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[ 警察小説 ]
十二夜殺人事件
マイケル・ギルバート 出版月: 1978年10月 平均: 5.33点 書評数: 3件

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集英社
1978年10月

集英社
1983年02月

No.3 6点 クリスティ再読 2021/06/06 18:53
イギリス伝統の...と言いたくなるようなスリラーである。イギリスの業界はパズラーから冒険小説までごっちゃでできているようだが、その中でやはり中心になるのはスリラーのように感じる。だから本作をジャンルミックスと捉えるよりも、「イギリスらしいスリラー」と広く見るのがいいようにも思うんだ。パズラーじゃないし、警察小説じゃないし、猟奇殺人はあってもサイコスリラーじゃないし、ましてや冒険小説やハードボイルドではない。でも細かい伏線をいろいろ敷いて、臭わされただけの謎が画面を切り替えるように明らかになり、イギリスらしい寄宿舎学校に潜む、少年を攫って拷問して殺す猟奇殺人者を、教師に身をやつした捜査官が見つけ出す話である。
一応タイトルどおりに、シェイクスピアの「十二夜」を生徒たちが上演する話はあるんだけど、シェイクスピアのこの作品が示唆する「ジェンダーの混乱」というテーマが、やはりこの猟奇殺人の真相にも潜んでいるし、生徒に同性愛的感情を持つ教師も複数指摘されるわけで、無関係というわけでもないや。で、この生徒たちの中には、イスラエルの駐英大使の息子もいて、この大使を巡るテロの脇筋もあって、なかなか話の転がしかたが一筋縄ではない。登場人物が多く、しかもカットバックを多用してキャラ描写が外面的だから、面白みが発動するまで少しかかるのが難かな。
イギリスらしいウィットと教養を楽しめる作品。プレップスクールだから、8歳から13歳くらいの生徒たちが「国語の授業」で、シェイクスピアの劇を生徒たちで演じる....すごいな。でも楽しそう。

No.2 5点 mini 2012/04/19 10:00
* 1912年生まれ、つまり今年が生誕100周年にあたる作家は意外と多い
今年の私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第4弾はマイケル・ギルバートだ

実は私がこの作者で最初に読んだのが「十二夜殺人事件」で、まだミステリー初心者の頃だった
初心者らしからぬ選択だなとお思いの方も居られようが、私の入門書は植草甚一のガイド本で、植草氏はやたらとこの作家を推薦してたのである
ところがさぁ、植草氏御墨付きのポケミス版「死は深い根をもつ」と創元文庫「ひらけ胡麻!」の両作はとっくの昔に絶版で入手は極めて難しく、後期の集英社文庫「ケイティ」も見付らず、古本屋で最も簡単に入手出来たのが「十二夜殺人事件」と文春文庫「金融街にもぐら1匹」だけだったのだ、この2冊は現在でも古書市場では格安でしょ
今の読者は幸せだよなぁ、代表作の1つ「スモールボーン氏は不在」と、創元文庫「捕虜収容所の死」が楽勝で入手可能なんだから、今ではデビュー作まで刊行されてるし

マイケル・ギルバートは海外での名声に比較して、日本では決してメジャー作家とは見なされていないが、調べてみるとねえ、意外と翻訳刊行は結構されている
ただし古くに訳されたものは後期作は入手容易だが初期のは殆どが絶版入手困難で、つまり今後は早川と創元が復刊してくれるかどうかだな
「十二夜殺人事件」は後期の作で、後期作とは言えよくこの作家の作品が昔に文庫で刊行されたな、何らかの受賞作だったからか?

マイケル・ギルバートってとにかく作品毎にジャンルや作風の変わる人で、基本となる持ち味がそもそも分かり難い
「十二夜殺人事件」もkanamoriさんも言及されているようにジャンルミックスな話で、まぁ一種の捜査小説なんだろうがちょっと風変わり
新任教師の正体は、凡そ○○側の人間なんだろうと察しはつくのだが、潜入した狙いがなかなか見えてこない
前半などは生徒たちとの交流が中心で、読者に物語の上での焦点を絞らせないってのが共通する持ち味なんだろう
悪くはないが傑作というにはちょっと足らないですかねえ

No.1 5点 kanamori 2010/04/05 18:12
猟奇的な連続殺人犯を追う捜査陣の行動描写で幕を開けた物語が、序盤すぐに寄宿制の学校を舞台とした学園ミステリに変わり、これはどういった物語なんだと戸惑いながら読み進めました。
「捕虜収容所の死」同様ジャンルミックスというかジャンルにこだわらないプロットが著者の持ち味のようです。中盤に新任教師の正体が割れて、なるほどそうつながるのかと納得しましたが、通常の捜査小説を読みなれている身には、少々肩透かしの印象はぬぐえません。
シェイクスピアの演劇は出てきますが、このタイトルは内容にそぐわない感じを受けました。


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