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雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール
呉勝浩 出版月: 2018年09月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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光文社
2018年09月

No.1 7点 HORNET 2019/02/02 21:07
 氏の作品は、乱歩賞を受賞した「道徳の時間」しか読んでいなかったが、作風のあまりの違いに驚いた。そういう意味では幅の広い作家さんなんだと思う。
 雛口依子は「一人ボウリング」からの帰り道、車とぶつかって宙を舞う。その瞬間にここ最近の出来事を回想するという形で本編が始まるのだが―
 無差別銃乱射事件の犯人の妹・葵との出会いから、事件の真相をルポに書くため過去を辿る2人の日々へと物語は展開していく。依子の一家は、明らかに怪しい宗教の教祖に囲われた生活だが、その異常性を依子自身は理解していない。その「異常性を理解していない」依子の視点で描かれる過去の日々に、読者としてはツッコミどころ満載で、タイトルどおり「やけくそ」なぶっ飛んだ感じに、そこかしこで笑いが漏れる。
 だが、ルポを書くための過去取材が、無差別乱射事件の真相を暴くことにつながり、ラストには予想しえなかった真実が用意されている。おどけた感じで物語が展開されていながら、しっかりミステリとして成立しているところに作品の面白さを感じる。あまりに教祖の言うなりに唯々諾々と過ごす主人公にいらだちを感じるものの、最後にはすべてが暴かれて多少なりとも陽を見るところはあり、総じて面白いと思える一冊だった。


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