皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
臣さん |
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平均点: 5.90点 | 書評数: 660件 |
No.10 | 4点 | 人間動物園- 連城三紀彦 | 2023/05/16 13:54 |
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著者お得意の誘拐ミステリー。
連城らしいといえます。第1部での現場の違和感はなんとも奇妙です。 でも、誘拐モノならサスペンスでもっと読者を惹きつける手法を採ったほうがよかったのではと思います。 多視点というのも、物語に入り込めない要因になるのでしょう。私にとって、ということなのかもしれませんが。 総じて期待に反して、という感じの作品でした。 |
No.9 | 6点 | 恋文- 連城三紀彦 | 2016/12/07 14:14 |
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歪んだ情愛系・ミステリーもどき作品集。
『恋文』タイトルだけがミステリーか?ごくフツーの出来だった。 『紅き唇』ちょっと良い話。ちょっとミステリー。悪くはない。 『十三年目の子守唄』愚痴っぽい独白スタイルが利いている。連城らしくない感もあるが、反転は連城らしい。これがベストだが本編だけが浮いている。 『ピエロ』こういう夫婦がいてもいいが、それがどうしたという感じ。そもそも共感できない。もっと強烈なオチをつけてくれればいいのだが。 『私の叔父さん』大叔父と姪孫(まためい)の関係だけでも興味深いのに、さらにちょっとした背景があるから、なおおもしろい。締めくくり方はすこし透け気味。話としては好みだが、後半がクサい。それに最後の数行は俗っぽくて好みではない。 以上、短編らしい短編、5編。 切れ味するどいとまではいかないが、十分に楽しめた。著者の数々のミステリー名編とくらべて遜色なし。ミステリー性が低くても問題ない。 が、得られる喜びは刹那的で、読後何も残らない。話の筋は読後10分で忘れてしまいそう。 |
No.8 | 5点 | 処刑までの十章- 連城三紀彦 | 2015/08/31 10:38 |
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少ない登場人物の中で、いったい誰がどんな役割を演じているのか、その辺りを探りながら読むのがいちばんでしょう。
突如蒸発した靖彦、その妻の純子、靖彦の弟の直行。残された二人がいっしょに聞き込みしながら、靖彦を捜索し、さらなる事件に遭遇する、それだけなら普通の推理小説だが、そこは連城氏らしい味付けになっていて、幻惑的なサスペンスが創出してあります。 互いに腹の探りあいに発展していくところや、登場人物の事件への関わり方が徐々に解明していくところは、それなりに楽しめます。 ただ、肝心要の謎の解明はあっけないし、それが事件にどう関わっているのかも中途半端な感があります。最後までもやもや感は拭い取れません。 結局、中途のサスペンスだけが唯一の楽しめる要素だったようで、総合的にはちょっと?という感じでした。 |
No.7 | 5点 | 女王- 連城三紀彦 | 2015/04/27 10:04 |
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とにかく重たかった。
500ページ超で、しかもハードカバーの単行本。いったい何kgなのだろうか(笑)。 鞄に入れて持ち歩くのを躊躇しました。 生まれる前の関東大震災や東京大空襲の記憶がある、昭和24年生まれの主人公史郎。 はたして史郎は誰かの生まれ変わりなのか。序章には、そんなSFファンタジー的な謎が提示してあります。 章が進むにつれ謎がすこしでも解きほぐされていくのかというと全くそうではなく、一章でも、史郎の祖父の死の謎や家族たちの出生の謎、そして邪馬台国や魏志倭人伝、南北朝等々の謎など、謎は積み重なり、深まる一方です。 こんどは、タイトルどおり卑弥呼の謎を解く歴史ミステリーなのか・・・。 一章といっても、一章が終わるのが290ページぐらいですから、いい加減に勘弁してくれという感じで、苛立ちがつのってきます。 とはいえ、連城ミステリーなだけに壮大な仕掛けがあることの期待感がしぼむことはありません。 そして結果は・・・ かなり無茶苦茶なところもありますが、いちおう許容範囲というところでしょうか。遺作ということもありますしね。 亡くなられて1年以上になりますが、昨秋から今年にかけて、刊行ラッシュという感があります。 長編はあまり好みではないものの、まだ未刊作品が残っていると聞けば、やはり惹かれます。 |
No.6 | 6点 | 小さな異邦人- 連城三紀彦 | 2014/06/26 14:07 |
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『指飾り』『無人駅』『蘭が枯れるまで』『冬薔薇』『風の誤算』『白雨『さい涯てまで』『小さな異邦人』の8作。
人間同士とくに男女間の愛憎を軸にしてミステリー仕立てにした作品群、といったところだろううか。 『蘭が枯れるまで』はシニカルなラストが冴えていた。 『白雨』には、いつも以上の強烈な反転で度肝を抜かれた。ラストの畳みかけには参った。 そして表題作。こんな誘拐もあったのか。あの短さでこの内容、ほんとうに充実している。それにしても、8人の子どもたちを一人で育てるなんて、大変だなぁ。 恋愛小説家に見合った、ミステリー要素のすくない小説のように見せながらも、あのプロット、あのラスト。読み始めでは薄味に感じたが、やっぱりあざやかなミステリーだった。 ただ、総じて〇だが△があるのもたしか。 シュールすぎるのでは、という気もした。この作者なら、言わずもがななのだが。 |
No.5 | 7点 | 顔のない肖像画- 連城三紀彦 | 2012/03/26 09:54 |
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7編の反転ミステリーが収録されている。
①「瀆された目」・・・7編の中では本格の匂いがした。後半は度肝を抜かれた。 ②「美しい針」、③「路上の闇」・・・「瀆された目」で本書がこの種のミステリー集であるとわかったためか、これら2編にあまり驚きなし。想定内だった。 ④「ぼくを見つけて」・・・誘拐物。あいかわらずの凝った作り。でもラストはやや不満。 ⑤「夜のもうひとつの顔」・・・強烈すぎて吹っ飛びそう。 ⑥「孤独な関係」・・・騙し方が気に入らないなぁ。手が尽きた感あり。 ⑦「顔のない肖像画」・・・これはいくらなんでもないだろう、というとんでもない真相。馬鹿げているが愉快。 ①がいちばん、次に⑤、その次が⑦④、ついで⑥②③の順。 サプライズの程度には差があるが、どれもこれも中途のスリリングな展開には楽しめた。 「戻り川心中」よりは好み。「夜よ鼠たちのために」と同格か少し上。 でも、実は連城作品は自分にはそれほど合わないことも事実。 と、書評も、反転、また反転。 |
No.4 | 7点 | 夜よ鼠たちのために- 連城三紀彦 | 2011/07/07 16:23 |
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ハルキ文庫版。9短編を所収。
1)「二つの顔」・・・兄弟が強い絆で結ばれたのですね。よかったのか悪かったのか?トップバッターは怖いというより、なぜか笑える内容だった。 2)「過去からの声」・・・退職した青年刑事が一年前の誘拐事件の真相を、その事件をともに追った先輩刑事に手紙で告白する。子供のころ誘拐された経験があるからこそ分かる誘拐犯のこと。意外な真相だが、驚きよりも爽やかさを感じた。 3)「化石の鍵」・・・体の不自由な10歳の子の首を絞めたのは誰? 4)「奇妙な依頼」・・・タイトルどおり、奇妙な依頼だ。この依頼人、相当頭がいい。事実が明かされれば不思議な依頼の謎はすべて解明する。実に分かりやすい。 5)「夜よ鼠たちのために」・・・なるほど、たしかに復讐にはちがいない。隠すテクニックは抜群。こんな話が現実にあったら怖いなぁ。いやもしかしたらあるかもしれない。ネーミングも素晴らしい。 6)「二重生活」・・・これも反転ミステリの傑作。 7)「代役」・・・たしかに代役。話の中で騙された××は本当にお気の毒。可笑しな話だった。 8)「ベイ・シティに死す」・・・9編のなかではシンプルなほう。それでも騙されてしまった。 9)「ひらかれた闇」・・・短編にしては人物がわかりやすく、物語性もあり、青春ミステリっぽくもある。長編につながりそうな作品だった。 爽やかに括った「過去からの声」が、連城らしくなく、そういった意外性があって、いちばん良かった。爽やかさを求めるなんて、自分も案外俗っぽい人間なんだな、と思った。 ほとんどの作品は、奇術のような鮮やかな騙しのテクニックが駆使されている。そんな連城マジック・ミステリを十分に堪能できた。外れはないのだが、9編を続けて読むとちょっと疲れてしまう。暑さのせいかもしれない。 |
No.3 | 6点 | 造花の蜜- 連城三紀彦 | 2011/05/27 10:02 |
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上巻は誘拐サスペンスでノンストップ、下巻は一転心境描写でドップリと小説世界へ。そして真相がこれまた強烈。何を述べてもネタバレになりそうなので多くは語りませんが、ファンからすれば、これこそ連城マジック炸裂ということなんでしょう。
と絶賛したいところですが、いくらなんでもこんな壮大な事件はあり得ないでしょう。どんな文章力、表現力をもってしても、このストーリーに現実感は出し切れません。例えば時代設定を変えるなどすれば、気にならなかったのではと思うのですが... でも楽しめたので点数はこんなところです。 |
No.2 | 7点 | 戻り川心中- 連城三紀彦 | 2009/11/02 19:17 |
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5編の共通点は、花がテーマになっていること、それといずれもがホワイダニット物ということです。概ね伏線がうまく示されているので、結末に驚かされるだけではなく、ミステリとしての上手さも感じられます。
個別には、『藤の香』『桔梗の宿』がシンプルにまとまっているし、幻想的で奇妙な味が出ていて、好みです。『桔梗の宿』の結末もよかったですね。それから、『桐の柩』の「柩」の発想には驚かされました。『白蓮の寺』『戻り川心中』は、文学的な美文を駆使して、ここまで巧妙に書かなくても、と思うほど実に手のこんだ作品です。ただ、私にとっては、正直なところ2作品とも、いい印象を持てませんでした。 ミステリ的に評すればもっと高得点なのですが、総合的にはこの程度ですね。 |
No.1 | 6点 | 敗北への凱旋- 連城三紀彦 | 2009/03/29 12:14 |
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暗号は難解すぎます。これでは誰にも解けません。
しかし、難解にしたことの理由が本作品の最大の謎ではないかと思います。 真相や動機はあまりにも壮絶、壮大で、並みの作家だったら白けさせるでしょうが、連城の文章なら違和感なく受け入れられました。 十分に余韻が残ります。 この作品、謎解きに必死になって読むより、いっきに読み通したほうがいいかもしれませんね。 |