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[ 本格/新本格 ]
僕の殺人
殺人三部作
太田忠司 出版月: 1990年04月 平均: 6.00点 書評数: 5件

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講談社
1990年04月

講談社
1993年10月

徳間書店
2017年03月

No.5 5点 nukkam 2022/03/14 05:11
(ネタバレなしです) ショート・ショート作家としてデビューした太田忠司(おおたただし)(1959年生まれ)の長編ミステリー第1作となった1990年発表の本格派推理小説です。おそらく前例のない「1人6役」(物語の序盤で宣言されます)への挑戦が都筑道夫の1人3役に挑んだ「猫の舌に釘をうて」(1961年)、主人公が記憶喪失という設定がやはり都筑道夫の「やぶにらみの時計」(1961年)を思い浮かべる読者もいるかもしれません。主人公を取り巻く環境は色々な意味で重苦しいのですが、文章表現が淡々としているのであまり切迫感がありません。そこは読者評価が分かれそうですが読みやすい作品ではあります。6役についてはちょっとこじつけっぽく感じる役割もありますし、最後のどんでん返しは謎解きとしては後出し説明気味ですが当時の新本格派推理小説の作品としては物語性を重視しているのが個性になっています。

No.4 5点 メルカトル 2014/02/13 22:22
再読です。
上質の食材を用意したのに、調理が下手なため台無しになったような作品、だと思う。
第一に、記述者が記憶喪失で正体不明のため、物語全体に紗がかかったようにどことなく漠然とした印象を受ける。さらに、メリハリがないので、情景が浮かんでこないし、今一つ頭に入ってこない。つまりインパクトに欠けるわけである。
太田氏の作品は10冊ほど読んでいるが、決して文章が下手なわけではないのに、本作ではその手腕が発揮されているとは言い難い。と言うよりむしろ、わざと下手に書いているとさえ感じられる。この作品に高評価を与えている諸氏には申し訳ないが、私にはお世辞にも面白いとは思えなかった。
主人公の僕は、被害者、加害者、証人、探偵、トリック、記述者の6役をこなしている?が、それはあくまで「ある意味」ではという注釈つきであり、未読の方の期待に応えるようなアクロバティックなものではない。
二転三転するラストの急展開は、多少読み応えがあるものの、私にとっては全体的にイマイチな印象だった。点数は甘めにして5点がせいぜいである。

No.3 7点 蟷螂の斧 2012/07/16 10:30
一人六役という物語の構成、人物の配置など、すごく計算されていて高評価なのですが、ややインパクトに欠けた印象ですね。ラストはどんでん返しのままで終わらせ、その後の行方は読者におまかせ・・・の方がインパクトが強いような気がしました。作者のやさしさが、にじみ出ているラストではあるのですが・・・。        (ネタばれ)「僕」が伯父に似ているというミスリードが2か所くらいあったと思いますが、やや反則?気味のような気がしています。ストレートな表現でなく、匂わす表現であればもっと効果的であったと思います。

No.2 6点 vivi 2010/04/30 19:19
主人公が、
被害者、加害者、証言者、トリック、探偵役、記述者
という6役を担う作品です。

かなり重いテーマを扱ったものだと思うのですが、
太田氏の描く少年像は背後に強さやしなやかさもあって、
それが悲惨な結果を予想しそうな読後感にも、
希望を願えるような余韻を残しています。

伏線なんかも丁寧なのは、太田氏らしいですね。

No.1 7点 makomako 2008/10/19 13:31
太田忠司の記念すべきデビュー作。彼は同じ名古屋在住でもあり個人的にひいきの作家だ。作品も新宿少年探偵団シリーズ以外は大体読んでいるつもり。いろいろな分野の小説を書いているが、やっぱり本格推理が一番だと思う。これは彼の小説の原点でありトリックもどんでん返しも推理の要素も含まれた秀作であろう。ただ彼の作品すべてに見られるように登場人物がかなりナイーブでやさしいため(ことにレストアなどは探偵がもうすぐ病院が必要なほどだ)、本格ものとしてどうしても少し弱い気がするのは私一人だろうか。


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