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[ 本格 ]
空高く
マイケル・ギルバート 出版月: 1960年01月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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早川書房
1960年01月

早川書房
2005年08月

No.3 6点 人並由真 2020/03/26 02:51
(ネタバレなし)
 第二次大戦の終結から歳月が経った、英国の片田舎ブリンバレー。聖歌隊の指揮者である未亡人リズ・アートサイドは、30代前半の息子で、戦時中は特殊部隊にいたティムと二人暮らしだった。ティムはある日、近所の中年マックモリス少佐から匿名の脅迫状を受け取ったとの相談を受ける。ティムの戦友には地元の巡査部長ガディがいるので、マックモリスは特別なはからいを期待しているようだ。ティムは近日中に相談する約束を交わすが、それから間もなくティムがまだガディのもとに向かわない内に、マックモリスの借りている屋敷が爆薬らしきものによって当人もろとも吹き飛んだ。マックモリスの死にある種の責任を感じるティム、そして30年前に夫ビルを爆発で失ったリズは、この爆殺事件を調べ始めるが。

 1955年の英国作品。本当に久々にこの作者の作品を読んだ(HM文庫の新訳版)が、予想以上に登場人物が明快に描きわけられている上、会話も多くてリーダビリティは高い。
 題名は文字通り、2キログラムの爆薬で家がふっとんだという意味合いだが、実際に邸宅そのものが空中にほぼ原型を留めたまま吹き飛ばされるビジュアルなどは登場しない。ある種の諧謔というかブラックユーモア的なタイトリングだとも思える。

 ティムと年の離れたヒロイン、18歳のスー・ポーリングとのなかなか距離のせばまらない(というか焦れったい)恋愛模様や村で起きる中小の事件も交えてストーリーはテンポよく進み、本作の売りといえる? 爆薬によって家を吹き飛ばす爆殺についてのノウハウめいたものまでそれなりに興味深く語られる。
 とはいえその辺の趣向が最終的にミステリの幹の部分にあまり関わってこないので、相応に楽しく読めた反面、水っぽい作品という印象もある。フーダニットの興味から言ってもちょっとなあ、という結末。
 昭和の日本国産のB級ミステリでそこそこ楽しめた作品を、英国の50年代ミステリに置換するとこんなもんになるかな、という感触でもある。
 田舎が舞台の作品なんだけど、全体的にどこか都会派的な洒落た雰囲気が感じられるのは良かった。まあ佳作かな。

No.2 5点 nukkam 2016/05/27 17:34
(ネタバレなしです) 1955年発表の本格派推理小説です。大空を舞台にしているかのような雄大なタイトルですが飛行機も鳥も登場せず、足、自動車、バイクで地上を駆けずり回っています(笑)。爆弾が使われることもあって戦後という時代性を強く感じさせているのが特徴です。推理がかなり粗くて探偵役の謎解き説明はぴんと来ないところがありますが(私の理解力不足もありますけど)、その裏でじわじわとサスペンスを盛り上げていく手法がなかなか効果的です。

No.1 6点 mini 2012/05/28 09:59
* とりあえず復旧再登録(^_^;) *
* 1912年生まれ、つまり今年が生誕100周年にあたる作家は意外と多い
今年の私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第4弾マイケル・ギルバートの2冊目

先日22日に東京スカイツリーが開業した、空高く突き出る尖塔
てなわけで便乗企画は「空高く」である
マイケル・ギルバートと言えば、作品毎に作風が変わり、しかも個々の作品がいくつかのジャンルミックス型なので、とらえどころの無い作家として知られている
「空高く」は、ロンドンを舞台にする事の多い作者にしては珍しいクリスティ風ヴィレッジミステリーで、作中舞台をミス・マープルが闊歩していたたとしても違和感が無い
題名だが、別に高い塔が出てくるわけではなく、爆弾で家ごと空高く吹っ飛ばすという物騒な殺害方法なのである
設定年代が戦後まもなくだから元工兵の軍人とかが登場するので爆発物処理には慣れているわけだ
ところで私はこの真犯人には本文を1行も読まない時点で気付いてしまった
登場人物一覧表を眺めた時に、この作品が黄金時代の作ならば違和感無かったと思うが、戦後作にしては不思議に感じたのだが直感が当たってた

※ 全くの余談だけどさ、東武は浅草の次の『業平橋駅』を『スカイツリー駅』に改名しただろ、在原業平を由来とする由緒有る駅名なのにね
最寄り駅なら隣の『曳船駅』の方が近いかもだが、『曳船駅』は地下鉄半蔵門線などとの相互乗り入れの関係も有って東武の独断で改名というわけにはいかなかった事情も有るんだろうけどさ


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