皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2849件 |
No.209 | 7点 | 密室に向かって撃て!- 東川篤哉 | 2011/01/19 09:18 |
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(ネタバレなしです) 2002年発表の烏賊川市シリーズ第2作の本格派推理小説です。ユーモアの度合いが前作「密室の鍵貸します」(2002年)に比べて数段パワーアップしています。謎解きも充実しており、お笑いの中に謎解き伏線をしっかり張ってあります。前作のような破天荒な真相ではありませんが、その分解決のまとまりは良いので本書の方が一般受けしやすいと思います。 |
No.208 | 6点 | 落馬- ジョン・L・ブリーン | 2011/01/18 21:07 |
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(ネタバレなしです) ミステリー評論家としても名高い米国のジョン・L・ブリーン(1943年生まれ)が1983年に発表したジェリー・ブローガンシリーズ第1作となる本格派推理小説です。有名ミステリー作家のパロディ作品を書いている作者だけあって本書に登場するオリビア叔母さんのキャラクター描写が秀逸です。古典的推理小説が大好きでホームズ流の人物鑑定や、容疑者を一堂に集めての謎解きを追い求める場面は本格派ファンなら笑いが止まらないでしょう。犯人が誰かという謎解きもさることながら、オリビア叔母さんの願いがどういう結末を迎えるかも本書のお楽しみの一つでしょう。推理は初期エラリー・クイーンを彷彿させる、これまた本格派好きを意識したようなところがありますがクイーンのように色々な可能性を一つずつ吟味することなく、「これしか考えられない」と一足飛びに結論に至っているのがちょっと残念です。でもまあ面白く読めました。 |
No.207 | 5点 | 影の複合- 津村秀介 | 2011/01/18 09:31 |
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(ネタバレなしです) 津村秀介(1933-2000)はミステリーデビュー作が1982年発表の本書なので、ミステリー作家としてのキャリアは決して長い方ではありませんがそれでも50作を超す長編作品を残しました。色んなジャンルに手を出すことの多い国内作家の中でアリバイ崩しの本格派ばかりを書き続けたこだわり型作家です。当然ながら本書でもアリバイトリックに力を入れていますが、それ以上に目立っているのが人間関係が少しずつ明らかになる捜査描写です。この複雑な人間関係がちゃんと理解できないとさっぱり面白くない作品なので、登場人物リストを作成しながら読むことを勧めます。⇒(後記)正確には本書は「偽りの時間」(1972年)を10年ぶりに改訂した作品なので再デビュー作と紹介すべきでした。 |
No.206 | 6点 | 赤い数珠- モーリス・ルブラン | 2011/01/11 19:29 |
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(ネタバレなしです) モーリス・ルブラン(1864-1941)晩年の1934年に発表された本書はなぜかルパンシリーズのように紹介されたこともありますがこれは完全な誤りで、ルパンは名前さえも登場しません(登場人物の1人が後年発表の「カリオストロの復讐」(1935年)で再登場するという関連性はありますが)。本格派推理小説に属する作品ですが、探偵役のルースランの手法は通常捜査や証拠の吟味に重きを置かず容疑者同士を互いに告発させ合うという風変わりというかとんでもないな手法で、独特のユーモアに満ちた締めくくりもまず日本人作家には書けなさそうです。但しルブラン得意の冒険アクションスリラーを期待する読者には勧め難い作品です。 |
No.205 | 6点 | 消えた玩具屋- エドマンド・クリスピン | 2011/01/11 19:17 |
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(ネタバレなしです) 1946年発表のフェン教授シリーズ第3作の本書はクリスピン全作品中でもファルス派ぶりが最も顕著な作品ではないでしょうか。映画化が検討されたというのも納得のどたばたの連続に、玩具屋消失という大変魅力的な発端の謎と相まって中盤までは文句なしの面白さです。謎解きがやや残念レベルで、玩具屋消失トリックが推理と関係なく明らかになってしまうし、それとは別のトリックも非常に珍しいのは確かだけど実行にはあまりにも大きなリスクが伴いそうでぴんと来ませんでした。良くも悪くも読み応えがたっぷりなのは確かで、ある人物をフェンや学生たちが追い回すシーンやフェンと犯人との対決シーンなどは抜群に面白いです。 |
No.204 | 6点 | 蔵王山荘連続殺人事件- 草野唯雄 | 2011/01/11 18:35 |
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(ネタバレなしです) 1983年発表の本書は、「初心にかえって古典ミステリーの原点に挑んだ」と作者コメントの通りヴァン・ダインの某作品や横溝正史の某作品を連想させるようなシーンがあちこちにあって、1980年代の作品とは思えない古さを感じさせる本格派推理小説です。あまりに真相が見え見えの展開と思わせて後半に捻りを入れているのがちょっとした工夫で、古き良き謎解き推理小説好き読者ならそれなりに楽しめる作品です。 |
No.203 | 6点 | 証拠が問題- ジェームズ・アンダースン | 2011/01/11 18:16 |
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(ネタバレなしです) 1988年発表の本格派推理小説の本書の特徴は2人の男女がコンビを組んで謎解きに挑戦というよくありそうな設定で、このパターンだと往々にしてユーモアミステリーになりがちですが本書は全く違う様相を見せます。重要容疑者の家族だったり被害者の親族だったりと微妙な立場にあり、その探偵活動は決して足並みが揃っているわけではなく次の展開が容易には予想できません。最後のロマンスは唐突かつ余計な気もしますが緊迫感漂うプロットは魅力的です。 |
No.202 | 6点 | 金魚の眼が光る- 山田正紀 | 2011/01/11 17:13 |
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(ネタバレなしです) 1990年発表の本格派推理小説で後年に「灰色の柩」と改題されました。全体的に叙情性を意識したような作風で、時にそれがサスペンスを犠牲にしていますが1930年代という作中の時代性描写には効果的だったと思います。ヒロイン役を設定したことにより探偵役の呪師霊太郎(しゅしれいたろう)の捜査の全てが読者に提示されるプロットでなくなりましたが、物語の幻想性の演出面でのメリットの方が大きくなったように思います。 |
No.201 | 8点 | ウォリス家の殺人- D・M・ディヴァイン | 2011/01/11 17:07 |
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(ネタバレなしです) ディヴァイン(1920-1980)の死後の1981年に出版された第13作ですが文献によっては執筆されたのは結構早く、ずっと陽の目をみなかった作品とも紹介されています。未発表にしていた理由が思い当たらないほど優れた内容で、コンパクトにまとめられていますが完成度はとても高いです。個性的な登場人物が織り成す複雑なドラマと充実した謎解きが楽しめます。地味なプロットながらじわじわとサスペンスを盛り上げる手腕も見事で、第三部前半で容疑者たちがガーストン館に集結する場面の何ともいえない息苦しさがたまりません。ミスディレクションも相変わらず巧妙です。 |
No.200 | 5点 | 赤い霧- ポール・アルテ | 2011/01/07 21:19 |
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(ネタバレなしです) 1988年に発表された第2長編でシリーズ探偵は登場しません。最初から3分の2ぐらいまでが純然たる本格派推理小説、最後の3分の1がスリラー小説という構成です。とはいえ前半部にも不気味な部分はあるし、後半部でも謎解きがなくなったわけではありません。ジャンルにこだわらない読者なら1冊で2度おいしい思いができたと満足するかもしれませんが、私のように本格派偏愛タイプだと微妙な判定(笑)。ブラックフィールド村を舞台にした第一部で謎のかなりの部分が解決され、第二部は舞台をロンドンに移しての後日談的な物語となるのですが、最後の謎解きが腰砕け気味(脱力系トリック)なのが個人的には残念。 |
No.199 | 6点 | 十和田殺人湖畔- 山村正夫 | 2011/01/07 18:58 |
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(ネタバレなしです) 1987年発表の柏木美也子シリーズの本格派推理小説ですが通俗サスペンスっぽい雰囲気が濃く、ヒロイン役が容疑者の1人に強姦されてしまうのはいくら何でもやり過ぎという気がします(プロット上の必要性がありません)。とはいえ謎解きがしっかりしているところはさすがで、短編ミステリー並みに少ない容疑者数ながら次々に状況証拠が出てきて誰もが怪しく見え、容易に犯人は絞れません。柏木美也子の推理は誰が犯人かだけでなく、他の容疑者がなぜ犯人でないかまで説明した丁寧なものです。新聞連載時には「風景のない旅路」というなかなか味わいのあるタイトルだったそうですが、なぜ西村京太郎作品のパクリみたいなタイトルに改題したのか理解に苦しみます。 |
No.198 | 5点 | 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー | 2011/01/07 18:29 |
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(ネタバレなしです) 1937年発表の本書(シリーズ探偵は登場しません)は評価が大きく分かれている本格派推理小説で、なぜ賛否両論なのかは最終章のどんでん返しによるものです。このどんでん返しは意表を突かれることは間違いないのですが非常に型破りなため受け入れられない読者がいるのもごもっともで、少なくとも万人受けはしないでしょう。逆にマニア系や評論家からは絶賛されることが多いでしょう。マニア読者レベルに程遠い私はわかる人にはわかるよりは誰にでも受け入れられる方を好むので6点評価になりました。カーを初めて読む人には本書以外から始めることを勧めます。 |
No.197 | 5点 | からくり人形は五度笑う- 司凍季 | 2010/12/26 13:34 |
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(ネタバレなしです) 島田荘司の「奇想、天を動かす」(1989年)を読んでミステリー作家を目指すようになった女性作家の司凍季(つかさとき)(1958年生まれ)の1991年発表のデビュー作で、一尺屋遥(いっしゃくやはるか)(男性です)シリーズ第1作の本格派推理小説です。印象的な主役交代、魅力的な謎、大スケールのトリックと面白いネタは十分揃っていますが全体的に淡白で、ページを増やしてもいいからもう少し演出に凝ってほしいという気持ちもありますが、演出過剰になってグロテスクな部分が際立つのも苦手なので、これはこれでいいという気もします(いい加減な感想だ)。横溝正史の金田一耕助のような飄々とした人物ながら、憎まれないキャラクターの金田一とは対照的に容疑者たちから嫌われまくる一尺屋が何ともおかしいです。 |
No.196 | 7点 | ベルガード館の殺人- ケイト・ロス | 2010/12/26 13:13 |
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(ネタバレなしです) 癌による早逝が大変惜しまれますが弁護士でもあった米国のケイト・ロス(1956-1988)は19世紀初頭の英国を舞台にジュリアン・ケストレルを探偵役にした本格派推理小説を4作書いています。1993年発表の第1作である本書はすぐには殺人事件が起こらず、代わりに「なぜ誇り高きフォントクレア家は、かつての使用人の娘にすぎないモード・クラドックと一族の人間との婚約を承諾したのか?」というミステリーというよりはロマンス小説的な謎で読者を引っ張っているのが珍しいです。その謎が意外な形で事件に絡んでくるのが巧妙だし、結構意表を突かれる真相でした。人物描写に優れており本の分厚さを感じさせないストーリーテリングも素晴らしいです。 |
No.195 | 5点 | 暗い森- アーロン・エルキンズ | 2010/12/24 20:38 |
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(ネタバレなしです) 1983年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第2作ですが、本書は冒険スリラー小説のジャンルに属する作品で、「古い骨」(1987年)や「呪い!」(1989年)のような本格派推理小説を期待すると肩透かしをくらいます。連続失踪事件に猿人による殺人を思わせるような状況証拠と、謎の魅力は十二分にあるのでちょっと残念です(とはいえあの真相では本格派ファンの読者の賛同を得るのは難しいでしょう)。原始時代にタイムスリップしたかのような雨の森林の描写が見事で、息詰まるようなサスペンスを生み出しています。ギデオンが(後に妻となる)ジュリーと初めて出会うということでシリーズファンなら必読です。 |
No.194 | 6点 | 佐渡・密室島の殺人- 深谷忠記 | 2010/12/21 12:49 |
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(ネタバレなしです) 2002年発表の壮&美緒シリーズ第33作で、作者得意のアリバイ崩しの本格派推理小説ですが驚いたことに「読者への挑戦状」が付いているではありませんか。犯人は誰かではなく、アリバイトリックを見破ってみよという大変珍しい挑戦状です。この挑戦状に胸のときめきを抑えられる本格派好き読者はそうはいないでしょう(笑)。残念なのは説明が物足りないことです。挑戦状を付けるからには真相はこうだという説明だけでなく、どういう推理でその結論に至ったかまで説明してほしかったです。でもまあ意欲を評価して1点おまけします。 |
No.193 | 9点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2010/12/21 12:42 |
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(ネタバレなしです) 1938年発表のフェル博士シリーズ第8作の本書は典型的な「巻き込まれ型」サスペンス小説のような出だしで始まりますが、死体を発見する羽目になったケントが警察に追い詰められることもなくあっさりフェル博士のもとに辿り着いているのはちょっと物足りなかった(笑)。怪奇趣味もなく不可能犯罪でもなくユーモアやロマンスも控え目で終盤まではとても地味な展開ですが、結末で待ちかまえていたのは驚愕の大仕掛けでした。この仕掛けは反則だという感想も少なくないし、その気持ちもよくわかります。ただ反則であってもこれほどの劇的効果をあげていることはやはり評価に値すると思います。そして最後の最後に明かされる、皮肉に満ち溢れた人間関係が何ともいえない後味を残します。 |
No.192 | 5点 | 北列車連殺行- 阿井渉介 | 2010/12/13 07:57 |
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(ネタバレなしです) 阿井渉介(1941年生まれ)は1980年にシナリオライターから作家に転身してサスペンス小説や冒険小説を書くもあまり目立った存在ではなかったようですが、1988年発表の本書(長編としては7作目)に始まる列車シリーズで注目を浴びました。タイトルから西村京太郎のトラベル・ミステリーの二番煎じかと思いましたが、アリバイ崩しだけでなく怪現象や某童話の見立て殺人など、謎の魅力が満載の本格派推理小説です。もっともこれでもシリーズ作品の中では地味な部類ですが。ホワイダニットの謎解きに1番重点を置いたプロットだったのは意外でしたが、これだけの大事件が起きていながらあれほどまでに捜査に非協力的な事件関係者たちというのは(真相を知った後でも)釈然としない部分がありますけど。 |
No.191 | 4点 | 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 | 2010/12/06 11:18 |
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(ネタバレなしです) 1970年代、横溝正史のリバイバルブームが起き、映画にTVドラマ、書店の目立つ所にずらりと並ぶ作品群とまさに犬も歩けば横溝正史(笑)。それに刺激されて再び執筆意欲が湧いてきたのか、晩年を迎えた作者が金田一耕助シリーズの新作を発表したのはファンにとって何よりのプレゼントでしょう。その1つが1975年発表のシリーズ第29作の本書で、角川文庫版で上下巻合わせて750ページを超す大作です。内容的にはいまひとつで、複雑な人間関係を重厚に描いた作品と言えなくはありませんがサスペンスが犠牲になっているのは否めないし、魅力的なタイトルも十分には活かされていません。自白に頼る部分の多い謎解きも残念です。金田一耕助最後の作品という位置づけですが、まだまだ未発表の事件記録が存在することを示唆しており、今後に期待させてくれています。しかし本書以降は「悪霊島」(1978年)のみしか発表されず、作者が逝去したのは残念でした。 |
No.190 | 7点 | 蛇の形- ミネット・ウォルターズ | 2010/12/06 11:07 |
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(ネタバレなしです) 2000年発表のミステリー第7作は主人公の1人称形式で語られる本格派推理小説で、これまでに読んだウォルターズ作品の中では最も本格派推理小説らしさを感じた作品です。とはいえ単純に謎解きを楽しむようなプロットではありません。主人公によって次々に明らかになる恐るべき真実(殺人の謎解きだけではない)は圧倒的というか衝撃的というか...。いやあ舞台となっているグレアム・ロードってまるで魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界ですね(笑)。事件関係者たちも主人公に抵抗します。覚えていないととぼける、威嚇する、嘘をつく、話をそらす...。そんな彼らを主人公がどうやって追い詰めていくのかが本書の見所の1つです。とにかく重苦しくて暗くて劇的で緻密な物語を堪能しました。もっともこういう疲れる作品を読むとウォルターズ作品は当分もういいや、という気分にもなってしまうのですが(笑)。 |