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[ 警察小説 ] 黒い風 ジム・チー巡査 |
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トニイ・ヒラーマン | 出版月: 1991年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
ミステリアス・プレス 1991年08月 |
No.1 | 6点 | 雪 | 2019/10/07 08:15 |
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アリゾナ州ブラック・メサの砂漠地帯ウェポ低地でセスナ機が、深夜の着陸に失敗し大破した。偶然居合わせたナヴァホ族警察巡査ジム・チーは機体に駆け付けるが、まもなく息絶えたパイロットを含め死亡者は2名、生存者はいなかった。チーは新たにウェポに入植したホピ族用の風車破壊事件を解決するため、現場で見張りを続けていたのだった。彼は墜落音の他に銃声と、車が走り去りだれかが土手をよじのぼって逃げる音を聞いていた。セスナは麻薬取引のため密かに低地に侵入したと思われた。
捜査を仕切る麻薬取締局捜査官T・L・ジョンソンはチーに共犯の疑いを掛け、暴力で麻薬のありかを聞き出そうとする。犯人はセスナ機誘導役の弁護士ジェリー・ジャンセンをも射殺し、現場から逃走していたのだ。時価二千万ドルと言われるコカインの行方はわからないままだった。 上司のラーゴ警部から捜査権の無い麻薬事件に関わらぬよう厳命を受け、強制的に休暇を取らされたチー巡査は、友人のホピ族保安官補、カウボーイ・ダッシーの協力を得て己の疑惑を晴らそうとするが・・・ 1982年発表のナヴァホ・インディアン・シリーズ第五作。ジム・チー巡査ものとしては1980年の"People of Darkness"に続く二作目。タイトルの〈黒い風〉とはナヴァホの定義で、人間の心に入り込み判断力を破壊するもののこと。メインのコカイン密輸と持ち逃げ犯探しを軸に、チー本来の担当事件である風車破壊と交易所からの貴金属盗難、およびダッシー担当のナヴァホの身元不明死体事件を絡ませる構成。ロバート・レッドフォードが映画化権を獲得し、1991年「ダーク・ウィンド 砂漠の刑事ジム・チー」として公開されました。作者ヒラーマンいわく「プロットの出来が良いもの」だそうです。 地味なナヴァホシリーズの中でもわりと展開は派手目。セスナ事故から住居のトレイラーを勝手に捜索され、殴打されたのち脅され、さらに正体不明の相手に追跡されるチー。大金が絡むだけに白人の誰もがうさんくさい行動をしてきます。 主人公のキャリアを利用したトリックは単純ながら効果的。三作読んできましたが、ミステリ要素は一番あります。リープホーンものに比べると主人公が若いだけにやや重厚さには欠けますが。全てを押し流すラストの奔流といい、インディアンという題材が受け入れられれば確かに映画向きの作品でしょう。 |