね。 ②「吉敷竹史、十八歳の肖像」:若かりし吉敷の運命が警察官へと定まっていく過程を描いたエピソード。「涙流れるままに」でも触れられていましたが、宮沢賢治氏の作品を読んでみたくなりました。 ③「電車最中」:「灰の迷宮」で登場した鹿児島の刑事、留井十兵衛が事件を追います。偶然にもこの作品を読む数日前に、件の路面電車を実際に見て知ったばかりなので、不思議な感じを受けました。さすがに最中は知らなかったけど。吉敷刑事はちょい役で登場です。 まあ、特にこれと言って面白いところの見当たらない作品集でした。 通子とのその後についても描かれていないし。 |
No.22 | 4点 | 涙流れるままに- 島田荘司 | 2010/04/19 22:56 |
---|---|---|---|
-ネタばれ含みます-
吉敷シリーズの総決算的位置づけとも言える本作。 というのも過去に関わった事件に大なり小なり触れながら話が進んでいくので、それまでの作品に触れている人ならば、もう一度読んでみようかなという気持ちにさせられます。 本編は吉敷刑事がまたも逆転不可能的冤罪事件に挑んでいく話と、加納通子が自らの過去の秘密を探り当てる話が並行しながら進んでいきます。 しかしその内容たるや、かなり辛い気持ちにさせられます。つまらないという意味ではなく、ただただ通子の人生が酷すぎて読むのが辛くなります。 事件を追ううちに、図らずもそんな通子の過去に関わってしまう吉敷刑事が可哀相になる。なんとも重い話です。 ミステリ的な要素としては通子の幻の正体にかなり興味をそそられたのですが、真相はちょっとがっかりです。いや、辛い話を読み進めたのも、この謎を解き明かすキーワードを探すことに主眼をおけたからでもあるため、その苦労を振り返るとかなりがっかりでした。 ラストの吉敷刑事と主任との決着はなかなか見ごたえがありました。 また、吉敷と通子の決着も見納めることができてほっとしました。 |
No.21 | 3点 | 飛鳥のガラスの靴- 島田荘司 | 2010/03/16 00:34 |
---|---|---|---|
理由は分からないけど、どうもこの作品は絶版されているようなので、書店で探すのが大変でした(色々探し回ったあげく、近くの古本屋で発見)。
メインの謎としては島田氏らしく、飛鳥の土地にまつわる怪現象が序盤に手記の形で提示されます。しかし真相と言うか「飛鳥」の謎については、「んなもん知らなきゃ分からんだろ!」と思うし、分かったとしても全然面白くないと思う。 しかも物語の大半は吉敷刑事の単独行動が空振りに終わるというもので、終盤にようやく天の助けで面白くもない「飛鳥」の謎にたどり着くというもの。 雰囲気はまああるんだけど、この内容で430ページは長すぎると思う。 自分的には「羽衣伝説~」以降の吉敷と通子のその後の展開が少し描かれている程度しか価値がなかった。とりあえず「涙流れるままに」を我慢して読まずに、この作品(吉敷、通子情報)を読めて良かったといったところ。 |
No.20 | 3点 | ら抜き言葉殺人事件- 島田荘司 | 2009/12/28 00:23 |
---|---|---|---|
なんだか火曜サスペンスを見たような印象を受けました。
社会問題は色々と盛り込まれてはいるけれど、別に何かトリックがあったわけでもないし。 ただ、笹森恭子と因幡沼耕作との「ら抜き」を巡るやり取りは面白く、 さすが作家は凄いなと思わされました。 |
No.19 | 3点 | 羽衣伝説の記憶- 島田荘司 | 2009/12/28 00:13 |
---|---|---|---|
吉敷刑事の元妻加納通子が登場します。
「北の夕鶴~」以来、気になるその後の展開が描かれています。 吉敷シリーズを読んできた人以外は読んでもしょうがない作品でしょう。 とりあえずよりが戻りそうでほっとした。 |
No.18 | 7点 | 奇想、天を動かす- 島田荘司 | 2009/12/28 00:08 |
---|---|---|---|
社会派と本格が融合したせいなのか、これはかなり異色の作品という印象を受けました。
犯人は序盤から確定しておりフーダニットの楽しみこそないものの、真の動機に到るまでのプロセスが奥深かったです。 また、過去に起きた事件に関連して語られる幻想的な謎の提示はさすが島田氏と唸らされます。 惜しむらくはシリアス過ぎる内容とあの大トリックにミスマッチを感じてしまったことかな。 てことは社会派と本格の融合に対する違和感の正体はここにあるのかな?と思ってしまう。 |
No.17 | 5点 | 幽体離脱殺人事件- 島田荘司 | 2009/11/28 22:07 |
---|---|---|---|
-ネタばれ含みます-
森岡輝子と小瀬川陽子の電話のやりとりがなかなかリアルに腹黒い感じで面白かったです。島田氏の描く主婦視点の語りはこういった表現が多く、多くの女性の反感を買いそうですが個人的には好きです。 二見の旅行からは、「眩暈」を思わせる狂気じみた展開になりかなりハラハラさせられました。 しかしせっかく途中まで面白かったのに、解決編は犯人達のわざとらしい解説口調の対話を吉敷達が盗聴するいう乱暴な暴き方であり、犯人と刑事の駆け引きを完全に省略する形となり、物足りなさを感じてしまいました。 なぜ森岡輝子が狂気に駆られたのかの納得いく説明もなく、また蛙の呪いについても何も触れられていないし。 残り約50ページ、締切りにでも追われてたのかなという出来でした。 |
No.16 | 7点 | 夜は千の鈴を鳴らす- 島田荘司 | 2009/11/22 21:49 |
---|---|---|---|
-ネタばれ含みます-
「出雲伝説~」以来の完全なハウダニットものです。 東野氏の「白夜行」に見られるような、第三者の視点からの人物表現によるものなのか、最初はさほど魅力的でもなかった加害者と被害者が、捜査が進むにつれてミステリアスに感じられて、存在感が増していったところが非常にうまいと思いました。 トリックはT氏の作品のパクリじゃん!と気付き、ちょっと残念でした。やっぱり知ってるとあっさりばれちゃうものですね。 とはいえ、この物語のミステリアスな雰囲気は十分に楽しめました。 |
No.15 | 6点 | 魔神の遊戯- 島田荘司 | 2009/10/07 21:00 |
---|---|---|---|
-- ネタばれ含みます--
私は長編モノを読む時は登場人物の名前と特徴をメモするのですが、プロローグの「御手洗」と、第一章の「ミタライ」をつい別々に表記してしまった瞬間、「しまった!」と思ってしまいました。 もう少し騙されていたかったのですが、一瞬よぎった猜疑心は読み進むほどに膨れ上がっていくばかりでした。 先に「ネジ式」とか出版してくれていれば、このアクシデントは防げたのに、と思ってしまいます。 とはいえ、メインとも言えるロドニーの描く絵の謎の解決には感激しました。 この島田氏独特の「眩暈系」の謎は、私は大好きですね。 引きちぎりの謎はイマイチ。 登場人物は結構面白かったです。 |
No.14 | 5点 | 灰の迷宮- 島田荘司 | 2009/09/12 01:40 |
---|---|---|---|
色んな出来事が複雑にからみ合っているんですが、どの事件がメインだったのかはっきりしないため、かなり印象に残りづらい作品かも。自分の記憶の中で迷宮入りしてしまいそう。
--以下ネタばれ-- 「灰」も直接は関係なかったことと、佐々木の息子があんな状態で受験に受かっているのが吉敷の推理と矛盾していることが残念。 茂野恵美の存在は確かに「異邦の騎士」の石川良子に通ずるものを感じました。胸を打たれてしまった。 |
No.13 | 4点 | Yの構図- 島田荘司 | 2009/09/07 23:12 |
---|---|---|---|
--ネタばれ含みます--
いじめ問題を取り上げた社会派小説。 いじめの首謀者、いじめに加担する先生に対する地元の評判が悪くないという意外な展開。 ひょっとしてこれは東野圭吾の「悪意」系の作品か?と期待したのですが‥ 真相はまあ意表をつかれたと言えばつかれたけど。 「あの名作」との引き合いで題名から犯人が予想つく人もいるかも知れないけど、それを隠すための列車トリックなんですかねぇ、と不必要にケチをつけたくなってしまう。 「展望塔の殺人」に似ています。 |
No.12 | 4点 | 確率2/2の死- 島田荘司 | 2009/06/06 10:39 |
---|---|---|---|
まず第一文の「吉敷竹史は走っていた。」から引き込まれます。
第一章「二つのストーリー」ではその名の通り2人の視点から並列に物語が進んでいきます。 吉敷側では「誘拐犯の身代金放棄」、甲斐婦人側では「同じ箇所を回り続ける白いライトバン」と2つの謎が興味を引きます。 --以下ネタばれ-- 第二章「二つの死」では流産もあったんだから「三つの死」だろ!と言いたくなる。 終章「二つの賭け」では一方はただの玉砕で賭けとは呼ばないだろ、と思った。 読み易かったけれどもトリックものでもないし、長編ものとしては真相はあまりにも小粒でつまらないです。 |
No.11 | 4点 | 消える「水晶特急」- 島田荘司 | 2009/06/04 20:37 |
---|---|---|---|
2人の美人女性記者の視点(三人称だけど)で進んでいく話なのですが、その設定の意図が分からない。
終始淡々としたペースで話が進行するため盛り上がりに欠けるし、解決編もこれまた吉敷刑事が淡々と説明するので犯人の心理も分かりづらかったです。 せめて解決編だけでも犯人側の視点からの解説でもあれば良かったのに、思ってしまう。 |
No.10 | 6点 | リベルタスの寓話- 島田荘司 | 2009/06/02 21:48 |
---|---|---|---|
御手洗シリーズ。2つの中編モノで構成されています。
どちらもセルビアとクロアチアの因縁を題材にした話です。 ①「リベルタスの寓話」:ハインリヒの語り。物語の途中で語られる「寓話」に見立てられた殺人事件。その真相は… む、難しい。オンラインゲームに関する話が良くわからないっス。 ②「クロアチア人の手」:石岡君の語り。密室トリックもの。真相は格闘漫画級にありえないものだが、石岡君の語りによって、何故かコミカルな仕上がりになっているので妙にマッチしているとも感じられる。クロアチアでは俳句が親しまれていたというのでビックリ。 どちらも楽しめました。ハインリヒはやはり好きになれず。ハードカバーは一見の価値あり。 |
No.9 | 6点 | 摩天楼の怪人- 島田荘司 | 2009/06/01 21:30 |
---|---|---|---|
島田荘司らしい壮大な謎かけでその部分は楽しめました。
しかし、トリックの舞台装置そのものは感動するくらい素晴らしいのに、その活かし方が非常にちまちましており「もったいない!どうして?」と首を捻ってしまうものとなっております。 細かい事件はまだしも、最大の謎のジーグフリード殺害の真相はコレかよ…といった感じです。 島田流のウルトラCを期待していたのですが… 登場人物も若い頃の刑事を除いて全く感情移入できない。 石岡君の存在は大きいと思いました。 また、「若い頃の御手洗」+「大女優」⇒「大バトル」を期待したのですが全く期待通りの展開とはなりませんでした。 刑事とのバトルもなかったし、御手洗が大人し過ぎです。 個人的にはその点が一番痛かったかな。 厳しく評価しましたが、全体的には面白いです。 ただ、期待し過ぎたのでちょっとがっかり。 まあでも、文庫本が出たし、また読もうかな。 |
No.8 | 7点 | 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 | 2009/06/01 21:00 |
---|---|---|---|
題名からしてトラベルものかと思って読んでみると、確かに一応トラベルものの体裁を取ってはいるのですが、バリバリの本格推理物なのでビックリしました。
不可能犯罪に義経伝説に超常現象、島田ワールドです。 この作品では吉敷刑事の弱い面、強い面、暴力的な面、暖かい面、熱い面等様々な人間性が描かれています。 つーか熱過ぎです。 トリックも大胆で豪快そのもの。 現実的な話をすれば突っ込み所満載ですが、この「どうだ!」と言わんばかりに堂々と見せつけられると文句も言えません。 心霊写真の真相も確率的に十分超常現象の範囲ですが、明快でスッキリしました。 |
No.7 | 5点 | 網走発遙かなり- 島田荘司 | 2009/05/30 12:36 |
---|---|---|---|
病院の待ち時間が長いのでその暇つぶしに買いました。
長編かと思いきや、4つの短編だった。と思いきや連作短編で1つのまとまったお話でした。 ①「丘の上」:奇妙な行動を取る隣人の老人を観察する主婦視点のお話。次第に狂気に駆られていく様は「毒を売る女」に近い印象を受けました。 ②「化石の街」:踊りながら都市を徘徊するピエロ。このリアルに不気味な設定はまさに島田荘司っぽい感じがしました。 ③「乱歩の幻影」:乱歩を知らない私にとっては少々苦痛。一番ページ数多いし。 ④「網走発遥かなり」:列車内で起きた殺人事件と死体消失トリック。種明かしを見ると「なあんだ」という感じ。 前半二作は楽しめたのですが、後半二作はイマイチでした。 |
No.6 | 6点 | 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 | 2009/05/27 22:51 |
---|---|---|---|
ホームズは子供の頃に少し読んで覚えていただけに、夏目漱石の語るホームズが爆笑でした。
電車で笑いをこらえるのに必死でした。 ただ、本題(?)のミイラトリックに関しては「ふ~ん」という印象なので得点は抑えました。 夏目漱石は著書を読んだことがなかったので、知っていればきっともっと楽しく読めたのでしょう。 ぜひ学校の図書館に置きたい一冊。 |
No.5 | 7点 | 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 | 2009/05/23 21:32 |
---|---|---|---|
トラベルミステリらしく時刻表に従ったアリバイトリックです。
しかしそこは大胆な仕掛けと凄まじい猟奇的事件で、やはり島田ワールド全開です。 主要登場人物がかなり限定されており、非常に人間関係がわかり易いです。 表題の意味もなるほどの一言。 |