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[ 警察小説 ]
時を盗む者
リープホーン警部補&ジム・チー巡査
トニイ・ヒラーマン 出版月: 1990年12月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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ミステリアス・プレス
1990年12月

No.2 5点 2019/09/29 07:38
 腫瘍手術中の感染症と致命的な凝血で愛妻エマを失ったジョー・リープホーン警部補は、ナヴァホ族警察に辞表を提出し、二週間の特別休暇を過ごしていた。そんな彼を心配した旧友サッチャー取締官は、リープホーンにある女性人類学者の捜索の助力を依頼する。エリナー・フリードマン=バーナル博士は古代部族アナサジの壺の研究者で、遺跡盗掘者たちとのトラブルに巻き込まれたと思われた。アナサジ陶器の良品は一個が数万ドルにもなる。彼女が組織的な盗掘にかかわっているという匿名電話が、国土管理局が捜索に乗り出した理由だった。エリナー博士が行方を絶ってから、既に二週間が経過していた。
 同じ頃、ウィンドウ・ロックから数十マイル離れたシップロックに勤務するジム・チー巡査は、モータープールからトレイラーが盗まれた事件の犯人を追っていた。修理工場への聞き込みからチーは、伝道師スリック・ナカイの主催する〈真実の福音〉に辿りつく。エリナーの部屋にあった競売カタログのメモにもまた、ナカイの名があった。ナカイは信者からアナサジの壺を集め、信仰者たちの運営資金にしていたのだ。
 交錯する失踪事件と重機の盗難。チー巡査はナカイの話から遺跡の目星を付けダブル・タイヤの跡をたどるが、終点の人骨ちらばる集落遺跡には、射殺された盗掘者たちの死体が転がっていた・・・
 1988年発表のナヴァホ・インディアン・シリーズ第八作。タイトルの"A Thief of Time"とは墓荒らしのこと。訳者あとがきには「彼の最大傑作」「絶賛」「アメリカ探偵作家クラブ賞に再度ノミネイト」「ベストセラー上位に進出」とありますが、読んだ感じさほどのものではありません。この後のシリーズも売れ行き好調だったので、本作がブレイクの切っ掛けとなったのは確かですが。取っ付き悪いけども癖にはなるシリーズですね。
 妻を失ったベテラン警部補と行動的で恋に揺れる若々しい警官を対置し、「死者の舞踏場」に比べ格段に事件エリアを拡大したのが成功の理由でしょうか。埃っぽく広大なユタ・コロラド・アリゾナ・ニューメキシコの四州国境地帯全域を舞台にし、奥行きもより増したように見えます。
 ただ傑作かというとやや疑問。「舞踏場」同様謎めいた展開を冒頭に配置し引っ張りますが、地味なのは相変わらずでそれほど優れた構図でもありません。細かい部分が色々と緩いですし。前作「魔力」と共にインディアン居留地という題材の面白味とその一般化に貢献した作品。リープホーンが再生を決意する〆は爽やかでいいですが、推理要素よりも土地の空気や生活サイクルが肌で感じられるのが、最大の魅力です。1989年度第3回マカヴィティ賞受賞作。

No.1 5点 蟷螂の斧 2013/12/07 08:49
英米ベスト100・ランクイン作品。インディアン遺跡の発掘現場から行方不明になった女性人類学者を探すリープホーン警部。掘削機盗難事件を追うチー巡査。その後、殺人事件が起こり、二人は共同で捜査にあたる。リープホーン警部は妻を亡くしており、その回想シーンや、チー巡査の恋を絡めて物語は進行します。心象風景や、広大な自然の描写、インディアン文化の紹介などが評価されているのか?


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