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鯨統一郎 | 出版月: 2011年06月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
光文社 2011年06月 |
光文社 2014年02月 |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2014/02/20 22:28 |
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ミステリ作家、鯨統一郎がその名を伊留香総一郎と変えて書き上げた、事実をもとにしたフィクションであり、思いの丈をすべてぶつけたような自伝的作品。
幼少の頃から、学生時代、会社勤めの時代を経て、プロの作家デビューにいたるまでの涙ぐましいまでの苦労とささやかな幸せ、妻との愛、生まれたばかりの子供に対する愛情などが赤裸々に描かれていて、その人となりが十分に伝わってくる秀作に仕上がっている。 作中には、子供の頃に見た映画やアニメ、小学校時代から読み始めた、純文学、SF、ファンタジー、ミステリ、時代小説にいたるまでの様々なジャンルの小説のタイトルや作家の名前が実名で登場する。他にもフォークシンガーや海外のポップ歌手、果ては野球選手まで出てくる。 これだけでは、さして食指は動かないと思っている方々に言いたいのは、本作は非常に面白い小説だということである。それはもう、時間が許せば一気読みしてしまいたくなるような面白さと言ったらいいのだろうか。 中には、私の涙腺を直撃する、涙なくしては読めないシーンもあり、また、もやし炒めだけという貧しい食卓を家族で囲むシーンなどもあったりして、読んでいるこちらまで切羽詰まった気持ちになるほど、波乱万丈の人生を送る主人公に、エールを送りたくなってしまう。 果たして伊留香総一郎はデビューできるのか・・・ 鯨統一郎を何冊も読んでいる人は勿論だが、むしろそんな作家知らないという人にこそ読んでもらいたい逸品である。 |