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[ 警察小説 ]
転落者
リープホーン&ジム・チー警部補代理
トニイ・ヒラーマン 出版月: 1998年07月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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DHC
1998年07月

No.1 6点 2019/11/09 15:03
 婚約者ジャネットの望みに応え警部補代理に昇進したジム・チーの元に、この夏引退した伝説の存在、ジョー・リープホーン元警部補が再び現れた。先ごろナヴァホ族の霊山シップロックで見つかった死体の件について聞きたいのだという。山頂に白骨となって横たわっていた男の名はハロルド・ブリードラヴ。大牧場の御曹司で、チンル署に勤務していた11年前、リープホーンはシェリー峡谷で起きた彼の失踪事件を担当していたのだ。
 ハロルドの事故はちょうど彼が遺産相続年齢になる前後のことで、また遺体の発見後、夫妻の登山ガイド役だったエイモス・ネズが何者かに撃たれたのも気にかかるという。ネズ老人は軽症だったが、なぜ襲われたのかはまったくけんとうがつかないらしい。
 上司のラーゴ警部に頻発する家畜泥棒事件の解決をせっつかれながらも、チーはリープホーンの要請に応えようとするが、なぜか恋人の弁護士ジャネットはこの転落死事件に不自然なほどの関心を示すのだった・・・
 早川書房のミステリアス・プレス文庫から出版元を移して刊行された、「聖なる道化師」に続くナヴァホ・ネイションシリーズ第12作。ただしシリーズ翻訳自体は1996年発表、9冊目の本作で打ち止め。2006年刊行の第18作"The Shape Shifter"が最終作なので、これまでに半数の作品が邦訳されたことになります。
 警部補代理として慣れない管理職をこなしつつ部下に対応しながら、ジャネットの反応に違和感を覚えるチー。一方リープホーンはチーの恋敵である大物弁護士ジョン・マクダーモットに打診を受け、生前ブリードラヴ家と対立状態にあったハロルドの転落について、大金二万ドルで私的調査を請け負うよう要請されます。
 牧場内のモリブデン鉱山開発のほか、幾重にも思惑や欲望の絡んだ事件。メイン事件の幕引き担当はリープホーン、家畜泥棒の解決はチーですが、両方とも捻っておりどちらにも見せ場があります。このへんのバランス感覚は今までで一番良いですね。伝説的存在ながら一匹狼のリープホーンと、意外にも管理能力に優れ部下たちと繋がる後継者チーの対象も良い。メイントリックは過去作の応用ですが、遺産相続の条件と絡めてうまく差別化しています。
 大庭忠男さんからの翻訳者の交代を問題視する声もありますが、気にする程ではありませんでした。シリーズ作品として見ても纏まった仕上がりです。評価高いとはいえ、翻訳が本書で途切れたのはホント残念。


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