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[ サスペンス ]
すり替えられた誘拐
D・M・ディヴァイン 出版月: 2023年05月 平均: 5.50点 書評数: 4件

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東京創元社
2023年05月

No.4 4点 レッドキング 2023/09/05 21:37
ディヴァイン第八作(これで全13作の邦訳揃った)。原題は、"Death Is My Bridegroom"=「死が我が花婿」。詩的な死を感傷しながら、身体の痛みを恐怖した女子大生の悲惨な最後。実の花婿と名目の花婿、二人の死を迎えた大学職員の女。初めての男に宿命の花婿を重ねた少女。そして、最後のヒロインが、人を愛せなかった学者の男の心の壁を砕き、死ではない生きた花婿を得るのか、の希望は余韻として残る。サスペンスロマンとしては見事。ミステリとしては・・あと、一トリック、一捻りあれば・・6~7点だった(かな)。
※てことで、ディヴァイン全十三作の採点を完了したが・・順位付けは止めとこ・・

No.3 7点 人並由真 2023/07/23 07:44
(ネタバレなし)
 ディヴァインもこれで5冊目。とはいえこれまで読んだのは、ほとんど2010年代後半以降に翻訳された新刊ばかり。
 それ以前の旧刊は『兄の殺人者』以外まったく未読なので、今回、これで全冊翻訳と聞いても、ああ、そうですか、くらいの薄情な読者である(汗)。
 
 ただまあ、小説としては今回のが、これまで読んだなかでダントツに面白かった。
 フーダニットのパズラーというよりサスペンス編というか、大人向けのコージーミステリじゃないかな、とも思うが、主人公ふたりはすごく魅力的。思春期に読んでいたら、けっこう心の楔になりそうな作品である。
 すんごくラストがいい。本当にいい。

 一方で、真犯人に関しては、人間関係の配置+伏線から、判明前に推察できて、見事に正解。ただまあ、あの(中略)な動機は、独特の凄みがあった。

 阿津川先生がおっしゃる「『(中略・某海外名作)』のようだ」というのは、個人的にはいまひとつピンとこない。むしろ個人的にはガーヴの諸作(ことさら何か特定の作品ではなく)を、ディヴァインが自分流に消化したら、こうなった、というような印象。
 原書は1969年の作品なんだよね。1970年代の半ばくらいまでに、その頃のポケミスか当時の創元文庫で読みたかったな、と、ちょっと、そんなことをしんみり考えたりもした。

No.2 5点 nukkam 2023/06/07 11:31
(ネタバレなしです) 1969年発表の本格派推理小説です。創元推理文庫版の阿津川辰海による巻末解説で「待ちに待ったこの時がやって来ました」とコメントされていますが全くの同感です。国内初の翻訳作品であった「兄の殺人者」(1961年)の現代教養文庫版(1994年)を読んでこの作者の虜になり、しかもその巻末解説で全作品(13作)が概要紹介されているのを見てぜひ読破したいとの思いを約30年抱いてましたが、最終翻訳作品となる本書を読んでついにその夢がかないました。大学を舞台にした作品としては「悪魔はすぐそこに」(1966年)に続く作品で、本職が大学の事務員だった作者ならではの作品だと思います。多くの学園ミステリーが学生か職員かどちらかに片寄った描写になりますが、本書は両方をしっかりと描いています。丁寧に謎解き伏線を張ってあって終盤近くでは犯人の条件を整理していますが、ここで「この条件を満たす人物はあなたです」とずばり解決とはいかない展開を見せるのが異色です。巻末解説では某有名ミステリーを想起していますが、それを読んでいない私はレックス・スタウトの「毒蛇」(1934年)の方を連想しました。いずれにしろこの終盤は印象的だし個性的ではありますけど、読者の好き嫌いは分かれるかもしれません。余談になりますがこの作者の作品で私の好みの上位トップ3は「兄の殺人者」、「こわされた少年」(1965年)、「ウォリス家の殺人」(1981年)です。「五番目のコード」(1967年)と「三本の緑の小壜」(1972年)もいい作品だと思います。

No.1 6点 文生 2023/06/03 22:21
窃盗を理由に大学を除名された学生の冤罪疑惑が持ち上がり、やがて学生たちによる抗議活動へと発展していく。そんななか、抗議の一環としてこの大学に大口の寄付をしている富豪の娘を誘拐するらしいという噂が広まっていく。果たして誘拐は行われるがそれはあくまでも狂言誘拐のはずだった。だが、誘拐はやがて殺人事件となり…。

ディヴァイン最後の未訳作品です。いつもの如く派手な仕掛けなどはありませんが、真犯人を論理的に指摘するなど、フーダニットミステリとしては悪くありません。それに事件が起きる前の、不穏な空気が高まっていくくだりなどは物語としても読ませます。ただ、犯人が判明したあとのサスペンス展開、出来自体は悪くないものの、自分はてっきり(犯人指摘が早すぎたので)さらなるドンデン返しがあるものとばかり思っていました。まさか『死の接吻』方式とは思ってもなかったので、謎解きがすでに終わっていた事実を最後に知って肩透かしを覚えたわけです。トータル評価としてはそこそこ楽しめたということで6点くらいで。


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D・M・ディヴァイン
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