皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
makomakoさん |
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平均点: 6.18点 | 書評数: 861件 |
No.241 | 5点 | 弁護側の証人- 小泉喜美子 | 2011/12/06 20:45 |
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これは評価が分かれる作品だと思います。まず文章。翻訳家なのだからなのでしょうか、外国作品の翻訳文そのままの文体で味も素っ気もない。こんな文が嫌いだから外国小説は読みたくないという人も多いと思います(私もどちらかというとそっちのほう)。こういった方にはこの作品は全くだめでしょう。
さらにミステリーの面白さが「だまし」にあると感じている人にはこんな面白い小説はないと感じそうですが、そうでなければただだまされただけでばからしいかぎりなのでしょう。 確かにこの小説にはきれいにだまされました。まあ許せる程度なので酷評はしませんが、だますだけの小説なんてあんまり好みではありませんな。 |
No.240 | 8点 | 空飛ぶタイヤ- 池井戸潤 | 2011/12/03 09:20 |
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かなりの長編だが読み始めれば長さは全く気にならずにぐいぐい引き込んでいく迫力のある作品でした。登場人物が結構多いが巧みに描かれており作者の筆力を感じる。ストーリーは突発事故から始まり次々と強烈な試練が立ちはだかりまさにジェットコースターミステリーといった趣のなかに、主人公赤松の強くて弱くて人情的で実に泥臭い生き様がよく描かれている。若造の金髪門田もいいじゃないか。
物語の結末は簡単に予測できてしうある意味で単純なお話なのだが、ぴったりと思ったとうりの結末に共感し感動する。こんな話が好きなんです。 ただPTAの話は余分かなあ。 それにしても悪役の大企業のモデルはすぐに見当がついてしまう。読んでいる間は実話を基にしたお話と思っていたが(以前自分が勤めていた会社関連?)、解説を読むと完全なフィクションなのだそうだ。ーー自動車、重工関係の人はどんな感じがするのかなあ。 |
No.239 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 | 2011/11/27 10:05 |
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本書は売れ行きがよいようでamazonでは品切れ。こうなると読みたいもので近くの大型書店へ行ったら正面になんと山積みとなっていたので早速買っ読んでみた。
内容は相変わらず感じのよいストーリーですらすらと読める。前回と同じように大胆なトリックや残酷シーン、殺人などはない。でも雰囲気がよくだんだんにこのシリーズが好きになりそうな気がする。 いったいシリーズ物は2作目の出来がかぎのようで、前作よりつまらないとまず3作目はもっとダメになるようです。 2作目はたいてい1作目で分からなかった主人公の秘密などがちょっとづつ明らかになるものだが(本作も然り)、このことにより主人公たちに愛着が増すのか、この秘密がさらに知りたくなるか、あたりが分かれ目かもしれない。 栞子さんとても魅力的、今回はお母さんの秘密も出てきてなかなか興味深い。次が楽しみとなってきた。 |
No.238 | 8点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2011/11/24 07:50 |
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こんな雰囲気の小説好きです。奇抜なトリックや連続殺人などはまったくなし。きわめて不器用な美人の女性が一冊の古書から隠されていた過去を推理していく。4つの古書にかかわる話が有機的に絡み合ってなかなか面白い。繊細な栞子さんと普通の大男大輔の掛け合いもほほえましい。 |
No.237 | 6点 | 咸陽の闇- 丸山天寿 | 2011/11/23 15:36 |
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シリーズ第3弾。前作がぱっとしなかったが本作品は第2弾よりは楽しめた。このシリーズは中国歴史とミステリー,SFの合体のような小説で、解明不可能と思われる現象や事件が呈示され、全く混迷にいたってしまう。そこで無心が登場して快刀乱麻を断つがごとく解決する。無心の謎解きは一見理論的のようだがSF的要素を交えた相当無理な話なのだが、とにかくそのとうりになってしまうのだ。
本格物のように謎を解く鍵が述べられているようにもみえるがこの程度の鍵で結論を推理することは全く無理でしょう。前作よりは趙軍の戦いや兵馬俑の謎など楽しませる要素が多かった分楽しめたと思います。中国古代史が好きならまあ楽しめそうです。 この先話は続きそうですが、この先続編が出てきたら読もうと思うかはちょっとね。項羽でも出てきたら読んでしまいそう。 |
No.236 | 4点 | 琅邪の虎- 丸山天寿 | 2011/11/09 21:06 |
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前作よりもだいぶ落ちる。「鬼」ではシチュエーションも登場人物も新鮮でトリックもまずまずだったのだが、今回はどうもぱっとしない。読んでいてつまらないのだ。それなりに謎もあり、登場人物も二度目なので愛着が湧きそうなのだが、なんだか話がごちゃごちゃとしていて最後の謎解きではまあご苦労様でしたといった感じとなってしまった。面白くなる要素は沢山あると思うのだが。 |
No.235 | 7点 | 赤い館の秘密- A・A・ミルン | 2011/11/06 13:56 |
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すごいトリックやおどろおどろしい雰囲気もなく、いたって平凡といえば平凡。連続殺人などは起きず、一人の殺人事件を解決していく物語。でも翻訳物独特の変な人物ばかり登場ということはなく、むしろ登場人物の巧妙な会話や雰囲気を楽しむといった嗜好となっていることは私にとっては好ましいことでした。
ずいぶん昔に読んだときはやっぱり変なやつが登場する違和感のある小説といった感じを受けたことを思い出しますが、最近は日本のミステリーでも変な人間がやたら出るし、文体も翻訳文のようなものも結構あるので慣れてきたのかもしれません。 |
No.234 | 6点 | てとろどときしん- 黒川博行 | 2011/10/26 21:13 |
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黒川氏の小説ははじめて読みました。くろマメのコンビは多少の違和感があったが慣れてくるとそれなりに面白い。あまり派手なトリックなどはなく、もっぱら現実的な警察小説集というべき内容だが、そこにユーモアや登場人物の個性がうまく描かれているので、退屈せずに読める。もうちょっと刺激的なお話しだとなお良いのだが。 |
No.233 | 7点 | 琅邪の鬼- 丸山天寿 | 2011/10/22 07:54 |
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ミステリー仕立ての歴史ファンタジーといったお話は個人的に好きなので、この話も楽しく読んだ。作者が自分でほら吹きおやじといっているのが、なるほど歴史とうそをうまく混ぜて本当らしい話に出来上がっている。大掛かりな謎と不可能と思われる謎が沢山ちりばめられ、これを合理的に解決するのは大変そう。ひょっとしたら「怪しい術を使ってしまいました、おしまい」。とならないか心配でしたが、ちゃんとした(ような)結論が得られすっきりしました。本当はところどころうそをつかれた感じはするのですが、まあよいでしょう。
ちょっと歴史好きなら探偵役の無心は誰であるかは見当がついてしまうが、これもご愛嬌。次の作品が読んでみたい。 |
No.232 | 5点 | 真夜中の探偵- 有栖川有栖 | 2011/10/17 19:09 |
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どうもこのシリーズは余り面白くない。長いお話になるようなのでこれだけでは解決していないところが沢山あるが、これから読み進んでいこうという気になりにくいなあ。有栖川氏の小説は登場人物とトリックそれにかすかに臭う文学性に惹かれるのだが、本作品はトリックがいただけない。
以下ネタバレ気味。 こんな大きな木箱で水も漏れないようなものを作れるなら犯人は間違いなく木材をあつかっている腕利きの職人でしょう。他人に依頼はしていないようだから自分で作ったんですよ。それに相当する人物は残念ながら登場していない。ああ無理だ。 さらにこれがとても丈夫なんだなあ。水が入っていたらすごく重いよ。このトリック絶対無理。 作者が殻を破って大きく広がりたいのは分かるのだが、残念ながら成功しているとは言いがたい。ごひいきの作家さんなのでちょっと辛口となったかもしれないけど、こういった作品を書く時間があるのならぜひ学生アリスシリーズの続きを書いてほしいのだが。 |
No.231 | 7点 | QED 伊勢の曙光- 高田崇史 | 2011/10/12 21:49 |
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ついにQEDシリーズも最終回ということとなった。薀蓄の多いこのシリーズも最終回となるとさらに薀蓄に告ぐ薀蓄。ミステリーとしては現代社会においてこんなことで本当に殺人が起こりうるかといった疑問も当然あるのだが、お気に入りのシリーズなので許しましょう。長いこと楽しませてくれてありがとう。それにしてもナナちゃんとタタルは最後にどうなったのだろうか。もう少しはっきり書いてほしかったなあ。前回あんなに思わせぶりだったことの解答がこれではすっきりしないのだが。 |
No.230 | 9点 | 永遠の0- 百田尚樹 | 2011/10/09 09:25 |
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世代の違いなのか私には想像できない程狂った時代とは感じられない。知覧の特攻隊の文章を読んで特攻がテロリストなどと感じる人がいるとは思わなかった。愛する家族や国を守るためにそして命令に背くことが不可能なために命を投げ出さずにいられなかった。さらにその作戦そのものの成功率がほとんどなくなってからも続行されて無駄に(といってはあまりにかわいそうだが)死地に赴いた。本当に気の毒でならない。
この作品はこういった時代に直面した人間の切なる物語であり、まさに涙なくして読めないところがある。 |
No.229 | 4点 | 迷宮- 清水義範 | 2011/10/09 09:10 |
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あんまり好きではない。こういった異常な性格の主人公はどうもいけない。小説の出来としては悪くないとは思うけど。 |
No.228 | 8点 | めぐり会い- 岸田るり子 | 2011/10/09 09:07 |
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少しネタバレ気味。
この作品結構好きです。主人公の華美は頭もよく才能もあるのだが社会的にはなかなか暮らし難いタイプで、一緒に仕事をするのは大変と思われるが、個人的には結構好きです。この小説は華美のこの性格が好きか嫌いかで評価は大きく分かれそう。好きな男(私のような)にとってはとてもやさしくでムードもあり何とか守ってやりたくなってしまう。最後に理想の男女がめぐり合って本当によかった。感動した。 でもこういった女性を好まない人が読むと鬱陶しいだけかもしれない。 |
No.227 | 4点 | 釧路・札幌1/10000の逆転- 深谷忠記 | 2011/10/09 08:55 |
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深谷氏の作品は謎があり、鉄壁のアリバイがあり、意外な犯人やトリックがあるのだが、どうも私には面白く感じられない。レシピどうり作ったがこくのない料理。もっと言えば数学の解答を読んでいるような感じでなのです。難しい数式を考えていたら解答では思いもつかぬ変数を代入するとすらりと解けますよといったもののような感じといったらよいか。
実際の捜査はきっとこんな風に近いとは思うのだがごたごたと細かい理屈が書かれていて結局それがぜんぜんダメだったりしたりしてと読んでいてうっとうしくなる。最後の展開も以外であったが、一般にこういった展開だとどうしてそうなったかをわくわくしながら読むのだが、氏の小説ではよく分かりました、もう結構です、といった感じとなってしまった。 |
No.226 | 6点 | 天使の眠り- 岸田るり子 | 2011/09/25 21:47 |
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小説として読んでいると何となくだまされ結末も納得してしまうのだが。うーん、作者は女性だからこういったお話が成り立つの考えるのだろうが、男はもっと女性の肉体的なことはよく覚えているのでまずこうはならないと思いますが。
それにしても主人公の秋沢はひどい取り扱いですね。若くてきれいな新しい恋人ができたから、昔の思い出なんかはめちゃくちゃにされてもまあよいだろうということなのでしょうかねえ。 |
No.225 | 8点 | 虚栄の肖像- 北森鴻 | 2011/09/21 12:01 |
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佐月シリーズの第2弾。3つの短編が連作のように絡み合い、花氏であり絵画修復師という魅力的な主人公の過去が少しずつ明らかになっていく。物語の謎のに伴って大変興味深い。少し暗い感じもしますが個人的には非常に好きな短編集です。 |
No.224 | 7点 | 鬼- 今邑彩 | 2011/09/17 16:21 |
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10分程度で読める短編を集めたもので、ひとつの物語たいていは中断することなく最後まで読める。推理の要素は少ないがコンパクトにまとめられていて大変読みやすい。ホラーの傾向があるもの多いが、嫌な印象は受けない。なかなかの短編集。 |
No.223 | 6点 | 阿蘇・雲仙逆転の殺人- 深谷忠記 | 2011/09/17 16:09 |
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旅情ミステリーとして渥美半島から雲仙阿蘇と観光名所を旅するような感覚を盛り込んだサービスあり、奇抜なトリックありなのになんだかもうひとつインパクトにかける。ずいぶん昔読んだものを再読してみたが当時も今もこんな印象は変わりない。 |
No.222 | 6点 | 暁英- 北森鴻 | 2011/09/12 21:20 |
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北森氏の最後の長編。完成すれば大長編となったのだが。それでも大体のなぞについての手がかりは書き残してくれているので結末は想像がつく。もっとも氏の事だから大どんでん返しがあるのかもしれなかったが。
鹿鳴館のなぞについて深く掘り返すだけでなく、西南戦争や大久保の暗殺に対しても極めて特異な解釈がされており作者の並々ならぬ歴史観が伺える。ところが話はあんまり面白くないのだ。北森鴻ならもっといくらでも面白くかけただろうに。氏の小説としては珍しく読んでいて退屈になってしまった。読者に対するサービス精神旺盛な作者であったが、最後の長編となったこの小説では自分が書きたいことのみを書いていったのだろうか。 |