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[ クライム/倒叙 ]
悪人志願
大下宇陀児 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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No.1 6点 人並由真 2026/05/24 07:24
(ネタバレなし)
 入試の難関率で名高い「蛍雪学院」の学院長・大原省造は、自宅の呼び鈴を押す子供たちの連日の悪戯に悩まされ、転居を考えていた。それと前後して大原は、市内の人工温泉施設で不良少年の一派と出会い、その挙動にひとこと注意を入れる。だが……。

 作者の戦後10番目の長編で、昭和34年12月に桃源社から企画ものの叢書「書下ろし推理小説全集」の一冊(第2巻)として刊行された作品。

 前書きや化粧箱の作者のことばで<テーマは非行少年><謎やトリックはほとんどない>と明言しており、本書の2年前に初訳が出たグレアム・グリーンの『ブライトン・ロック(別題『不良少年』)』あたりに影響を受けたんじゃないの? と邪推する。
 同時に作者は<倒叙型に入るかもしれないが、むしろ犯罪小説>と言った方がいいとも述べており、まさにそのまんま。
 
 社会派ミステリ的に<こんなワルな子供になったのも、みんな大人や世の中が悪いのよ>的なメッセージも読み取れなくもないが、まああまり本腰を入れているとは思えず、さらに前述『ブライトン・ロック』のような神学にからめた格調の高さめいたものもないが、それでも登場人物の配置や細かい機微、微妙な物語の起伏の妙……などなどで、ソコソコ面白く読ませてしまうのは、さすがの職人芸。まあブンガクっぽい通俗小説、だとは思うけれど。
 
 元版(これしか無いか?)を古書市で330円で購入して、巻末に短編『醜聞』が併録されていた。そっちは動機の理屈付けに妙な食感があり、乱歩のセレクトする海外短編「奇妙な味」系のテリトリーにちょっと近いかもしれない。

 評点は0.3点ほどオマケしてこの数字で。


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