皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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こうさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 649件 |
No.209 | 6点 | 七年目の脅迫状- 岡嶋二人 | 2008/09/06 00:27 |
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競馬もの三作の中ではやはり「焦茶色のパステル」「あした天気にしておくれ 」には及ばないかなと思います。馬伝染性貧血を扱い、中央競馬会への八百長の脅迫など斬新な所もありますが殺人事件、トリックなどが残り2作のような競馬界でないといけない必然性がなく他の環境でも書ける内容のため作品としての一体感に欠ける印象でした。
探偵役となる主人公のキャラクター造形は一昔前の冒険小説のヒーローのような好感のもてる書かれ方がされており作品の雰囲気も悪くなく無難な作品だと思います。 |
No.208 | 2点 | ガーディアン- 石持浅海 | 2008/09/06 00:18 |
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相変わらずの変な設定での作品でした。今度は死んだ父親がガーディアン(守護霊)として身の危険を守ってくれる女性が主人公となる作品です。
読者をミスリードさせる展開で描かれているのは流石ですが、謎が小さいため検討さえつけば一気にわかってしまうため逆に物足りない感じです。 「勅使河原冴の章」のみがミステリの範疇に入り「栗原円の章」はもはやミステリとは呼べない作品です。正直「勅使河原冴の章」のみで十分でした。 特異な設定でのロジックは相変わらずなのですが今回は設定に対して謎の驚きが小さく残念です。いいかげん特異な設定へのこだわりを捨ててほしいと思ってしまいます。 |
No.207 | 7点 | バニー・レークは行方不明- イヴリン・パイパー | 2008/09/03 00:08 |
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幻の女の幼女版の珍品です。
シングルマザーのブランチが保育園に娘バニーを預け、仕事場に向かう。仕事場から迎えにゆくと娘はおらず誰も娘を見ていない。警察に駆け込むが、逆に狂人の妄想扱いされて、というストーリーです。 母親の狂気がよく描かれ、本当にいなくなったのか、あるいは妄想なのかも読者にはっきりわからない書かれ方をされております。 真相、というか落ちは個人的にはなくてもよいといえるほど「前半名作」な出来だと思います。真相は個人的には1957年作とは言えそううまくいくはずがない、と思える出来でしたが前半部分だけでも収穫でした。 ポケミスですが現在でも新書で簡単に手に入ります。但し珍品なためそのうち絶版になると思いますので一読をお薦めします。 尚パリ万博での失踪話「消えた貴婦人」のネタばれが作中でされています。 |
No.206 | 7点 | 裁くのは誰か?- ビル・プロンジーニ | 2008/09/02 23:50 |
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名無しのオプシリーズで有名な作家ですがこの作品はバリーマルツバーグとの共作作品です。
とにかく凄い小説です。日本の「バカミス」を凌ぐ怪作です。海外作品で同系統の作品を読んだことがないためとにかく驚きました。 主人公はアメリカ大統領ニコラスで冒頭に書きかけの大統領あての警告文が示され、その後ストーリーに入ってゆきます。ストーリーで大統領周囲で連続殺人事件が起こるサスペンスが描かれますが、ラストでとんでもない展開を見せます。 作品全体を肯定できるか、あるいは否定というか本を投げつけたくなるか別れる問題作なのは間違いないと思います。 ミステリとしての出来としては評価できませんが個人的にはありかな、と思いました。 現在も簡単に手に入るのでなるべく事前情報なしで一度読むことをお薦めする作品です。ただしこの作品を「否定」する読者の方が多いかもしれません。 |
No.205 | 6点 | 彼の名は死- フレドリック・ブラウン | 2008/09/01 00:40 |
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SF作家でもあるフレドリック・ブラウンの長編作品の中では一番よくできていると思います。短編の名手らしいのですがそちらは未読でよくわかりません。
いわゆる犯罪小説の範疇に入ると思います。主な登場人物はたった5人で主人公(犯人)は印刷会社を経営するダリュウス・コンです。 彼が帰宅したあと前日車を交換したクロードが会社に差額の90ドルを受け取りに来る。事務員のジョイスは店の貸金庫に入っている10ドル札で代わりに支払う。 しかしそれはコンが注意深く作っていた偽札であった。勝手に使用されればすぐに発覚するだろうことを恐れた主人公は何とかそれを回収しようと動き出す、というストーリーです。 各章の冒頭が「彼女の名はジョイス・デュガン」、「彼の名はダリュウス・コン」と統一された書かれ方がされておりその人物紹介から始まる書き方がうまいと思います。 主人公は共感できないキャラクターとして描写され、ストーリー上の行動もありきたりですし、人間描写もさすがに古めかしいですがストーリーは短く簡潔に書かれ、最後の章でタイトルの「彼の名は死」に到達しストーリーが展開してゆく書かれ方は読みやすかったです。最終章冒頭でおそらく結末の予想はついてしまいますし、作品内容もはっきりいえば大した内容ではありませんが、うまくまとめてあると思います。 |
No.204 | 6点 | 幸運の逆転- エリザベス・チャップリン | 2008/09/01 00:02 |
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イギリス本格作家ジル・マゴーンの別名義のサスペンス作品です。
夫は弁護士、妻は主婦でもうすぐ結婚25年という夫婦が描かれ、宝くじで妻が140万ポンドを当ててからの半年がかなりブラックに描写されています。 妻は元々夫に経済的なことも含めて生活全てを抑えられ来ており、くじに当たって経済的に自立してから、精神的に自立し夫に復讐をしてゆきます。ほとんど家にいなくなり、夫の仕事も奪ってしまい、意図的に不便な家に移り住み、やがて夫は完璧な殺人事件を思い付き、というストーリーです。 最後の真相は皮肉が利いていて面白いものでしたが夫、妻ともに考え方が共感しづらかったです。またこの作品は比較的あたらしく1993年作ですがいくら3億近く当たってもこれだけお金を使えるのかどうか疑問です。(イギリスの物価がわからないので何とも言えませんが) また夫妻ともに40代ということを踏まえてもストーリー上の性的な描写、行動もそぐわない感じがしました。これも作者のイギリス中~上流階層に対する皮肉なのかもしれませんが。 細々とみられるブラックな作品としてそういう作品群が好きな方なら結末も含めて面白いかと思います。 |
No.203 | 6点 | 黄昏のベルリン- 連城三紀彦 | 2008/08/31 23:39 |
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いわゆる一昔前の謀略スパイ小説の範疇に入るかと思います。
「ベルリンの壁」がキーポイントとなっており日本人それも連城三紀彦がわざわざナチスものを書いたのも驚きですが逆にこの作品のトリックは「ベルリンの壁」がないと成立しないためもしそのためにわざわざこれだけの長編を書いたとすればすごいと思います。 ストーリーは抒情性たっぷりの連城作品らしく真相も謀略スパイ小説らしく考えられていると思います。 但し、ストーリーはもう少し圧縮できたのではないかと思われますし、やはり第二次大戦どころかベルリンの壁が崩壊してこれだけ年月が経つと作品の出来と関係なく読者の共感が得られにくい作品となってしまったかもしれません。 |
No.202 | 7点 | 焦茶色のパステル- 岡嶋二人 | 2008/08/31 23:27 |
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以前読んだときは面白かった覚えはありますが血統については一般読者は事前の描写で毛色がOOだから怪しい、と推理するのは無理でしょう。「毛色の遺伝」の表を見せられて、説明を受けてやっと納得するのではないかと思います。最後の展開は更に一ひねりがありよく考えているとは思います。
但し現実に同様なことを起こすとすれば、おそらく「毛色の遺伝」については犯人たちの立場であれば先刻承知のことだと思いますので、辻褄合わせをして発覚しないようにできることだと思いますのでそもそも杜撰な事件でありその点は不満でした。 尚この作品を読んだあと井上夢人氏の「おかしな二人」を読むと作品の作られ方、作者の考え方がより楽しめると思います。 |
No.201 | 9点 | 毒入りチョコレート事件- アントニイ・バークリー | 2008/08/31 23:14 |
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バークリー最大傑作の一つだと思います。いわゆる多重解決の先駆的作品です。
若い実業家ベンディックスの自分のクラブに中年男爵が郵送された試供品のチョコレートボンボンを持ってくる。妻にチョコレートを買う約束をしたベンディックスがそれをもらって家に戻り妻と試食する。本人は2個、妻は7個食べた。二人ともその後倒れ、妻は死亡、中にニトロベンゼンが混入されていたことがわかる。この事件を私的な集まりの「犯罪研究会」のメンバー6人が独自の真相を持ち寄り発表する。というストーリーです。 約80年前の作品ですが今でも色褪せない作品だと思います。この作品はバークリーの名探偵ロジャーシェリンガムの作品ですがいわゆる「名探偵の失敗」の作品として有名です。長編は10冊ありますが、いわゆる名探偵ぶった描写がされているにもかかわらずかなりの作品で失敗しておりバークリーの名探偵に対する皮肉がみてとれます。この作品が最も鮮明かもしれません。 6つの解決も中にはお粗末なものもありますが当時のいわゆる他作家の探偵物の探偵による安易な一通りの真相に対しての皮肉がよく出ていると思います。 尚全く同じ事件を扱った短編「偶然の審判」をできれば先に読むことをお薦めします。 |
No.200 | 5点 | 六死人- S=A・ステーマン | 2008/08/28 00:07 |
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非常に古い作品(1931年作)ですがクリスティのそして誰もいなくなったに先駆けて、登場人物が(ほぼ)全員殺されてゆく作品です。メインキャストはタイトル通り6人のグループに加え一人の女性、探偵役の警部の8人です。
5年前に別れ5年後再会したときにそれぞれの財産を6等分しようと決めた6人が再び集まるとき一人ずつ殺されてゆく、というストーリーです。 解説の「そして誰もいなくなった」と同程度の出来栄え、というのは残念ながら評価しすぎです。まず空間として孤島ものでもC.C.ものでもないのでサスペンスが物足りない気がします。 また犯行の目的を考えるといわゆる「法的拘束力」がないと目的達成ができないためせっかく殺人をおかしても目的達成できるかどうか疑問です。(その点「そして誰もいなくなった」は犯人がいわば狂人なので殺人自体が目的ですから問題ないですが) 先駆的作品の意義はありますがまあまあな出来だと思いました。 |
No.199 | 6点 | 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 | 2008/08/27 23:53 |
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加賀刑事のキャラクターがうまく発揮されている作品集だと思います。いわゆる倒叙形式ではなく犯人が明らかになってない状態で加賀刑事があからさまな容疑者の犯行を暴いていくスタイルが個人的には気に入っています。
表題作は「眠りの森」後の加賀が描写されている所が面白いです。ただ眠りの森以降は単なる推理マシーンみたいな作品が多く、内面描写がされていないのが特徴ですがこの作品も同様で少し内面を出してくれれば、とも思いました。 ミステリとしては「冷たい灼熱」が個人的には気に入っています。また「友の助言」は作品のシチュエーションを踏まえるとシリーズキャラクターの友人という設定でないと書けない内容だったと思います。 |
No.198 | 6点 | 犯人のいない殺人の夜- 東野圭吾 | 2008/08/27 23:38 |
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決まった探偵役のいない短編集ですが面白かったです。作者はアンソロジーの自選に「小さな故意の物語」を選んでいましたが、個人的には「犯人のいない殺人の夜」が気にいっています。ただ叙述トリックとしてフェアかどうかは少し微妙かもしれません。 |
No.197 | 6点 | 遠きに目ありて- 天藤真 | 2008/08/27 23:29 |
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安楽椅子探偵物の短編集ですがしみじみした天童作品らしい仕上がりです。
探偵役は障害児(といっても中学生くらい)で自分では動けず喋るのも非常に難しい、という設定です。 個人的には第一作目の「多すぎる証人」のなぜたくさんの目撃証人がいるのに証言内容がばらばらなのか、という所が気に入っています。 ロジック一本やりの作家ではないのでどの作品も甘い所はありますが他作品同様登場人物がいい人ばかりですが鼻につかずしみじみする作品集です。ミステリ的評価と別で気に入っています。 |
No.196 | 8点 | 99%の誘拐- 岡嶋二人 | 2008/08/27 03:17 |
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読んだときは作中の内容が非常にハイテクに思えそういう所も楽しめたのだと思いますが、今では古さを感じても仕方ない内容かもしれません。
個人的にはスピーデイな展開の誘拐ものとして満足した記憶があります。 |
No.195 | 5点 | ひげのある男たち- 結城昌治 | 2008/08/27 03:05 |
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アパートで殺人事件が起き、現場付近でひげのある男が発見され有力な容疑者となるが、一体誰がこの犯人=ひげのある男なのか、という犯人あての小説です。アパートの住人にひげのある男も多く、ひとくせもふたくせもある住人ぞろいでまた刑事もコミカルに描かれ一種ミステリパロデイの趣きです。
途中まで面白く読みましたが、真相はあまり納得できませんでした。 登場人物のみが犯人になりうることが大前提となっているのが不自然で現実には被害者の周囲にもっと様々な人々がいるはずなのにまるで読者に説明するかのように作中人物の中から犯人が選ばれている印象です。ミステリでは当然作中人物が犯人の本がほとんどなわけですがこの作品の場合は犯人指摘の部分で違和感を感じてしまいました。 犯人当てで年代の割には読みやすいので読んでみても損はないかとは思いますが個人的にはまあまあでした。 |
No.194 | 7点 | 黒衣の花嫁- コーネル・ウールリッチ | 2008/08/27 02:46 |
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喪服のランデヴー の女性版です。プロローグでジュリーという女が友人と別れ別の名前でアパートを借りる所までが数ページで描かれ、次から男が次々に死んでゆきその周囲に謎の女が浮かんでくるが、被害者との接点もなく捜査は難航して、というストーリーが進んでゆきます。
終盤被害者のつながりが少しずつあきらかにされ、最後に動機が明らかにされますがサスペンスの盛り上がりが今一つの感じでした。少しつながりがわかってからが長い気がしました。 事件は皮肉な結末を用意していますがそこの部分がなくてもストーリーが成り立つ気もします。 また作品そのものの問題ではないのですが「喪服のランデヴー 」と両方読むと2冊目はそれほど楽しめないかもしれません。アレンジはしてありますがどうしても以前に読んだ感覚を覚えてしまうと思います。 |
No.193 | 6点 | パリは眠らない- ミシェル・ルブラン | 2008/08/25 00:27 |
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昇進の知らせを持って自宅に帰ったが妻は留守で愛犬と散歩に出たが鍵も財布もなくパジャマ姿で出てしまい家に帰れないジャン。妊娠したが愛人に裏切られ自殺を考えるナターシャ、強盗の計画を立てるピエールとガストン、孤独な一人暮らしのコリンヌ、過去の汚点を脅迫されている作家のヴィクトール。
これら全く無関係な人物の視点である一日の夜23時から5時30分までを描いた作品です。 これらの人物が様々なシチュエーションでパリの街中で交錯し更にラスト直前である店(およびその路上)に終結するところは上手いです。 但し厳密にいうとそれまで描かれた心情、行動を考えるとそもそも店に入るかな、と思う人物もおりますし少し無理やりな感があるのと5つの視点でストーリーが動きますがどちらかというと配分はばらばらです。 元々は他人同士が一晩という短い時間で錯綜する様を上手くまとめておりミステリとはいえないかもしれませんが面白かったです。 |
No.192 | 7点 | 仮面の情事―プラスティック・ナイトメア- リチャード・ニーリィ | 2008/08/25 00:04 |
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これもニーリィ節炸裂のサイコサスペンスです。同タイトルで以前映画化もされています。
主人公ダンが病院で目覚めるところからストーリーが始まり自分が崖から転落して瀕死の重傷を負い体はぐちゃぐちゃ、顔は手術で元にもどったが、記憶が全くもどらない。退院後記憶はさっぱり戻らないが、同乗した妻はほぼ無傷であり、それ以外にも様々な疑問点がでてきて、という作品です。 当然のごとくのどんでん返しも用意されていますがニーリィの他作品に比べると素直な作品でひねりは小さく予想しやすいです。 真相は警察捜査がしっかりしていれば、こんな事件が起きなくてもすぐにわかる内容なので、つっこみどころはあると思いますが叙述トリック、どんでん返し好きならお薦めの作品です。 |
No.191 | 5点 | つなわたり- ピーター・ラヴゼイ | 2008/08/24 23:21 |
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第二次大戦直後が舞台となり戦争中同僚だった現在は主婦となった二人が偶然再会し二人とも夫に対して殺意を持っていることがわかって、という発端から始まるサスペンスです。主人公はそのうちの一人ローズです。
ありきたりの交換殺人テーマの作品とは違った展開が楽しめます。 死体を埋葬させようとする下りもいくら大戦後でもそんな簡単に偽装できるのかと思わせておいて実は、という展開が面白いです。 読者として客観的にみると犯行が非常に杜撰なことがわかりますしおそらく作者も百も承知なのでしょうが作品中で翻弄される主人公ローズを皮肉たっぷりに描いているところが主眼だと思います。かなりブラックな内容ですがありきたりの完全犯罪、交換殺人テーマの作品よりも面白かったです。 |
No.190 | 7点 | 殺意の団欒- ジェームズ・アンダースン | 2008/08/24 23:06 |
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この作品は本格ではありませんが笑わせてくれるミステリです。イギリス上流階級の夫妻がお互いを殺そうとする作品ですが素人のため失敗を繰り返す様がコミカルに描かれます。確か昔同じテーマの映画があったと思いますがそちらはブラックユーモア調だったのに対しこちらはコミカルです。
相手に対するセリフと実際の心情の部分のギャップも面白いです。 ラストで物語は急展開しますがその内容もラストのセリフもありきたりですが十分楽しめました。 |