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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.129 5点 回廊亭の殺人- 東野圭吾 2008/06/22 01:05
 正直いくら頑張っても全くの他人の老婆にうまくなりすませるものかどうかは少し疑問ですが、なりすませる、という前提であれば叙述トリックも含めてフェアな作品だと思います。
 ただ個人的に騙されてもやられた、という爽快感は薄いです。またダイイングメッセージは正直不要だと思いますし、個人的には好きではありません。
 本格色は強いのでその点は評価したいです。

No.128 6点 記録された殺人- 岡嶋二人 2008/06/18 00:53
 連作ではない短編集で、まあまあ楽しめます。トリックが小振りなものが多く迷い道などは阿刀田高の岡島版みたいな作品ですが、中では記録された殺人が出来が良いと思います。

No.127 6点 青き犠牲- 連城三紀彦 2008/06/18 00:43
 連城三紀彦第4長編作品です。帯に書いてある通りで、高名な彫刻家とその美貌の妻、18歳の息子の三人がメインキャストでオイディプス(エディプス)王がモチーフとなっており、彫刻家が死に、息子が疑われて、というお話です。
 真相、トリック、犯人像はいかにも連城作品らしい仕上がりですが、あまり感情移入できる作品ではありませんでした。連城ミステリ好きには十分面白いとは思いますが個人的には連城作品の女性像はあまり好きではないのでその分評価は低めです。

No.126 5点 透きとおった部屋- フェリース・ピカーノ 2008/06/18 00:31
 ある雑誌で折原一氏が推薦していたので読んだサスペンス作品です。いわゆる覗きのお話で、折原作品の冤罪者と一部が非常に似ていますのでおそらくこの作品をモチーフにしていると思われます。先にこちらを読んでいればもっと楽しめたのでしょうが、こちらは本格的要素はなく、どんでん返しもない作品でしたので少々物足りなかったです。

No.125 7点 チョコレートゲーム- 岡嶋二人 2008/06/18 00:25
 岡島作品の中ではむしろ社会派的な作品ですが初読時は非常に気に入っていました。
 チョコレートゲームの真相は岡島作品らしい真相ですが真相よりも息子を失った主人公の行動にしみじみしました。
 本格的切れ味は薄いですがしみじみした良作だと思います。

No.124 4点 花嫁は二度眠る- 泡坂妻夫 2008/06/18 00:14
 泡坂作品では珍しい安っぽい仕上がりになっています。一族の当主が殺された半年後、従妹と合同での結婚式を予定していた主人公の説明から始まり、途中で従妹が死体で発見され、最後にはどんでん返しが、という泡坂作品らしさはありますが、殺人トリックは安易ですし、犯人も悪い意味でうすっぺらで泡坂作品らしくないと思います。
 どうやって犯人が犯行を実現させたか、という所は一見泡坂作品らしいですが電話のトリックもちょっと今では通用しそうもないですし、犯人の第二の殺人の動機も必然性もちょっと納得しかねます。
 幻想的作品以外では最も個人的に低評価の作品です。

No.123 8点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2008/06/17 23:59
 シリーズキャラクターのいない単発短編集ですが非常に高水準です。泡坂作品のチェスタトン風ロジックが冴え渡る作品集で煙の殺意が最も気に入っています。
 また奇妙な味に入る閨の花嫁も真相はわかり易いですが泡坂作品らしくなく新鮮でした。
 皮肉の利いた歯と胴もまあまあ気に入っています。
 個人的には亜シリーズより気に入っています。

No.122 3点 BG、あるいは死せるカイニス- 石持浅海 2008/06/17 23:50
 石持作品らしい変な設定での本格作品です。人間は全員女性として生まれ選ばれた人間が男性化する架空の世界で起きる殺人事件です。架空の世界の中で本格を成立させているのは流石ですが、物語にのめりこんでこの世界での法則を理解してないと推理できません。個人的には全くのめりこめませんでした。
作者の意欲はわかりますが、この作者の普通の設定での普通の本格を読みたいと思ってしまいます。

No.121 8点 むかし僕が死んだ家- 東野圭吾 2008/06/11 23:44
 作品至る所に伏線をはり、手記の叙述トリックも相変わらず上手い秀作だと思います。作品自体は非常に面白いものでしたが個人的にはタイトルが何故僕なのかよくわかりません。エピローグで語られてはいますが主人公の話はごくわずかでほとんどが沙也加の話ですので作者にはタイトルへの強い意図があるのでしょうが内容にそぐわない気がしました。

No.120 7点 細い赤い糸- 飛鳥高 2008/06/11 23:32
 社会派的なミッシングリンクを扱った作品で日本推理作家協会賞受賞作で今でも簡単に手に入ります。
 4人の何のつながりもない人間が次々に殺され、殺害現場に細い赤い糸が残されて、というストーリーです。犯人を警察官が追い詰めてゆくストーリーで何故犯人がこの4人を殺したのか、何故細い赤い糸を残すのか、という謎が主眼ですが本格というより社会派的です。
 40年以上前の作品で、現代の捜査であればもっと早く犯人追及できたと思いますし、何故糸を残したのかの犯人の動機は腰砕けですがストーリーのまとめ方はうまいですし、救いのない話でしみじみします。手がかりがあって推理して当てる本格色は強くないですが、こういう話も悪くないなと思わせてくれる作品でした。

No.119 6点 レイクサイド- 東野圭吾 2008/06/11 23:21
 相変わらずストーリーテリングを発揮した作品だと思います。謎の主眼は何故他の両親たちが一致団結して犯行隠蔽にあたるのか、という動機一本ですが一気に読まされました。
 犯人については現代ではありふれていますし20年前くらいのイギリスの作品集で類型作品も2、3あったと思いますが何故全員で協力して、という所に説得力をまあまあ持たせているかな、と思います。現実的にはどうかな、と思わないこともありませんが。
 あとラストの所は主人公をあれだけ理詰めな男にしているので正直納得できません。最後の衝撃を与えたかったのでしょうが翻意するものかちょっと疑問に思いました。 

No.118 6点 喜劇悲奇劇- 泡坂妻夫 2008/06/11 23:10
泡坂妻夫第6長編です。主人公(一種の狂言回し)の奇術師が船の奇術ショーの仕事の依頼を受け助手と一緒に乗船、乗船中に連続殺人事件が起きて、というお話です。
 被害者たちは皆回文、各章のタイトルも回文という泡坂作品らしい仕上がりです。
 かなりの人数が殺されるのですが、明るい雰囲気でストーリーが進行するのは他の奇術系作品と同じです。真相というか、犯人のトリックの一つは奇術が本職の泡坂氏には常識なのでしょうが読者にはちょっとわかりづらいものです。他の奇術系作品よりは一段落ちるかなと思いますがまあまあ楽しめました。

No.117 7点 暗色コメディ- 連城三紀彦 2008/06/11 23:01
 連城三紀彦第一長編です。裏表紙に書いてある通りもう一人の自分を目撃してしまった主婦、自分を轢き殺したはずのトラックが消滅した画家、妻にあんたは一週間前に死んだと告げられた葬儀屋、知らぬ間に妻がすり替わっていた外科医。という4つのストーリーが平行して進んでゆき最後にまとまる作品で第一長編からいかにも連城三紀彦らしい作風に仕上がっています。
 一つ一つの真相については説得力に弱いものもありますし、精神疾患患者を利用しているのもあまり気に入りませんがストーリー自体は気に入っています。また男女の心情の筆致はうまいです。個人的には謎解きとは関連が薄いので興味は薄いですがそれもひっくるめての連城作品だと思います。

No.116 7点 プラスティック- 井上夢人 2008/06/08 21:06
 メインプロットは今では誰でも知っていることで矛盾だらけのストーリーの内に読者が気付くことが多いと思います。恐らく作者もそれが暴かれるのは前提としていたと思います。
 最後にわかるもう一ひねりした真相は勘のいい方ならわかると思いますが、自分は初読時ひっかかりました。ありふれたサイコサスペンス物とみせておいて実は、というこちらが狙いだったと思います。
 ある意味井上作品後では一番ミステリぽいかなと思います。

No.115 10点 炎に絵を- 陳舜臣 2008/06/08 20:47
 今はミステリから離れてしまった陳舜臣最大傑作だと思います。
 年離れた異母兄から病死の間際に辛亥革命の資金横領したという父の汚名をはらしてほしい、といわれた主人公の弟が捜索をはじめたが、というストーリーです。
 40年以上前の作品で更に過去(1910年代)を探る話なので古さはどうしようもありませんが長さも手頃で非常に面白かったです。真相が暴かれたあとの最後にわかる「炎に絵を」、という意味が今では普通ですが40年以上前発表当初は衝撃だったと思います。
 主人公は神戸にたまたま転勤し転勤先の神戸で捜索しますが「神戸に転勤すること」は偶然でありもし転勤しなかったらトリックが成立しない点、また主人公が一旦真相を突き止める場面も明らかな偶然でありストーリー自体は蓋然性は低いです。また過去の戦争前後の話であるから成立する話で現代ではストーリー自体が成立しません。
 またサイドストーリーの産業スパイの話も不要かなと思います。
 ただそれらを踏まえても傑作だと思います。

No.114 7点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2008/06/08 20:34
 泡坂妻夫第4長編です。犯人は泡坂作品だからこそ想像しやすく、その犯人がどうやって犯行を実現したかを期待する作品でしょう。犯人は予想できてもその読者へのトリック(犯人、作者共々)はどうしてもわからないと思います。真相がわかれば伏線が至るところに張られていることはわかりますが一つ一つは違和感があっても読み飛ばしてしまいます。
 また犯人がいわゆる証拠品をいつまでも持っていた所などは不自然かな、と思います。
 あとがきにも触れられていますがフェア、アンフェアでゆけば個人的にはアンフェアな作品だと思いますが作品としてはこれでよいかな、と思います。(あとがき通りでフェアに書くとこの作品は成立しないでしょう)

No.113 5点 妖女のねむり- 泡坂妻夫 2008/06/08 20:23
 泡坂妻夫第7長編は幻想めいた作風が強くでています。
犯人の動機は狂人だからとしかいいようがないのと幻想的なストーリーを実現させるための真相でありトリックであり無理があるかな、と思いました。
 泡坂作品は好きですが幻想的ミステリは苦手なので評価は低めです。

No.112 7点 トキオ- 東野圭吾 2008/06/06 00:17
 ミステリとしてのカタルシスはあまりありませんが過去の回想の部分が懐かしい感じがするのと現在のトキオを踏まえての過去での発言などが心に響きやすいです。(それだけ父親がダメ人間だったということでしょうが)相変わらず読みやすくストーリーテリングの力を感じます。
 初読時に気付かなかったのですが作品の冒頭で宮本拓実がトキオに「最後に一言声をかけてやりたい」という一言もラストへのさりげない伏線になっておりここは流石と思いました。

No.111 5点 湖底のまつり- 泡坂妻夫 2008/06/06 00:05
 泡坂作品の一部に見られる幻想的な作風が前面にでた作品の一つです。
 泡坂作品は好きですが幻想的な作風は正直苦手です。
作品自体はそう悪くないと思いますしこの作風が好きな方には傑作なのかもしれませんが個人的にはまあまあかな、という所でした。またいわゆる騙し絵の世界、といっても本当に騙されるかは正直疑問です。読んだ方には明らかでしょうが騙されなければ作品が成立しないのでそういう意味でも評価は低めです。

No.110 8点 五番目のコード- D・M・ディヴァイン 2008/06/05 23:52
 今はないミステリボックスから4冊出た埋もれたストレートな本格作家の高水準作です。(こわされた少年は少々落ちますが)
 ディヴァインの作品は1960年代の作品なのでスローな展開、また作風が古いことは難点ですが、反対に登場人物は丁寧に書き分けられており地味ですが所謂懐かしい本格に浸れます。
 大体小さな町で殺人事件が起こりたくさんの登場人物から探偵役が犯人を絞ってゆくスタイル。(登場人物の書き分けがむしろくどく感じられるかもしれませんが登場人物の区別が出来ないと言う事は絶対ありません。)訳されている作品はいずれも高水準でクリスティよりも本格のスタイルには忠実です。ただインパクトは地味の一言ですが。
 この作品では連続殺人事件が起き現場に棺を書いたカード(コード)が残されている。殺人の前に犯人の独白が挿入され、5人目の事件の前に独白が書かれた手記が発見される。主人公の新聞記者が途中容疑者になりながらも犯人を追及してゆく、というお話です。
 明らかにABC殺人事件をモチーフとしたミッシングリンク物で実際作中にABCの動機があからさまにネタバレされているので少なくともABCは読んでおいたほうが良いです。
 何故現場にカードが残されたのか、何故手記が書かれたのか、殺人の動機は、ということが最後に明らかにされます。
 (少しネタバレです)
 ミッシングリンク物は真相に納得できないものが多いですし
この作品も結局は「狂人だから」という多くの作品と同じような理由になっていますがミスディレクションもうまく謎の解明もすっきりしており良作です。ミッシングリンクものでありストレートな本格だからこそ犯人はわかりやすいですがそれも評価を下げないと思います。ただし土屋隆夫の影の告発に有名なアリバイトリックがありますがそれと同様のトリックの瑕があり真相まで読まされるといくら40年以上前の作品とはいえ納得できないところがあります。(この作品を最後まで読めばわかるかと思います。)
 クリスティのような世界に浸りたい方にはお薦めできます。
ただクリスティほどの華やかさ、真相の驚きはなく地味で冗長かもしれませんがこれだけの水準作を連発している作家は稀だと思います。悪魔はすぐそこにも訳されましたし、もっと訳してほしい作家です。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
 ガイド...
好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(60)
有栖川有栖(32)
岡嶋二人(24)
折原一(22)
連城三紀彦(20)
泡坂妻夫(19)
石持浅海(17)
梶龍雄(17)
法月綸太郎(12)
東川篤哉(11)