皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 伊藤博文邸の怪事件 月輪龍太郎 |
|||
---|---|---|---|
岡田秀文 | 出版月: 2013年10月 | 平均: 5.83点 | 書評数: 6件 |
光文社 2013年10月 |
光文社 2015年06月 |
No.6 | 7点 | 名探偵ジャパン | 2017/06/11 01:05 |
---|---|---|---|
2013年という刊行年を見れば、異常なほど「本格」している作品と映りました。
歴史ものは不得手な私ですが、登場する歴史上の人物や出来事に対して、逐次詳細な解説が入りますので、すんなりと楽しめます。ストーリーを中断させるほどのしつこい解説じゃないため、読みやすさは損なわれません。 作品舞台は明治ですが、「現代の研究者が明治時代の書物をミステリ小説として書き直した作品」というメタ要素があるため、○○トリックが使われていても納得出来ます。 と、ここまで書いていて気付いたのですが、本作に出てくる月輪龍太郎はシリーズ探偵なのですね? 次回作がどういった形で来るのか、楽しみにしています。 |
No.5 | 6点 | makomako | 2017/04/12 22:04 |
---|---|---|---|
黒龍荘の惨劇がなかなか良かったので、その前の作品である本書を読んでみました。
これも立派な本格推理小説で、いろいろな伏線やミスリードがあり、見事に引っかかってしまいました。小説の出来としてはこちらのほうがやや小粒ですが、最近こういった作品にお目にかかることが少ないので、十分楽しませていただきました。 こういったがちがちの本格物はたくさん書くことが難しく、量産をせがまれるとどうしてもクオリティーが落ちてしまうようですが、作者は続編を執筆中とのことですので、期待しています。 |
No.4 | 6点 | まさむね | 2016/12/25 11:28 |
---|---|---|---|
月輪龍太郎シリーズ第一弾。
実は、次作「黒龍荘の惨劇」を先読していたのですが、逆順に読んだことによって、むしろハマったという感じ。「黒龍荘~」の振りが前作に効くというか…。 ちなみに、「黒龍荘~」と比較して、歴史上の人物や史実との絡ませ方は本作の方が格段に上で、この点でもなかなかに楽しめます。本格の剛球度という観点では「黒龍荘~」に軍配が上がるものの、本作の捻り具合も決して悪くない、否、私は好きなタイプ。(既視感はあるけれども。) うん、やっぱり「黒龍荘」→「伊藤博文邸」の順で読むのも良いかもしれない。(邪道かな?) |
No.3 | 5点 | E-BANKER | 2016/03/22 21:29 |
---|---|---|---|
「本能寺六夜物語」や「太閤暗殺」など歴史小説で有名な作者が初めて著したミステリー。
月輪龍太郎を探偵役とするシリーズの一作目でもある本作。 2013年発表。 ~明治十七年、伊藤博文邸の新入り書生となった杉山潤之介の手記を小説家の「私」は偶然手に入れた。そこに書かれていたのは、邸を襲った恐るべき密室殺人事件の顛末だった。奇妙な住人たちに、伊藤公のスキャンダル・・・。不穏な邸の空気に戸惑いつつも、潤之介は相部屋の書生・月輪龍太郎とともに推理を繰り広げる。本格ミステリーの傑作、シリーズ第一弾!~ 確かに本格ミステリーとしての体裁は十分に整えている。 そういう読後感だった。 作者の本業とも言える歴史小説を背景に、密室殺人に終盤にアッと驚くサプライズ(○○○りトリックなのだが)など、本格ミステリーのガジェットを組み込んでいるのだ。 「歴史小説」部分に関してはさすが。 どこまでがフィクションでどこまでが史実なのかは分からないけど、伊藤博文を中心として維新の熱気冷めやらぬ明治時代中期という魅力的な設定。明治憲法草案に係る歴史的背景など、歴史好きの私にとってもなかなか興味深く読ませていただいた。 (津田うめや川上貞奴に関してはううーん?!だけど) 問題はミステリー部分なのだが・・・ まず「密室」はまったくもっていただけない。 この程度でお茶を濁すのであれば、最初から密室、密室と煽らない方がよいと感じた。 終盤のサプライズについてはさすがに驚かされた。 シリーズ第一弾でのこの手の“仕掛け”は別作品で読んだばかりなんだけど、一定の破壊力はある。 (森博嗣のアノ作品!) ただトータルとしてはどうかな・・・。ちょっと微妙な感じはする。 盛り上げ方が下手ということかもしれないけど、本業ではないから致し方ないかなという気もする。 要はちょっと中途半端ということなのだろう。 |
No.2 | 5点 | nukkam | 2015/11/13 17:46 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 歴史小説家である岡田秀文(1963年生まれ)が2013年に発表した本書は、明治時代を舞台にした本格派推理小説です。時代背景と謎解きを巧妙に絡めていますが、これはある意味弱みになっているかもしれません。現代の社会常識と大きく異なる時代性描写に優れるほど、そんなの推理のしようがないではないかという不満につながる危険性があるのですから。大胆な真相ですが探偵役の推理よりも自白に頼っているところの多い謎解きも好き嫌いは分かれそうです。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2013/12/14 20:33 |
---|---|---|---|
小説家の私は、伊藤博文邸に書生として住み込むことになった青年の古い手記を古書店で入手する。それには、明治17年に伊藤邸で発生したある殺人事件の顛末が記されていた-------。
「太閤暗殺」や「本能寺六夜物語」など、ミステリ味を利かした時代小説を書いてきた作者による本格的な謎解き長編ミステリ。それほど期待せずに読みましたが、これは思わぬ拾い物でした。 作風はどちらかというと地味で、現代本格に見られる派手な趣向こそないものの、端正な仕上がりになっていると思います。地味といっても、梶龍雄を想起させるメインの〇〇トリックをはじめ、手記形式を利用したミスディレクション、巧妙なな伏線、書生2人による推理合戦、その時代ならではの犯行動機と、本格ミステリのツボをきっちり押さえていて、非常に好感がもてる佳作といっていいと思います。また、伊藤公をはじめ津田うめ、芸者貞奴などが重要な役割で登場し歴史モノとしても楽しめる。 |