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皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.269 6点 瀬戸内海殺人事件- 草野唯雄 2011/09/14 23:13
(ネタバレなしです) サスペンス小説家として知られる作者ですが1972年発表の初期作品の本書は何と「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説でした。プロットはシンプルで登場人物も多くなく、2人のアマチュア探偵のどたばた描写が目立つなど挑戦状付きにしては随分肩の力を抜いて書かれたような作品です。死体がまだ発見されてもいないのに「挑戦状」の中で「殺されているのは事実なのだ」と堂々と明かしていたのもびっくりです。とはいえ真相にはなかなか思い切ったひねりが入っています。もう少し容疑者を増やすなどしていれば、このひねりはより効果的だったのではないかと思いますが。

No.268 5点 騙す骨- アーロン・エルキンズ 2011/09/14 23:08
(ネタバレなしです) 2009年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第16作です。ギデオンがスケルトン探偵と呼ばれていることを聞いた作中人物が「知り合いにミイラ探偵なんていないかな」と冗談めかしていますが、そういえば私もこのシリーズは妖怪が主人公の作品と誤解して、なかなか手を出さなかったのを思い出しました(笑)。犯人が意外と早く判明し、その時点でギデオン・オリヴァーはまだ五里霧中状態でまだまだ多くの謎が残っているという、ちょっと珍しいプロットです。残念ながら最後の手掛かりが(一般読者には予想のしようもない)骨の分析結果では謎解きプロセスとしては不満があります(「骨の島」(2003年)と同じ問題点)。とはいえ文章も説明もしっかりしているところは評価できます。

No.267 6点 鉄鎖殺人事件- 浜尾四郎 2011/09/11 14:54
(ネタバレなしです) 完成作としては浜尾四郎(1896-1935)の最後の作品となった、1933年発表の藤枝真太郎シリーズ第3作の本格派推理小説です。ヴァン・ダインの影響を強く受けたシリーズして有名ですが、ワトソン役の不器用な恋愛を描いている点ではアガサ・クリスティーの「ゴルフ場の殺人」(1923年)を彷彿させます。重厚なプロットの中でこの恋愛描写が単なる添え物以上の役割を果たしているところが優れています。丁寧な心理分析にはヴァン・ダイン風なところもありますが、ヴァン・ダイン作品には見られない要素もあり、今後にますますの飛躍の期待のかかる作家でしたが本書が最後の作品となってしまったのは残念。

No.266 5点 ブルー・ムーン亭の秘密- パトリシア・モイーズ 2011/09/11 14:07
(ネタバレなしです) 1993年発表の本書は、パトリシア・モイーズ(1923-2000)の第19作にして最後の作品となった本格派推理小説です。経営不振のパブ(ブルー・ムーン亭)を相続したスーザンを語り手役にした一人称形式がスリルを高めるのに効果的で、ロマンチック・サスペンス風な味わいもあります。但しその分、ヘンリとエミーのティベット夫妻の存在感が希薄になってしまったという問題点もありますが。謎解きに関しては犯人の計画が強引過ぎかと思います。なお英語原題の「Twice in a Blue Moon」は英語の慣用句「Once in a Blue Moon」(興味ある人は英語辞書を参照下さい)をもじったんでしょうね。

No.265 5点 雪密室- 法月綸太郎 2011/09/11 13:50
(ネタバレなしです) 事件の悲劇性や犯罪に巻き込まれた人々の苦悩描写を強調するようになった後年の作品と比べると1989年に発表された法月綸太郎シリーズの第1作である本書は純粋な謎解き小説であり、物語の深みは求めようもありません。とはいえ本書の場合はそれが欠点とは思えず、むしろ気軽に謎解きを楽しめることが長所になっていると思います。「読者への挑戦状」を挿入しているだけあって、緻密に考えられた伏線に明快な推理と本格派推理小説としての完成度は高いです。ただそれでも(ネタバレ防止のため詳細を書けませんが)この真相は残念であります。

No.264 4点 メリーの手型- ポール・ギャリコ 2011/09/08 12:39
(ネタバレなしです) 傑作「幽霊が多すぎる」(1959年)以外にもアレグザンダー・ヒーロー登場の作品があるとは知らなかったので、1964年発表の本書の存在を知った時には多いに期待したのですがかなり作風が違っていたのに拍子抜けしました。心霊現象トリックに挑戦という点では共通していますが謎解き要素は希薄で、代わりにスパイ・スリラー小説要素の強い作品でした。テンポよくスラスラと読める作品ですが、盛り沢山の謎解きにキャラクター小説としての魅力にも溢れていた「幽霊が多すぎる」とはかなり異質の作品でした。

No.263 7点 本陣殺人事件- 横溝正史 2011/09/06 19:42
(ネタバレなしです) 戦後の日本ミステリーは1946年発表の本書をもって嚆矢とされています。記念すべき金田一耕助シリーズの第1作という史料的価値だけでなく、作者の本格派推理小説への熱き思いも伝わってきます。角川文庫版で一緒に収められている中編「黒猫亭事件」(1947年)も読者への謎解き姿勢を強く表しているのが新鮮です(残念ながら後年の作品は読者へのフェアプレー精神が薄れてしまいました)。しかし最も私にとって印象的なのは書簡形式が珍しい短編「車井戸はなぜ軋る」(1955年)(実は改訂版で、原典版(1949年)は非シリーズ短編だったそうです)。謎解きがしっかりしているだけでなく哀愁あふれる物語として心を打ちます。これは純文学作品と主張したっておかしくない!

No.262 6点 ライン河の舞姫- 高柳芳夫 2011/09/06 19:26
(ネタバレなしです) 「『禿鷹城』の惨劇」(1974年)の続編となる1977年発表の本格派推理小説で、前作の登場人物の何人かが再登場していますのでできれば前作を先に読むことを勧めます。またまた古城が登場しますが前作の古城があくまでもホテルとしての描写に留まっていたのに対して、本書の古城描写はいかにも城らしい雰囲気に満ちています。プロットも社会派推理小説風なところが気になった前作よりも、古き良き時代の本格派推理小説の香りが濃い本書の方がとっつきやすいと思います(そういうのが好きな読者にとってはという条件つきですが)。スケール豊かな舞台に比べてトリックの小粒感がちょっと惜しまれますが十分楽しめました。

No.261 7点 道化の死- ナイオ・マーシュ 2011/09/06 19:16
(ネタバレなしです) クリスチアナ・ブランドの傑作「ジェゼベルの死」(1949年)をちょっと連想させる作品で、ブランドは舞台上の死体と首なし死体を扱いましたが1956年発表のアレンシリーズ第19作である本書では舞台上の首なし死体が用意されています。不可能犯罪であるところも共通しており、ブランドほどの大技ではありませんがまずまず合理的なトリックとして解明されています。同じような取り調べシーンが長々と続いて単調になりやすいというマーシュの弱点が目立たず、プロットがしっかりしているのもいいです。民族舞踊の描写も効果的で、映像化したらさぞや映えるでしょう。これまで読んだマーシュ作品では最高傑作だと思います。

No.260 6点 道化者の死- アラン・グリーン 2011/09/06 19:01
(ネタバレなしです) 1952年発表の本書はユーモア本格派の大傑作「くたばれ健康法!」(1949年)の続編的な本格派推理小説です。謎解きプロットはしっかりしていて推理も丁寧と水準点には十分達しています。とはいえ物語のテンポは前作とは天と地との違いがあります。勢いのよかった前作と比べて本書では容疑者がやたらと捜査に非協力的なのでリズムが停滞気味です(前作の方がご都合主義的だと批判することも可能でしょうけど)。ユーモアも単発的で、セントバーナ-ド犬という秀逸な小道具もやや空回り気味です。

No.259 7点 歴史街道殺人事件- 芦辺拓 2011/09/06 18:50
(ネタバレなしです) 1995年発表の森江春策シリーズ第2作の本格派推理小説で、冒頭のバラバラ殺人こそ派手な出だしですが、中盤は複雑な人間関係描写とアリバイ捜査が中心の地味な展開となり、やや中だるみ気味に感じました。しかし解決編で森江が明かすトリックは破壊的なまでに衝撃的、これには意表を衝かれました。作者は後年、「普通のトラベルミステリーかと思わせてその裏をかく」つもりだったというコメントを残していますが、西村京太郎や内田康夫のコピー商品みたいなタイトルではそもそも売れなかったのもごもっともで、せっかく充実した内容なのにこの題名では明らかに作戦失敗でしょう(笑)。

No.258 6点 九マイルは遠すぎる- ハリイ・ケメルマン 2011/09/06 18:09
(ネタバレなしです) 米国のハリイ・ケメルマン(1908-1996)は高校や大学の教師職を歴任した人物でミステリー作家としては非常に寡作家で、1967年に短編集として出版された本書のニッキイ・ウェルト教授シリーズの8作は1947年から1967年の足かけ20年をかけて書かれました。論理的な謎解きの好事例としてエラリー・クイーンが大絶賛した短編集ですが最も名高い表題作は私はあまり評価していません。話の後半で地理に関する情報が出てくるとその方面の知識のない読者は推理に参加するすべを失ってしまい、ニッキイの話をただ後追いするしかありませんから。私の1番のお気に入りは探偵役のニッキイの推理を論破しようとする面々が次々に返り討ちにあう「わらの男」で、まさしく論理戦の醍醐味が堪能できました。音のみから推理する「おしゃべり湯沸し」も独特の味わいがあります。

No.257 3点 タナトスゲーム 伊集院大介の世紀末- 栗本薫 2011/09/06 17:38
(ネタバレなしです) 長らく続いた「天狼星」シリーズに終止符を打って1999年に発表された伊集院大介シリーズ第13作の本格派推理小説です。身構えるときりがありませんが、本書ではやおい小説がテーマとなっています。但し官能描写があるわけではありませんし、やおいの良し悪しを議論しているわけでもありません(冒頭で伊集院やアトム君がちょっと騒いでいますけど)。やおい小説好きたちの心理描写が大半を占めており、謎解きも心理分析が重要な意味合いを持っています。ただそれでもやおいに関心のない私は身構えて読んでしまったので、推理を楽しむ余裕があまりありませんでしたが。

No.256 8点 無慈悲な鴉- ルース・レンデル 2011/09/06 17:20
(ネタバレなしです) 1985年発表のウェクスフォード主任警部シリーズ第13作はなかなかの傑作だと思います。重婚やフェミニズム(男女平等主義と訳されることもありますが本書では女権主義として扱われています)、さらに17章での〇〇と、国内ミステリーだったら社会派推理小説のネタで一杯ですが、本格派推理小説としての謎解きも充実しています。犯人の自白場面も強烈な印象を残しますが、22章の終わりでは更なる衝撃が待っており、思わず「話が違うだろ」(これ、褒めてるつもりです)と声をあげたくなりました。

No.255 8点 時計館の殺人- 綾辻行人 2011/09/06 16:50
(ネタバレなしです) 館シリーズ前作の「人形館の殺人」(1989年)が本格派推理小説でありながらサイコ・サスペンス路線に踏み出しかけていたのでその種のジャンルが苦手な私は心配しましたが、1991年発表のシリーズ第5作である本書は推理をメインにした本格派推理小説だったので安心かつ満足することができました。派手な殺人場面の直接描写(もちろん犯人の正体は隠してます)が多いですけど残虐性や気味悪さを強調していないのもいいですね。好都合過ぎな部分もありますが思い切った大トリックに挑戦しており、作者が1つのピークを迎えたことを納得させる出来ばえです。

No.254 6点 死が二人をわかつまで- ジョン・ディクスン・カー 2011/09/06 16:26
(ネタバレなしです) 1944年発表のフェル博士シリーズ第15作の本書は愛情と疑惑の狭間で揺れ動く若者を物語の中心に据えた心理サスペンス小説風な作品です。密室の毒殺事件というと普通の密室に比べると大した謎でないように思えるでしょうが本書の場合は注射による毒殺のため不可能性は勝るとも劣らないのがポイント高いです。本格派推理小説としての謎解きもしっかり組み立てられており密室トリックは古いトリックの流用ながらそこにある工夫を加えることによって新鮮味を出すことに成功しています。一方で意味のない巻き添え的な事件を起こしているのは蛇足としか思えず、ここはマイナスポイントです。

No.253 7点 悪霊の館- 二階堂黎人 2011/09/06 15:58
(ネタバレなしです) 1996年発表の二階堂蘭子シリーズ第4作の本格派推理小説です。今では全4巻の巨大作「人狼城の恐怖」(1998年)への過渡的作品という位置づけになってしまった感もありますが、講談社文庫版で全26章850ページを超すボリュームと50人を超す登場人物リストは今読んでも圧倒的存在感があります。トリックが期待はずれという指摘があり、ごもっともと共感するところもありますがむしろこれだけの演出効果をあげていることを評価したいです。独特の重苦しい雰囲気は好き嫌いが分かれるでしょう。E-BANKERさんのご講評の通り、「古きよき探偵小説」を見事に再現しています。ええ、個人的にはこの雰囲気、大好きです。

No.252 6点 聖女が死んだ- キャサリン・エアード 2011/09/06 15:36
(ネタバレなしです) 1966年に本書でデビューしたキャサリン・エアード(1930年生まれ)は昔ながらの本格派推理小説の伝統を引き継ぐ作家の1人と評価されています。修道院という独特の舞台にしたためでしょうか、修道女たちを意図的に個性を表さない人物として描こうとしておりそれは成功しているのですが、結果として誰が誰だかよくわからない...(笑)。16章の事情聴取なんか笑ってしまいそうになるほど空回りしています。女性刑事を登場させてちょっとアクセントを付けたのはいいアイデアです。盛り上がりに乏しいプロットですが、絶対に恨みなど買いそうにないシスター殺害事件の真相は動機といい、さりげなく隠された凶器といい、なかなかよく出来た謎解きだと思います。

No.251 6点 アトポス- 島田荘司 2011/09/06 15:24
(ネタバレなしです) 1993年発表の御手洗潔シリーズ第7作の本書は講談社文庫版で900ページを超えますが、その長大さを感じさせない読みすさは驚異的でさえあります。ヒロイン役としてレオナが登場しますが個人的にはあまり共感できない描写でした。グロテスク描写や大トリック炸裂には島田らしさが十分発揮されているのですが、そろそろマンネリ気味に感じてしまったのは私のわがままでしょうか?御手洗潔の出番が非常に少ないのも気になりますが、本書の後は彼の登場しない番外編作品が続くことになってしまいます。

No.250 5点 甘美なる危険- マージェリー・アリンガム 2011/09/06 11:55
(ネタバレなしです) 国内では「水車場の秘密」というタイトルで別冊宝石68号(1957年)で初めて翻訳紹介された1933年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第5作ですが、冒険スリラー小説に分類できる作品です。アリンガムの作品は導入部がとても難解な作品がありますが本書もその一つです。キャンピオンがなぜ事件に巻き込まれているのかの十分な説明がないまま話がどんどん進む展開は、私のように読解力に難ありの読者にとっては厳しいです。消えた死体という魅力的な謎が中途半端な扱いなのも不満です。後半になると劇的に盛り上がって冒険スリラーらしさを堪能できます。キャンピオンのパートナーとなるアマンダ初登場ということでシリーズファンには重要作です。なお新樹社版にはキャンピオンものショート・ショート「クリスマスの言葉」が一緒に収められており、こちらは非ミステリー作品ですが幻想的な雰囲気が印象的でアリンガムの文学性の一端を覗かせています。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(82)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(32)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(27)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)