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[ 本格/新本格 ]
おれたちの歌をうたえ
呉勝浩 出版月: 2021年02月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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文藝春秋
2021年02月

文藝春秋
2023年08月

No.3 6点 パメル 2024/07/21 19:26
第165回直木賞候補作。昭和、平成、令和の時代の変遷を背景に五人の幼馴染が辿った軌跡を描いている。
物語は令和元年、元刑事の河辺久則のもとに一本の電話が掛かってくるところから始まる。電話の主は茂田という男で河辺の旧友「ゴミサトシ」が死んだと告げる。裏社会の住人となり死を迎えた男は、古本に手書きの暗号を残していた。それは詩のような謎めいた文だった。河辺は茂田とともに友人が残した暗号を解読しながら、40年前に起きたある事件の真相に迫っていく。
中学時代の「栄光の五人組」と呼ばれた幼馴染たちが遭遇する殺人事件とその顛末を描く昭和五十年の章、五人組の人生が激しく分岐していく平成十一年の章、現在の時間と河辺の回想が交互に綴られながら、物語は宝探しと犯人捜しの二つの軸をもって進行していくという深みのある構成。この回想パートが最も心を揺さぶられる。それぞれ出目や家庭環境に複雑なものを抱えながら熱気に満ちた日々を過ごすパートは青春小説として読み応えがある。
キャラクターが魅力的で、「栄光の五人組」が五人ともいい味を出している。子供の頃は呼び名がカタカナ表記だが、平成十一年以降は漢字表記になっている。それによって関係性が垣間見えて切ない。波乱の少ない物語ではあるが、心は絶えず動かされ続ける。幸せと不幸せ、信頼と裏切り、生と死、様々な二項対立が物語のあらゆる局面で浮かび上がり幾度も問い掛けてくるからだ。
過去と現在を往還しながらすべての謎が解かれた先に、彼らの人生においての変わるものと変わらないものが明示され物語は優しく幕を下ろす。犯罪は関わった人間すべてに影響を及ぼし、人生を決定的に変えてしまう。だが、本当に取り返しのつかない事なのかの一つの答えが提示されている。

No.2 6点 八二一 2023/12/16 20:23
少年時代を共にした男女五人が昭和、平成、令和と送ってきた人生を、四〇年に及んで未解決の事件に絡めて語った大河ミステリ。
仲間の一人の死を糸口に過去の遡る形でいくつもの時代を描いているが、その切り取り方が鮮やかである。さらに、物語の重厚さと登場人物たちの存在感にも圧倒される。

No.1 6点 HORNET 2021/10/30 18:13
 元刑事の河辺のもとにある日、同郷の友人サトシが死んだとの電話がかかってきた。河辺とサトシ、コーショー、キンタ、フーカの5人は「栄光の5人組」として幼い頃いつも一緒の仲間だった。が、フーカの姉が殺され、フーカの父が犯人と目される男の家族に報復するという事件が起き、その後は散り散りになってそれぞれ大人になっていた。
 サトシは死に際して河辺に暗号を残していった。そこには40年前の事件の真相が隠されているのか。フーカの姉が死んだ日、本当は何があったのか。失ったものを取り戻すべく、河辺は動き出す。

 物語設定は面白く、興味をもってページを繰っていけるのだが、暗号とか符丁とかがちょっと入り組み過ぎているうえに、解読が多分に恣意的で、ちょっとついていけないところがあった。世に倦んだ元刑事やそれを取り巻く登場人物の描写も、カッコよさをねらって仰々しいのが少し鼻につく。
 後半は急展開に次ぐ急展開で、ついていくのがやっとだったが、言い方を変えれば最後まで物語が動的で面白かったとも言える。


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呉勝浩
2024年07月
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