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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2921件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.381 5点 本格ミステリ館焼失- 早見江堂 2014/07/17 12:28
(ネタバレなしです) 矢口敦子(1953年生まれ)が早見江堂名義で発表した三部作の2007年出版の第1作ですがうーん、途中までは文句なく楽しめたのですが本格派推理小説としてこの結末はどうなんでしょう?大胆かつ衝撃的であることは間違いないのですが、これを納得できる読者はよほど許容力が強い読者か、ありきたりの真相ではもう物足りないという末期的症状の(笑)読者しかいないのでは。私はそういう読者ではないので悪夢を見ているかのような結末に打ちのめされました。でも(この三部作の範囲内では)まだましな方だったかも(笑)。

No.380 10点 「跳ね鹿」亭のひそかな誘惑- マーサ・グライムズ 2014/07/03 16:56
(ネタバレなしです) 1985年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第7作はエリザベス・ジョージの「隠れ家の死」(1994年)ほどは深刻な書き方でないにしろ動物虐待という社会問題を取り上げているのがこのシリーズとしては珍しいです。しかし本書の特徴は何といってもあまりにも劇的な結末でしょう。「あんまりだ」と感じる読者もいるでしょうが、それだけいつまでも忘れられそうにない結末になっています。個性派揃いの登場人物、サスペンス豊かな展開と中盤も充実しており、個人的には名作だと思います。

No.379 5点 扼殺のロンド- 小島正樹 2014/06/25 08:25
(ネタバレなしです) 2010年発表の海老原浩一シリーズ第2作の本格派推理小説です(島田荘司との共著「天に還る舟」(2005年)はカウントせず)。私は海外本格派を中心に読んでいて、国内本格派を読む時にはぜひ海外にも紹介できるような作品であって欲しいなと常々思っているのですが本書に関しては残念ながら海外の読者にはまずぴんと来ないような箇所がありました。次から次に不思議な謎が提供されるプロットは魅力十分で、詰め込みすぎという意見もあるとは思いますがやたら大作主義に走るよりはよいかと思います。

No.378 5点 生れながらの犠牲者- ヒラリー・ウォー 2014/05/16 14:55
(ネタバレなしです) 1962年発表のフェローズ署長シリーズ第5作ですが、警察小説と本格派推理小説のジャンルミックス型を予想すると肩透かしを食らいます。最後に明かされる真相は自白頼りになっており、推理による謎解きを期待する読者には不満が残るかもしれません。但し別の視点で鑑賞すればなかなかの作品だと思います。仮にフェローズの代わりに私立探偵を探偵役にしていたら同時代のロス・マクドナルドにも通じる、事件の悲劇性を強調したハードボイルド小説として評価できたのでは。もともとウォーはハードボイルド作家としてデビューしており、ドライな文章が救いのない結末を巧みに演出しています。

No.377 7点 サンタクロースは雪のなか- アラン・ブラッドリー 2014/05/16 13:25
(ネタバレなしです) 2011年発表のフレーヴィア・ド・ルースシリーズ第4作の本格派推理小説です。化学知識が豊富で思考が理詰めなフレーヴィアですが、本書ではサンタクロースを捕まえようとあれこれ画策するところに11歳らしさが感じられ、これまでの作品では1番キャラクターに共感できました。華やかさはあまりありませんがクリスマスの雰囲気はそれなりに演出されており、謎解きの面白さと相乗効果を出すことに成功しています。終章もクリスマスらしい締めくくりが用意されています。作中に「人形遣いと絞首台」(2010年)のネタバレが若干ありますので未読の方はご注意下さい。

No.376 6点 服用禁止- アントニイ・バークリー 2014/05/14 13:18
(ネタバレなしです) 1938年発表の本書は意外にも「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説でした(シリーズ探偵は登場しません)。ただ最終章の謎解きはそれほど証拠に基づく推理が披露されているわけではなく(犯人からも「推理と証拠は違う」と反論されています)、しかも最後は罪と罰の議論に話がすり替わって微妙に不条理な締め括りとなります。このあたりがバークリーらしいといえばらしいのですが、そうなると何のための「読者への挑戦状」だったのだろうというという疑問が残ります。

No.375 2点 水曜日のジゴロ 伊集院大介の探求- 栗本薫 2014/05/14 12:32
(ネタバレなしです) 2002年発表の本書は伊集大介シリーズ作品ですが本格派推理小説でなくサスペンス小説ですね。無理に本格派として鑑賞しようとすると、あの真相はあまりにも読者に対してアンフェアという印象しか残りません(伊集院は全然活躍せず、ただ結果報告しているだけ)。セックス描写(同性愛もあり)も好き嫌いは分かれそうだし、心理描写におけるセックスへの関心度が非常に高いです。個人的にはそこが1番なじめませんでした。

No.374 4点 アール・グレイと消えた首飾り- ローラ・チャイルズ 2014/04/29 17:52
(ネタバレなしです) 2003年発表の「お茶と探偵」シリーズ第3作は謎解きに関してはシリーズ作品中でも異色のプロットです。殺人事件は発生しますが実質的には怪盗探しなのです。殺人の場合なら一応は動機のありそうな容疑者に的を絞って捜査することに不自然さを感じないのですが今回の場合はそれさえなしの行き当たりばったりの捜査に無理があり、誰が犯人でもどうでもいいように感じてしまいました。文章のセンスのよさは相変わらずでコーヒー派の私でもこのシリーズを読むと紅茶に浮気したくなります。アール・グレイ(紅茶ではなくセオドシアの飼い犬の名前です)が介護犬と番犬の両面で大活躍(スーパー過ぎ!)しているのもなかなか見ものです。

No.373 6点 紅の殺意- 蒼社廉三 2014/04/23 08:56
(ネタバレなしです) 長編3作と短編約80作を書いた蒼社廉三(1924年生まれ)は戦記ミステリー作家として有名ですが実のところ戦記ミステリーの数はそれほど多くなく、通俗サスペンスやSFなども書いています。1961年発表の長編ミステリー第1作は社会派推理小説と本格派推理小説のジャンルミックス型です。埼玉県川口の工業地帯、福岡の炭鉱地帯、家船で生活する広島の漁民など地域性と時代性の丁寧な描写、地道に足を使った捜査などはいかにも社会派推理小説らしさを感じさせます。一方で二転三転する証言に翻弄されて容疑が転々とし、容易に真相が見えてこないところは本格派推理小説としての謎解きの面白さも堪能できます。タイトルもシンプルながら意味深です。

No.372 5点 高すぎた代償- 佐野洋 2014/04/06 19:46
(ネタバレなしです) 1959年発表の長編第2作で一応は本格派推理小説に分類されていますが長編第1作の「一本の鉛」(1959年)と比べると謎解きの面白さが後退したように思いました。無差別に旅館の宿泊客を盗聴するという悪趣味に端を発してにわか探偵となって男女の関係を調べていく、というミステリー的にはあまり興をそそらない展開が野暮ったく感じられます。心中事件の謎解きもありますが影が薄いです。頻繁に主役交代させるなど多彩な人物描写に工夫は見られますが本格派推理小説としては謎解きの醍醐味をもっと味わせてほしいです。終盤の意外性が読ませどころの一つですがこの意外性、瞬間的には相手をだませても遅かれ早かればれてしまうと思います。

No.371 3点 湯布院の奇妙な下宿屋- 司凍季 2014/03/19 19:08
(ネタバレなしです) 1995年発表の一尺屋遙シリーズ第4作の本格派推理小説です。この作者らしく盛り沢山な謎解きなので1つや2つ粗いところがあってもあまり目くじらをたてるつもりはないのですが、それにしても第25章の謎解きがいくらなんでもこれはないだろうという出来栄えです。そこから先を読む意欲がかなり失われてしまいました。最後に明かされるどんでん返しなんかはなかなか悪くないと思っていますが個人的には第25章の(悪い意味での)効果で全てが台無しです。

No.370 5点 ヴァルハラ城の悪魔- 宇神幸男 2014/03/09 01:05
(ネタバレなしです) 1997年発表の本書は音楽ミステリ四部作の番外編的な作品で、意表をついた真相が好き嫌いが分かれそうな本格派推理小説です。豪華絢爛な舞台(残念ながら見取図はなし)、クラシック音楽、美酒美食と夢のような世界が描かれていますが、(ミステリーの必要条件ではないとはいえ)私のような読者にも夢を見させるようなロマンチックな描写になっていないのはちょっと残念。似たアイデアはチェスタトンやエラリー・クイーンにもありますが本書はかなり大掛かりな仕掛けになっています。ヒロインのキャラクターは嫌いの方に投票する読者が多そうな気がしますが(笑)。

No.369 4点 法隆寺の殺人- 篠田秀幸 2014/03/03 11:30
(ネタバレなしです) 2001年発表の弥生原公彦シリーズ第4作で、新たな試みが見られる意欲作の本格派推理小説です。一つは歴史の謎解きに挑戦していることです。こういう学問的な話が苦手な読者には(私もその一人ですけど)興ざめになってしまう危険性がありますが、語り手に熱く語らせるなど退屈にならないように工夫しています。もう一つはフェアな謎解きへのこだわりです。「読者への挑戦状」が挿入されているところはこれまでのシリーズ作品とも共通していますが、本書はさらに犯人からのフェアを主張するメッセージまでも用意されています。これは作者の主張でもあるだろうし、フェアであることの理由もわからないではないのですが、うーん、フェアの本質とはそういうところにあるのでしょうか?うまく説明できないのですが、ルール違反でないこととフェアであることは同じではないと思います。フェアというのは読者にもちゃんと謎解きできるチャンスが与えられているかどうかであって、反則ぎりぎりで読者を煙に巻いて反則でないからフェアですというのはちょっと違うような気がします。まあミステリーとは「読者を騙す」文学ですから、「うまく騙された」と感じるか「ずるく騙された」と感じるかは読者によってまちまちでしょうけど。

No.368 6点 水曜日ラビはずぶ濡れだった- ハリイ・ケメルマン 2014/03/03 10:24
(ネタバレなしです) 1976年発表のラビ・スモールシリーズ第6作です。不動産売買を巡っての思惑や駆け引きがたっぷりと描かれていて、国内ミステリーだったら社会派推理小説(海外ではこの用語は使われていませんけど)と分類されてもおかしくありません。一方で本格派推理小説としてもよく書かれていて、ある薬品が人から人へとバトンタッチ式で渡されていることで謎解きの興味に深みを与えることに成功しています。

No.367 5点 オーガニック・ティーと黒ひげの杯- ローラ・チャイルズ 2014/02/16 12:02
(ネタバレなしです) たいした推理もなく行き当たりばったりで解決してしまうことの多い「お茶と探偵」シリーズですが、2011年発表のシリーズ第12作の本書に至ってはセオドシアが唐突に犯人の名前が頭に浮かび上がり(その前には違う容疑者を散々疑っていますけど)、ティドウェル刑事の制止も聞かずに犯人を追い掛け回します。この追跡劇は結構面白いのですが、結局犯人がわかった理由は説明されずに終わってしまいました。もしかするとどこかに謎解き伏線があったのかもしれませんが、凡庸な読者の私には判らないままですっきりできませんでした。説明責任を果たしてほしい(願)。

No.366 4点 殺人シナリオ- ハリー・カーニッツ 2014/02/16 11:51
(ネタバレなしです) シナリオライターとしての方が有名な米国のハリー・カーニッツ(1907-1968)のミステリー小説はわずか4作、先に発表された3作はマルコ・ペイジ名義ですが1955年発表で最後の作品となった本書はカーニッツ名義です。英語原題が「Invasion of Privacy」、つまり直訳すると「プライヴァシーの侵害」ですがこのプロットが予想以上に難解でした。映画脚本を巡る訴訟問題に発展しそうな状況で物語が始まるのですが、そもそもどんな脚本なのかどこが問題なのかがはっきり説明されずに物語が進行します。色々な関係者の利害関係も曖昧で、誰と誰が協力関係で誰と誰が敵対関係なのかももやもやしています。最後は犯人当て本格派推理小説として着地していますが、作中で推理だ論理だと言っている割には犯人を特定した理由が説明不足なのも残念です。

No.365 6点 ハイチムニー荘の醜聞- ジョン・ディクスン・カー 2014/02/16 11:09
(ネタバレなしです) 1959年発表の歴史本格派推理小説ではありますが作中時代を19世紀後半(1865年の英国)にしたためか風俗描写がそれほど歴史を感じさせず、現代ミステリーに雰囲気が近くなっています。プロットは過去のある作品を髣髴させて二番煎じを感じさせるところは否めませんが、謎とロマンスの盛り上げ方はさすがに巨匠ならではの出来栄えですらすらと読ませる語り口もお見事です。

No.364 6点 ウルフ連続殺人- ウィリアム・L・デアンドリア 2014/02/16 10:55
(ネタバレなしです) 「ホッグ連続殺人事件」(1979年)から久しぶりの1992年に発表されたニッコロウ・ベイネディッティ教授シリーズ第2作となる本格派推理小説です。アルプスという舞台、世界中から集まった優秀な頭脳、狼男を連想させるような奇怪な事件といった面白そうな題材が十全に活かされていないように思いました。しかしそれでも技巧に走り過ぎてぎこちなさを感じさせる「ホッグ連続殺人事件」よりもすっきり読めました。ベネディッティ教授のエキセントリックぶりが控え目になったのも個人的には好ましいです。この作者は「普通の」謎解きを書いている方がしっくり来ていると思います。

No.363 5点 白い森の幽霊殺人- 本岡類 2014/02/16 10:27
(ネタバレなしです) 1985年発表の本格派推理小説で、探偵役のペンションオーナー里中邦彦が事件に巻き込まれてどきどきしたり、慣れぬ犯罪捜査に苦心したりとアマチュア探偵ぶりがよく描けています。冬の描写にも力が入っています。推理も丁寧で共犯者や交換殺人の可能性までも議論していますがそんな可能性まで広げられると犯人当てとして難易度が高くなり過ぎて敷居が少々高いように思います。バラバラ死体の謎解きには創意工夫が感じられます。

No.362 7点 日光浴者の日記- E・S・ガードナー 2014/02/16 10:09
(ネタバレなしです) 1955年発表のペリイ・メイスンシリーズ第47作の本格派推理小説です。メイスンは証拠隠滅や犯人隠匿と疑われても仕方ないような行動をとってはらはらさせることがありますけど、今回はそれを目撃されてしまいもう絶体絶命...、と思わせてのそこからの逆転劇が凄いです。それは巧妙なミスディレクションあっての賜物で、数あるシリーズ逆転劇の中でも鮮やかな印象を与えます。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2921件
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