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臣さん
平均点: 5.90点 書評数: 655件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.75 7点 吉原手引草- 松井今朝子 2009/09/17 09:51
聞き込みにより花魁葛城の失踪の謎を追う、吉原の遊郭を舞台とした新しいスタイルの時代ミステリで、各氏絶賛の直木賞受賞作品です。
聞き込み役である男は人物像が明らかにされておらず、その会話文すらなく、その男の質問内容は、16人の関係者ごとに章立てされた各章の一人語りの会話文(独白風の会話文)の中で復誦される程度でしかわかりません。この一人語りの会話文は語り口調を職種により変えて興趣豊な文章となっており、著者の工夫が感じられます。主人公である葛城は関係者たちの一人語りの中でしか登場しませんが、それによって人柄がおぼろげながら見えてきます。一人語りの中に仕掛けが隠されていて、何人かの語りを読み進めば謎が見えてくるはずなのですが、私の場合、中盤でも謎の影すら見い出せませんでした。すらすらと読めてしまうので、描かれた人間模様の中に隠された伏線も見逃してしまいます。でも、結果的にはそれでも十分に楽しむことができます。推理に必死になるよりもむしろ、吉原という江戸の中でも特殊な空間での花魁を取り巻く様々な人たちの人間模様を楽しみながら読んだほうがいいようです。いちど読んだ後に、解説、再読による復習も楽しめると思います。
実は読書の中盤ごろ、直木賞のサイトを覗き見ていたら、ネタバレに触れてしまいました。大失敗です。それでもショックから立ち直りがんばって読破し、まずまずの満足感を得ましたが、やはりミステリとしての楽しみは半減しましたね。ネタバレショックは無視して採点したつもりですが、無意識に減点してしまっているかも。。。

(以下ネタバレ要注意!)
要注意というほどでもありませんが。。。
ラストに明かされる真相は誰もが好む内容です。冷静に考えれば誰でも想像できることです。多くの楽しみ方があるのは確かですが、ミステリとしては、その種明かしに驚かされるのが楽しいでしょう(ぼくはミスしましたが)。ぼくとしては、この種の真相が好きなので、真相開示のあとに、葛城視点の経過を動機編として加えてほしかったな、とも思います。

(2010年4月追記)
読書中にネタバレ情報に触れたため評点を控えめにしていたが、冷静に考え直せばもう少し評価は高い。よってプラス1点。

No.74 6点 グリーン・マイル- スティーヴン・キング 2009/09/16 19:23
ネタバレを防止するために6分冊を毎月順次発刊していました。
ストーリーは、アメリカの刑務所で、死刑囚の大男、コーフィが不思議な力で何人かの命を救っていくという奇妙な内容です。死刑囚と看守たちとの触れ合いもあり、全体として心温まるファンタジー作品となっていますが、ホラー的要素もあり、作者らしさが表れています。
話としては面白いのですが、映画まで観てしまうと、もうこれ以上はいらないといった感じで、だいたいのストーリーも覚えているので再読したいとも思いません。その程度の作品だったのでしょうね。本格ミステリなどミステリ色の強い作品に疲れてきたときに読むのにはおススメです。

No.73 5点 パラサイト・イヴ- 瀬名秀明 2009/09/16 18:42
著者のデビュー作で、ハードSF系(理系)バイオホラーの先駆的な作品です。つまり本書は理系色とホラー色の両方を備えていて、さらにミステリ色も加味され、エンターテイメントとしてぜいたくな作りとなっています。が、すべての要素が満足できるかというと、そうではないようです。どうしても、どれかひとつを期待してしまいますから、期待はずれな面も出てくるかもしれません。むしろこの種の作品は、期待はずれな面があっても、じっくりと再読すれば良さが理解できるような気がします。
著者である瀬名氏は、薬学系の学者ということもあって、理系色をより強く出したかったのではと感じられます。その後の作品も、タイトルだけで判断すればハードSF色が強くなっているようですね。

No.72 5点 黄金を抱いて翔べ- 高村薫 2009/09/16 18:37
読みづらいほど精緻な描き方をしている。おまけに読んでいて緊張感を覚える。そんな作品でしたね。こういった男の世界を女流作家が、しかもデビュー作で描いたってことが最大の驚きです。もういちど、じっくりと読みたくなる作品です。

No.71 5点 このミステリーがすごい!2009年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2009/09/16 18:34
10年ぶりに購入しました。買ったのは年末でしたが夏に読み終えたので、季節はずれですが、いまごろの評価になります。
形式的には昔とほぼ同じですね。ぼくが好きだった私のベスト6も残っていました。そもそも、このミスはミステリを本格だけではなく広めに捉えているようですが、私のベスト6はさらに広く感じます。ミステリとはとても思えない、とんでもないのを選んでいる人たちもいて、それがまた面白かったという記憶があります。でも今年のは普通でしたね。
当然ですが、ランクインの作家たちは昔とずいぶん変わりましたね。ついでにWikiで20年分のベスト10ランキングを見ましたが、海外編の常連だった、スティーヴン・キングやトマス・H・クックなど売れっ子作家たちはもう消えています。2009年度では、名前すら知らない作家たちのオンパレードで、恥ずかしながら唯一名前を知っているのがジェフリー・ディーヴァーぐらいです。取り残されたって感じです(笑)。
どちらかというと、このミスは読み物として楽しんだほうですが、もちろん参考にした作品もあり、これからも頼りになるガイド本となりそうです。(祭典サイトの情報には遠くおよびませんが...)
こんな感じで感慨にふけっていましたが、2009年版は、短編ミステリなど不要なものもあるので、点数としてはこの程度です。

No.70 6点 飢えて狼- 志水辰夫 2009/09/09 12:11
冒険小説三部作の最初の作品で、デビュー作でもある。残りの2作は、「裂けて海峡」、「背いて故郷」。
ひさしぶりの一人称小説に冒頭から心がときめいた。文章はたしかに巧い。情景描写がとくに良い。体言止めを多用(濫用)することが、著者の文体の特徴なのだろうか。とにかくテクニックは抜群である。文章の歯切れ、テンポともに良く、一般のハードボイルド文体とちがって断然読みやすく感じた。文章が良いので、場面が流れるように映像として浮かんでくる。物語自体もスピード感のある部分と、じっくり読ませる部分との両方が適度に交じり合っていて、ぐいぐいと惹き込まれる。第二部の中ほどでの、択捉島の案内人・蛭間との別れのシーンでは、巧い文章表現があいまって、ジーンときた。この場面が本書の前半のクライマックスではないだろうか。しかし、蛭間と別れてからの主人公の単独サバイバル場面では、この種の冒険小説に不慣れなせいもあって、集中が途切れ、すこし停滞してしまった。本来なら、この場面こそが圧巻シーンなのかもしれないのだが。また、解決編である第三部は、序盤で真相を直感的に予想してしまったので、結末にはそれほど驚きはなく、活劇を文章で楽しむ程度だった。
初めての国内冒険小説に面食らった感もあるが、点数(6点)はともかくとして、既読の2作品「花ならアザミ」、「行きずりの街」にくらべ、これからも読んでいこうという気にさせてくれる作品であった。

No.69 8点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2009/08/31 12:09
犯人の名と、詳細な犯罪手段とを知った時、驚きというより、そんな馬鹿なというのが第一印象でしたが、ページ数を割いた大団円でのレーンの解説を読み進むうちに、なるほどと納得させられました。それほど犯人には意外性があり、なおかつ謎解きがしっかりとした作品です。レーンの謎解きは、本当に心地よい読後感を与えてくれます。この謎解き解説は、殺人事件の推理はこうやってやるものですよ、と教えてくれる「推理」のお手本といえます。でも、私の好みからして、「推理小説」のお手本とまではいかないところもあるので、その分減点しました。
ミステリファンになって数十年、あまのじゃくという性格から、熱狂的クイーンマニアを横目でにらんで、すこし馬鹿にもしていたため(失礼)、しかも既読の「Yの悲劇」と比較して国内では人気がやや劣るとも聞いていたので、初読が先送りになっていましたが、このサイトの評価を見て、長年の積ん読を解禁しました。解禁して大正解。悔しいですが、この年になってクイーンにも傾倒しそうです。
「Y」の内容を忘れてしまっているので、どちらが上かは今すぐ判断できませんが、再読してから、じっくりと比較して楽しみたいですね。とにかく作品の作りや雰囲気には相当な差があるので、ミステリファンであれば、すくなくとも一方には肌が合うと思いますよ。

No.68 6点 桜宵- 北森鴻 2009/08/22 13:52
香菜里屋シリーズ2作目。
「十五周年」は予想通りの結末だった。きれいな終わり方はあまり好きじゃないけど、予想が当たったので満足できた。でも、他はまずまずかな。複雑なロジックには慣れてきたけど、常連の登場人物が善人すぎるし、なんか堅苦しいし、大満足とはいえなかったな。料理はよかったけどね。

No.67 6点 11文字の殺人- 東野圭吾 2009/08/19 10:03
たしかに火サスそのものですね。(長年、火サスで培われた)直感によって、早々と犯人も分かってしまいました。真相はチープすぎます。余韻も残りませんでした。でも、ページを繰る手が止まらないほど楽しめたことも事実です。アリバイトリックもシンプルで良かったです。とにかく、あっという間に読めたってことが、素晴らしいエンターテイメント小説の証拠だと思いますよ。買って読むのは勿体ないかもしれませんけどね(笑)。

No.66 6点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2009/08/13 10:21
謎解きロジックはしっかりしているし、安楽椅子探偵のマスターの推理は冴えてるし、格調も高く、料理も美味しそう。ところが、ぐいぐい引き込まれるという感じではなく、なにか欠けているように思えます。いや欠けているのではなく、逆に詰め込みすぎなのでしょう。謎解きがくどすぎて、わずか50ページの短編なのにストーリーが歪んでしまってるように思いました。短編の安楽椅子探偵ものの宿命かもしれませんね。それと、会話文にぎこちなさが感じられました。ある意味、純文学的なのかもしれませんが、慣れていないので抵抗がありましたね(笑)。
でも、「殺人者の赤い手」のラストの少し前ではホロリとさせられたし、連作のラストつまり最終話「魚の交わり」も展開が良かったので、満足はしました。それに、食事の場面のある小説は基本的に好きですね。

No.65 7点 閉鎖病棟- 帚木蓬生 2009/08/12 14:37
精神科病棟での人間模様が、患者側の視点で、緻密で丹念に描かれています。静かに流れるストーリーと緻密な描写によって、かつて体験したことのない、途轍もなく不可思議な閉鎖空間に誘われていきます。残念ながらサスペンスは感じられませんが、むしろそれがこの作品の持ち味なのかもしれません。そして、普通の推理小説では味わえない読後感を得ることができます。
この作品は「感動」のドラマで、ミステリではないとの評価が一般的です。ミステリの定義をかなり広義で捉える私にとっても、ボーダーぎりぎりかもしれません。でも、「罪と罰」を登録したぐらいだから、同レベルだと思って、登録してみました。それに、冒頭の引き込みは間違いなくミステリだし、途中にもその要素は十分にあると思います。

No.64 8点 わらの女- カトリーヌ・アルレー 2009/08/08 08:55
悪女にしては知恵が浅すぎるという感じがするし、主人公の行動や、物語の設定、文章など、あらゆる面で稚拙さが感じられます。でも、物語の展開は実に巧みで、サスペンス作品としては上級品です。死体を見つけられるまでは、ハラハラどきどきで、すらすらとページが進む一方、その後は一転して、これから先どうなるのだろうか、と推理しながら楽しむことができます。ラストは想定内とはいえ凄いですね。後に残ります。
話題になった本作がサイト登録されていないことは、本当に意外でした。たしかに今なら、リアリティがなさすぎて敬遠されるかもしれませんし、悪漢小説というのも敬遠の要素になりそうです。でも、悪女ヒルデカルデには意外に感情移入できると思いますよ。再燃して、再映像化されることを期待しています。

本書は、かつて映画化され、その主役であるショーン・コネリーとジーナ・ロロブリジーダの映画スナップが、創元推理文庫のカバーを飾っていたことは印象的でした。国内でも2度ドラマ化されています。特に古いほうの連続ドラマで、大空真弓、高橋幸治、加藤嘉が好演していたことが、いまだに鮮明に記憶に残っています。

(同日追記)ネットで調べると、2006年にも、「美しい罠」というタイトルで、昼の連ドラで放映されていたようです。
(2010年6月追記)若いころに強い印象を残した作品なので、思い入れもある。よって、1点プラスして8点。

No.63 6点 私が見たと蠅は言う- エリザベス・フェラーズ 2009/08/03 12:40
安アパートの元住人の部屋から拳銃が見つかり、さらに、その拳銃でその元住人が殺害されたことが発覚する。アパートの全住人が容疑者になり、みな他の住人を疑い始める、ちょっとしたアパートCC物です。さぞスリリングでサスペンスフルな展開かと思いきや、実は全編をとおして、アパートの人間模様が軽妙なタッチで描かれていて、サスペンス物ではあっても暗さはほとんど感じさせない内容となっています。都会的でお洒落で、国内物ではまず味わえないコージー調のラブコメディっぽい雰囲気があります。1940年代に書かれた作品だとは、とても思えませんね。
ミステリとしては、本格フーダニット物のわりには粗さがあります。でも、住人たちが好き勝手に「犯人はあいつだ」と謎解きするので、それがミスディレクションを誘う形となって、読む方も右往左往してしまい、結果、意外に楽しむことができました。著者の手口に見事にやられたなと言う感じです。
採点を迷うところですが、翻訳物経験の少ない私にとってカルチャーショック的な作品なので、7点を献上します。

(2010年4月追記、点数訂正)
後になって考えれば7点はやりすぎ。他の作品とくらべてみても6点が妥当です。

No.62 8点 神獣の爪- 陳舜臣 2009/07/31 17:57
6編よりなる短編集で、そのうち後半の2編は陶展文シリーズです。安楽椅子探偵物、ユーモア物、本格物と種々そろっています。いずれの作品も、ストーリーが十分に練られているという印象を受けます。うち2編についてコメントします。

表題作は、謎を解くのは刑事ですが刑事物といった感はなく、その刑事が私的に入手した25年前の盗難事件の情報をもとに、とある復讐の謎を解き明かす、というどちらかというと安楽椅子探偵物に近い推理小説です。謎解きロジックはすこし乱暴な感じもしますが、短編なので、むしろそのぐらいのほうが面白みがあります。4編目の「描きのこした絵」は本格ミステリで、仕掛けとして大掛かりなトリックと、物理的なトリックとが用意されています。大掛かりなトリックは少し無理はありますが、やはり短編なら、このぐらいのほうが楽しめるように思います。これら2編は、ほんとうに秀作です。

No.61 6点 聖域- 北方謙三 2009/07/28 16:59
高校教師の西尾が教え子を探し出すために暴力団と闘うというストーリー。
実は主人公の西尾は、喧嘩が弱く、ヤクザに脅されて失禁してしまうほどの臆病者。ところが教師として生徒を守りたいという意地だけはあって、だんだんとヤクザ世界にもまれて変わっていく。それに愛車レビンに乗ればまた変わる。そんなキャラが良かったですね。予想外に楽しめました。
北方ハードボイルドは、今となれば時代遅れといった感もあるし、好みの作風でもないのですが、文春の東西ミステリベスト100に3作もランクインしており、これらを中心に、懲りずに読んでいけば、自分に合った良作にめぐり合えるかもしれません。

No.60 4点 弔鐘はるかなり- 北方謙三 2009/07/28 14:00
北方謙三氏の書評登録は本サイトではゼロ。総合ミステリ書評サイトとして寂しいので、ファンではありませんが、すこし盛り上げてみたいと思います。
本作は氏のハードボイルド第1作です。純文学からの転向後に書いた初めてのハードボイルド作品だと思います。これ以後、量産が始まり、驚異的な人気となったのですね。
本作はそんな記念碑的な作品で、すでにこの作品には、北方氏の特徴である短文による描写が随所に見られ、印象に強く残っています。ただ、暴力シーンは肌に合いませんでした。その暴力シーンも得意の短文で描写され、それによる強烈な効果があったのかもしれません。時代小説のちゃんばらシーンだったら、どれだけ血が流れようと気にならないのに、不思議ですね。
当時、あれほど流行った北方ハードボイルドも、今は影を潜めています。今書いたとしても、売れないのでしょうか。氏の時代物をあまり読んでいないのでわかりませんが、たぶん、時代物、中国歴史物のほうが(氏の風貌にも)似合っているのでしょうね。現代物ならともかく、時代物、中国物は十分な調査と取材が必要なのに、どうしてあんなスピードで書けるんでしょうか?本当に凄いです。

No.59 3点 支那そば館の謎- 北森鴻 2009/07/26 22:01
50ページごろに住職が推理しはじめ、2,3ページ後に終了。連作短編集とは知らずに借りてしまいました。短編も好きだし、軽めでユーモアたっぷりだから気分転換にはいいかと思いきや、有馬次郎という寺男と折原けいという女性記者との掛け合いは、意外に面白くありません。ユーモアのセンスはイマイチなのでしょうね。有馬次郎を「アルマジロ」と呼ぶのだけが笑えました。
北森鴻といえば鮎川哲也賞作家で、いかにも本格派らしい作家です。初めて読む作家で期待したのですが、期待には応えてくれませんでした。今度は、賞をとったメジャーな作品を読んでみたいと思います。

No.58 7点 雪蛍- 大沢在昌 2009/07/23 09:44
佐久間公シリーズ。
薬物中毒者の更正施設の管理人である元探偵の佐久間が、その友人で更正施設の理事長である沢辺からの依頼を受けて失踪人調査を行うという設定。物語は、失踪人調査を行う過程で殺人事件に巻き込まれていく話と、佐久間が施設内で心を閉ざした問題児・ホタルと心を通わせていく話とが同時進行します。すこしテレビドラマ風です。
うがった見方をすれば、物語自体も佐久間のセリフも安っぽさがあるのですが、こんなテレビ的ストーリーに弱い私は、すぐに引き込まれ、少しソフトなハードボイルド・ヒューマンドラマとして楽しむことができました。
かつては、シリーズ物の途中の作品であることなど調べもせずに読む悪い癖があって、この作品もその例に漏れなかったのですが、特に問題なく楽しめたので、本作品については正解でした。でも失敗も多いので、これからは、このサイトで情報を得るなどして、注意して選ばないといけませんね(笑)。

No.57 6点 自殺の殺人- エリザベス・フェラーズ 2009/07/20 10:37
トビー&ジョージシリーズ。
冒頭、自殺未遂事件を起こしたジョアンナの父が翌日、不可解な死を遂げる。自殺なのか、他殺なのか、これが最大の謎。中盤にも死亡事件が起きるが、これも自殺か他殺かはわからない。
大団円(エピローグの前の部分で、勝手にそう呼んでいます。)では一波乱あり、どんでん返しもあり、エピローグでのジョージによる背景や真相の説明もていねいでわかりやすく、ミステリとして十分高評価できる要素を備えています。また、登場人物の役割分担もうまくできています。
こう書けば申し分なしのようですが、実は、中盤は、文学的な表現も手伝って、あまりにも退屈な展開となっています。ただ、退屈でページが進まない分、立ち止まって自ら推理できます。この点はメリットでしたね。
ラストが巧いので、中盤に事件の背景にもページを割きながら展開よく話を運べば、かなりの高得点でしょうね。

No.56 4点 花ならアザミ- 志水辰夫 2009/07/18 11:28
ハードボイルドではなく、謎解き中心の普通の推理小説だ。登場人物がみなミステリアスで、物語の雰囲気は好みなんだけど、謎解きがストレートすぎて作品としてはイマイチ。
著者は独特のシミタツ節というのを持っているそうだが、本作では出ていないのかもしれない(詳しくないので不明です)。ただ、私の場合、『行きずりの街』よりは印象が良かった。

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臣さん
ひとこと
あいかわらず読書のペースが遅い。かといってじっくり読んでいるわけではない。
好きな作家
採点傾向
平均点: 5.90点   採点数: 655件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(14)
松本清張(12)
東野圭吾(12)
アガサ・クリスティー(12)
アーサー・コナン・ドイル(11)
横溝正史(11)
今野敏(11)
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評論・エッセイ(9)
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