皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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nukkamさん |
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| 平均点: 5.44点 | 書評数: 2921件 |
| No.281 | 5点 | 生贄伝説殺人事件- 山村正夫 | 2011/10/19 22:02 |
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| (ネタバレなしです) 1992年発表の滝連太郎シリーズ第9作の本格派推理小説です。女子中学生が誘拐され、誘拐犯の一人と思われる男が殺されるという事件を扱っています。直接的な官能シーンがあるわけではないのですがロリコンとか少女売春がらみのプロットは読者を選びそうですね。登場人物が少なくてストーリーも比較的シンプル、ページ数も講談社文庫版で300ページに満たないので大変読みやすい作品です。このシリーズの特色である伝奇要素もそれほど強力ではなく、全般的に淡白過ぎる印象もありますが、この題材であまり濃密に描かれるのもちょっと...。 | |||
| No.280 | 8点 | 一日の悪- トマス・スターリング | 2011/10/19 09:23 |
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| (ネタバレなしです) 米国のトマス・スターリング(1921-2006)は外交官でもあり、1950年代に少数のミステリーを発表しています。デビュー作はサスペンス小説、第2作は犯罪小説、そして第3作の本書(1955年発表)は本格派推理小説と、特定ジャンルにはめられない作風のようです。アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンの書く本格派推理小説とは趣が異なり、サスペンス小説色が濃厚なプロットですが結末に至るとそれまでに張り巡らされた様々な伏線が真相を明らかにするという、本格派ファン満足の謎解きが待っています。この謎解きは視覚的に訴える手掛かりを巧妙に活用しており、映画化(1967年)されたのも十分うなずけます。 | |||
| No.279 | 5点 | 人形館の殺人- 綾辻行人 | 2011/10/18 16:49 |
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| (ネタバレなしです) 1989年発表の館シリーズ第4作ですが、それまでのシリーズ作品が本格派推理小説の王道路線だったのに対し本書は思い切って作風を変えています。謎解き要素もちゃんと残してはいますが、サイコ・サスペンス色濃厚なプロットは好き嫌いが分かれそうです(個人的にはあまり楽しめませんでした)。大胆などんでん返しに驚かされましたが、反則とは言わないまでもこれは少々やり過ぎではという気もします。 | |||
| No.278 | 5点 | 漂う殺人鬼- ピーター・ラヴゼイ | 2011/10/10 19:36 |
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| (ネタバレなしです) 2003年発表のピーター・ダイヤモンドシリーズ第8作で、ハヤカワ文庫版で600ページ近い分厚さが苦にならない語り口の巧さが光る警察小説の佳作です(本格派推理小説としては真相がアンフェアに感じられますが、そもそもラヴゼイがシリーズ作品であっても色々とスタイルを変えるのですから注文つけても仕方ありません)。シリアル・キラー(連続殺人犯)を扱っていますが、犯人描写が残酷さや非情さよりも知能犯ぶりに重点を置いているため、万人受けしやすくなっています。ダイヤモンド警視の方が活躍度が高いものの本書が初登場となるヘン・マリン主任警部も印象的なキャラクターで、後年には彼女を主役とした作品が書かれることになります。 | |||
| No.277 | 5点 | 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 | 2011/10/05 18:52 |
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| (ネタバレなしです) 2000年発表の加賀恭一郎シリーズ短編集で、5つの短編のどれも完成度は高く読み応えも十分です。しかし短編集としてまとめられて通しで読むとどの作品もプロットパターンが似通っているように感じられました。最初に主人公と加賀美刑事のやり取りが続き、登場人物が極端に少ないこともあって犯人の正体は早々と見当がつく展開で共通しています。このワンパターンはもう少し工夫して変化をつけてほしかったです。どれか1つを選ぶならひねりのインパクトが大きい「狂った計算」でしょうか。 | |||
| No.276 | 6点 | ファッジ・カップケーキは怒っている- ジョアン・フルーク | 2011/10/05 18:27 |
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| (ネタバレなしです) 2004年発表のハンナ・スウェンセンシリーズ第5作で、やや厚めの作品ですが読みにくさはありません。事件の謎解きとは別にレシピの謎解きまでやっているのがとてもユニークです。これって料理好きなら十分に見破れる謎解きになっているのでしょうか(料理のできない私は論外ですけど)?犯人当ての方はあまりにも堂々と張られていた伏線に思わず笑ってしまいました。 | |||
| No.275 | 4点 | 赤い列車の悲劇- 阿井渉介 | 2011/10/03 21:46 |
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| (ネタバレなしです) 1991年発表の列車シリーズ第7作です。「駅、線路、車両、乗客の四重消失」(正確には2つの二重消失だと思いますが)というスケールの大きな謎も十分に魅了的ですがこれだけではなく、中盤にかけてどんどんと謎が追加されて一体どう解決するのかと心配になるほどです。そしてその心配があたってしまったというか、この何でもあり的な真相は本格派推理小説好きの読者には受けにくい真相だと思います。社会派推理小説の要素も非常に濃いですが、リアリティー度外視の真相は社会派好き読者に受けるかもやはり未知数です。傑作か凡作かという分類を超越した、怪作というべき作品でしょう。 | |||
| No.274 | 6点 | 金蝿- エドマンド・クリスピン | 2011/10/03 21:25 |
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| (ネタバレなしです) 英国のエドマンド・クリスピン(1921-1978)は本格派黄金時代の末期に登場した作家です。フェン教授を名探偵役にしたシリーズを書いていますが、他にも作曲家、SF評論家など多方面で活躍した多才な人物でした。1941年発表の本書はデビュー作ゆえかファルス作家らしさはまだ見られず(フェン教授夫妻の会話にユーモアがちょっと見られる程度)、手堅く生真面目に作られた本格派推理小説です。不可能犯罪トリックや指輪の秘密などにはジョン・ディクソン・カーの影響が濃く表れています。個性がまだ発揮されていないとはいえ、学生時代に書かれた若書きとは思えぬ完成度は高く評価できます。 | |||
| No.273 | 4点 | 悪霊館の殺人- 篠田秀幸 | 2011/09/29 14:02 |
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| (ネタバレなしです) 問題作と評価された「蝶たちの迷宮」(1994年)から5年を経て1999年に発表された、弥生原公彦シリーズ第1作の「読者への挑戦状」付き本格派推理小説です。タイトルといい、本の分厚さといい二階堂黎人の「悪霊の館」(1994年)を意識した作品かと思いましたが意外と共通点はありませんでした。それどころか舞台があちこちと変わるので悪霊館の存在感が希薄でした。重厚長大な物語の中に多くの謎と仕掛けを用意した力作なのは認めますが、小粒な謎解きの積み重ねに終始してしまった感があります。せめて1つぐらいインパクトのある手掛かりか推理があるだけでも随分と読後の印象が違うのですが。 | |||
| No.272 | 3点 | 二重の悲劇- F・W・クロフツ | 2011/09/25 16:41 |
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| (ネタバレなしです) 1943年発表のフレンチシリーズ第24作の本書は久方ぶりの倒叙推理小説でしたが出来栄えは芳しくないように感じました。kanamoriさんのご講評の通り、犯人のアリバイトリックが非常に稚拙で古臭さを感じさせます。(倒叙なので)早い段階でトリックを紹介されたため、前半からして凡作の予感がします(笑)。誉めるとすれば犯人の予想もしない事後共犯者を登場させたのがプロット上の工夫になっていることでしょうか。フレンチもこの事件に関しては成功したとはいえないと思います(最後はめでたしめでたしなんですが)。 | |||
| No.271 | 7点 | リア王密室に死す- 梶龍雄 | 2011/09/20 10:52 |
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| (ネタバレなしです) 梶龍雄には旧制高校を舞台にした4作の本格派推理小説があり(登場人物は共通しません)、作者の代表作と評価されていますが1982年発表の本書はその第1作です。作中時代は1948年、三高のリア王こと伊場富三が密室状態の下宿の部屋で毒入り注射で殺され、部屋の鍵を持っていてアリバイが曖昧なことから容疑者とされた同級生を救うために三高の仲間たちが立ち上がるというプロットで、青春小説、時代小説、本格派推理小説の様々な要素がバランスよくとれた良作です。密室トリックは実現性には疑問符が付くかもしれませんが、アイデアとしてはとても面白いです。洗練された文章による語り口の巧さも高く評価できます。このタイトルでシェークスピアと全く関連がなかったのには意表を付かれましたが。 | |||
| No.270 | 5点 | 会員制殺人クラブ- グレゴリー・マクドナルド | 2011/09/20 10:38 |
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| (ネタバレなしです) 1984年発表のフリン警視シリーズ第3作です。社会的名士の集まるクラブで起きた殺人という設定自体は珍しくありません。しかしその会員たちの(やり過ぎ気味の)捜査妨害によってフリン警視の捜査がなかなか進展しないというプロットはなかなか新鮮です。登場人物の心理描写の抑制が効きすぎたか、異常な状況下での連続殺人にも関わらず意外と緊迫感が高まりません(まあこれに難癖をつけるど相当数のミステリーが批判対象になってしまうのですが)。犯人指摘があまりにも唐突であっけなく、動機も後付け気味です(一応の謎解き伏線はありますが)。 | |||
| No.269 | 6点 | 瀬戸内海殺人事件- 草野唯雄 | 2011/09/14 23:13 |
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| (ネタバレなしです) サスペンス小説家として知られる作者ですが1972年発表の初期作品の本書は何と「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説でした。プロットはシンプルで登場人物も多くなく、2人のアマチュア探偵のどたばた描写が目立つなど挑戦状付きにしては随分肩の力を抜いて書かれたような作品です。死体がまだ発見されてもいないのに「挑戦状」の中で「殺されているのは事実なのだ」と堂々と明かしていたのもびっくりです。とはいえ真相にはなかなか思い切ったひねりが入っています。もう少し容疑者を増やすなどしていれば、このひねりはより効果的だったのではないかと思いますが。 | |||
| No.268 | 5点 | 騙す骨- アーロン・エルキンズ | 2011/09/14 23:08 |
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| (ネタバレなしです) 2009年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第16作です。ギデオンがスケルトン探偵と呼ばれていることを聞いた作中人物が「知り合いにミイラ探偵なんていないかな」と冗談めかしていますが、そういえば私もこのシリーズは妖怪が主人公の作品と誤解して、なかなか手を出さなかったのを思い出しました(笑)。犯人が意外と早く判明し、その時点でギデオン・オリヴァーはまだ五里霧中状態でまだまだ多くの謎が残っているという、ちょっと珍しいプロットです。残念ながら最後の手掛かりが(一般読者には予想のしようもない)骨の分析結果では謎解きプロセスとしては不満があります(「骨の島」(2003年)と同じ問題点)。とはいえ文章も説明もしっかりしているところは評価できます。 | |||
| No.267 | 6点 | 鉄鎖殺人事件- 浜尾四郎 | 2011/09/11 14:54 |
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| (ネタバレなしです) 完成作としては浜尾四郎(1896-1935)の最後の作品となった、1933年発表の藤枝真太郎シリーズ第3作の本格派推理小説です。ヴァン・ダインの影響を強く受けたシリーズして有名ですが、ワトソン役の不器用な恋愛を描いている点ではアガサ・クリスティーの「ゴルフ場の殺人」(1923年)を彷彿させます。重厚なプロットの中でこの恋愛描写が単なる添え物以上の役割を果たしているところが優れています。丁寧な心理分析にはヴァン・ダイン風なところもありますが、ヴァン・ダイン作品には見られない要素もあり、今後にますますの飛躍の期待のかかる作家でしたが本書が最後の作品となってしまったのは残念。 | |||
| No.266 | 5点 | ブルー・ムーン亭の秘密- パトリシア・モイーズ | 2011/09/11 14:07 |
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| (ネタバレなしです) 1993年発表の本書は、パトリシア・モイーズ(1923-2000)の第19作にして最後の作品となった本格派推理小説です。経営不振のパブ(ブルー・ムーン亭)を相続したスーザンを語り手役にした一人称形式がスリルを高めるのに効果的で、ロマンチック・サスペンス風な味わいもあります。但しその分、ヘンリとエミーのティベット夫妻の存在感が希薄になってしまったという問題点もありますが。謎解きに関しては犯人の計画が強引過ぎかと思います。なお英語原題の「Twice in a Blue Moon」は英語の慣用句「Once in a Blue Moon」(興味ある人は英語辞書を参照下さい)をもじったんでしょうね。 | |||
| No.265 | 5点 | 雪密室- 法月綸太郎 | 2011/09/11 13:50 |
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| (ネタバレなしです) 事件の悲劇性や犯罪に巻き込まれた人々の苦悩描写を強調するようになった後年の作品と比べると1989年に発表された法月綸太郎シリーズの第1作である本書は純粋な謎解き小説であり、物語の深みは求めようもありません。とはいえ本書の場合はそれが欠点とは思えず、むしろ気軽に謎解きを楽しめることが長所になっていると思います。「読者への挑戦状」を挿入しているだけあって、緻密に考えられた伏線に明快な推理と本格派推理小説としての完成度は高いです。ただそれでも(ネタバレ防止のため詳細を書けませんが)この真相は残念であります。 | |||
| No.264 | 4点 | メリーの手型- ポール・ギャリコ | 2011/09/08 12:39 |
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| (ネタバレなしです) 傑作「幽霊が多すぎる」(1959年)以外にもアレグザンダー・ヒーロー登場の作品があるとは知らなかったので、1964年発表の本書の存在を知った時には多いに期待したのですがかなり作風が違っていたのに拍子抜けしました。心霊現象トリックに挑戦という点では共通していますが謎解き要素は希薄で、代わりにスパイ・スリラー小説要素の強い作品でした。テンポよくスラスラと読める作品ですが、盛り沢山の謎解きにキャラクター小説としての魅力にも溢れていた「幽霊が多すぎる」とはかなり異質の作品でした。 | |||
| No.263 | 7点 | 本陣殺人事件- 横溝正史 | 2011/09/06 19:42 |
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| (ネタバレなしです) 戦後の日本ミステリーは1946年発表の本書をもって嚆矢とされています。記念すべき金田一耕助シリーズの第1作という史料的価値だけでなく、作者の本格派推理小説への熱き思いも伝わってきます。角川文庫版で一緒に収められている中編「黒猫亭事件」(1947年)も読者への謎解き姿勢を強く表しているのが新鮮です(残念ながら後年の作品は読者へのフェアプレー精神が薄れてしまいました)。しかし最も私にとって印象的なのは書簡形式が珍しい短編「車井戸はなぜ軋る」(1955年)(実は改訂版で、原典版(1949年)は非シリーズ短編だったそうです)。謎解きがしっかりしているだけでなく哀愁あふれる物語として心を打ちます。これは純文学作品と主張したっておかしくない! | |||
| No.262 | 6点 | ライン河の舞姫- 高柳芳夫 | 2011/09/06 19:26 |
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| (ネタバレなしです) 「『禿鷹城』の惨劇」(1974年)の続編となる1977年発表の本格派推理小説で、前作の登場人物の何人かが再登場していますのでできれば前作を先に読むことを勧めます。またまた古城が登場しますが前作の古城があくまでもホテルとしての描写に留まっていたのに対して、本書の古城描写はいかにも城らしい雰囲気に満ちています。プロットも社会派推理小説風なところが気になった前作よりも、古き良き時代の本格派推理小説の香りが濃い本書の方がとっつきやすいと思います(そういうのが好きな読者にとってはという条件つきですが)。スケール豊かな舞台に比べてトリックの小粒感がちょっと惜しまれますが十分楽しめました。 | |||